道議会質疑 予算特別委員会(令和2年9月29日)
(道議会 2020-12-17付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼安藤邦夫委員(公明党)

▼真下紀子委員(日本共産党)

【答弁者】

▼小玉俊宏教育長

▼赤間幸人学校教育監

▼池野敦総務政策局長

▼小松智子学校教育局長

▼松本邦由教職員局長

▼新免寛啓教育政策課長

▼岡内誠高校教育課配置・制度担当課長

▼濱中昌志義務教育課地域連携担当課長

▼奥寺正史教職員課長

◆少人数学級の推進について

Q安藤委員 国の教育再生実行会議は、ポストコロナ期も見据え、今後の初等中等教育の在り方として、少人数によるきめ細かな指導体制などについて議論している。

 国においては、具体的にどういった議論がなされているのか伺う。

A新免課長 少人数学級に関する国の議論について。政府が設置している教育再生実行会議の初等中等教育ワーキング・グループでは、今般の新型コロナウイルス感染症対応を踏まえ、新しい生活様式も踏まえた学習・生活環境、GIGAスクール構想による1人1台端末環境のもとでの一人ひとりに応じた個別最適な学びや、多様な学習活動に対応する環境を整備することが重要との認識のもと、少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備や関連する施設設備等の整備を進める方向で議論がなされているものと承知している。

Q安藤委員 本道における少人数学級の導入状況はどのようになっているのか伺う。

A新免課長 道内における少人数学級編制の現状について。少人数学級編制は、主体的・対話的で深い学びの実現を図り、社会で自立するために必要な資質・能力を一人ひとりに育むことができる有効な指導体制の一つであるとの考え方から、道教委では、35人以下の少人数学級編制を、これまで、法で措置されている小学校1年生に加え、国の加配を活用して、小学校2年生と中学校1年生で行ってきた。

 本年度から令和4年度までの3年間で、小学校3年生、4年生へ順次拡大することとしている。

O安藤委員 本年度から3ヵ年をかけて、小学校3年生、4年生へ順次拡大ということなので、ぜひ進めていっていただきたい。

Q安藤委員 道内には小規模校が多いと考えているが、1学級当たりの児童生徒数は全国と比べるとどういった状況なのか伺う。

A新免課長 道内における1学級当たりの児童生徒数について。元年5月1日現在の1学級当たりの児童生徒数を全国と比較すると、小学校は、全国が23・3人に対し、北海道が20・1人、中学校は、全国が27・2人に対し、北海道が22・9人となっており、広域分散型の北海道においては、1学級当たりの児童生徒数が全国よりも少ない状況となっている。

Q安藤委員 全国と比較して、小規模校の多い北海道は、国における少人数による指導体制の整備を進める議論に先んじて、少人数学級の取組が進んでいる。

 道教委として、これまでの取組の成果、あるいは、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点も踏まえながら、少人数学級を積極的に進めるべきであると考える。

 今後の少人数学級の推進に向けた道教委の見解を伺う。

A池野局長 今後の取組について。道内は、1学級当たりの児童生徒数が少なく、小規模校が多いことに加え、多くの学校で習熟度別少人数指導を行ってきたことなどから、少人数による問題解決的な学習や協働的な学習などにおいて、実践的な成果を数多く蓄積しており、本年度から順次拡大することとしている小学校3年生、4年生における少人数学級編制を導入する学校に対しても、こうした成果を踏まえて、取組を充実させることが重要と考えている。

 道教委としては、ポストコロナ期も見据えて、主体的・対話的で深い学びの実現を図り、児童生徒の学びを保障することができるよう、国の動向を注視しつつ、引き続き、全国都道府県教育委員会連合会などと連携し、少人数学級編制のさらなる拡充について、国に対し強く要望していく考えである。

O安藤委員 少人数学級編制のさらなる拡充ということで、残されているのは、小学校5年生、6年生、中学校2年生、3年生になろうかと思うが、さらなる拡充の推進をよろしくお願い申し上げたい。

◆夜間中学について

Q安藤委員 わが会派は、これまで、教育機会確保法が2016年12月に成立したことも踏まえ、夜間中学などの充実による学びのセーフティーネットの構築に向けた取組などについて働きかけてきた。

