札幌市教委の31年度教育方針概要・上
(市町村 2019-03-20付)

 札幌市教委の三十一年度教育方針説明会で、檜田英樹学校教育部長、長谷川正人児童生徒担当部長、紺野宏子教職員担当部長、鈴木和弥生涯学習部長が所管事項について説明した。概要を連載で紹介する。

【平成31年度以降の札幌らしい特色ある学校教育について】―檜田学校教育部長

 検討プロジェクト会議で、これまでの取組成果や課題を整理したところ、「雪」については、スキー学習だけではなく異学年交流を生かしたスノーフェスティバル、「環境」については地域の方を講師とした学習、「読書」については一斉読書に加えて保護者による読み聞かせなど、各学校が工夫をし、実に様々な取組が実施されてきた。

 このような各学校の取組の成果として、雪・環境・読書の学習活動を教育課程に明確に位置付けることや、育成したい資質能力を明らかにすること、外部人材の活用、地域や近隣の学校と連携することといった工夫によって、本事業の充実が図られ、子どもの成長に寄与してきたことがあらためて確認できた。

 したがって、今後も雪・環境・読書の三つをテーマとした学びを継続することとした。

 そこで、これからの取組を一層充実させ、各校が取り組みやすくするため、二つの柱を設定した。

 一つ目は、「幼・小・中・高のつながりを意識する視点」。これまでの取組成果をもとにして、地域・外部人材の効果的な活用や学校・校種間の連携など、五つの具体例を示している。

 これら五つの具体例を参考としてもらいながら、例えば三十一年度は地域・外部人材の効果的な活用を重点テーマとして雪・環境・読書の取組を実施する、あるいは、「読書」は地域・外部人材の効果的な活用を重点として取組を実施する、「雪」に関しては学校・校種間の連携を重点としてオリンピック・パラリンピック教育を中心として進めるなど、各校の実情に応じて重点テーマを設定すると、取り組みやすいのではないかと考えている。

 そうすることで、異校種間での情報共有や連携など、学年段階や校種間の違いによる子どもの学びや育ちの側面から、活動内容等を整理し直すことができ、学習効果がより高まることを期待する。

 二つ目は「発信」。校種を超えた多くの学校、保護者や地域の皆さんに、ホームページや学校便り、発表会などで取組の内容を発信することは、お互いの取組について情報共有でき、幼・小・中・高のつながりを意識する視点が生まれやすくなるともに、保護者や地域の方に、学校の取組を理解してもらうことで協力が得られやすくなると考えている。

 加えて、幼児児童生徒にとっては、発信によって確かな力の育みや自己表現できる力の育成といった効果が期待できる。

 具体的な取組の例としては、「読書を土台とした環境の取組などといった雪・環境・読書のつながりを発信すること」「近隣の学校と交流した際に子ども同士の発信の場を設定することなどによる校種を超えた子どもや教職員のつながりを発信すること」「保護者や地域とのつながりを発信すること」などの「つながり」の発信を示している。

 各校において、すでに様々な「発信」が行われていることと思うが、何を「発信」するか、「発信」することによってどのような効果を期待するかといった観点から一工夫を加えることで、「発信」が一層効果的なものとなり、各校の特色ある取組がより広まるものと考えている。

 以上のように、今後は「幼・小・中・高のつながりを意識する視点」と「発信」の二つを柱とすることで、取組の一層の充実を図ることができると考えている。併せて、各学校におけるこれまでの取組成果を土台にして、学校独自のテーマを設定するなど、各学校が取り組みやすく、より実効性の高い取組としてもらうことを期待する。

 例えば、これまでの実践において、学校独自に体力向上をテーマとして、「雪」に関して、雪中的当てなどの活動を通して、雪との共生に関する理解を深めた取組事例がある。また、札幌ならではのオリンピックミュージアムを活用した取組も増えている。

 「環境」について、自然環境に加えて、地域の特色を生かして、多様な人や文化との共生などの社会的環境などのSDGsについて考える機会を設定することで、学習に広がりをもたせるという取組例もあった。

 学校図書館に関する取組成果を活用し、学校図書館の「学習センター」としての機能を生かし、「環境」と「読書」を関連させるなど、教科横断的な視点から取り組んだ事例もある。

 「札幌らしい特色ある学校教育」が、子どもの成長に一層資するよう、各学校の実情に応じて、より取り組みやすく、より創造性を発揮しやすく、より実効性の高い取組としてもらう工夫をお願いする。

