道高校長協会等の2年度文教施策要望
(関係団体 2019-08-02付)

 道高校長協会(宮下聡会長)、道高校教頭・副校長会(鈴木浩会長)、道公立学校事務長会(坂井秀昭会長)が道教委に提出した令和2年度文教施策に関する要望内容はつぎのとおり。

Ⅰ 教育にかかる制度と課題

1 学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」〈重点〉

 「北海道アクション・プラン」の理念を具現化するため、勤務時間の把握については、出退勤管理システム対照実験における実証結果を踏まえ、学校職員の負担にならないシステムの導入を要望する。

 また、部活動指導員を積極的に配置するとともに、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、特別支援教育支援員など専門スタッフをより積極的に配置することを要望する。

 さらに、調査等を精選・削減し、事務作業の負担を軽減することを要望する。

2 学校職員人事評価制度〈重点〉

 学校職員人事評価制度については、実施状況や目的の達成状況などを検証し、一層の改善を図ることを要望する。

 また、市町村立学校への派遣職員の扱いについて、制度の周知に努めるよう要望する。

3 校務支援システム〈重点〉

 校務支援システムについては、大学入試制度改革に伴う対応が必要なことから、調査書等の様式変更や電子化に向けた改修の方針およびスケジュールを明確にし、スピード感をもって対応するよう要望する。

4 学校事務の改善〈重点〉

 道立学校の事務改善について、道立学校運営支援室および教職員事務センターに集約した業務の状況や集約効果、課題などの検証を行い、事務処理方法や事務職員の配置の改善を図ることを要望する。

5 特別支援教育の推進〈重点〉

 高校における特別支援教育を充実させるため、特別支援教育支援員の拡充や「通級による指導」の実施が必要な学校には、専門的な知識・技能を有する教員の加配など指導体制の充実を図ることを要望する。

6 生徒指導の充実〈重点〉

 不安やストレスに伴う不登校、薬物等の乱用、性の逸脱行為等が問題となり、生徒の心の健康管理が一層重要になっていることから、スクールカウンセラーの配置拡充を要望する。

 また、問題行動にかかわる背景の複雑化と問題の多様化にともなって、関係機関との連携が強く求められることから、スクールソーシャルワーカーの派遣の充実を図ることを要望する。

7 部活動によるスポーツや芸術文化活動の充実〈重点〉

 これまで部活動が果たしてきた人間教育の役割を重視し、引き続き、社会をたくましく生きるための心身の健康や豊かな心を育むため、財政的な支援や指導者の養成・確保・配置、施設・設備の充実、「北海道アクション・プラン」を踏まえた地域と連携した支援等を推進することを要望する。

 また、「北海道の部活動の在り方に関する方針」を踏まえ、学校の実情に即した部活動指導員の配置を要望する。

 さらに、華道・茶道など日本の伝統的な文化にかかる部活動指導員の任用について、特段の配慮を要望する。

8 学校図書館の充実

 豊かな人間性を形成する場としての学校図書館の充実を図るため、改正学校図書館法の趣旨を踏まえ、学校司書の配置について計画的に進めることを要望する。

9 産業教育の充実〈重点〉

 道産業教育審議会建議「本道におけるグローバル人材の育成に向けた産業教育の在り方について」を踏まえ、学校が社会と円滑に接続し、グローバル社会に対応できる資質・能力を育成できるよう、時代に即応した学科転換や教員研修の充実、施設・設備の更新によって、専門教育、職業教育の充実をより一層推進することを要望する。

10  定通教育の充実

 定時制通信制高校については、教育条件の充実に向けた施策を推進することを要望する。

 特に、通信制については、協力校の小規模化が進行する中、協力校体制の維持・向上に向け、協力校配置の見直しを図ることを要望する。

 また、各校の実情に合った地方指導員の配置や面接指導講師の確保に十分配慮することを要望する。

11  民間の英語資格・検定試験導入の対応

 大学入試制度改革に伴う民間の英語資格・検定試験について、都市部以外の生徒が不利にならないよう、最大限に支援することを要望する。

Ⅱ 施設・設備

1 老朽施設・設備の整備

 生徒・職員の安全確保を図るため、老朽化の著しい校舎の整備、補修、大規模改造、改築や武道場の暖房等の整備を着実に進めることを要望する。

 特に、緊急を要する施設・設備の改修・補修等に関しては、早急に予算措置することを要望する。

2 教育の情報化のための環境整備〈重点〉

 北海道の広域性や小規模校の実情を踏まえ、遠隔授業等の円滑な実施と拡充を図るほか、校内LANの管理やセキュリティ対策、機器のメンテナンスなどを担う専門的スキルを有するICT支援員を配置することを要望する。

