釧路市教委が標準学力検査結果公表 国語 小4~6目標値超 算数数学 小4・5で目標上回る
(市町村 2020-04-15付)

釧路市令和元年度標準学力検査結果
釧路市令和元年度標準学力検査結果(クリックすると拡大表示されます)

 【釧路発】釧路市教委は、令和元年度標準学力検査の結果と指導改善のポイントをまとめた。市内小学3~6年生、中学1・2年生の国語、算数・数学を対象に行ったもの。国語は小4~6、中1、算数・数学は小4・5で目標値を上回った。市教委は、教科ごとに全体の傾向を示した上で、今後の指導のポイントを提示。国語については「他教科との関連を図った取組」、算数・数学については「基礎的・基本的な知識・技能を定着させる取組」などを挙げている。

 市内の公立小学校全26校の3~6年生、中学校全15校の1・2年生を対象に、昨年12月、国語、算数・数学の2教科で実施した。

 指導改善ポイントの概要はつぎのとおり。

【国語】

▼全体としての傾向

 観点別平均正答率をみると、小学校では、ほとんどの観点で目標値を上回っている。中学校では、「話す・聞く能力」で目標値を上回っているが、「書く能力」では目標値との差が大きい。

 内容別正答率をみると、「話し合いの内容を聞き取る」や「漢字を読むこと」については、どの学年も目標値を上回るか、ほぼ同程度だった。また、「物語の内容を読み取る」や「文学作品の内容を読み取る」についても、どの学年も目標値を上回るか、ほぼ同程度だった。

 一方、「説明文の内容を読み取る」については、目標値をやや下回っている学年が多い。「作文」については、小3~5は目標値を上回っているが、小6と中1・2は目標値を下回っている。また、「書くこと」は、学年が上がるにつれて無解答率が高い傾向がある。

 「活用」に関する設問では、目標値を上回っているものが多い。

 しかし、記述で解答する設問については、どの学年も無解答率が高い傾向があり、文章や資料を読み、自分の考えをもつことや自分の考えを文章にまとめることを苦手としている児童生徒がいる。

▼今後の指導

 「書くこと」や「活用」に関する設問で無解答率が高いものを分析すると、「問題に書かれている情報や内容をとらえ、自分で整理すること」や「整理したことをもとに自分で考え、表現すること」などに要因があることが考えられ、「資料から必要な情報を取り出すこと」や「集めた情報から自分の考えを整理する(まとめる)こと」「いくつかの条件を踏まえて、書くこと」を苦手にしている児童生徒が多くいることがうかがえた。また、「説明文の読み取り」において、正答率が低い設問を分析しても、上記と同様の課題がみられた。

 そのため、指導に当たっては、つぎの4点の指導を充実させる必要がある。

▽「読むこと」と「書くこと」のつながりを意識した指導

▽児童生徒が自分の考えや立場を明確にし、言葉で説明する活動の充実

▽他教科との関連を図った取組の充実

▽書く活動の継続的な取組

【算数・数学】

▼全体としての傾向

 小学校算数では、すべてのカテゴリーで、概ね目標値と同程度か上回る結果となった。活用の力が伸びた一方、基礎的な力にやや落ちがみられたことは課題の一つと考えられる。

 中学校数学では、1・2年生ともに目標値を下回る結果となった。一層の授業改善と学習習慣の確立が必要となっている。

 観点別平均正答率では、小4で「算数・数学への関心・意欲・態度」「数量や図形についての知識・理解」で目標値を大きく上回った。また、全学年においても目標値と同程度または上回った。中1・2は「数量や図形についての知識・理解」で目標値に最も近づいた。

 同一集団の経年比較では、目標値との差を比べた場合、小学校では、すべての学年で前年までを上回る結果となったが、中学校は前年までを下回った。

▼今後の指導

 これまで、小・中学校いずれも、繰り返し取り組んでいる内容(計算技能等)や、知識や技能を問う問題については定着の度合いが高かったが、今回はやや課題となる傾向がみられた。