 雪・環境・読書の三つのテーマ以外の取組だが、「ふるさと札幌を心にもつ学び」がある。各園・学校では、札幌ならではの様々な地域の環境を生かした体験活動への取組とともに、ふるさと札幌の理解を深める学習によって、札幌の特色や魅力を学ぶ機会の充実を図ってもらいたいと思う。

【学ぶ力の育成】―檜田学校教育部長

▼さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランの改訂点と取組の要点について

 市では、子どもに自ら課題を見付け、自ら学び、自ら問題を解決する資質や能力等の「学ぶ力」を育成することを目指しており、三十一年度のプランでは三つの改訂点がある。

 一点目は札幌市教育課程編成の手引の活用について。

 分かる・できる・楽しい授業づくりの充実に向け、札幌市教育課程編成の手引を活用することにより、新学習指導要領の趣旨を踏まえた授業改善を推進する旨をより明確に示した。

 これは、札幌市の子どもは「身に付けた知識・技能を活用して考えたり、考えたことを表現したりすること」や「授業中、自分の意見を進んで発言すること」などに課題があることを踏まえ、課題探究的な学習について、今後一層充実を図る必要があると考えているため。

 各学校では、新学習指導要領の趣旨を踏まえて作成した「教育課程編成の手引~移行措置に関する資料~」に掲載している「課題探究的な学習」を取り入れた授業の指導展開例等を積極的に活用し、指導方法の工夫改善を図ってもらうようお願いする。

 なお、三十一年度には、小学校で二〇二〇年度から使用する教科書の採択が行われることに合わせて、新しい「札幌市小学校教育課程編成の手引」を作成・配布することを予定している。

 また、算数にーごープロジェクトについては、三十年度の取組の成果と課題を踏まえ、一層の充実を図っていく。先日、配付した教員向けリーフレット『算数にーごープロジェクト活用のススメ』の第二弾を積極的に活用し、引き続き、学ぶ意欲や論理的思考力を高める授業の充実をお願いする。

 二点目は、「校種間・学校間連携の充実~小中一貫した教育の視点から連続性のある教育の推進」について。

 三十年度の「学ぶ力」の育成プランにおいても「校種間・学校間の連携による教育活動の充実」を位置付け、校種間連携に取り組んでいるが、新学習指導要領において、幼小、小中、中高などの円滑な接続を図ることが重視されており、その重要性は一層増している。

 今後は、義務教育九年間を見通して子どもに資質・能力を育むため、学びの連続性や系統性を重視し、校区の小・中学校で「学ぶ力」育成に向けた取組の成果と課題を共有したりするなど、小中一貫した教育の視点から連続性のある教育を進めてもらうようお願いする。

 三点目は、さっぽろっ子「学び」のススメの活用について。

 各学校の「学ぶ力」育成プログラムに、さっぽろっ子「学び」のススメを活用して学校と家庭が連携して学習習慣づくりを進めるための方策を位置付けることを明確に示した。

 子どもの学習習慣の確立のためには、学校以外においても、子どもが学校で学んだことを生かして自ら学ぼうとする意欲が高まるような場面をつくることが重要。併せて、学校と家庭が一体となって子どもの習慣づくりを支えていくため、「まほうのかいわ」を意識した子どもへの働きかけ等を具体化し、保護者とともに継続的に子どもの成長を見取り、支え、子どもが自己肯定感や向上心を高められるよう取り組んでもらいたい。

 教育委員会では、新学習指導要領において重視されている「社会に開かれた教育課程」の理念を踏まえ、三十一年度も、あらためてさっぽろっ子「学び」のススメを各家庭に配布するので、各学校から趣旨や活用方法の具体を伝え、浸透を図ってほしい。また、各学校の取組の好事例等についての情報発信を充実させ、札幌市PTA協議会をはじめとする関係機関との連携もさらに進めていく。

 各学校では、自校の子どもの実態に基づいた「学ぶ力」育成プログラムの改訂と実行による検証改善サイクルの確立を中核としながら、家庭や地域との連携を一層深め、一体となって「学ぶ力」の育成に取り組んでもらいたい。

【豊かな心の育成】―長谷川児童生徒担当部長

▼豊かな感性と社会性を育む体験活動等や道徳教育の充実

 市では、「他者を思いやる心」「生命を尊重する心」「自然や美しいものに感動する心」等を「豊かな心」と位置づけ、教科だけではなく、すべての教育活動を通して、育成していくという考えに変更はない。

