道都市教委連等文教要望への道教委回答〈下〉 一体の取組で学力向上 幼児教育無償化財源確保を要望
(道・道教委 2019-12-10付)

 道都市教育委員会連絡協議会(長谷川雅英会長)と道都市教育長会(同)が道教委に提出した令和2年度文教施策要望に対する、道教委の回答はつぎのとおり。

▼学校教育の振興充実

(1)義務教育費国庫負担制度の維持

 道教委としては、義務教育費国庫負担制度は、義務教育の根幹をなすものであり、国の責務において確実に財源を保障するべきものと考え、これまでも国に対して全国都道府県教育長協議会や教育委員協議会を通して必要な財源が確保されるよう要望を行ってきており、今後とも、引き続き国に働きかけるとともに、知事部局とも連携し、必要な財源の確保に努めていきたい。

(2)全国学力・学習状況調査等の学力向上策の推進―重点(新規)

 道教委では、できるだけきめ細かく分かりやすい調査結果を示す観点から、報告書の内容について不断の工夫改善を行っている。

 平成26年度からは、市町村教委がこれまで取り組んできた施策等の成果として、教科や質問紙のデータや分析結果、今後、重点的に推進する施策等を掲載するなどの改善を加え、市町村の成果や課題が明らかになるよう工夫した。

 また、29年度からは、教育委員会や学校が実効性のある学力向上の取組を検討する際に活用できるよう、学校が調査結果を分析し授業改善に活用する事例などを掲載した資料編を作成し、学校の実態に合った改善策を講じることができるよう支援している。

 中学校英語「話すこと」調査については、国では、次回、令和4年度の実施を予定しており、今回の調査の検証結果を踏まえて調査方法などを検討することとしている。道教委では、国の動向に注視しながら対応していく。

 ほっかいどう学力・体力向上運動については、本道の子どもたちに望ましい学習習慣を身に付けさせることをねらいとした保護者向けリーフレットの作成・配布などに取り組んできており、今後も多くの方々の協力を得ながら、学校・家庭・地域・行政が一体となった取組を推進していく。

 道教委では、今後も、市町村教委と意見交換を行うなど密接に連携を図るとともに、より一層、きめ細かな分析に取り組み、市町村教委や学校の取組がさらに充実するよう工夫していくので、支援をお願いする。

(3)就学援助の財源措置拡充―重点

 道教委では、市町村が必要な就学援助を行えるよう、補助金や交付税の財源措置の拡充についてこれまでも国に要望しているが、市町村の認定要件や援助項目に違いがあることから、国においてガイドラインを策定することや、生活保護基準の見直しに伴い、2年度以降の就学援助に影響が出ないよう財源措置することなどについて、引き続き要望していきたい。

(4)幼児教育無償化の適正実施

 幼児教育の無償化の実施に当たっては、すべての子どもが良質で適切な教育を受けるとともに、保護者の経済的な負担が軽減されるよう、また、新たに地方負担を生じさせることがないよう、関係部と連携し、国に対し、必要な財源の確保について、要望していきたい。

(5)中学校の全道大会・全国大会に対する引率教員の旅費の充実

 道教委では、昭和56年度から日本中学校体育連盟が主催する全国中学校体育大会にかかる引率旅費を措置してきた。平成25年度からは、10人以上の生徒を引率する場合、引率者1人の加算ができるよう改善した。

 また、道中学校体育連盟が主催する地区大会(地域およびブロック大会も含む)にかかる引率旅費についても、25年度から新たに全国大会同様の措置をしてきた。

 全道大会の引率旅費の措置については、厳しい道財政の状況から難しいと考えているが、運動部活動の在り方に関する今後の国の動向等を注視しながら、引き続き検討していきたい。

 さらに、文化的諸行事の全道大会・全国大会の部活動引率旅費については、中学校文化連盟の組織化の進展状況などを注視しながら、検討していきたい。

(6)生徒指導旅費等の十分な確保

 生徒指導旅費については、家庭訪問や校外指導など生徒指導を行う際の旅費として予算措置しており、配分された旅費を超えて対応しなければならない事案が生じた場合は、必要に応じて市町村や学校に配分された旅費全体の範囲内で調整を行うなど、弾力的な運用をすることとしている。

 厳しい財政状況にあるが、引き続き予算の確保に向け努力していきたい。

(7)校外学習指導旅費の十分な確保

 各学校における校外学習指導がより円滑に実施されるよう、学校の実態の把握に努めるとともに、厳しい財政状況にあるが、引き続き必要な予算の確保に努めていきたい。

(8)教職員の研究会・研修会にかかる旅費の十分な確保

 教職員の研究会・研修会などへの出席旅費については、これまで自主的・主体的な研修活動や学校の研究課題にかかわる調査研究を奨励するため、校内教職員研修促進費を予算措置してきた。