 もともと、戦後の混乱期に家庭の事情などで学校に通えなかった人たちのために設置された夜間中学であったが、近年は、外国籍の生徒が増加し、全国的には、全体の約8割を占めていると承知している。

 文部科学省は、教育機会確保法に基づく基本指針で、不登校の生徒や、十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した人たちを含め、幅広い層に学びの機会を提供することを求めている。

 現在、北海道では、札幌市をはじめ、函館市、旭川市、釧路市において、ボランティアによる自主夜間中学が学びの場、学び直しの場を提供しているが、コロナ禍にあって、これらの夜間中学校の活動状況がどのようになっているのか伺う。

A小松局長 自主夜間中学の活動状況について。道内4校の自主夜間中学は、様々な理由で学習を希望される幅広い年齢層の方々に対して、ボランティアスタッフが学ぶ機会を提供する学び直しの場として運営している。

 それぞれの学校では、週1回の活動が行われてきており、新型コロナウイルスの影響によって、本年2月以降は活動が休止されたが、6月からは、検温やマスクの着用などの感染症対策を講じた上で、授業時間を短縮するなど、可能な限り感染リスクを低減しながら、地域の実情に応じて、順次、活動が再開されており、現在は、すべての自主夜間中学が活動している。

Q安藤委員 教育機会確保法の施行後に開校した公立の夜間中学校の設置など、他県の検討状況について伺う。

A濱中課長 全国の状況について。国では、教育機会確保法の制定を受け、すべての都道府県に少なくとも一つの夜間中学の設置を目指し、教育機会の確保等に向けた施策を総合的に推進するための基本方針を作成するなどして、設置を促進している。

 法律の施行後、千葉県、埼玉県、茨城県で公立夜間中学が新たに開校し、現在、10都府県において34校の公立夜間中学が設置されているほか、徳島県、高知県では、来年度の開校に向け、準備が進められている。

Q安藤委員 道教委は、これまでに夜間中学等に関する協議会を設置して、有識者や自主夜間中学関係者などと、学びの在り方などについて協議してきたと承知しているが、どのような協議を行ってきたのか伺う。

A濱中課長 協議会における検討状況について。道教委では、公立夜間中学に求められる役割や地域住民のニーズの把握方法などについて検討するため、道や札幌市の職員に加え、自主夜間中学などの民間団体の関係者、有識者などによって構成される協議会を設置し、これまで、計6回の会議を開催してきた。

 協議会の中では、本道における学びの提供の在り方をはじめ、道外の先進事例や道内の自治体で唯一実施されている苫小牧市の識字教室の事例を参考に、公立夜間中学等の役割やニーズの把握方法、札幌市が設置を予定している公立夜間中学などについて協議してきた。

Q安藤委員 札幌市は、4年4月の開校を目指して準備が進められていると承知している。現在の状況について伺いたい。

A濱中課長 札幌市の準備状況について。札幌市では、4年4月の夜間中学開校を目指し、有識者による公立夜間中学の在り方検討会議が開催され、道教委もオブザーバーとして参加してきた。

 会議の中では、札幌市における夜間中学の目指す姿や学校づくりの視点などについて検討され、その意見等を参考に、本年度中に基本計画を策定するよう取り組んでおり、次年度からは、具体的な入学準備に着手するものと承知している。

Q安藤委員 道教委は、より多くの人たちへの学び直しの場の提供に向け、札幌市とこれまでも連携を保ってきたと思う。

 札幌市が設置する公立夜間中学について、今後、どのように連携して進めていくのか、また、札幌市以外の各地域における夜間中学の設置に向けて、どのように取り組んでいくのか、併せて伺いたい。

A赤間学校教育監 今後の取組について。学齢期に様々な事情や病気などで学校に通えなかった人たちや、近年では、外国籍の人たちに対する教育機会を確保するなど、夜間中学には、そうした機会を保障する役割があるものと認識している。

 道教委では、これまで、自主夜間中学等の協力を得ながら、義務教育を十分に受けることができなかった人たちなどの学習ニーズの把握などにおいて、札幌市と連携して取り組んでおり、札幌市における公立夜間中学の円滑な設置に向け、今後も引き続き協力していく。

 また、札幌市以外における公立夜間中学については、自主夜間中学が活動している自治体などと意見交換を行うほか、市町村教委において、地域の人たちのニーズに応じた学習機会の提供にかかわる検討が進められるよう、道教委として、必要な助言などに努めていく。

