道議会質疑 予算特別委員会(令和2年9月29日)
(道議会 2020-12-10付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼山根理広委員(民主・道民連合)

【答弁者】

▼小玉俊宏教育長

▼志田篤俊教育部長

▼松本邦由教職員局長

▼髙木順一教育環境支援課長

▼藤田善治健康・体育課長

▼今村隆之教職員課働き方改革担当課長

◆時間外勤務縮減について

Q山根委員 9月に公表された道立校における6月の1ヵ月の時間外在校等時間が、高校の平均で43・9時間となっており、依然としてそういう状況が続いている。

 わが会派の代表質問において、教育長は「教員が質の高い教育を行うためには、教員の業務負担を軽減し、長時間勤務を解消することが喫緊の課題であると認識」との答弁であった。

 各市町村の教育職員の時間外勤務時間の把握状況について伺う。

A今村課長 市町村における勤務時間の把握について。本年7月1日現在で実施した北海道アクション・プランにかかる取組状況の調査結果では、全部または一部の学校において、所属職員の在校等時間を客観的に計測し記録している市町村は、札幌市を除く178市町村のうち、157市町村となっている。

 残り21市町村にあっては、本年度末までに整備予定であるが、道教委では、在校等時間を客観的に計測、記録する体制整備は急務であると考えており、該当の市町村教委に対し、可能な限り早期に整備するよう指導していく。

Q山根委員 来年4月から教育職員への適用が可能となる1年単位の変形労働時間制について、知事および教育長からは、1年単位の変形労働時間制の導入自体が教育職員の勤務時間を縮減するものではないとの答弁があった。

 なぜ、喫緊の課題と認識している教職員の勤務時間縮減について、縮減につながらない制度の導入を進めようとしているのか、道教委の認識について伺う。

A今村課長 1年単位の変形労働時間制の導入について。この制度は、業務の状況に応じて勤務時間を配分し、長期休業期間に集中して休日を確保する制度で、これのみをもって勤務時間の縮減を図れるものではないが、他の施策と併せて講ずることによって、業務量を確実に削減することが重要であるとされており、そうした意味で、学校の働き方改革を推進する一つの選択肢と考えている。

 こうしたことから、現在、国から示された省令等を踏まえ、地域や学校などの実情に応じた活用方法も含め、本制度の導入について、学校や市町村教委の意向などを伺いながら検討を進めている。

Q山根委員 制度導入に向けては、先立って、対象教職員が上限範囲内となるように、実効ある業務削減策を示すことが必要と考えるが、道教委の認識を伺う。

A松本局長 制度の導入について。本制度は、これのみをもって勤務時間の縮減につながるものではなく、他の様々な施策と併せて実施することが重要であり、こうしたことを踏まえ、道教委では、平成30年に北海道アクション・プランを策定し、これまで、各種調査の廃止や簡素化、研修の精選に加え、教材づくりの効率化や部活動時間の見直しなどといったアクション・プランに掲げる各種施策を着実に進めてきた。

 今後、こうした取組によって業務削減や平準化を図り、日々の教員の業務や勤務時間の縮減に努めていく考えである。

Q山根委員 文部科学省は、「本制度を適用するに当たっては、上限時間の範囲内であることが前提である」とし、「適用しようとする期間の前年度において上限時間の範囲内であることなどの在校等時間の状況や、在校等時間の長時間化を防ぐための取組の実施状況等を確認し、適用しようとする対象期間で上限時間の範囲内となることが見込まれる場合に限り、本制度の適用を行うこと。本制度の適用後も、対象期間において、上限の範囲内とすること」としている。

 これは、前年度において、月45時間、年360時間、適用しようとする年度においては、月42時間、年320時間の範囲内と解してよいのか伺う。

A今村課長 本制度を適用するに当たっての条件について。国の指針においては、教育委員会および校長は、前年度において、教育職員の時間外在校等時間が月45時間、年360時間の範囲内であることなどの状況や、在校等時間の長時間化を防ぐための取組の実施状況等を確認するとともに、本制度を適用しようとする対象期間において、時間外在校等時間が月42時間、年320時間の範囲内となることが見込まれる場合に限り、本制度の適用を行うことと規定されている。

Q山根委員 月45時間、年360時間の上限を順守できたか否かの基準については、個人ごと、学校ごと、市町村ごとなのか、あるいは、全員なのか、平均値なのか、すべての月と年の両方の達成が必要なのか、そのいずれか一方でよいのかなど、必ずしも明確にはなっていない。

 こうした勤務条件にかかわる重大な定義が、各都道府県あるいは市町村ごとで異なるのは問題である。この点について、文科省の見解はどうなっているのか伺う。また、他県の状況を把握しているのかも伺う。その上で、各県、各市町村で定義が異なることのないように求めるが、道教委の考えを伺う。