 24年度からは、学校の小規模化の問題に対応するため、事業名を校内・地域教職員研修促進費に変更し、複数の学校が合同で研修を行うことができる地域連携研修を実施するとともに、26年度からは、新たに特別支援学校を対象とするなどして、拡充してきた。

 道の財政は厳しい状況にあるが、引き続き必要な予算の確保に努めていきたい。

(9)へき地児童生徒援助費のスクールバス・ボート購入費の補助拡充

 スクールバス購入費の補助限度額の引き上げや通学距離要件等補助要件の見直しを行い、児童生徒の通学手段を確保するための施策を充実するよう、引き続き国に要望していきたい。

 また、スクールバスの運営費に対する国庫補助金制度の新設については、実現が極めて難しい状況にあると思われるが、道教委としては、今後の推移を注視しながら対応していきたい。

(10)学校におけるNHK放送受信料の免除措置の継続

 日本放送協会(NHK)の放送受信料の免除措置については、義務教育諸学校における教育内容の一層の充実・向上と放送教育の普及・拡大の観点から、これまで、国に対して要望してきている。

 今後とも、NHKの動向を注視しながら、引き続き国に対し、NHKへの働きかけについて要望していきたい。

(11)教育の情報化を着実に推進するための支援措置の拡充―重点

 教育の情報化については、国によって地方交付税措置されているが、道教委としては、必要な機器や支援体制の整備のための財源措置の拡充などについて、引き続き国に強く要望していきたい。

 学習者用のデジタル教科書については、学校所有の教具であり、費用は設置者が負担するとされているが、要望内容については、国に伝えていきたい。

(12)地域にとって重要な役割を果たしている小規模高校の存続

 道教委では、これからの高校づくりに関する指針に基づき、地域ごとの特性や実情なども十分考慮し、地域の方々から幅広く意見を伺いながら適切な高校配置に努めている。

 職業学科については、地域の産業構造や特色、高校が地域で果たしている役割などを踏まえ、地域の産業を担う人材の育成などの観点から、配置計画を検討していく。

 小規模の高校は、生徒の多様な学習ニーズや進路選択に対応するため、遠隔システムを活用するなどして教育環境の維持・充実を図るとともに、地域の人材や自然、産業などの資源を活用した教育活動を推進するなど、地域との連携を密にしながら、魅力ある高校となるよう取り組んでいる。

 今後とも、地域の理解や協力を得ながら、生徒が持続可能な社会の創り手となり、地域の活性化を担っていくために必要な力を育むことができる高校づくりに努めていく。

(13)高校生徒遠距離通学費等補助事業の充実および拡大

 通学費等補助制度は、道立高校の募集停止に伴う進路変更や通学費負担等の増加など、学習環境の激変を緩和する観点から創設したものであり、従来から高校のない地域との均衡にも考慮し、補助期間を5年としている。

 このような制度の趣旨を考慮すると、補助期間の延長は難しいものと考えているが、地域別検討協議会などでの要望を踏まえ、控除額を引き下げて1万円を超える額を補助することとしたほか、月ごとに補助金の支払いができるよう、改善してきている。

 また、この制度の対象となる地域の生徒に対しては、公立高校生徒奨学金によって、通学費等補助の補助期間終了後においても、期限を設けずに、貸付限度額の引き上げを行っており、こうした制度の周知も図り、生徒の修学機会の確保に努めていく。

(14)北方領土問題に関する学習の充実

 北方領土に関する学習を一層充実するため、学習指導要領に北方領土に関する内容をさらに具体的に記述するよう、これまでも国に要望しており、引き続き要望していきたい。

(15)教育目的で利用する貸切バスの確保および補助の新設

 教育目的で利用する貸切バスの借上料に対する国庫補助金制度の新設については、実現が極めて難しい状況にあると思われるが、道教委としては、今後の推移を注視しながら対応していきたい。

 また、貸切バスの台数確保の改善については、関係部局に要望の趣旨を伝えていきたい。

▼学校安全、学校保健および学校給食の振興充実

(1)学校の安全体制強化

 児童に対する事件・事故被害の未然防止に関する教育については、各学校が児童に対し、安全に関する知識を身に付けさせる際に活用する『安全教育実践事例集』の作成や、道教委のホームページへの掲載、地域住民等と連携し、学校の安全管理体制のモデルを示した道実践的安全教育モデルを作成・配布するなど、防犯教育を含む安全教育の充実に努めるとともに、すべての管内において学校安全推進会議を開催し、地域ぐるみで児童に対する犯罪被害の防止の具体的な方策などについて共通理解を図っている。

