【4種校長会長に聞く】 第3回 北海道高等学校長協会 廣田定憲氏 教育活動機会確保し質高め
(関係団体 2021-01-12付)

4種校長会長インタビュー廣田会長
4種校長会長インタビュー廣田会長

―校長協会として新年の展望をお聞かせください。

 年が明けましたが、ことしもコロナ禍は続くという前提で学校経営および協会運営を推進していかなければいけないと考えています。

 当初は新型コロナウイルス感染症に関する情報が少なく、国も道教委も教育活動を止めるという考え方でした。

 現在は新たな知見が得られる中で、国も道教委も感染防止と教育活動を両立させるという考え方にシフトしています。感染状況によってブレーキとアクセルのバランスを取ることは必要ですが、一定程度未曾有の事態を経験し、学校における感染防止策も明らかになってきましたので、生徒・教職員の安全と安心を確保することを大前提として、「できない」ではなく、「どうしたらできるか」という発想に立って、教育活動の機会を確保し、その質を高めていくことが大切であると考えます。

 昨年10月から年末にかけて感染が拡大し、多くの学校で感染者が確認されました。休校、学年閉鎖、学級閉鎖の措置を取らざるを得ない状況になった学校も増えました。保健所や設置者との対応、保護者からの問い合わせなど該当校からの情報は、実際に当時者となった際に非常に有益なものであり、今後も校長間の情報交換を密にしていきたいと考えています。

 昨年の全国高等学校長協会(=全高長)の研究協議会はほとんどがオンラインで行われました。本協会事務局会議も複数回にわたりオンラインで行いました。これは、コロナ禍がもたらした新たな形態であり、ことしはさらにオンラインと対面、双方のメリットを取り入れた新たな協会運営の形を模索していきたいと考えています。

 このたび、4年の歳月をかけて本協会調査研究部管理運営委員会が調査研究を進め、『北海道版 管理職の手引き』が完成しました。文献や資料による根拠といった調査研究にとどまらず、本道校長の実践や経験から得たノウハウが惜しみなく掲載され、実践的で活用しやすい内容となっており、全国に誇れる手引きであると自負しております。

 4月には、新たに採用される校長先生を仲間として迎えることになります。手引きが、1年目の校長先生方が自信をもって学校経営を推進するための知恵袋になると同時に、次世代を担う管理職の資質・能力の向上を図り学校力を高めるものとなることを期待しています。

 昨年10月に大学入試センターから新学習指導要領に対応した大学入学共通テストの出題教科・科目等の検討状況が公表されました。大学入試センターから全高長に対して意見の取りまとめが依頼され、本協会としても全会員から意見を集約し、それに基づき昨年11月の全高長協会長会議で北海道としての意見を述べました。

 昨年11月30日に全高長から大学入試センターに対して意見書が提出されましたが、本協会の多くの意見が反映されたものとなっています。ことしも各校の実情に基づいた率直な意見をまとめ上げ、本協会の意見を全国の場で積極的に発信していきたいと考えています。

 教育再生実行会議第11次提言を受け、中央教育審議会の新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループでは、高校教育の在り方について検討が進められ、昨年11月に審議まとめが示されました。スクール・ミッションの再定義、スクール・ポリシーの策定・公表、「学際的な学びに重点的に取り組む学科」「地域社会に関する学びに重点的に取り組む学科」などの普通科改革、定時制・通信制課程等における多様な学習ニーズへの対応などが示されています。

 高校教育改革も含め、「令和の日本型学校教育の構築を目指して」として本年度中に中央教育審議会の答申がまとまる予定です。コロナ禍においても、教育改革の動きは止まることはなく、むしろ加速度を増しています。

 本協会としては、全高長とも連携を図りながら、校長間で教育改革の流れを理解・共有し、つぎへの備えをもった学校経営を推進していきたいと考えています。

―校長協会の抱える課題と対策をお願いします。

 本年度は出退勤管理システムにかかる業務、ICT教育環境の整備に加え、新型コロナウイルス感染症への対応で副校長・教頭先生方の負担が例年以上に大きくなっていると感じています。昨年11月末には、道教委から副校長・教頭先生に対して調査・報告事項等の見直しにかかるアンケート調査が実施されました。