◆もうひとつのクライマクス

Q安藤委員 先の一般質問で、わが会派の議員が、道教委のもうひとつのクライマクス事業において、代替大会が開催されない競技については、どのように晴れ舞台を創出するのか、また、今後、どのように取り組んでいくのか、教育長に伺った。

 教育長からは、「全道の高校の生徒会長に対し、生徒自らの企画で晴れ舞台を演出いただく1校1クライマクス運動の実施を呼びかけている」との答弁をいただいた。

 教育長が自ら先頭に立って、卒業する学年の生徒たちの晴れ舞台の創出に向け、取組を進めているものと承知している。

 生徒が自ら企画している1校1クライマクス運動について、道内の高校で、どのような取組が予定されているのか伺う。

A小松局長 1校1クライマクス運動について。最終学年の生徒のこれまでの活躍をたたえるため、全道の公立・私立の高校等に対して、「センパイ、感動をありがとう!」をテーマに、生徒自らが企画した取組を呼びかけたところ、現在、29校から企画書が提出されている。体育祭において、1・2年生が3年生にエールを送るセレモニーの実施、また、校内放送において、3年生に感謝のメッセージを伝える番組の放送、あるいは、予餞会において、3年生との思い出を振り返る動画の上映など、それぞれ趣向を凝らした取組が計画されている。

 さらに、道教委としては、本事業の応援アンバサダーをお願いしている田中賢介氏に何校かの学校を訪問していただき、生徒たちを激励していただいたり、生徒がそれぞれの取組を紹介する動画を公募し、専用チャンネルで配信したりするなど、ひたむきに努力を続けてきた若者の活躍をたたえる輪が一層広がるよう、取組を進めていく考えである。

O安藤委員 これからもどんどん拡大していただきたい。

Q安藤委員 現下の新型コロナウイルスの感染拡大は、インターハイや、それに向けた全道大会が中止となった体育系の部活動の生徒たちだけではなく、文化系の部活動の生徒たちにも影響が及んでいる。

 文化系部活動の全国大会である全国高校総合文化祭は、オンラインで実施されたとはいえ、活躍の場が狭められた文化系の部活動の生徒たちに対しても、道教委として何らかの支援が必要ではないかと考える。教育長の認識と今後の取組について伺いたい。

A小玉教育長 文化系の部活動に対する支援について。委員の指摘のとおり、文化系の部活動についても、吹奏楽や放送など、全国規模の大会が中止、あるいはオンラインでの開催となった。

 晴れ舞台を目指し、努力を積み重ねてきた生徒たちをたたえる取組を望む声を少なからず伺っている。

 道教委としては、全道の高校の生徒会長に呼びかけている1校1クライマクス運動においては、体育会系、文化系といった部活動の分野を問わず、企画・実施を喚起している。

 これに加えて、生徒たちと第一線で活躍する文化関係者との交流の機会を設けるなど、文化系の部活動においても、ひたむきに努力を続けてきた若者がつぎの夢の実現に向けて歩み続けることができるよう、取組の一層の充実に努めていく。

O安藤委員 今回のコロナ禍によって、生徒の晴れ舞台が失われたものも多くある。しかし、コロナ禍であったがゆえに、新たな晴れ舞台をつくることができたと言えるクライマクス事業になることを、心から期待申し上げたい。

◆草の根教育実習システム

Q安藤委員 道教委は、平成31年度の小学校教員の受検倍率が1・2倍となるなど、教員採用選考検査における深刻な受検倍率の低下に対応するため、教員養成大学や市町村の地域創生部局などと連携して、教員のやりがい再発見や地域の関係人口づくりを結ぶ新たな教育実習システムについて、草の根教育実習システムとして構築することを本年8月に公表した。

 本道教育の未来を担う優秀な教員の確保は喫緊の課題であり、道教委のみならず、様々な関係機関と連携した取組を進めていくことは非常に重要と考える。

 草の根教育実習システムでは、へき地・小規模校における草の根的な教育実習や行事体験等を行う、僻地校体験実習などに取り組むこととされているが、道教委は、具体的にどのようにしてこの取組を進めているのか伺う。