 また、教育の情報化を推進するため、ハードウェアおよびソフトウェアについて、計画的な予算の確保と無線LAN環境やタブレット端末、プロジェクター、電子黒板など時代に即した環境整備・充実を図ることを要望する。

3 生徒の安全確保

 外部の危険から生徒の安全を確保し、不審者等へ対応するため、防犯カメラの設置など施設・設備の整備について適切な対策を講じることを要望する。

4 非常災害への対応

 非常災害に対応するための一層の環境整備については、非常時に使用可能な通信手段の確保および学校が機能するために必要な備蓄・整備の推進について、市町村と連携しながら適切な対策を引き続き講じることを要望する。

5 寄宿舎等へのAED設置

 生命にかかわるような事態に迅速に対処することのできる危機管理体制を構築するため、必要とされる場所、特に生徒が日常的に生活を送る寄宿舎においてAEDを設置することを要望する。

Ⅲ 学校運営費等について

1 学校運営費の増額および配分〈重点〉

 適正かつ円滑な学校運営のため、学校運営費の増額を図るとともに、学校・学科の実態や特色に即した教育活動の予算措置に配慮することを要望する。

2(1) 普通旅費および研修旅費の確保

 教職員の研修旅費、新規学卒者求人確保対策費(旅費)等を引き続き確保することを要望する。

2(2) 修学旅行引率旅費等について〈重点〉

 保護者の負担軽減の観点から、貸切バスなど各種料金の大幅値上がりや地域の交通事情を踏まえた予算を確保することを要望する。

 また、配分基準教員数の激変緩和措置を継続するための予算を確保することや特別な配慮が必要な生徒の引率にかかる教員の増員など学校事情に引き続き対応することを要望する。

3 公費負担による口座振替

 学校徴収金や団体会計については、公費に準じた取扱いになっていることから、金銭事故防止および学校事務の効率化の観点からも、引き続き公費負担による口座振替を実施することを要望する。

4 道高校奨学会奨学金の支給方式

 道高校奨学会奨学金について、学校の事務負担軽減のため、直接、奨学会から支給する方式を取り入れるよう、奨学会に働きかけることを要望する。

5 高校体育・文化活動への道費補助

 体育・文化活動振興のため、高体連・高文連・定通体連に対する補助金の増額を図ることを要望する。

 また、事務局体制の維持について、引き続き特段の配慮を要望する。

Ⅳ 教職員関係について

1(1) 教職員加配の弾力的な運用と拡充〈重点〉

 学校や生徒の実態に即し、創意工夫を生かした学校改善、研究指定校事業の取組の充実、学習指導・生徒指導の質の向上、特別支援教育への対応などに積極的に取り組めるよう、国の教職員加配に加え、道独自の加配など、弾力的な運用と拡充を図ることを要望する。

1(2) 講師時間数増と配当時数の弾力化〈重点〉

 生徒の実態に応じて多様な選択教科・科目を履修させ、生徒と向き合う時間を確保するため、学校の実情に十分配慮して講師時間数を増やすとともに、3間口以下の学校についても、間口数や学校の実態に応じた講師時間数の配当を図ることを要望する。

1(3) 外部講師等の確保

 ALTの配置を含む外国人講師の拡大および民間非常勤講師の時間数確保について配慮することを要望する。

1(4) 学校間連携の拡大と制度の周知

 小規模校化が進んでいる本道の高校における教育活動の活性化と充実を図るため、市町村立高校への学校間連携の拡大を要望する。

 また、それにかかわる制度と教員の職務などについて周知することを要望する。

2(1) 教職員の人事〈重点〉

 人事異動要綱・実施要領については、長年勤務、都市部・郡部間の教員構成の不均衡、定年延長や再任用など様々な課題の解決に向け、確かな運用を要望する。

2(2) 行政職員にかかる人事

 行政職員については、業務の円滑な遂行と相互牽制の確保のため、事務長および事務主任を全校に配置するとともに、都市部・郡部間の異動を促進することを要望する。

2(3) 管理職にかかる人事〈重点〉

ア 減少している教頭等の候補者を確保するため、待遇改善や特殊事情による勤務地への配慮など具体的かつ実効性のある方策を早急に検討することを要望する。

イ 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく特定事業主行動計画」に基づき、女性管理職のために人事上配慮をするなど、引き続き条件整備を進めることを要望する。