A今村課長 上限時間について。国からは、本制度を導入するに当たっては、学校や市町村単位などで教育職員全員が上限時間の範囲内であることが条件となるのではなく、各職員ごとに、上限時間の範囲内であるかどうかを判断するものという考え方が示されており、こうした見解は全都道府県に適用されるものと考えている。

 道教委としては、本制度を導入することとなった際には、市町村で異なった取扱いとならないよう、こうした考え方について周知徹底していく考えである。

Q山根委員 本年度は、新型コロナウイルスの影響で、一斉休校、長期休業短縮が行われるなど、極めて異例な状況となったことから、通常の年と比較対象にはなり得ないと考える。

 したがって、次年度の導入に向けて、本年度の状況を前提とすることはできないことから、導入の前提が崩れていると考えるが、道教委の認識を伺う。

A今村課長 時間外在校等時間などの考え方について。国の指針において、本制度は、適用しようとする対象期間の前年度における時間外在校等時間の状況や在校等時間の長時間化を防ぐための取組の実施状況等を確認し、適用しようとする対象期間において、職員の時間外在校等時間が月42時間、年320時間の範囲内となることが見込まれる場合に限り、本制度の適用を行うことが規定されており、その趣旨を踏まえて検討することになる。来年度に導入するとしても、同様の取扱いになると考えている。

Q山根委員 指針で定める措置がすべて講じられているか否かについては、現場段階において紛議が生じることが予想される。

 道教委に相談窓口を設置する必要があると考えるが、道教委の考えを伺う。

 また、道人事委員会において、調査、監督、是正などを行う仕組みを構築するべきと考えるが、道教委の考えを伺う。

A松本局長 相談窓口等の設置について。道のアクション・プランにおいては、働き方改革を進める上で、道教委が健康および福祉の確保を図るために行う措置として、心身の健康問題について相談窓口を設置することとしており、公立学校共済組合との共催によって実施している心の健康相談事業において、長時間勤務等による勤務条件や勤務環境に関する相談に応じている。

 また、教育職員を含めた一般職の地方公務員の勤務条件に関し、使用者等への監督等を行う労働基準監督機関の職権は、法令上、人事委員会または人事委員会の委任を受けた委員、人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長が行うものとされており、本制度にかかる国の通知においても、運用状況について、人事委員会等と認識を共有し、専門的な助言を求めるなど、連携を図ることとされていることから、道教委としては、引き続き、人事委員会と適切に連携していく考えである。

Q山根委員 活用決定については、まず、市町村で活用するかどうか、つぎに、学校で活用するかどうか、最後に、個人で活用するかどうかなど、どのようなプロセスで行われるのか伺う。

A今村課長 制度導入の手続について。1年単位の変形労働時間制を活用するに当たっては、各都道府県において条例を整備するとともに、市町村の規則等において、制度の適用者に関し、時間外在校等時間にかかる上限時間を、1ヵ月当たり45時間を42時間に、1年当たり360時間を320時間に変更する手続が必要である旨、文科省から通知されている。

 こうした手続を経た上で、校長が各教育職員と対話し、育児や介護を行う職員などについては配慮するなど、個々の事情を的確に酌み取りながら対象者の決定を行うものとされている。

Q山根委員 勤務時間の割振り等に関する要領によって、対象業務の割り振り変更が行われている。また、週休日の振替、特例によって週休日の確保が行われている。1年単位の変形労働時間制によって、現在の要領、振替、特例が活用できなくなるのであれば、超勤多忙化解消策とはならない。

 現在の要領、振替、特例が完全に存置される必要があると考えるが、道教委の見解を伺う。

A松本局長 勤務時間の割振り等に関する要領などについて。道教委では、これまで、修学旅行等の引率業務など、通常の勤務時間を超えて業務を行わなくてはならない場合には、1ヵ月単位の変形労働時間制を活用し、4週の期間内で勤務時間の割り振りを行ってきた。国からは、新たに教育職員に適用可能となる1年単位の変形労働時間制と、これまで実施してきた1ヵ月単位の変形労働時間制については、時期によって異なる制度を適用することが可能であると示されている。

 また、週休日の振替については、1年単位の変形労働時間制を活用する場合で、勤務日、勤務時間の割り振りを決める時点であらかじめ判明している場合は、基本的には、本制度の中で割り振り変更を行うこととなる。その際、週休日の振替については、通常どおり、長期休業期間等ではない期間においても行うことができると示されている。

Q山根委員 教育長は、教員の長時間労働の解消に向け、研修の精選を行うとしている。研修で学校現場を離れることによって、補欠の授業者が必要となり、1人当たりの持ち授業時間数が増加していると聞く。さらに、研修対象者が複数いる場合は、学校現場の超勤多忙化にさらに拍車がかかっているとも聞く。