 「豊かな心」を育成するためには、「豊かな感性と社会性」を育む教育を推進していくことが求められるが、市は豊かな自然や体育・文化施設に恵まれているので、小学三年生から中学生段階にいたるまで、様々な取組がなされている。

 小学三年生は、オリンピックミュージアムでのオリンピック・パラリンピック教育が二十九年度から始まった。将来的には、全校に広げていく予定となっている。また、小学四年生は科学館等でのプラネタリウム鑑賞、五年生は、芸術の森等での芸術体験、六年生は、コンサートホールキタラでの札幌交響楽団の鑑賞等をほぼ全校が行っている。

 また、中学一年生は、札幌市内の専門学校・各種学校の協力を得て、職業体験学習を行ったり、二年生は、地域の各営業所の協力を得て、全校が職場体験学習を行ったりしている。

 一つ残念なのは、こうしたすばらしい取組を小・中学校の教員がお互いに知らないことが多いということ。小学校のプラネタリウムでの学習や交響楽団の鑑賞体験が、中学校の理科や音楽の授業で生かされ、中学校で職業体験があることを踏まえた小学校のキャリア教育を推進するような情報の共有が必要だと思う。豊かな心を育むために、特に小・中学校間で取組を交流しあい、九年間を見通して計画的に指導してもらいたい。

 また、子どもに社会性を育む取組として各学校で行われている。高齢者等とのふれあいやボランティア活動などの社会福祉や地域貢献についての活動を、ねらいを明確にもって充実させることが重要だと考える。

 例えば、ボランティア活動をとってみても、学習指導要領において、「特別の教科 道徳」「特別活動」「総合的な学習の時間」のそれぞれに示されている。こうした教育的意義をすべての教職員が理解した上で取り組んでいけるよう、管理職の皆さんから指導助言をお願いする。

 そして、もちろん道徳教育においても、子どもの発達の段階に応じて、豊かな心を育成することが求められている。

 小学校に引き続き、ことし四月から中学校で実施される「特別の教科 道徳」は、道徳教育の要となるもの。各学校に配布した教育課程編成の手引を十分に活用し、考え、議論する道徳を実現してもらいたいと思う。評価のことや授業の在り方については、まだまだ研究が必要になるかと思うが、指導主事を積極的に活用していただくとともに、中学校は、先行して動き出している小学校の取組を参考にするなど、小・中学校間の協力体制を強化してもらいたい。

▼命を大切にする指導

 「命を大切にする指導」に当たっては、全教職員一人ひとりが子ども理解に努めることが極めて重要。その上で、子どもが自分を大切に思う自尊感情や自他のかけがえのない命を大切にする気持ちをもてるよう指導していく必要がある。

 また、自分がいじめられたときに「誰にも相談しない」と答えた子どもが一割程度いることを重く受け止め、子どもが相談しやすい環境づくりや相談窓口の周知、教育相談の充実などに努めてもらうようお願いする。

 また、子ども自らがSOSを出すことができるよう、「SOSの出し方に関する教育」を推進するとともに、緊急時の組織的対応についてシミュレーションしておくなど、学校全体として危機管理意識を高めてもらいたいと考えている。その際、昨年配布した「自殺関連行動に係る具体的対応のためのガイドブック」を活用してほしい。

 つぎにいじめの防止に向けた取組について。

 いじめの疑いのある事案については、各学校において策定している「学校いじめ防止基本方針」に基づき、迅速かつ組織的に対処していただいているが、各学校の「いじめ防止基本方針」も策定してから三年が経過している。

 新年度を迎えるに当たり、学校の実態を踏まえた見直しやすべての教職員によるあらためての確認が必要だと考える。

 また、中学校への進学の際に小・中学校間でいじめ等の情報について確実に引き継ぐことは、昨年の学校経営研修会でお願いしたとおりだが、その他にも進級の際や、転校・進学の際にも確実に引き継ぎを行うようお願いする。

 また、いじめの防止に向けては、児童生徒自らがいじめの問題について考え、意見を述べ合うなど、児童生徒が主体となって取り組むことが有効。児童会・生徒会による「いじめ撲滅宣言」や「いじめ防止標語」等の取組を行うなど、児童生徒主体の取組を進めていただきたい。