 分析の結果、早い時期に学習した内容や、難易度の高い学習内容を児童生徒にしっかり定着させるためには、繰り返し学習に取り組む場の設定や、環境整備が必要だといえる。

 具体的には、朝学習や放課後学習サポート等を活用し、知識や技能を定着・習熟させる学習などを日常的に行ったり、細分化して指導計画に組み入れたりすることなどが考えられる。

 また、算数・数学においては、依然として活用に課題がみられることから、授業の中で数学的活動を充実させ、主体的・対話的で深い学びを実現しながら、算数・数学科の目標を達成することが求められる。

 そのため、つぎに示すような視点に基づく日々の指導の充実を提唱する。

▽数学的活動を位置付け、「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業の充実

▽基礎的・基本的な知識・技能を定着させる取組

▽本時の目標が達成され、子どもが考え続けることができる授業へのブラッシュアップ

▽繰り返し学習する機会や学び直しの機会を意図的・計画的に設ける工夫

目標値

 学習指導要領に示された内容について標準的な時間をかけて学んだ場合,設問ごとに正答できることを期待した児童生徒の割合を示したものであり,検査問題を作成している業者によって設定されている。

◆小中の連続性の工夫を 検査結果に関し市教委委員が意見

 釧路市教委が公表した令和元年度標準学力検査結果について、1月に開かれた教育委員会会議で取り上げられ、各委員から意見が寄せられた。中学校の平均点が低い状況に対して、種村俊仁委員は「勉強に対するやる気を起こすような環境づくりが必要」と指摘。山口隆委員は「小中のギャップが生まれないような連続性の工夫を」と求めた。

 各委員の意見と市教委の回答の概要はつぎのとおり。

▼種村俊仁委員

 学力検査の結果については、小学校は平均点以上だが、中学校は平均点が途端に下がる状況となっている。中学校に入ってなぜ下がっていくかというと、高校の倍率、特に釧路あたりは倍率がない状況で、ほとんどの生徒が高校に入れてしまう。そのため、勉強に対するモチベーションが、中学校に入ってなくなるのではないか。

 中学校になると勉強が多少難しくなるので、モチベーションを保つことはとても大事な要素だ。それがなかなか起こらないとなれば、構造上に問題がある。

 例えば、もう少し倍率が高くなるような高校の配置など、いろいろなやり方があると思う。中学校でやる気を起こすような環境づくりを、ある程度構造的に変えていかなければならない気がする。

▼岡部義孝教育長

 高校については道教委の範ちゅうなので、市の教育委員会としては、かかわっていけないところはある。

▼山口隆委員

 小学校5、6年生のテストでは、ほとんどの子どもが80点以上取っているのが一般的なパターンだと思う。しかし、中学校の最初のテストで、小学校の点数よりもガクンと落ち込む子どもが結構多い。それをどのように子どもが受け止め、3年後の見通しをもつかというあたりで、かなりギャップが生まれる。

 昨年あたりから、小中合同の研修をやっているが、うまく小中をつなぐということで、とてもいい取組だ。

 そういった中で、ギャップが生まれないような連続性を工夫したら、もう少し中学1年生のモチベーションが違うのではないか。ここでつまずいたけれど、軌道修正しなければならない、という積極的な受け止め方ができるかもしれない。そのあたりをどうしたらよいのか、検討してもらいたい。

▼大山稔彦教育指導参事

 小中連携の部分だと、中学校に入学してすぐに実施する「お迎えテスト」の問題を小学6年生に冬休みに取り組ませ、中学校の問題はどれだけ難しいかを認識させた上で、春休みに宿題をもたせて中学校に提出させる、という取組をしている学校がある。そういうことを全市的に行うための仕組みづくりをしていかなければならない。

 例えばノーゲームデーの実施を呼びかける場合に、「すべての学校でやってほしい」と言うより、「1校1校に「やってほしい」と言った方が確実。とにかく統一して取り組む方向で少しずつ考えていきたい。

(市町村 2020-04-15付)

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