70周年を機に組織前進 道高教組定期大会で尾張委員長あいさつ
(関係団体 2019-03-13付)

道高教組尾張委員長あいさつ
力量向上を訴えた

 道高教組第百二十一回定期大会(二・三日、札幌市中央区民センター)における尾張聡中央執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。

 一九四九年六月十二日、札幌南高校で結成大会を開催し、道高校教職員組合は正式に発足した。このときの加盟校は三十八校、組合員六百五十一人だった。

 二〇一九年は、私たち道高教組にとって、結成七十周年の節目に当たる年。道高教組結成に至る経過には複雑な前史がある。一言で言えば、軍国主義教育への反省と教育労働者としての自覚を深める中で、全国的・全道的な教育労働者の組合組織の在り方を模索する時代であったと言える。

 今、こうした歴史を引き継ぐ私たちは、七十周年の節目を単なる懐古やアニバーサリーとしてではなく、今日の情勢を正しくとらえ、組織を前進させ、運動を担うにふさわしい力量をもった道高教組をつくり上げる年にしなければならない。

 私たちの生活の上でも、学校の教育にとっても、さらに北海道と日本の政治にとっても極めて重要な意味をもつ年となる。

 私たちは、学校にもち込まれる「政治」にも敏感にならざるを得ない。そのことを最も端的に表しているのが新学習指導要領。今、各学校で新しい学習指導要領にかかわる研修が行われていると思うが、学習指導要領改訂の意味を説明しようとすると、前文にある「新しい時代に必要となる資質・能力」という文言を学校として吟味しなければならない。

 「新しい時代」の意味が、単にAIやIoTへの対応と説明されるなら皮相と言わざるを得ないし、「不確実」「大競争」を背景に説明されるとすれば、新自由主義に寄りかかって偏向していると言える。国民に求められる「資質・能力」を国が定めていいのかという根本的な問題もある。

 学習指導要領が「政府見解を必ず教える」として、領土問題をやたらと強調し、特に北海道では「北方領土問題は、毎年必ず高校入試に出題される」と言われるほど徹底した教え込みを図ってきたにもかかわらず、今、安倍政権自身が、これまでの政府見解さえ国会で答弁できなくなっていることも政治の破綻の証明である。「政府見解を必ず教える」という学習指導要領の立場が真理・真実を求める教育や学問の世界にそぐわないものであることを証明した。

 私たちは、学習指導要領の政治性を指摘しないわけにはいかない。

 私たちが大事にすべきことは「学校は国家に必要な人材育成のためにあるのではなく、目の前の生徒たち一人ひとりの成長・発達から議論を始めること」ではないか。

 もう一つ、ことしという年が重要な意味をもつのは、いわゆる「学校における働き方改革」が本格的に動き出す年になるからである。中教審は一月二十五日に「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」を答申し、文部科学省は勤務時間上限ガイドライン案を示した。二〇一九年に法整備を終え、二〇二〇年に各都道府県の条例改正を行い、二〇二一年に実施するとしている。

 私たち教職員の異常な長時間労働を是正することが国民的な課題となったことは、私たち自身の運動の成果であるが、「答申」の最大の問題は、その表題に表れているとおり、「学校における業務改善」「勤務時間管理の徹底および適正な勤務時間の設定」「意識改革」などを求め、「チーム学校」を強調して学校の組織運営体制にまで言及し、管理統制の強化に向かう方向が示されるばかりで、教職員定数の抜本的な改善が盛り込まれていないことである。

 人事評価についても「同じような成果であれば、より短い在校時間でその成果を上げた教師に高い評価を付与すべき」などと、「時短ハラスメント」を誘発する記述もある。そうした姿勢が、学校現場に一年単位の変形労働時間制を導入しようとしていることに表れている。これは時間外労働の実態を覆い隠し、長時間過密労働を助長することになる。

 私たち教職員の長時間労働は、一刻の猶予もなく解決しなければならない問題であることは間違いないし、そのことはチャンスである。中教審でも多くの委員から教職員の定数増を求める意見が出された。

 しかし、答申に定数増が盛り込まれなかったのは、安倍政権がこの問題にカネをかけず、学校への管理強化で解決しようとしているからであり、この問題でも、「政策の転換=政権の転換」がどうしても必要である。

 教職員の長時間過密労働の問題は政治であると同時に、ことし、すべての職場・学校で大きな問題にならざるを得ない課題。そのときに私たちが忘れてはならない観点が教師論である。この立場に立ってこそ、この問題を労働条件の問題であると同時に教育条件の問題であることを明らかにし、保護者・地域とともに国民的な課題として解決できる。

(関係団体 2019-03-13付)

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