 また、全市で取り組む「悩みやいじめに関するアンケート調査」のほかに、学校独自で行うアンケート調査については、ねらいに応じて無記名で実施するなどの工夫をして、わずかなサインによるいじめの疑いも含め、教育相談に結びつけていただくようお願いする。

 昨年三月に国の基本方針が改定され、本市においてもいじめ防止基本方針の改定に向け、取り組んでいる。各学校においてPDCAサイクルに基づき、定期的に学校の基本方針の評価および見直しを図ってもらうようお願いする。

【健やかな体の育成】―檜田学校教育部長

▼さっぽろっ子「健やかな体」の育成プランに基づく取組について

 表記の変更について。これまでは、「健やかな身体(しんたい)」と表記し「からだ」と読んでいたが、現在の国の教育振興基本計画と同じく「健やかな体(からだ)」と表記することとした。

 「健やかな体」の育成については、二十九年度からさっぽろっ子「健やかな体」の育成プランの中核に、小・中学校における「健やかな体」育成プログラムの作成・実施を位置付け、各学校において取り組んでいただいている。

 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の実技調査の結果の経年変化を見ると、体力合計点の平均値が、全国と比べると依然低い水準であるものの、小・中学校ともに向上の傾向が見られ、各学校における地道な取組の成果が徐々にあらわれ、札幌市の子どもの体力・運動能力は、改善に向かっているととらえている。

 各学校では、これまでの取組の成果と課題を明らかにした上で、三十一年度に向けてプログラムの改訂を行い、家庭や地域との連携を図りながら、体育と健康の両面での指導の充実をお願いする。

 三十一年度の「健やかな体」の育成に関しては、四点について、特に重視してもらいたい。

 一点目は、「体育、保健体育の授業改善」。

 子どもたちが、自らの運動や健康に関する課題を発見し、その改善に向けた取組を進める力を育むことができるよう、体育、保健体育の授業における課題探究的な学習の充実を図ってほしい。

 特に、運動が苦手な子どもも意欲を高めて学ぶことができる指導の工夫を行うなど、すべての子どもが運動・スポーツへの関心や意欲を高め、個々の生活に応じて、運動を取り入れることができるような工夫や取組をお願いする。

 また、二〇二〇年の東京オリンピックの開催を見据え「オリンピック・パラリンピック教育」については、冬季オリンピックの開催都市である札幌市の特色を生かした指導をお願いする。昨年五月に、小学校三年生向けの副教材および中学校、高校の教師用指導資料を配布しているので、積極的に活用してもらいたい。

 二点目は、「部活動の充実」。

 学校教育の一環として行われる部活動は、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養、好ましい人間関係の形成を図るなど、教育的意義が高いものだが、生徒や教職員の負担が過度になっている等の課題も見られることから、各学校ではそれらの改善も含めて、活動の一層の充実に向けた体制づくりをお願いしているところ。

 今後とも、部活動の目的を子どもや家庭、地域に丁寧に伝えるとともに、今後、通知する予定の「札幌市立学校にかかる部活動の方針」を参考に、各学校の部活動の方針を策定して、持続可能で安定した部活動の運営体制づくりを進め、一層の活動の充実を図ってもらうようお願いする。

 三点目は、「基本的生活習慣の確立」について。

 子どもが、健康三原則といわれる「運動、食事、睡眠」の大切さについて理解を深め、日頃から健康的な生活を意識して実践できるよう、学校・家庭・地域が一体となって習慣づくりの取組を進めてもらいたい。

 四点目は、「学びの系統化」について。

 「学ぶ力」の育成でもふれたが、「健やかな体」の育成を進めていく上でも、重要な視点だ。

 例えば、なわ跳び運動についてはすべての小学校で取組を進めていただいているが、幼稚園や中学校、高校においても取組を工夫することで、体力・運動能力や、運動への意欲などを長期間でじっくりと育むことができる。

 このように、各学校種で、子どもの発達の段階に応じた取組を工夫するとともに、子どもの学びの円滑な接続を図ることが必要。各学校の「健やかな体」育成プログラムにおいても、学校間で目標や課題等を共有したりするなどの小中一貫を見通した取組をお願いする。

 「健やかな体」育成プログラムの作成・実行は、三年目を迎えるが、検証改善サイクルを確立するために、前年度に引き続き、「教師と子どもとの共有」「学校と家庭・地域・外部人材との共有」「校内における教師間の共有」「学校間の共有」の四つの「共有」について、特に重視してもらいたいと思う。

