札幌市教委の教員長期社会体験研修 東苗穂小・奈良岡教諭 コンサドーレでの1年間を振り返る 地域密着の姿勢、スピード感学ぶ(市町村 2019-03-20付)
試合告知のチラシを配る奈良岡教諭
札幌市教委が実施している教員長期社会体験研修。本年度は、東苗穂小学校の奈良岡学教諭が約一年間にわたって、プロサッカークラブの㈱コンサドーレで研修してきた。試合の広報や選手の学校訪問の日程調整など、様々な業務に取り組んだ奈良岡教諭に、研修の成果を聞いた。
昨シーズン、クラブ史上最高順位の四位と、躍進を遂げた北海道コンサドーレ札幌。サッカーに関する活動だけではなく、幼稚園・学校訪問やスポーツ振興、社会福祉活動など子どもたちの健やかな成長や地域の活性化につながる取組を行っている。
小学校に二十年以上勤務している奈良岡教諭は、保護者からの多様なニーズが増える中で、保護者対応や危機管理などについて、経験則ではなく柔軟な考えが必要と実感。リスクマネジメントなど企業で学んだことを学校で生かしたいと考え、研修に参加した。
研修で配属先となったホームタウン事業推進部では、試合告知のポスター貼りなど広報活動や試合当日の運営などを担当。試合での何十万、何百万円といった売り上げの大きさに驚いたほか、イメージダウンが売り上げに直結するなど、企業のシビアさを感じた。
また、幼稚園・学校訪問の日程調整を行ったほか、訪問の際の選手やクラブマスコット“ドーレくん”の世話なども実施。事前の打ち合わせとして動線の確保や子どもたちの反応の予想などに取り組んだ。「指導案をつくっているようだった」と話すなど、当日の子どもたちへの対応も含め、教師としての経験が役立った。
幼稚園・学校訪問では、選手とのふれあいを通して子どもたちが笑顔になるほか、涙を流して喜ぶ光景を何度も目の当たりに。教師がもつ「子どもの笑顔のために」という感覚がより一層強くなった。
小学校訪問で小野伸二選手が子どもたちの質問に答えた際には、ざわざわしていた子どもたちの雰囲気が小野選手の言葉で集中した雰囲気に。話で子どもたちを説得させる力こそ、教師に必要なものだとあらためて感じた。
また、選手派遣が決まらず、地域イベントが中止になりそうになったことも。何とか派遣する選手を確保することができたが、上司からは「ビジネスでは、助けを求められる人や手段をもち合わせているかが問われる」と言われた。人とのつながりの大切さが身に染みた。
企業の対応のスピーディーさ、人とのつながりを感じる一年だった。昨年九月に北海道胆振東部地震が発生した際には、選手たちも被災したにもかかわらず、被災地訪問を実施。全選手が現地の人々を勇気付けた。短い時間ながらも子どもと一緒にサッカーすることで子どもたちが笑顔に、それを見ていた周りの大人も笑顔になった。「被災してから一番いい笑顔だった」。現地の人の言葉が忘れられない。
地震発生から一週間後には、市スポーツ局のもと、北海道コンサドーレ札幌も含め、四スポーツクラブが平岡南小学校を訪問した。㈱コンサドーレでは、月に二・三回の全体ミーティングを実施。誰もが話せる環境づくりに取り組むなど、普段からの危機管理や情報共有といった組織の在り方によって、物事にスピーディーに対応できると感じた。
今回の経験から「若い先生からベテランの先生まで全職員がアイデアを出し合いながら、物事を考えなければならない」と話すなど、四月からは学校の職場の雰囲気づくりのほか、情報共有に対する意識向上に取り組んでいきたいと考えている。
また、試合の開催のみならず、幼稚園・学校訪問や社会福祉活動など、地域とのかかわり合いがあって北海道コンサドーレ札幌が成り立っていることを感じた。自身も教師として「子どもと接するだけで終わるのではなく、子どもの後ろに保護者・地域があるということを意識し、保護者・地域との連携を密にしていかなければならない」と話していた。
(市町村 2019-03-20付)
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