 また、スクールガード・リーダーの確保や養成、学校支援のボランティアの協力を得た見守り活動等による児童の安全を見守る体制の拡充や、警察等の関係機関との連携による児童の安全確保の徹底が図られるよう取り組んでいる。

 登下校時間帯の通学路における警察などのパトロール強化については、これまでも各種会議などの場を通じて、道警や関係団体などに対して、通学路の巡回パトロールや街頭活動の強化の働きかけを行ってきており、今後も継続していく。

(2)教育情報分野におけるセキュリティクラウドの構築

 知事部局と首長部局において運用されている自治体情報セキュリティクラウドは、マイナンバー制度の導入およびその重大リスクを回避するため、国が補助金を創設して全国的に整備を進めたという経緯があり、こうした事情を踏まえれば、道単独で教育情報分野における同様のシステムを構築することは現時点では難しい。

 現在、国では、6月末に取りまとめた新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)の中で、パブリッククラウドの教育分野での活用について、教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの改定など、必要な対応を検討することとしている。

 道教委としては、道の情報政策課とも連携しながら、国の動向を注視しつつ今後の対応を検討していきたい。

(3)携帯電話やインターネットの利用による有害情報や被害から子どもを守る取組の推進―重点

 啓発活動については、学校における情報モラル教育の充実はもとより、年に数回、教職員・保護者向けの啓発資料と児童生徒向けの啓発資料を作成し、道内すべての公立学校へ送付するとともに、道教委のWebページへ掲載するなど、ネットトラブルの未然防止に努めてきた。

 また、ポスターとリーフレットを作成し、道内すべての公立学校および大手携帯電話会社や大手スーパーマーケットの協力を得て、店頭などに掲示したほか、フットサルやバスケットボールの札幌のプロスポーツチームと連携し、ホームゲームにおいて来場者にリーフレットを配布する啓発活動を行ってきた。

 さらに、前年度は、映画会社とタイアップしたポスターを作成し、公立学校をはじめ、道立の教育施設への掲示も行った。

 情報モラルに関する指導者等の養成については、各管内でネットパトロール講習会や保護者向け学習会を実施するとともに、教員や指導主事をそれらの研修会の講師として養成するため、指導者養成研修会を毎年6月に実施している。

 有害情報に対するフィルタリング利用の促進については、これまで道および道警と連携し、電気通信事業者に対し、要請訪問を行ってきた。

 法整備にかかる国への要望については、これまでも、有害情報や犯罪被害・トラブルから子どもを守るために学校のネットパトロールを支援する事業の拡充や電気通信事業者にとどまらず、インターネットに接続可能な機器に対するフィルタリングサービスの提供義務の対象範囲の拡大など、法的規制について、国に対して働きかけてきたが、従来の方法では監視できないSNSなどにおけるネットトラブルの防止対策についても要望していきたい。

(4)フッ化物洗口にかかる経費負担

 フッ化物洗口については、道歯・口腔の健康づくり8020推進条例等に基づき、児童生徒にかかる歯・口腔の健康づくりの推進を図るため、1校でも多くの学校等で実施されるよう、市町村教委へ協力をお願いしてきた。

 また、未実施市町村における円滑な導入の支援の一環として、知事部局と連携し、25年度からは、都市教委連などの要望を受け、新規にフッ化物洗口を実施する公立の学校等に対して、初年度分の薬剤支援を行っている。

 道教委としては、今後も知事部局と連携し、新規にフッ化物洗口を実施する学校等への負担軽減措置について検討していきたい。

(5)学校給食施設・設備にかかる交付金等の充実改善―重点

 学校給食施設・設備については、ドライシステム化の整備等にかかる施策の充実や給食設備の更新にかかる補助制度の創設について、引き続き、国に要望していきたい。

 また、学校施設環境改善交付金の26年度事業実施分から、基準面積および建築単価の改定、学校給食におけるアレルギー対応のためアレルギー対策室をドライシステムによって新増改築する事業が創設されており、より実工事費に近い交付金制度に改善されていると考えているが、引き続き、各市町村における事業活用にかかる状況や課題を把握していきたい。

 なお、現在、市町村、一部事務組合などの共同調理場の整備は、道地域づくり総合交付金の対象事業となっていないが、合併市町村が共同調理場を整備する場合で、各総合振興局・振興局が特に必要と認める事業については、交付金事業の対象になっている。

