道教委 小玉教育長就任あいさつ 学び止めず 心近づけて チーム力で未来見据えた取組加速(あいさつ概要追記)(道・道教委 2020-05-07付)
道教委の小玉俊宏教育長は4月30日、道庁別館で道教委職員を前に就任あいさつを行った。学校の臨時休業下にある子どもたちのため「“学びを止めない、心が近づく環境”を整えることが重要」と強調。長期化する新型コロナウイルス感染症への対応が多様化・成熟化した社会経済システム、危機への対応力を高めることにつながるとし、チーム教育庁、チーム教育局としての連携を呼びかけた。また、AIが進化する時代を見据え「心の教育」の大切さを説いた。
あいさつは、遠隔システムを使い各教育局に配信。
小玉教育長は、教育を「多様な個性や能力を引き出し、開花させ、社会全体の発展を実現する基盤」とし、北海道の未来を創造する人材育成に努めていく考えを示した。
当面の課題として、新型コロナウイルスの感染拡大への対処を第一に挙げ、学校休業が続く中でも「“学びを止めない、心が近づく環境”を整えることが重要」と強調。子どもたちの学びの保障と心のケアのため、地域の実情に応じた熱意やアイデアを届けるよう呼びかけた。
AIの進化と労働人口の減少を見据え、業務省力化などIT化への対応の必要性を指摘。AIの進展に伴い、優しさ、癒し、格好良さなど、質の高さや多様性に強みをもつ商品・サービス・コンテンツなどを生む感性を育てる心の教育が重要になるとした。
業務遂行に当たっては、「ヘッドワーク」「フットワーク」「チームワーク」の3点を掲げ、未来を見据えた取組の加速化や関係機関との連携の一層の強化を要請。チーム教育庁、チーム教育局として「メンバーの個性と潜在力が輝く1つのチームとなり、トライを重ねてほしい」と期待した。
大災害や事故が成長を促し、生きる力や社会を支える力を伸ばす事例も多いとし、長期化する新型コロナウイルス感染症との闘いが「多様化・成熟化した社会経済システム、危機に対応する力につながる」との考えを示し、「皆さんの夢や熱意、悩みの中にある答えを取り出し、地域の特性や制約の中での最適な答えを一緒に考える日を楽しみにしている」と締めくくった。
◆小玉俊宏教育長 就任あいさつ概要
教育長という大役を賜り、身の引き締まる思いである。
前任の佐藤教育長と私は、20代のころから、人事課、行革課などで一緒になり、同じ十勝出身という縁で、かれこれ30年以上、温かく叱咤激励、助言をいただいてきた。佐藤先輩の遺志を継ぎ、また、歴代教育長の足跡をしっかりと踏みしめ、本道教育の充実・発展のため、精一杯取り組んでいく。
私の道職員人生は38年目に入り、19回の異動を経験したが、教育委員会での勤務は初めてとなる。同じ課に2度勤務したことがないので、いつも初心に返って、経験豊かな現場の皆さんの知恵と想いを起点に工夫・改善に努めてきた。
20代のころから、どの職場に行っても、一貫して大切にしている考え方がある。「金を残すのは三流、名を残すのは二流、人を残すのが一流」という人事課の教えである。
明治・大正期の政治家、医師でもあった後藤新平先生も同じ趣旨の名言を残している。
どんな職場においても、そこにいる人々の中にある能力、可能性を外に引き出すことが求められている。 教育(エデュケーション)の語源をひもとくと、ラテン語で「外に引き出す」という意味になるそうである。
「教育は、人々の多様な個性・能力を外に引き出し、開花させ、社会全体の発展を実現する基盤」であると認識している。
このような姿勢で、北海道の未来を創造する、人材の育成に臨んでいきたいと考えている。
新体制の始動に当たり、課題を申し上げる。
皆さんはこれまで、前・佐藤教育長のリーダーシップのもと、高校教育の遠隔授業をはじめ、学校における働き方改革の推進、道立高校長の庁内公募など、まさに国内の教育行政をリードする施策に取り組んできたと伺っている。
とりわけ、新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大し、道内における感染者数が増加する中、全国に先駆けて、学校の一斉休業や分散登校を実施するなど、全職員が一丸となって、感染拡大防止に尽力したことに心から敬意を表する。
まず、当面の喫緊の課題は、道内でもまん延が拡がる新型コロナウイルス感染症拡大への取組になる。子どもたちの命と健康を守ることを前提としながらも、やむなく学校休業を続ける中で、「学びを止めない」「心が近づく」環境を整えることが重要となる。
地域の事情によって、アクションは異なるかもしれない。熱意とアイデアをどんどん私に届けていただきたいと思う。
私たちは、次々と押し寄せる変化の波の中で、一人ひとりが未来を見据え、また、逆に未来から今を見て、新しい変革にチャレンジをしていかなければならない。自らを壊し・創造するサイクルを回すことによって、道民の期待に応え続けることができると思う。
とはいえ、実際に先進的な取組を発案すると、効果や失敗しないことに関し、過酷な証拠を求められ、何もしない人の安全性に比べ、挑戦するストレスの大きさに不満を感じているのではないかと思う。
私としては、たとえ、あらかじめ成果を見通せなくても、課題をみつけられるようなチャレンジは積極的に応援していきたいと考えている。
つぎの課題は、AI時代に向けて教育行政はどのように向き合うべきかということである。
近年、AIやロボット、IoTなど新しい技術が急激に進化している。第4次産業革命と言われる産業構造の転換やSociety5・0などの未来社会の到来が見込まれ、将来的にはAIやロボットによる職業代替の可能性が指摘されている。