 各学校において、四つの「共有」の具体化を図ることができるよう、学校における実践事例を多く掲載した。これらを参考として、取組のさらなる充実をお願いする。

【子ども一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育】―檜田学校教育部長

 「特別な配慮を必要とする子どもへの教育」について。子ども一人ひとりの発達を支える視点から、障がいのある子ども、不登校の子ども、海外から帰国した子どもや日本語の習得に困難のある子どもについて、新学習指導要領の総則では特別な配慮を必要とする子どもへの指導として整理された。

 「特別支援教育」について。

 新学習指導要領の総則では、特別支援学級に在籍する児童生徒や通級による指導を受ける児童生徒については、個別の教育支援計画や個別の指導計画を必ず作成し、効果的に活用することが示されている。

 このうち個別の教育支援計画の作成状況をみると、「特別な教育的支援を必要とする子どもの個別の教育支援計画を作成している幼稚園、学校の割合」は、二十九年度の七四・七%から三十年度は一〇〇%となり、各学校で適切に取組を進めていただいている。

 また、この計画は学校教育法施行規則の一部改正によって、特別支援学級に在籍する児童生徒や通級による指導を受ける児童生徒について、「作成すること」が法令上も位置付けられた。また、計画の作成に当たっては、保護者の意向を踏まえつつ、関係機関等と子どもの支援に関する必要な情報の共有を図ることが一層求められる。

 なお、こうした状況を踏まえ、個別の教育支援計画を作成する上での保護者との共有の進め方などについてあらためて整理を行い、三十年度中に通知で示す予定でいるので、内容を確認の上、適切に対応するようお願いする。

 また、いわゆる「障害者差別解消法」が施行されたことに伴い、本人・保護者からの合理的配慮の提供を求める申出があった場合、各学校では、子どもの参加の機会を確保するために、合理的配慮として教育内容や方法、支援体制などについて必要な変更・調整を行う。

 その際には、申出の内容をもとに、まずどのような社会的障壁が生じているのか確認し、子どもの参加の機会を確保するために必要な合理的配慮の内容について保護者と丁寧に話し合うことが大切。教育委員会では「札幌市立学校職員における対応要領」に加え、各園・学校の実践をまとめた取組集、中学校の定期試験における合理的配慮の状況についてまとめたリーフレットを配布しているので、これらを活用しながら適切に対応するようお願いする。

【新たな不登校を生まない未然防止の取組と組織的・計画的な不登校支援】―長谷川児童生徒担当部長

 不登校への対応について。

 札幌市の不登校児童生徒数は、全国と同様に増加傾向にあり、特に小学校の不登校児童数の割合が増えている。各学校では、不登校の子どもの学校復帰に向けた取組を充実することはもちろんだが、これからは新たな不登校を生まない未然防止の取組を充実することが求められている。そのためにも、子どもにとって学校が「心の居場所」と「絆づくりの場」となるよう、魅力ある学校づくりに一層努めていくことが重要だと考えている。

 また、前年度だけでなく、小学校三・四年生のころまでの過去の欠席や遅刻、行き渋り等の状況にも着目し、不登校が心配される子どもの予兆を早めにキャッチし、初期の段階で迅速かつ丁寧に対応することが、欠席の長期化を防ぐことにつながる。そのためにも小・中学校間での子どもの様子の確実な引継ぎをお願いする。

 さらに不登校支援は、子どもはもちろんのこと、保護者の不安な気持ちに寄り添うことが重要。小学校では、家庭状況等に困難を抱える家庭について、三十年度から導入した巡回SSWを活用したり、中学校では、引きこもりがちな子どもを子ども未来局が行っている中学校卒業者等進路支援事業につないだりするなど、保護者も前向きになれるような支援をお願いする。

 つぎに、教育委員会が設置している教育支援センターと相談指導教室の六ヵ所については、引き続き積極的な活用をお願いする。効果的に活用するためのポイントは、通室開始後も、担任等による施設訪問など、学校として子どもにかかわり続けることにある。先生方も忙しいと思うが、管理職からも声かけをもらうようお願いする。

 また、いわゆる教育機会確保法を踏まえ、フリースクール等の民間施設に通う子どもについても連携を深め、指導要録上出席とすることや二月に発出した「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の積極的な対応について」の通知を鑑み、積極的な出席の取扱に配慮していただきたい。

 相談支援パートナー事業については、中学校にはすっかり根付いたものと思っている。三十一年度も引き続き、相談支援パートナーを全中学校および中等教育学校に、相談支援リーダーを小学校十校に配置する。

