寄稿 主体的・対話的で深い学びの進め方 ワークシート活用呼びかけ 新型コロナ対応で道文教大の石垣教授
(コロナウイルス関連 2020-04-14付)

寄稿(図)
キーワード・短文まとめ・学習の振り返りシート(クリックすると拡大表示されます)

 道文教大学人間科学部子ども発達学科の石垣則昭教授は、主体的・対話的で深い学びの進め方について本紙に寄稿を寄せた。新型コロナウイルスの影響で学校における教育活動に課題がみられる中、「主体的・対話的で深い学びを進めることができないのではないか」との声に応えたもの。本紙で「教職員の協力を高める学校づくり」を連載している石垣教授は、ワークシートを活用した対話的学習の取組を提案している。

 新型コロナウイルスの影響で「主体的・対話的で深い学び」を進めることができないのでは?

 新型コロナウイルスの影響によって、児童生徒は、互いの健康維持のため、今まで以上に気配りをしなければならない毎日を過ごしていると思います。

 国から、3つの「密」(換気の悪い密閉空間、大勢がいる密集場所、身近で会話する密接場所)を避けるよう指針が出されています。

 このような状況の中、主体的・対話的で深い学びの「対話」は現状では不可能であり、一方的な授業を進めるしかないとの相談を受けています。また、一部では、本年度から順次、全面実施となる新学習指導要領の導入が延期となるなどの発言を耳にすることが少なくありません。

確かに学校は構造的に密集度が高く、学習の進め方に課題が残りますが、この現状を踏まえ、どのように主体的・対話的で深い学びを進めるのか、一例を説明します。

 まず、主体的・対話的で深い学びは目的論ではなく方法論であることをあらためて理解しなければなりません。方法であるから、何のためにこのような方法を取るのか、つまり「どのような子を育てたいのか」が出発点となります。

 文部科学省は、AIがますます加速する時代を受け、「子どもたちが、何を知っているかだけではなく、知っていることを使ってどのように社会・世界とかかわり、よりよい人生を送るか」を視点に示し、その方策が主体的・対話的で深い学びであり、学ぶ量だけではなく、質にも配慮すべきとしています。

 ここでいう学習の質とは、端的に述べると「思考力」を高めることを意味しています。思考力を高めるには、詰め込み式の授業ではなく、子どもたちが自ら考える授業をどう構築するかが課題とされ、その最良の方法として主体的・対話的で深い学びがあるのです。

 また、目的を達成するための方法ですので、工夫次第で多様な展開が可能です。さらに、方法にはガイダンス(子どもたちの自発的な発展を期しながら、一定の方向に導こうとする説明)が必要であり、子どもたちが学習の進め方を理解できていなければ、「対話」を単に導入しても、思考力は高まりません。思考力を高める工夫が必要です。

 残念ながら対話ができないので、新学習指導要領の実施は難しいとのとらえ方は主体的・対話的で深い学びを目的化していると考えられます。

 当然、直接的な対話は避けなければなりませんが、どのように授業を進めることが望ましいのでしょうか。

 思考力を高める対話活動をコミュニケーションでとらえると、対話は言語と非言語とに大別できます。言語とは文字どおり言葉のやり取りであり、非言語(ノンバーバルコミュニケーション)とは、身振り手振りなどの表現で意思疎通を図ることです。

 授業の子どもたち同士の対話は、言語による交流はせず、非言語によって学習を進めてはどうでしょうか。その代表的例がワークシートを活用した対話的な学習です。私が作成し、授業中、使用しているワークシートの改訂版を3つ紹介します。

 図1は、キーワードで交流し学習の気づきを広げ、深めるワークシートです。

 授業中の教師の説明や学習の内容のキーワードを、図1にある自分のキーワードまとめ欄に書き入れます。つぎに、学習協力者として2~4人程度で、それぞれが学んだキーワードをローテーションし、書き込んでもらいます(キーワードの書き込みは時間を制限し、前者が書いていない内容を可能な範囲で記載する)。

 最後に、自分がとらえたキーワードと、他者が書き込んでくれたキーワードを合わせ、学習欄に他者から得た内容を記入する方法です。

 学習のねらいに沿って、全員が理解すべき基礎的・基本的事項の定着に有効であり、学習のまとめの場面だけではなく、授業中の教師の説明後、課題や問題を解いたあとに活用できます。

 図2は、学習の要点を短文でまとめ、アドバイスし合うワークシートです。進め方は、キーワードまとめと同様ですが、記載者が書き込んだ短文に対するアドバイスを書き入れ、アドバイスによる気づきを、気づき欄に記入します。特に、問題の解き方や考え方を深める場合に有効であり、自分の考えの修正や付け足しなどができ、一人で学習を進めるより、効果的に学習することができます。

 図3は、学習の振り返りシートです。本時で身に付けるべき内容を、本時の学習目標欄に書き込ませ、終末の段階で、学習目標とした学習内容を、本時の学習の振り返り欄に手短に記入します(感想ではなく、目標に対して理解した内容やキーワードを記入する)。

 つぎにキーワードまとめと同様に交流し、学習振り返りについてアドバイスを記入します。学習アドバイス者は、感想を記入するのではなく、自身の振り返りには書かれているが、仲間の振り返りシートに書かれていない学習内容をコメントします。

 振り返りシートの活用は、学習の確かな積み重ねとなり、自分がとらえていない内容に気づくことができます。ワークシートへの書き込みには、やや時間を要しますが、簡易的に活用するなど実情に合わせて工夫し、主体的・対話的で深い学びの授業を進めていただければと考えています。

(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)

(コロナウイルス関連 2020-04-14付)

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