ウ 副校長の配置については、学校組織運営体制の一層の充実を図る観点から、支部長校をはじめ、学校の実情に応じて、加配として配置することを要望する。

2(4) 主幹教諭配置にかかる講師時間数の配分

 主幹教諭の授業担当時間数を軽減するために、講師時間数を配分することを要望する。

2(5) 新採用者の確保〈重点〉

ア 教員希望者の減少や採用登録辞退者の増加を踏まえ、優れた人材を確保するため、北海道の教育や教職の魅力を効果的に発信するとともに、採用決定時期を早めることや待遇改善など具体的かつ実効性のある方策を講じることを要望する。

イ 職業学科の実習を担当する実習助手の採用について、専門性(知識・技術・技能)を有する者の確保に、引き続き十分配慮することを要望する。

2(6) 教科「看護」「福祉」「芸術」「家庭」「情報」の教員配置にかかる人事

 教科「看護」および「福祉」「芸術」「家庭」「情報」の教員配置については、地域や学校の実情を考慮の上、教員の確保、積極的な任用、他校との兼務のための条件整備および特別免許状制度の活用など、特段の方策を講じることを要望する。

2(7) 再任用にかかる人事

 再任用教員にかかる人事については、学校運営や教育活動の活性化および都市部・郡部間の異動促進の観点から、運用上の課題を検証し、必要な改善を図ることを要望する。

2(8) 正規採用者および期限付教諭の確保〈重点〉

 期限付教諭については、年間を通じてその確保が困難な状況にあり、学校運営に大きな支障が生じる事案が増えていることから、全日制市町村立学校の期限付教諭にも特別選考の受験資格を与えるなど、正規採用を確保するための方策を講じることを要望する。

 また、教職を目指す者に対し期限付教員として勤務することの利点をホームページ等で丁寧に周知するなど、引き続き募集の充実を図り、時期を問わず確実に人材を確保することを要望する。

3(1) 研修の充実強化

 高度情報化や科学技術の進展に対応する産業教育研修や新学習指導要領に対応する研修、生徒の心のケアに実践的に対応できる教育相談研修、新採用実習助手にかかる実技研修など、教職員の専門性を高める研修の充実に努めることを要望する。

 また、英語の授業について、いわゆるオールイングリッシュでの授業を推進し発表・討論・交渉等の高度な言語活動を行うことができるよう、研修機会の拡充に努めることを要望する。

3(2) これからの時代に求められる資質・能力を育むための研修

 「主体的・対話的で深い学び」の観点からの授業改善、ICT活用など学力向上に関する諸課題に対応した研修の拡充を図ることを要望する。

3(3) 特別支援教育に関する研修

 特別支援教育に関する校種間の連携の在り方を含めた実践的な研修を繰り返し実施するとともに、特別な配慮を必要とする生徒一人ひとりのニーズに応じた個別支援を充実させるための研修等の施策を講じることを要望する。

 また、高校における通級による指導の導入に関する研修をより一層推進することを要望する。

3(4) 行政職員の研修

 学校事務体制の維持と事務職員の資質向上に関する事務主任・事務職員・職務換職員の階層別研修の実施および研修機会の確保と実務研修の充実を図ることを要望する。

4(1) 再任用職員の待遇改善

 本道の広域性や再任用制度の趣旨を踏まえ、再任用職員にへき地手当、寒冷地手当等を支給することを要望する。

4(2) 舎監等の待遇改善

 寄宿舎を有する学校教職員の業務が過重であることから、舎監の増員および農業経営者育成寮の寄宿舎指導員の配置等の過重負担軽減措置の改善を進めることを要望する。

4(3) 公宅の改築・補修等

 老朽化した公宅の改築や補修の一層の促進を図るとともに、地域の実情に応じて改築・改修年限の短縮措置を講じるなど、特に郡部の住環境を改善することを要望する。

5 変形労働時間制の期間の拡大

 対象業務の拡大とともに、変形労働時間制度における4週の期間を拡大し、より趣旨が生かされるよう要望する。

(関係団体 2019-08-02付)

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