 また、二十八年度から小学校についても相談支援パートナーのモデル的活用を進めてきた。小学校では、遅刻児童への対応やお迎えによる登校への働きかけなど、特に、不登校の未然防止の取組として必要性が認められることから、三十一年度も引き続き、小学校数校に相談支援パートナーを派遣し、効果検証を図ることとしている。小学校においては、効果的な活用について様々な工夫をしてもらいたい。

【帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実】―檜田学校教育部長

 「帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実」について。

 日本語指導等が必要な帰国・外国人児童生徒に対する指導については、これまで、日本語指導ボランティアを学校に派遣するなど、支援の充実を図ってきた。

 新学習指導要領総則では、「特別な配慮を必要とする児童生徒への指導」の項目の中に「海外から帰国した児童生徒などの学校生活への適応や、日本語の習得に困難のある児童生徒に対する日本語指導」が新たに位置付けられ、個々の児童生徒の実態に応じた指導内容指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うことが求められている。

 今後は、児童生徒の実態に応じた日本語指導の計画を個別に作成することや、外国における生活経験を生かすことなど、子ども一人ひとりに応じた、きめ細かな支援の充実を図ってもらうようお願いする。

 また、不登校、障がいのある児童生徒および日本語指導が必要な外国人児童生徒等に対する支援計画を一つにまとめて作成する場合は、サポートファイルさっぽろを基本様式としながら、必要に応じてサポートファイルさっぽろの書式を一部変更したり、三十年十月二十二日付通知の参考様式「児童生徒理解・支援シート」の必要なシートを加えたりすることが考えられるので、学校の状況に応じて対応をお願いする。

【校種間連携】―檜田学校教育部長

 「知・徳・体の調和のとれた育ち」でも伝えたとおり、子どもにこれからの社会で生き抜いていくために必要な資質・能力を確実に育むために、極めて重要な取組。特に、小・中学校間の連携・接続については、これまで各地域において築き上げられた小中連携の取組を足がかりとしながら、今後は、小中一貫した教育へとシフトチェンジしていく必要がある。

 教育委員会では、三十年度に小中一貫した教育についての在り方検討委員会を立ち上げ、市の実情を踏まえた、義務教育九年間の学びのつながりについて検討を進めている。三十一年度中には、「札幌市における小中一貫教育の基本方針」を策定する。

 各学校では、異校種との授業交流や合同研修会を行うなど、地域の実情に応じた校種間連携の一層の強化に努め、指導内容の連続性や系統性を重視した教育の充実を図ってもらうようお願いする。

【家庭や地域とともに進める学校づくり】―檜田学校教育部長

 新学習指導要領で示された社会に開かれた教育課程の理念に基づく学校づくりのためには、各学校において、教育目標を含めた教育課程の編成についての基本的な方針を家庭や地域と共有し、ともに子どもを育てていくという視点に立って、教育活動を進めていくことが重要。

 そのためには、まず、市の子ども観・教育観を学校から家庭、地域に丁寧に伝え、理念を共有した上で、それぞれの立場から子どもへのかかわりを工夫することが取組のスタートであると考えている。三十一年度においても、家庭や地域とのさらなる連携の推進に向けて、幼児版を含むさっぽろっ子「学び」のススメを積極的に活用してほしい。

 また、教育課程に基づく教育活動の質を向上させ、学習効果の最大化をカリキュラム・マネジメントの確立を図る上で、学校評価を有効に活用することも重要。教育活動、学校運営の状況を適切に評価するための項目や指標をあらためて見直し、自己評価および保護者、地域住民による評価の充実を図り、教育活動の改善につなげてほしい。

【教員の資質・能力の向上】―檜田学校教育部長

 一点目は、「札幌市教員育成指標の活用」。

 市では、二十九年度に市が求める教員像を見直し、「札幌市教員育成指標および札幌市教員研修体系、札幌市教員研修計画」を策定した。

 各園・学校では、教員のキャリアステージに応じて身に付けるべき資質を明確にした教員育成指標を、個人の研修計画立案、振り返り、管理職による個々の教員への助言の参考にするなど、教員自身がより主体的に自らの資質の向上を図ることができるよう、校内研修等でも教員育成指標を積極的に活用するようお願いする。