 研修の精選の取組状況、削減時間、今後、特に長期休業中の研修をどのように削減していくのか、具体策を伺う。

 また、オンデマンド研修としても、勤務時間外に行えば、長時間労働是正とはならないことから、研修の在り方について、道教委の考えを伺う。

A髙木課長 教員の研修について。時代の変化や自らのキャリアステージに応じた資質・能力の向上が生涯にわたって求められる教員にとって、研修は重要なものである。

 一方で、働き方改革の観点から、教員の業務負担の軽減は喫緊の課題である。

 道教委では、前年度から本年度にかけて、オンデマンドの活用拡大による集合研修の日数縮減や、研修の廃止、統合、実施の隔年化などによって、全体で139講座、延べ261日間あった研修を、129講座、延べ241日間とし、10講座、延べ20日間の効率化を図った。

 今後は、長期休業期間中において、教員が休暇を取得しやすい環境づくりの視点を加え、オンデマンド研修やオンライン研修など、勤務地の地理的条件に左右されない実施方法の工夫や研修内容のさらなる精選を行うなど、スリム化を進め、より効率的で効果的な研修となるよう取り組んでいく。

Q山根委員 教育長は、教員の長時間労働解消に向け、部活動時間の見直しを行うとしているが、これまでの取組状況、削減時間、今後の対応について伺う。

 また、部活動手当が3時間分となることから、部活動ガイドラインから例外をなくすべきと考えるが、道教委の認識を伺う。

A志田部長 部活動対策について。道教委では、平成31年1月に北海道の部活動の在り方に関する方針を策定した。

 原則として、活動時間を平日2時間、休業日3時間程度とすること、休養日を週当たり2日以上設定することなどを規定するとともに、各市町村教委および各学校においても、この方針を参考に部活動の方針を定め、適切に実施するよう要請してきた。

 一方、道教委が前年度実施した勤務実態調査では、主幹教諭、教諭の部活動指導時間について、本方針を策定する前の28年度と比較すると、中学校で平日11分、勤務不要日44分、高校で平日17分、勤務不要日27分の縮減となっている。道教委としては、引き続き、方針に沿って活動時間や休養日の設定などについて、適切に実施するよう指導していく考えである。

 また、部活動手当については、31年4月から、1回の活動時間が3時間以上の場合に支給されることとして条例が改正された。活動時間についても、定めている方針の見直しについて、今後、校長会の意見を伺うとともに、部活動関係者会議で議論いただきながら、慎重に検討していく。

Q山根委員 超勤・多忙化解消には、勤務時間の割振り等に関する要領の対象業務拡大も一つの方法である。

 これまでの道教委の答弁では、入試に向けた推薦委員会なども検討するとしてきた。

 中学校における、進路業務、進路指導業務、校外学習の事前準備業務、評価業務など、学校が行っている業務も新たな対象業務として、時間外在校等時間を減らすべきと考えるが、道教委の考えを伺う。

A小玉教育長 勤務時間の割振り等に関する要領の対象業務について。道教委が定めている修学旅行等の引率業務等に従事する道立学校職員の勤務時間の割り振り等に関する要領については、これまで、各学校における本制度の活用状況を把握するとともに、学校現場や校長会からも意見を伺い、さらには、時間外勤務等縮減推進会議や、学校における働き方改革促進会議の議論なども踏まえながら、対象業務の拡大などを見直してきた。

 道教委としては、1年単位の変形労働時間制の活用等も踏まえた上で、今後も、校長会などから意見を伺うとともに、各種会議でも議論いただくなどして、対象とすべき業務について検討していく。

◆道立高校のスキー授業

Q山根委員 北海道は、自然豊かな環境にあり、四季がはっきりしていて、特にウインタースポーツが盛んである。学校においても、体育の授業でスキーやスケートなどを実施しており、北海道の特性を生かした素晴らしい取組であると思っている。

 本年度は、新型コロナウイルス感染症についての長期的な対応が求められることが見込まれる状況で、学校では、感染および拡大のリスクを可能な限り低減した上で、教育活動を行っており、特に、高校のスキー授業は、貸切バスを利用して、近郊のスキー場に行って実施している状況にある。

 札幌市は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、貸切りバスの増便分を、スキー学習を実施している小・中学校および高校を対象に、費用を補助することを決めたようである。

 道立高校のスキー授業の実施に当たって、貸切バスの増便があった場合、道教委は、札幌市のように貸切バスの増便分の補助金を出すなど、支援をする必要があると考えるが、道教委の考えを伺う。

A藤田課長 スキー授業について。学習指導要領において、スキー、スケートなどの指導については、学校や地域の実態に応じて積極的に行うことに留意するものとされ、学校が適切に教育課程を編成し、これまでも、スキー場の選定や実施方法を工夫し、スキー授業を実施してきた。

 本年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、スキー授業の実施方法、回数やバスの利用方法などを慎重に検討する必要があることから、その状況を把握するとともに、関係部局と連携しながら、各学校が適切に対応できるよう、個別に丁寧な指導助言に努めていく考えである。

D山根委員 関係部局と連携を取りながらということであるから、しっかりと連携して、子どもたちも楽しみにしているスキー学習を続けていくことをお願いする。

(道議会 2020-12-10付)

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