教育大附属札幌小中ふじのめ学級 研究紀要① 学びの土台 着実に埋め 小学校算数 1対1対応で個数比較
(札幌市 2020-12-23付)

 道教育大学附属札幌小学校(高久元校長)、附属札幌中学校(萬谷隆一校長)の特別支援学級(ふじのめ学級)は、研究紀要第50集を発行し、市立小・中学校に提供した。研究主題「一人一人の“分かる”を引き出す授業づくり~深い子ども理解からはじめる支援方法」のもと、研究1年次として校内研究を推進。研究紀要には、本年度の研究内容のほか、授業実践事例などを集約した。各教科における授業実践例を連載で紹介する。

◆小学校実践例1 算数科(MT小田有佳里教諭、T1万城目徹教諭)ぴったりかな?

【題材について】

 児童の姿を見ると「数字は読める」「数唱では、1、2、4、5…と数が飛ぶ」「指差しと数がズレる」「順序数から集合数を見付けられない」「ものの大きさの判別は可能」など、数と量が独立した学びのままで相互に結び付いていないことが見受けられている。通常の発達の多くの場合、数を学習すると自然と量が身に付いていくが、本グループ(低・中学年)の児童の場合は、身に付いていないと推測される。

 数と量を丁寧に紐解き、どの段階に躓きがあるかを探り、その段階の学びを着実に埋めていくことが、小学校高学年の算数から、中学校の数学へと学習を進めていく上で必要不可欠になると考える。

 そこで、本題材においては、1対1対応によって、ものの個数を比べ、同等・多少を判別する学習に取り組む。1対1対応に取り組む児童の姿から「どの段階に躓きがあるのか」「特性と合わせてどのような支援が必要か」「数と量を結び付けるためにどのようなアプローチをするか」などについて検討し、これからの数と量の学習と、算数の学びにおける確実な土台を習得するための考える機会としたい。

【題材の目標】

▼1対1対応することによって、2つの数を比べて、数の大小が分かる

▼1~5までのものの個数を正しく数えたり、数字を使って表したりすることができる

【指導計画(9時間扱い 本時3/9)】

▼主な学習活動

▽おなじでわけよう

 同じものを集めて、2グループに分類する(例=りんごとバナナ)。

 同じ種類のものを集めて、2グループに分類する(例=動物とお寿司)。

 同じものでも、大きさの違いに着目して、2グループに分類する(例=大りんごと小りんご)。

▽ぴったりかな?(本時1/5)

 具体物と具体物の1対1対応によって、ものの個数を比べて、同等・多少を知る。

 具体物と半具体物の1対1対応によって、ものの個数を比べて、同等・多少を知る。

 半具体物と半具体物の1対1対応によって、ものの個数を比べて、同等・多少を知る。

 ものの個数を、数詞を使って数える。

 数えた数詞から数字を選ぶ。

▽くらべてみよう

 ゲーム遊びで獲得した自分の得点を、半具体物を用いて表す。

 自分と友達の得点を半具体物で表し、1対1対応することによって、数の大小を判別する。

 得点(箱に入ったボールの数)を数えたり、数字で表したりする。

【本時の目標】

▼1対1対応することによって、1~5までのものの個数を比べ、同等・多少が分かる

▼1~5までのものの個数を、数詞を使って数えることができる

【本時の展開】

▼学習内容

▽みんなでパーティーをしよう

具体物と具体物の1対1対応

 配るもの(対応させるもの)に注目する。

 ストローやお皿、牛乳などを1人に1個ずつ配る。

 足りない場合は、教師から足りない分を受け取る。

 一つと一つを対応させることを確認する。

 余った場合は、机の上に置いておいてよいことを知る。

▽ぴったりかな?

具体物と半具体物の1対1対応

 配るもの(対応させるもの)に注目する。

 マグネットなどを1つに1個ずつ対応していく。

 足りない場合は、教師から足りない分を受け取る。

 一つと一つを対応させることを確認する。

 1対1対応をした後に、全員で数を数える。

▽本時を振り返る

▼教師の関わり

▽取り組みやすい環境づくり

 最初に配り終えた状態の写真を提示し、終わりを明確に示す。

 給食などで児童が普段から触れたり、配ったりしているものを教材として用いることで、日常場面に近い状況を再現する。

▽動作を用いた気付きの共有

 児童から「足りない」「余った」など気付きが生まれた際には、児童の思いを言語化するとともに、動作を用いて全員で共有できるようにする。

▼支援

▽集合の見方を強化

 対応させるものへの意識と集合としての見方を高める。

 対応させるものは、重ねたりくっつけたりせず、並べた状態で全体が見えるようにする。

▽1対1対応内でのスモールステップ

 具体物と具体物の1対1対応から具体物と半具体物の1対1対応につなげるために、1対1対応に細かく段階を付ける。

▽1対1対応の段階

①具体物と具体物

②顔写真に具体物

③ぴったりポケット(透明)に円形の立体物

④ゆったりポケット(透明)に円形の立体物

⑤顔写真にマグネット

⑥動物や花のイラストにマグネット

【考察と今後に向けて】

▼授業の成果と課題

 本題材では、児童の数と量の学習におけるつまずきを探り、その段階の学びを着実に習得していくことを大切にした。1対1対応に細かく段階を付けて学習を進めたことによって、1対1対応による多少の判別は全児童が確実に習得することができた。多少の判別では、児童の執着も影響するため、使用する具体物の選定が重要であったと考える。

 しかし、半具体物を使用した際には、1対1対応の結果を公平に見て、多少を正しく判別することができていた。今後も、必要なレディネスを整え、着実に学びを進められるよう、児童の躓きを丁寧に見取り、系統性を大切にした実践を模索し続けていきたい。

▼研究の視点から振り返って

 数と量における児童の躓きの段階を丁寧に紐解き、一つ一つの段階を着実に埋めて学習を進めていくことにより、児童の数への意識は明らかに高まった。生活場面でも、自発的に数を数えたり、数を使おうとしたりする姿が多くみられた。このことから、知的障がい児教育においては、系統性をもちながら学びの土台を着実に埋めること、スモールステップで学習を進めていくことの重要性があらためて示された。

(札幌市 2020-12-23付)

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