A奥寺課長 草の根教育実習システムの進め方について。道教委では、草の根教育実習の次年度からの本格実施に向け、本年度内に試行的な取組を実施することとしており、年内に実施を終了できるよう、現在、各教育局や北海道教育大学において、実習を行う学校や参加する大学生の募集などの準備を進めている。

 さらに、本年度の取組における成果や課題などを踏まえ、道教育大学と、実習の実施時期や実習を行う学校の選定などの具体的な調整を行うとともに、教員養成課程を有する他の大学にも働きかけるなど、教員を目指す多くの大学生が、この草の根教育実習に参加することができるよう準備を進めていく。

Q安藤委員 教員を目指す学生がへき地・小規模校における実習等を通して、子どもたちと近い距離で接しながら、自己有用感を醸成する取組というのは非常に大切なものと考える。

 道教委として、どのような意図をもって、この取組を草の根教育実習と名付けたのか伺いたい。

A奥寺課長 草の根教育実習システムの名称について。へき地・小規模校のへき地学校とは、へき地教育振興法において、交通条件および自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれない山間地、離島等の学校と定められている。

 今般の道教委の取組においては、一部の地域だけではなく、全道のどこのまちにも根を張ってもらいたいという思いを込めて、草の根教育実習システムと名付けた。

Q安藤委員 草の根教育実習システムにおいては、教員養成大学のみならず、市町村と連携をしながら取り組むことによって、地域活性化に資することもねらいの一つとされているようであるが、このシステムにおいて、市町村は具体的にどのような役割を果たすのか、また、その効果は、市町村にとってどのようなものになるのか伺う。

A松本局長 市町村との連携について。へき地・小規模校における実習の充実に向けては、実習先となる学校を探す大学教員の負担や、滞在に要する大学生の経済的な負担などが大きな課題となっていることから、大学生が市町村から円滑に、実習先の学校や低廉な金額で利用できる移住促進住宅等滞在地として紹介を受けることができるよう、市町村との緊密な連携に努めていく考えである。

 一方、市町村にとっても、こうした取組は、大学生が地域と一体となった学校教育活動に参加するなど、地域とかかわる機会を広げることで、新たな関係人口の創出につなげることができるなど、地域の活性化にも大きな効果を生み出すことが期待できるものと考えている。

Q安藤委員 道教委は、教員採用選考検査の1次検査において、前年度から東京会場を設置するなど、道外にも目を向けた取組を進めていると承知している。

 優秀な教員を確保するためには、幅広い視野をもった大きな取組が必要になると考えるが、道教委として、草の根教育実習システムを将来的にどのように展開していこうと考えているのか伺う。

A小玉教育長 草の根教育実習システムの将来的な展開について。本システムでは、教員を目指す大学生が、多様な体験活動を通じて、教職のやりがいを再発見することによって、教員採用選考の受検者増加へつなげることを大きなねらいとしており、高校生対象のインターンシップや教員養成セミナーなど、各般の取組とも組み合わせながら、生徒たちが教職を志望する意識を醸成するなど、持続可能な取組として進めていきたいと考えている。

 道教委としては、今後、教員養成に関する会議の場などを通じ、このシステムへの参加について、各教員養成大学にも積極的に働きかけるとともに、ホームページやSNSを活用して広く情報を発信しながら、へき地・小規模校での実習を希望する道内外の大学生が草の根教育実習に意欲をもって参加することができる環境づくりを進めていく。

O安藤委員 あらゆる関係機関と連携を取りながら、本道教育の未来を担う優秀な教員確保のために、ぜひ尽力いただきたい。

◆子どもの貧困 教育機会均等

Q真下委員 生活保護基準が5年ごとに引き下げられ、特に、2013年の見直しによって、子どもの生活、教育等に充てられる費用に大きな影響が出たことから、国および市町村教委とも連携して対策を取るよう、これまでも取り上げてきた。

 この10月から、3年にわたる最後の引き下げとなる。この間、連続した生活保護基準の引き下げによる児童生徒への影響は少なくないと考えている。

 学校教育法に基づき、要保護者に準ずる程度に困窮していると認められる人に対して、就学の機会を確保するために、市町村で就学援助が実施されている。

 国は、生活保護基準の見直しに伴い、就学援助に影響がないよう適切な対応を自治体に求めている。その対応として、一定の係数を掛けて要保護基準の一つとしているところもあるが、生活保護基準と同水準では、医療扶助、住宅扶助のある生活保護よりも低い水準となる。

