子に寄り添う環境を整備 北教組・信岡中央執行委員長あいさつ(関係団体 2019-06-20付)
信岡聡中央執行委員長
北教組の第130回定期大会(17~18日、札幌市内の北海道教育会館)における信岡聡中央執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。
5月10日、消費税増税を財源に幼児教育・保育、高等教育の無償化と銘打って、改正「子ども・子育て支援法、大学修学支援法」が可決された。
しかし、待機児童解消や保育園の定員増をあと回しにし、修学金の支援対象や要件も極めて限定されていることなど、憲法26条が保障する「すべての子どもの学ぶ権利」や「教育の機会均等」を保障するものではない。真の無償化とはかけ離れた偽看板で、改憲のための呼び水である。
そもそも憲法26条2項は、「義務教育はこれを無償とする」と定めているが、現実は、教材費や給食費、修学旅行費など保護者に大きな負担を強いている。まずは、義務教育段階の膨大な保護者負担を無償化した上で、幼・保や大学教育の無償化を実現すべきであり、本末転倒である。
ことし1月に出された超勤・多忙化解消に向けた中教審答申は、私たちが求めてきた「給特法」廃止・見直しをはじめとした法整備や一人の教員の持ち授業時間数削減に向けた定数改善など抜本的な改革を先送りした。
業務の効率化と勤務時間管理に重点が置かれた時間外勤務の上限を45時間とする文科省「ガイドライン」と、労基法の趣旨をさらに逸脱させる「1年単位の変形労働時間」導入を可能とするもので、多忙化を一層加速させかねない。
その根底には、改訂学習指導要領に基づく差別・選別の国のための教育の徹底と財政論を最優先し、教育現場の実情を顧みない、日教組敵視の政権の姿勢がある。
私たちは、競争と管理の「政策」に対峙し、子どもたちの豊かな教育を培うため民主的な職場づくりと自主編成を強化するとともに、一方的な国の制度変更を許さず、抜本的な勤務・教育条件の改善を要求し、引き続き全国的な運動を強化していかなければならない。
今、子どもたちが犠牲となる事件が相次いでいる。子どもたちの命が失われた事実は重く、命と安全を守り、一人ひとりの子どもに寄り添う環境整備を社会全体で進めることが急務である。
一方で、川崎市の殺傷事件のあと、「死にたいなら一人で死ね」いう非難に対し、「控えてほしい」「社会はあなたを大事にしているし、何かができるかもしれない。社会はあなたの命を軽視していないし、死んでほしいと思っている人間などいない」というメッセージこそ必要だと警鐘を鳴らした、生活困窮者の支援を行うNPO代表の発信が注目を集めた。
事件を繰り返さないためには、社会から阻害された人々を突き放すのではなく、むしろ、彼らの尊厳を大切に思っていると社会がメッセージを出すことの重要性を指摘している。
今、自由競争と自己責任に基づく政府の政策によって、財界や強いもののための社会がつくられ、「頑張っても報われない」深刻な貧困と格差がさらに広がっている。アンダークラスと言われる非正規労働者が928万人存在し、平均個人年収は186万円、就業者の14・9%を占めるなど、格差社会が一層拡大し階級社会となっている報告がされている。
憲法で保障されている働く権利や最低限の生存権が侵害され、将来に対する絶望感や閉塞感がまん延し、社会とつながりが絶たれ、苦しむ者が増え続けている。私たちは、現在の社会・経済・政治状況を厳しく問い直し、根強い自己責任論を排し、働くことの価値と尊厳が保障され、「誰一人取り残さない」共生と連帯、多様性と包摂性のある社会に変えていく取組を進めなければならない。
子どもたちも、格差社会の中で、将来の希望さえ家庭の経済状況に左右され、多くの子どもは学校を卒業しても働く場がないなど、努力しても報われない不安感をもちながら学校生活を過ごしている。
こうした社会状況と子どもたちの要求とかい離した競争と管理の教育政策によって、子どもたちは孤立・分断化され、排他的な競争意識や自他への不信感を拡大させ、学習離れが一層進み、いじめ・暴力・不登校・引きこもり、自殺など様々な形で大人に苦悩を発信している。
人は自分を愛せなくなれば、他人や世界も意味を失い、道徳も倫理も底が抜けてしまう。私たちは、現在の社会状況と密接に関係する子どもたちの現実をしっかりと受け止め、誰もが、自分を愛する心を育み、夢や希望をもって生きていけるよう、将来の主権者たる子どもたちの教育とそのための社会づくりを進めていかなければならない。
2019・2020年度の運動課題について。
課題の第1は、改憲発議を断じて許さず、平和憲法を守り、民主主義を取り戻すため対話を基盤とした道民運動を強化すること。第2に、超勤・多忙化解消を目指し、給特法廃止・見直しや定数改善など抜本的な勤務・教育条件改善を進めること。第3に、改訂学習指導要領に対峙し、人権や民主主義を根づかせる主権者を育む実践を強化すること。第4に、北教組の運動と組合参加の意義を伝え、連帯する取組を通して、若い教職員の加入拡大につなげることである。
(関係団体 2019-06-20付)
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