こういった具合に、多くのビジョンに掲げられている。どれも成長戦略の文脈で提唱されているので、教育行政との関連性はぴんとこないのではないかと思う。そこで、AI時代に向けて、私から皆さんに知っておいてもらいたいポイントを2つ話す。
1つ目として、なぜAIなどが必要か、その理由である。それは今から取組を進めないと、将来、私たちがやるべき仕事ができなくなるからである。
先ほど、未来から今を見てなすべきことを考えてほしいと言った。20年後の未来、2040年になると、いわゆる団塊ジュニア、つまり、今の48歳前後の世代が大量にリタイヤする。しかし、それを埋める新卒者は、半分しか就職してこない時代がやってくる。すなわち、圧倒的に今より、手薄になるわけであるから、格段に業務を省力化する準備をもう始めなければ、後輩たちがもたないということである。
2つ目のポイントは、AI時代の産業社会に求められる人物像についてである。
2045年ころには、AIが人間の知性を超えるシンギュラリティ(特異点)を迎えると予想されている。そのころには、高速で効率的、大量、画一、同質、総じて価格競争の激しい仕事の多くがマシーンあるいは新興国に置き換えられてしまう。
一方で、人間本来の感性に訴える、例えば、優しさ、癒やし、かっこいいといった質の高さや多様性に強みをもつ商品やサービス、コンテンツが相対的に価値を高める。おそらく、命をもたない機械では提供できない、心の教育がより重視されることになるであろう。
ところで、ITに対し苦手意識を感じている人も多いかもしれない。しかし、私の世代でも、この半世紀を振り返ると、黒塗り電話から、ポケベル、携帯、スマホ、タブレットへと便利なので、馴染んできた。これからも、とりあえず使ってみる、子どもや若者に聞いてみる習慣を付ければ、絶対に何とかなる。
学びの喜びと好奇心をもち続けることで、生涯学習が輝き、青春は続くと考えている。
つぎに皆さんとのコミュニケーションを大切にしながら、これから申し上げる3つのワーク―ヘッドワーク、フットワーク、チームワークを意識していただきたいと思う。
1つ目のワークはヘッドワーク。
教育現場においても、もはや、これまでの常識やマニュアルにとらわれない発想と創意工夫がなければ、変化のスピードに対処できなくなっている。
今、私たちに求められることは、柔らか頭で、想像力と構想力を駆使し、数歩先を見通し、創意工夫を凝らした取組を加速することである。
そして、私から、もう1つ付け加えたいことがある。
最近の常識や前例にはとらわれないでほしいが、もっと長い目でみた常識や前例は参考になる。
今日の社会制度や施策は、右肩上がりの人口と税収の増大を背景に構築されたもので、右肩下がり時代に入って行き詰ってしまったというものがほとんどである。だから、人口が増えていなかった時代の共助・互助システム、インフラ整備や資金の集め方、環境保全や資源の循環利用などの手法や流儀をひも解いてみると、案外、解決のヒントがみつかると思う。
もちろん、そのまま昔のやり方は通用しないので、そこで登場するのが距離とコストの制約を取っ払うICTの活用である。
ぜひ、皆さんとわくわくするような解決策を一緒にヘッドワークしよう。
2つ目のワークはフットワーク。
これまでも仕事を通じ、現場にこそ課題解決の答えがあると痛感してきた。政策や業務を実行する現場がそれぞれの実情やニーズを把握し、共に考え、汗を流すということに、あらためて重みをおいてほしいと考えている。
しばしば、国や道庁と振興局、市町村、保護者、市民団体、企業と連携しようというかけ声がかかるが、皆さんは、どうやってと疑問に感じるのではないかと思う。
答えは現場の皆さんが関係者に足を運ぶしかない。そうすると、相手の課題やもっている経営資源が分かり、何を頼めるか、一緒に何ができるかがみつかる。
子どもたちの成長に情熱を注ぐ皆さんの提案であれば、きっと相手も心強く感じ、互いの危機を同時に突破するコラボレーションが実る。
3つ目のワークはチームワーク。
昨年のラクビーワールドカップにおける日本代表大躍進の背景には、ワンチームの精神で、果敢に挑戦してきたことが挙げられる。 私も高校時代、ラグビー部に所属していた。ラグビーは、後ろにボールを送って前進するという矛盾を抱えたスポーツである。自分は敵にぶつかり倒れるが、後ろからくる仲間に生きたボールを渡し、ゴールを目指す。特に、オフロードパスがこじ開けたトライシーンには心打たれる。
たとえ一人の力ではゴールにたどり着かなかった場合でも、信じた行動を起こし、仲間につないでほしい。
もう1つ、ラグビーの特徴は選手の体格やパフォーマンスがバラエティに富んでいることである。一人ひとりが違う力を出すことで、全体が強みを発揮する。作戦からメンバーを人選する場合もあるが、人材から作戦を組み立てることもある。
今後、様々な危機を乗り越えるために、横断的な事務分掌を超えたチーム教育庁、チーム教育局の活躍を願っている。メンバーの個性と潜在力が輝くワンチームとなって、トライを重ねていただきたいと願っている。
新型コロナウイルスとの未曾有の戦いは先行きが見通せない状況が続いている。
大災害や事故など衝撃的な出来事が心の傷になってしまうことがあるが、逆に成長を促し、生きる力、社会を支える力を伸ばす事例も報告されている。
このことは、多様化・成熟化した社会経済システムや未知の危機に対応する力を蓄えるチャンスになると思う。
今後、できるだけ多くの職場に足を運び、あるいはオンラインで、皆さんの夢や熱意、悩みの中にある答えを掘り出し、その地域の特性や制約の中で何が最適か、一緒に考えることができる日を楽しみにしている。
共に頑張ろう。
(道・道教委 2020-05-07付)
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