 就学援助基準はどのように見直し、その結果、生活保護基準の引き下げの影響を回避できていると考えているか伺う。

A濱中課長 就学援助基準の見直しの推移について。文部科学省では、生活保護基準の見直しに伴う準要保護者に対する就学援助への影響について、毎年、調査しており、令和元年度の調査では、準要保護の認定に当たり、「影響が生じない」、または、「影響が生じる可能性がある場合には、何らかの対応を行う予定」と回答した市町村は、全国で98・6%となっている。

 一方、本道においては、すべての市町村が「影響が生じない」「生じる可能性がある場合は対応を行う」と回答しており、引き下げによる影響を回避するため、生活保護基準に掛ける係数を高い倍率に引き上げて認定するなど、市町村ごとの措置が取られたものと考えている。

Q真下委員 しかしながら、回避されたとは言い難い。

 就学援助の対象費目は、生活保護の教育扶助に準じているものの、市町村によっては実施していない費目がある。

 2019年度から、新たに国庫補助の対象費目が拡充されて、クラブ活動費、生徒会費、PTA会費と合わせて、卒業アルバム代の4費目が就学援助の対象となった。

 2016年度の文科省の就学援助実施状況等調査によると、本道では、3費目実施が96市町村、いずれか2費目は23市町村、1費目のみは8市町村、いずれも実施していないのが52市町村となっていた。

 道教委は、実施費目の拡大に取り組む市町村が年々増えてきてはいるものの、十分とは言えないという認識を示していたが、その後、どのように促進されたのか。

A濱中課長 就学支援の対象費目の状況について。国は、平成30年度に補助金の交付要綱を改正し、PTA会費、生徒会費、クラブ活動費の3費目に加え、卒業アルバム代等を新たに対象費目とした。これを踏まえて、道教委では、対象費目の拡充について、市町村教委に継続的に働きかけてきている。

 文科省が実施した調査を、28年度と令和元年度で比較すると、道内では、3費目または4費目を対象としている市町村が96から130へと増加し、いずれも対象にしていない市町村は52から26へと減少しており、道教委では、引き続き、様々な機会を通じて、各市町村のより積極的な取組を促していく。

O真下委員 完全実施まで注視していきたい。

Q真下委員 新入学児童生徒学用品費、いわゆる入学準備金等の入学前支給の必要性について、これまで訴えてきた。道内で実施が広がったところでは、大変歓迎されている。

 道内の小学校、中学校の入学前支給の実施状況は、2018年度は約半数にとどまっていた。道教委は、就学援助制度の周知方法の徹底のほか、新入学児童生徒学用品費等の入学前支給など、認定時期や支給時期の見直しを含めた就学援助のさらなる拡充などが求められており、強化していくと答えていたが、現状はどうなっているのか。

A濱中課長 入学準備金の支給について。文科省では、平成29年に、援助を必要とする時期に支給ができるよう交付要綱を改正し、小学校等に入学する前年度に支給した新入学児童生徒学用品費等についても国庫補助の対象としたことから、道教委では、市町村教委に対し、国の制度改正を踏まえ、市町村が実施する就学援助について、必要な援助を適切な時期に実施できるよう働きかけてきている。

 昨年、文科省が実施した調査では、新入学児童生徒学用品費等の入学前支給について、「実施済み」と回答した市町村の割合は、小学校については、全国の73・7%に対して、本道は78・2%、中学校については、全国の78・9%に対して、本道は79・3%となっており、今後も、入学前支給が実施されていない市町村に対して、支給時期の見直し等について、引き続き働きかけていく。

O真下委員 8割に届いていない。さらに促進を求めたい。

Q真下委員 臨時休業中の給食が提供されなかった場合、自宅で提供することとなって、相当分が家庭に支給されなければ、保護者の持ち出しとなる問題がある。

 給食費は、児童生徒の昼食となる費用として支給されている。保護者の持ち出しとなるために、保護者に支援した自治体もある。道教委は、どのように把握しているのか。

A濱中課長 臨時休業中の給食費の取扱いについて。国では臨時休業中の児童生徒の昼食費が生活保護家庭の負担とならないよう、教育扶助による学校給食費の取扱いにおいて、被保護者に返還された学校給食費について国へ返還を求めないこととした。