 私たち校長も副校長・教頭先生の日々の業務を正確に把握し、負担軽減の具体的な動きをとっていく必要があると考えています。

 教頭候補者の確保は、本道高校教育において先延ばしできない喫緊の課題であると認識しています。昨年の道教委との文教施策懇談会において、本協会から教職員課、校長協会、教頭・副校長会の3者による協議会の開催と教職員の意識アンケートの実施について提案しました。

 教職員課からはこの提案を前向きに受け止めていただき、3者による協議を行ったところです。教頭候補者の確保については、道教委とも十分連携し、打てる手はすべて打っていくという姿勢で臨んでいきたいと考えています。

 道立学校職員からのパワー・ハラスメントにかかる相談が複数件あり、その中には校長から受けたとする相談も含まれているとのことです。

 私たち校長は、安全かつ快適な職場環境の形成に努める責務があります。校長を支える副校長・教頭先生、そして、学校教育の直接の担い手である教職員の理解と協力がなければ、自分の思い描く学校経営を推進できるはずがありません。

 教職員をはじめ生徒・保護者・地域住民は校長の言動一つ一つに注目しています。パワー・ハラスメント根絶のため、まずは私たち校長が自らの言動についてパワー・ハラスメントに該当しないかどうかを客観的な視点で省みることが必要であると考えます。

 出退勤管理システムが導入されたことによって、教職員の勤務時間を客観的に把握することが可能となりました。

 「北海道アクション・プラン」では時間外在校等時間を1ヵ月45時間以内とすることを目標としていますが、昨年の実態調査では、半数以上がその水準に達していない状況にあります。過労死ラインと言われている月80時間を超える教職員もみられます。

 教員が健康で生き生きとやりがいをもって勤務しながら、学校教育の質を高められる環境を構築すること。簡単ではないかもしれませんが、各校の効果的な取組を本協会として広く共有して自校の実践に取り入れていくとともに、道教委とも学校現場の実情を踏まえた協議を進め、課題解決の方策を探っていきたいと考えています。

―新年度の重点的取組を伺います。

 コロナ禍がもたらしたものとしてICT環境の整備が挙げられます。ICT機器の整備が加速度を増して進められている中、新年度はICTをいかに活用していくかが大きな課題となっていくと考えています。

 昨年の全高長協会長会議において、すでに1人1台端末が実現している先進県では、端末の管理とともに一部の教員だけではなく学校体制としてどのように活用していくかが課題であるとの話がありました。

 本協会としては、新年度の重点目標に「ICTの活用による主体的な学びの育成」の文言を新たに加え、公立私立問わず先進的な取組を行っている学校の実践例を幅広く共有し、ICTを効果的に活用した教育を研究・推進していきたいと考えています。

 新たな時代の学校経営を担う後継者の育成は本協会の使命であると考えています。3月には、本協会主催で採用校長のための事前研修会および昇任教頭のための事前研修会を開催し、採用校長、昇任教頭として4月から不安なく職務を遂行できるように支援していきたいと考えています。各支部・ブロックにおいても教頭・副校長研修の充実・拡充を図るなど、管理職の資質・能力の一層の向上と管理職間のネットワークの構築を進めていきたいと考えています。

 現在、道教委主催で代表校長研究協議会が年4回、全道高等学校教育改善研究協議会がTV会議の形で年2回開催されています。

 本協会では、各支部長を通して、会員校長から道教委の施策についての質問・意見・要望・提言等を集約し、事前に道教委に提出して回答を得た上で研究協議に臨んでいます。

 広域にわたる本道高校の学校経営上の課題や学校現場の困り感を伝え、実態や状況を踏まえた適切な対応・対策を進めてもらうために、新年度もこの形は継承して実効性のある研究協議会としていきたいと考えています。

 ひろた・さだのり

 昭和59年北海道大卒。平成16年奥尻高教頭、18年美瑛高教頭、21年札幌東高副校長、24年知内高校長、26年静内高校長、28年北広島西高校長、29年札幌北陵高校長を経て、31年から札幌南高校長。

 昭和36年7月30日生まれ、59歳。虻田町(現・洞爺湖町)出身。

(関係団体 2021-01-12付)

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