教育大附属札幌小中ふじのめ学級研究紀要② 物語の世界に入り表現 小学校国語 自然な言葉で気持ちを(札幌市 2020-12-24付)
◆小学校実践例2 国語科(MT山崎貴博教諭、T1八島奈央教諭)スイミー
【題材について】
国語科八島・山崎グループは、3年生1人、5年生1人、6年生4人の計6人で編成されている。読み聞かせの経験は低学年のころから多く、読み聞かせに注目し、いろいろな絵本などに興味をもって聞いたり、好きな場面を伝えたりする姿がみられる。絵本ややさしい読み物などであれば、時間の経過や登場人物の行動などの概要をとらえることができる児童も多い。
學藝会などの行事を通して、登場人物になったつもりで演じるという経験があるため、動作化を取り入れた学習などでは、おおよその場面の様子や登場人物の気持ちをとらえることもできる。しかし、さし絵や文章を手掛かりに、場面の様子や登場人物の行動をとらえ、心情を考えることには難しさがある。
また、語いが豊富ではないため、具体的に言葉で気持ちを表現することにも難しさがある。児童にとって、豊かな人間性を育むためには、話の内容をとらえることに加え、登場人物の気持ちを想像して考える経験を積んでいくことは大切であると考える。
そこで、今回は、第2学年国語科で学習する「スイミー」を題材として扱う。
本作品は、色や形がイメージしやすい比喩表現や倒置法などの工夫が効果的に使われているため、想像を広げて読みやすいという特徴がある。
さし絵は、教科書のものだけではなく、絵本のさし絵も活用し、場面のイメージを膨らませることができるようにする。さらに、さし絵に動きを加えたもの(動く絵本)の活用や、新たなさし絵を増やすといった教材・教具を工夫することによって、登場人物の気持ちをより考えやすくする。
さし絵を効果的に活用することは、場面をとらえ、想像する手助けとなり、場面の様子や登場人物の気持ちを考える活動には有効な手立てであると考える。
指導に当たっては、海の世界に入っている雰囲気を感じながら学習を進めていけるように、さし絵をスクリーンに大きく映し出す。また、登場人物の気持ちの状態や程度を言葉だけではなく、表情から選択したり、吹き出しを活用して登場人物の台詞を考えたりする活動を取り入れる。本単元を通して、想像を広げながら読む楽しさを味わわせたい。
【題材の目標】
▼読み聞かせを通して、いろいろな語句や表現にふれたりすることができる
▼絵本を読み、内容の大体をとらえ、さし絵などと結び付けて、登場人物の行動や場面の様子などを想像することができる
▼図書に親しみ、思いや考えを伝えたり受け止めたりしようとすることができる
【指導計画(9時間扱い 本時4/9)
▼主な学習活動
▽スイミーを読んでみよう(3時間)
▽スイミーの気持ちや場面の様子を想像しよう(6時間)
【本時の目標】
絵本を読み、内容の大体をとらえ、さし絵などと結び付けて、登場人物の気持ちや台詞を考えたりすることができる。
【本時の展開】
▼学習内容
▽前時までの学習を思い出そう
▽読み聞かせを聞こう
▽場面の様子を想像しよう(はじめの場面)
▽場面の様子を想像し、スイミーの気持ちを考えよう(まぐろに襲われた場面)
▽さし絵から場面の様子を想像し、感じたことを発表する
▽まとめ
▼教師のかかわり
▽前時の確認・物語の内容を確認
▽動きのあるさし絵を提示
▽場面を焦点化したさし絵を提示
▽振り返り
▼支援
▽物語の世界に入ることができる視覚教材の提示の工夫
海の世界に入っている雰囲気を感じながら学習を進めていけるように、絵本のさし絵をスクリーンに大きく映し出す。
物語の場面をとらえ、想像する。
手助けとなるように、動きを取り入れたさし絵(動く絵本)を活用する。
▽登場人物の気持ちを表現するための教材の工夫
気持ちの状態や程度を考えることができるように、言葉で表現するだけではなく、イラストの表情を選択して表現できるようにする。
▽登場人物の気持ちと場面の様子を結び付ける活動の工夫
まぐろに襲われた場面の様子をより深くとらえることができるように、吹き出しを提示し、登場人物の気持ちや場面の様子をもとに、せりふを考える活動を取り入れる。また、せりふを考える際に、スクリーンに映し出されているさし絵の動きに合わせて、ペープサートを使って動作化しながらせりふを考えることができるようにする。
【考察と今後に向けて】
▼授業の成果と課題
本題材の活動を通して、児童からは、主人公スイミーの立場になって気持ちやせりふを考えようとする姿がみられた。絵本のさし絵に動きを入れたものをスクリーンに大きく映し出したり、ペープサートを活用したりすることによって、物語の世界に入り、自分の思いや考えを表現する姿を引き出すことができたと考える。
しかし、場面の様子をとらえるための支援は決して十分ではなかったように感じた。さし絵に動きを入れるだけではなく、場面の状況をより焦点化したさし絵を入れるなどの工夫をし、場面を細分化するとより場面の様子をとらえやすくなったのではないかと考える。
研究の視点から振り返って今回の国語科グループの授業では、情報量の調整や情報の提示の仕方、視覚的教材の工夫などの支援を要する児童が多かった。また、学習場面の環境設定に非常に大きく左右される児童もいた。そのため、さし絵の提示の工夫(動きを取り入れたさし絵)、ペープサートを使ってさし絵の動きに合わせた動作化、大きなスクリーンに映し出す環境設定などの支援を取り入れた学習内容とした。
場面の状況をとらえたり、登場人物の心情を考えたりすることが難しい児童の実態であるが、これらの支援を取り入れたことによって、場面の様子をおおよそとらえることができ、児童からは、自然な言葉で主人公の気持ちやせりふを表現する姿がみられた。
(札幌市 2020-12-24付)
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