 二点目は、「校内外における効果的な研究・研修による資質向上」。

 教員の資質向上を図るには、管理職をはじめ、すべての教員が協働して取り組む意識が重要。教員の負担軽減にも配慮しながら、『校内研究・研修の手引』などを活用して、校内外における研究・研修の計画的・効果的な実施をお願いする。

 また、札教研事業についても資質の向上にかかる重要な研修の一つに位置付け、積極的な取組が進められるよう、これまで以上に教職員への働きかけをお願いする。

 なお、三十一年度は、道徳の教科化にかかわり、小中合同道徳研究部を小と中に分け、それぞれ研究部を設置する。各部会への理解と協力をお願いする。

 以上、三十一年度についても、教員の資質・能力の向上にかかる一層の取組の充実をお願いする。

【安全教育】―長谷川児童生徒担当部長

 安全教育については、不審者への対応指導等を行う生活安全、自転車の安全な乗り方指導等を行う交通安全、災害発生時に、正しい備えと安全に行動するための能力の育成等を行う災害安全の三領域の教育と組織活動があるのは、承知のとおり。

 安全に関することに軽重はつけられないが、昨年五月に新潟で下校途中の児童が殺害された痛ましい事件を受け、全校に通知した登下校防犯プランに基づいた安全確保については、引き続き留意するようお願いする。

 また、昨年九月の胆振東部地震の発生を踏まえ、市では災害に強いまちづくりに全庁的に取り組んでいるところ。教育委員会としても、三十一年度は、特に防災教育を充実させていくこととし、各学校において、防災教育のねらいに沿ったそれぞれの実態に応じた取組を一層推進してもらいたいと思う。

【進路探究学習】―檜田学校教育部長

 今後も、小学校段階から職業体験などを通して働くことの意義を子どもたちが感じ取るとともに、コミュニケーション能力や課題解決能力などを高めようとする意欲や態度を育んでいくことは、ますます重要。各学校では、すでに学校教育の中で行われているキャリア教育にかかわる取組について教職員で意識化を図り、子どもが将来への夢や、社会で活躍する自分のイメージを描きながら、自分自身の在り方を見いだし、将来の生き方や進路について考える進路探究学習、いわゆるキャリア教育の一層の推進を図ってもらいたいと思う。

 中学校では、三十一年度の進路探究学習オリエンテーリングの参加対象を中学校一・二年の全生徒に広げ、講座の開設期間や講座数も拡充していくので、夏季休業中などでの積極的な活用をお願いする。

【人間尊重の教育】―檜田学校教育部長

 各学校では人間尊重の教育に向けた三つの視点を踏まえ、指導の充実を図るための様々な取組を進めていただいているところ。

 今後の取組の推進に当たっては、特に、視点二にある「教師自らの人間尊重の意識の向上」を重視してもらいたいと思う。現在の社会では、民族や国籍、性や年齢の違い、障がいの有無などにかかわる多様な課題があるが、それらに関する先生方の見識を一層高めた上で、子どもへの指導の充実を図ってもらいたいと思う。

 教育委員会としては、先生方向けの講演会等を実施するなど、研修機会の充実に努めていくので、積極的な活用をお願いする。

【国際理解教育】―檜田学校教育部長

 外国語教育の充実については、三十一年度からALTの民間委託契約を労働者派遣契約に変更することによって、英語担当教員がALTに直接相談や指示をすることが可能となる。また、TT授業を行うことも可能となるので、授業の中に英語担当教員とALTとのやりとりを取り入れていただくようお願いする。さらには、ALTを六人増員し、小学校では五・六年生の学級において年に約十四回、中学校ではすべての学級において週一回ALTとの授業が可能となり、高校および中等教育学校では、全校への通年配置が継続となるので、ALTを十分に活用した授業の実施をお願いする。

 さらに小学校については、二十九年三月に配布した『札幌市小学校における英語教育推進のすすめ』を活用し、校内において外国語教育の推進役となる教師(英語専門教師)を、次年度は全小学校において位置付け、二〇二〇年度の高学年における外国語活動の教科化および中学年での外国語活動の円滑な実施に向けて、校内研修を進めてもらいたいと思う。

 小学校における外国語活動および外国語の時数増への対応については、「学校週五日制や長期休業の本来の趣旨を踏襲すること」「総合的な学習の時間のさらなる充実を図ること」「児童や教職員の負担を増やさないこと」等を主な視点として、各学校では全市共通の授業時数の確保のほかに、学校行事の日程やクラブ活動、委員会活動、参観日の日程の工夫など、大変な苦労をかけているが、三十年度に引き続き、これまでの自校の教育活動全体を見直し、市の示した目安を参考に時数を生み出すようお願いしたいと思う。