 また、準要保護者に対する支援については、本年6月に道教委が実施した調査によると、「昼食費支援を行った」、または、「検討している」と回答した市町村は、本年2月から3月の休業期間については19市町村、4月以降の休業期間においては59市町村となっている。

O真下委員 それぞれ支援が不十分だったと思う。

Q真下委員 所得の少ない世帯、ひとり親家庭などにおいて、給食は1日の栄養の半分近くを補給できる重要な役割があると言われている。コロナ禍で学校が休校となって、昼食を十分に食べられないために体重が減少した子どもの実態が当事者団体の調査で明らかとなった。育ち盛りの子どもが食事を食べられずにいたことをどう受け止めるのか。

 休校を要請した道教委として、食べ物にも事欠くほど困窮する子ども世帯に対する対応は十分だったと言えるのか伺う。

A小松局長 困窮する子ども世帯に対する支援について。学校給食は、成長期にある児童生徒の心身の健全な発達に重要な役割を果たしており、家庭の食事で不足していると推測される栄養を可能な範囲で学校給食で補うなどの工夫も行われている。

 今般の学校の臨時休業に当たって、道教委は国の通知に基づき、学校の臨時休業中においても、子どもの居場所確保の取組等の実施に当たり、地域の実情やニーズに応じ、学校給食の調理場や調理員を活用して昼食を提供することについて指導助言するとともに、各学校が定期的に子どもの健康状態を把握したり、分散登校を行う中で給食を提供したりするなど、児童生徒の健全な食生活が確保されるよう努めてきた。

 また、臨時休業中の学校給食費については、国が要保護者に対する学校給食費相当額について、支援の対象としたことを踏まえ、地域の実情に応じて適切に対応するよう、市町村教委に対し、周知してきた。

O真下委員 長期休業後の体重減少は社会問題となっている。そのことに思いが至っていないのではないか。道教委の通知は、成長、発達に配慮した内容となっていなかった。このことについて、周知を図ったというが、改善を求めておきたい。

Q真下委員 議案第4号では、公立高校等の専攻科における授業料および授業料以外の軽減のため、返済の必要のない給付金の申請に関し、マイナンバーが利用できるよう改正案が提案されている。

 マイナンバーの利用拡大が個人情報漏えいのリスクの拡大になると、これまでも指摘をしてきたが、対策はどのように強化されているのか。また、マイナンバーを使用しない住民のために、取得しなくても申請が可能だということを周知しておく必要があると考えるが、いかがか。

A岡内課長 マイナンバーの取扱いについて。道教委では、高校等就学支援金や授業料以外の経費にかかる負担を軽減するための給付金の手続きに当たり、課税証明書の取得にかかる保護者の負担軽減や効率的な事務処理を図るため、本年度からマイナンバーを利用している。

 マイナンバーについては、法令で定められた範囲以外での取得、利用、保管が禁止されるなど、厳格な取扱いが求められており、学校が書類を送付する際の複数の職員によるチェックや、教育局が書類を受領する際の速やかな確認などについて、通知や校長会議などで徹底を図っている。

 また、今回、条例改正案を提出している専攻科における支援金、給付金についても、高校等と同様、マイナンバーを申請に利用するかは保護者の判断によるものであり、来年度以降の給付申請に当たり、保護者あてのパンフレットで、マイナンバーを利用しない場合の申請方法を周知するなど、適切に対応していく。

Q真下委員 憲法のもとで、生まれ育った環境による教育格差を生じさせない上で、生活保護や児童養護施設の生徒の進学率の向上は極めて重要だと考えている。

 それぞれの進学率の推移はどうなっているのか示していただきたい。

A濱中課長 進学率の推移について。厚生労働省が実施している調査によると、道内の生活保護世帯については、高校等進学率は、平成26年の96・1%から、30年は96・6%と0・5ポイント上昇、大学等進学率は、26年の28・5%から、30年は36・7%と8・2ポイント上昇し、いずれも全国平均を上回る状況となっている。

 また、道内の児童養護施設の入所者については、高校等進学率は、26年の98・7%から、30年は96・6%と2・1ポイント低下、大学等進学率は、26年の24・0%から、30年は27・9%と3・9ポイント上昇しており、高校等進学率は全国平均を上回るものの、大学等進学率については全国平均に届かない状況となっている。