(6)栄養教諭の定数改善および旅費等の予算の確保―重点

 道教委では、これまでも、栄養教諭を中心として、児童生徒により安全で安心な給食を提供するとともに、食に関する指導の充実が図られるよう、食物アレルギー等の児童生徒にかかる情報共有や個別指導、また、地域の自然や文化、産業等に理解を深め、食への感謝の念を育むための地場産物の活用など、学校、家庭、地域が連携した食育の推進に取り組んでいる。

 現行の基準以上に栄養教諭を配置し、こうした取組を一層充実させるためには、国の新たな定数改善が必要であると考えており、今後とも、全国都道府県教委連などとも連携しながら、栄養教諭等の定数措置の拡充について、国に対し強く要望していきたい。

 また、栄養教諭の食に関する指導に要する旅費については、栄養教諭の配置校・共同調理場間の距離、移動方法などの状況を把握し、所要の措置を講じている。引き続き予算の確保に努めたい。

(7)給食にかかる助成制度の拡充

 道教委では、学校給食用物資の安定的供給にかかる補助制度の充実について、引き続き国に要望していきたい。

(8)食物アレルギー対応食の提供等に必要な学校生活管理指導表の文書料にかかる補助制度の創設―重点

 学校給食におけるアレルギー対応について、就学援助が必要な児童生徒への学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)の作成などに要する経費の財政措置を、引き続き国に要望していきたい。

▼その他文教施策の充実

(1)国指定文化財の保存管理費用に対する助成拡大

 国庫補助事業の対象の拡充については、これまでも道の国の施策および予算に関する提案・要望において、要望してきた。引き続き、国に要望していきたい。

 史跡の維持管理については、面積にかかわらず一律に特別交付税が措置(1件につき年間62万円から113万円が交付)されているが、要望の趣旨を踏まえ、国に働きかけていきたい。

 記念物にかかる国庫補助事業の補助率引き上げについても、国に働きかけたい。

(2)道立図書館の図書資料費の確保

 道立図書館では、道内図書館網のセンターとして、市町村立図書館や学校図書館への協力貸出しなどの支援、利用者へのインターネット予約貸出しを行うとともに、道民カレッジ連携講座や市町村立図書館職員等を対象とする研修事業などを行っている。

 道財政が厳しい状況にあるが、今後も道民や市町村立図書館などからの要望に応えられるよう、図書資料の整備充実等に努めていきたい。

(3)社会教育施設の改修にかかる補助制度の創設

 道教委としては、社会教育施設の現状等を踏まえ、引き続き、全国都道府県教委連と連携を図りながら、社会教育施設の改修にかかる補助制度の創設などについて、国に要望していきたい。

(4)へき地等学校の級別指定にかかる基準の改正

 へき地等学校の級別区分については、へき地教育振興法施行規則で定める基準に基づき、その学校等のへき地性を基準点数および調整点数によって点数化し、その合計点数に応じて決定することが基本とされており、28年1月1日に級別指定の見直しを行った。

 なお、現行の指定基準は、22年4月に施行されたへき地教育振興法施行規則の一部改正によって約20年ぶりに見直しが行われたものである。

 今後とも、国や他都府県の動向を注視し、社会・生活環境の変化に応じたへき地の相対的な格差を反映した基準となるよう、必要に応じて国への働きかけなどを検討していく。

(5)教育の事務の広域化にかかる運営体制の改善

 26年に改正された地方教育行政の組織および運営に関する法律では、地方公共団体の長が大綱の策定や総合教育会議の設置を行うこととされており、地方自治法上、地方公共団体の組合も地方公共団体の一つであることから、一部事務組合でも、その長(管理者)が、本法に基づき大綱を定め、総合教育会議を設置することとなる。

 地域住民の意向のより一層の反映や地方公共団体の長と教育委員会との連携の強化など、法改正の趣旨を踏まえ、適切な事務処理が図られるよう配慮いただきたい。

(6)地域学校協働活動の促進

 地域学校協働活動については、これまでも国に対し財源措置の拡充を要望してきている。今後とも全国都道府県教委連などとも連携しながら、国に要望していきたい。

(7)地方財政措置(光熱水費)の増額―重点(新規)

 単位費用精算基礎の内容では、光熱水費の金額が近年、減額していると推測される。

 国においては、公立小中学校等の冷房設備にかかる光熱水費として69億円程度を算定すると示したほか、基準財政需要額の算定方法を改正し、冷房設備の光熱水費その他の公立小中学校の運営等に要する経費の財源を充実するとした。

 道教委としては、今後の動向を注視しながら対応していきたい。

(道・道教委 2019-12-10付)

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