 以上、三十一年度の学校教育における学習指導等の重要事項について、「札幌市学校教育の重点」に沿って説明した。各幼稚園・学校においては、「札幌市学校教育の重点」の内容を先生方に周知いただくとともに、日ごろより、手元に置いていただき、積極的かつ継続的に活用してほしい。

 なお、三十一年度は、新天皇即位に伴い、いわゆるゴールデンウイークが十連休となるなど休日が増えることになり、学校はその期間は休業日となる。

 校長会の皆さんと相談させていただいたが、市では、授業時数確保のために長期休業を短縮するなどの取組や土曜授業の実施はせずに、各学校における教育課程実施の工夫によって授業時数を確保することとした。

 各学校においては、一年間を見通しながら様々な行事の在り方や日程を含め、教育課程全体を見直し、適切な授業時数の確保をお願いする。

 併せて、教育課程の見直しにかかる行事等の在り方や実施内容などが変更となることも考えられる。児童生徒はもとより、保護者の方々に、十分理解と協力をいただけるよう、丁寧な説明を行いながら、地域に開かれた学校として、さらなる学校教育の充実に努めてもらうようお願いする。

(市町村 2019-03-20付)

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(2019-03-20)  全て読む

権利の認知度が向上 子どもに関する実態・意識調査 札幌市

 子どもに関する実態・意識調査の対象は、十九歳以上の大人五千人と、十~十八歳までの子ども五千人。前回調査は二〇一三年に実施した。  調査の結果、子どもの権利の認知度は、学校を通じた啓発など...

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西興部村31年度教育行政執行方針 小学校英語で臨時教諭を 西興部中にタブレット

西興部村吉田且志  【網走発】西興部村教委の吉田且志教育長は三十一年度教育行政執行方針で、西興部小学校に非常用発電機を購入するなど、災害機能を併せもつ施設整備を行う方針を示した。小学校英語教科の充実に向け、A...

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札幌市教委の教員長期社会体験研修 東苗穂小・奈良岡教諭 コンサドーレでの1年間を振り返る 地域密着の姿勢、スピード感学ぶ

札幌市教委長期社会体験研修  札幌市教委が実施している教員長期社会体験研修。本年度は、東苗穂小学校の奈良岡学教諭が約一年間にわたって、プロサッカークラブの㈱コンサドーレで研修してきた。試合の広報や選手の学校訪問の日程調...

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上砂川町31年度教育行政執行方針 新たにCS設置へ 公設塾 対象広げ毎週開設

上砂川町飯山重信  【岩見沢発】上砂川町教委の飯山重信教育長は、三十一年度教育行政執行方針で、コミュニティ・スクールを新たに設置する考えを示した。公設学習塾については、小学五・六年生および中学生としていた対象...

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音威子府村31年度教育行政執行方針 高校の生徒確保へ取組 小学校に学習支援員など

音威子府髙曽根誠  【旭川発】音威子府村教委の髙曽根誠教育長は三十一年度教育行政執行方針で、おといねっぷ美術工芸高校が新たに、全国から生徒募集している地方の公立高校で組織する「地域みらい留学協議会」に加盟し、...

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幌加内町31年度教育行政執行方針 専門家による心のケア推進 関係機関連携で教育振興

幌加内町小野田倫久  【旭川発】幌加内町教委の小野田倫久教育長は三十一年度教育行政執行方針で、幌加内高校について生徒個々の様々な問題に対応するため、社会福祉の専門家や、臨床心理士による心のケアに関する総合的な対...

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占冠村31年度教育行政執行方針 一貫性ある授業実現へ 小学校高学年に教科担任制

占冠村藤本武  【旭川発】占冠村教委の藤本武教育長は三十一年度教育行政執行方針で、小学校高学年教科担任制や中学校教員による小学校への乗り入れ授業を進めることを示した。義務教育九年間を見通した一貫性のある授...

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下川町31年度教育行政執行方針 ICT活用で環境整備 森林環境教育など推進

下川町松野尾道雄  【旭川発】下川町教委の松野尾道雄教育長は三十一年度教育行政執行方針で、ICTを活用した学習環境の整備をはじめ、国際理解教育推進のための家庭学習や、森林環境教育などを充実させていく方針を示し...

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