Q真下委員 大学進学率を上げることが非常に重要である。経済的理由があっても、支援策を紹介するなどして、進路の実現を指導することは、とても重要と考える。

 私立大学などでは、10月に合格が決定して、1週間ほどの間に入学金、前期授業料などを払い込まなければならないと聞いている。ところが、生活福祉資金をそのときに申し込んでも、資金交付が間に合わないという相談があった。その際、事前審査が可能だということなのだが、社会福祉協議会でも十分な相談に至っていないことから、道立学校の現場では、なおのこと、そうした指導までに至っていないのではないかと考える。

 経済的支援を含めた進路指導としていくことが必要ではないかと考える。進路指導における教育支援金等の必要性に関する認識と道立学校への周知状況について伺う。

A岡内課長 大学等への進学にかかる支援について。高校での進路指導では、大学等への進学に当たり、学費などの経済的な理由による悩みを抱えている生徒もいることから、奨学金制度などについても情報提供に努めている。

 道教委では、そうした学校の取組を支援するため、日本学生支援機構の無利子奨学金や給付型奨学金をはじめ、生徒や保護者の活用が見込まれる給付金や貸付金などを取りまとめた資料を作成し、各学校に周知してきたが、今後は、学校での進路相談の際に活用できるよう、生活福祉資金も含め、進学にかかる支援の制度や手続きに関する情報を充実するなどして、意欲ある高校生の大学等への進学に向け、一層の支援に努めていく。

O真下委員 諦めることがないように、しっかり支援していただきたい。

Q真下委員 教育長は、これまで、子どもが生まれ育った環境によって格差が生じてはいけない、夢と希望の実現に努めると答えていた。コロナ禍において、経済的に困窮する子どもたちの教育機会の均等をどう支え、子どもの教育環境をどう整えていくのか伺う。

A小玉教育長 子どもたちの教育機会の確保について。私は、保護者の経済状況などにかかわらず、すべての子どもたちが等しく教育を受けることができる環境を整備していくことは、子どもたちの夢と希望を実現する上で大変重要と考えている。

 道教委では、これまで、高校生がいる低所得者世帯に対する就学支援金などの各種支援制度の紹介、スクールソーシャルワーカーの配置の拡充、放課後子供教室などの多様な学習機会の提供や子どもの居場所づくりなどに取り組んできた。

 今後についても、30年度に設置した、保健、福祉、教育、その他関係団体等で構成する地域ネットワーク会議も活用しながら、関係機関と連携して各般の取組を進めるとともに、学習指導員の配置による放課後指導や、デジタル寺子屋事業など地域オンライン学習拠点の確保、さらには、子どもたちの不安の解消や互いに共感できる機会の充実を通して、コロナ禍にあっても、生まれ育った環境に左右されることなく、子どもたちに健やかな学びが保障されるよう努めていく。

O真下委員 コロナ禍という非常に不安な時代を経て、子どもたちが夢と希望を実現できることについては、力を合わせていきたい。

(道議会 2020-12-17付)

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 11日の4定道議会本会議で、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置条例(給特法条例)の一部を改正する条例案が原案どおり可決された。施行は来年4月1日から。

(2020-12-14)

道議会文教委員会(令和2年12月10日) 国などの動向注視 適切な職員手当を 感染判明後の学校消毒作業

 学校の消毒作業について質疑が行われた。  阿部正幸総務課長は、国の衛生管理マニュアルでは児童生徒や教職員の感染が判明した場合、必ずしも専門業者を入れ施設全体の消毒を行うことはないとしてい...

(2020-12-11)  全て読む

道議会文教委員会(令和2年12月10日) 適切な運用に向け十分な話し合いを 1年単位変形労働

 1年単位の変形労働時間制について質疑が行われた。  松本邦由教職員局長は、制度の対象者の決定に当たっては、校長が職員と十分話し合って個々の状況を汲み取ること、勤務日ごとの勤務時間も事前に...

(2020-12-11)  全て読む

給特法改正条例案を承認 在校等時間縮減へ付帯意見も 道議会文教委員会

 道議会文教委員会は10日、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置条例(給特法条例)の一部を改正する条例案を承認した。教職員の在校等時間縮減に向けて実効性の高い働き方改革に...

(2020-12-11)  全て読む