道高教組 定期大会で運動方針 変形労働反対の取組推進
(関係団体 2021-03-12付)

 道高教組(尾張聡中央執行委員長)は6日から2日間、第123回定期大会をオンライン開催した。2021年度運動方針を決定。公立学校への1年単位の変形労働時間制導入を許さず、市町村に条例・規則を制定させないための陳情・請願や、学校に導入させないための共同の取組を追求していくことなどを盛り込んだ。運動方針の概要はつぎのとおり。

【運動の基調】

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって、社会の弱点や課題が顕在化し、これまでの政治や社会システムの在り方を考え直す機運が高まっている。教職員組合もこれまでの運動の在り方について、立ち止まり考える機会となった。感染防止対策によって、大規模での会議や学習会などの場が減り、私たちは直接、議論、対話することが困難となった。

 一方で、オンラインという新たなつながり方を見いだし、また、一ヵ所に大人数で集まることができない中、地域や職場など足元でのつながりの大切さをあらためて認識した。

 コロナ禍が明らかにしたことは、命令型縦社会は危機に対して不向きであり、助け合い横社会は柔軟でしなやかに対処できるということである。

 子どもの実態や家庭の状況をよくつかみ、正確な情報や科学的知見、職場での民主的な議論によってこの困難を乗り越えることが今求められている。

▼新型コロナウイルス感染拡大に対して、今こそ、憲法と教育の条理に立脚した、子どもの「いま」から始める学校づくりを目指す

▽長期的な視野で、すべての子どもと教職員の命と健康・安全を確保するため、必要な条件整備を求める取組を進める。

▽すべての子どもの成長と発達を保障する教育の実現を目指し、子どもの声を聴き取り、子どもの実態を重視して、一つ一つの学校・地域から多様で多彩な参加と共同の学校づくり、教育課程づくりを推進する。

▽幅広い国民的対話と共同、合意づくりを重視しながら、20人以下学級を展望し、国の責任による少人数学級の早期実現、無償教育の前進を目指す国民的な運動を推進する。

▼9条改憲を絶対に許さず、憲法を守り、生かすたたかいを進める

▽政治的教養を育むべき政治教育は、すべての子どもたちに保障されなければならないことから、主権者教育を豊かに積み重ねていく実践に取り組む。教職員の政治活動の自由と教育活動を区別し、保護者、地域、教職員の合意形成を図りながら、取組を進める。

▼連帯と助け合いの職場づくり、仲間づくりと職場活動の活性化を目指す

▽全教共済の加入促進とも結んで、すべての教職員を対象にした対話と組合加入の呼びかけに踏み出し、要求の実現、職場での支え合いを通して、組織強化拡大の飛躍をつくる。

▽道高教組の存在と役割に確信をもち、職場で「つながる」「配る」「声を上げる」取組に参加する組合員を増やし、「声を上げれば、何かが変わる」の輪を広げる。

▽これまで築いてきた組合運動、教育実践、子ども観などを次世代の組合員に継承し、青年層、中堅層、ベテラン層の互いの良さを生かした共同の取組を進める。

▽誰もが安心して働ける温かい職場づくり、連帯と助け合いの職場づくりを目指す。事務職員、現業職員などの少数職種や非正規職員の要求を掘り起し、具体的な要求に基づいたつながり、学習、運動を重視する。

▽すべての教職員の賃金改善、長時間過密労働解消、命と健康を守る課題など、切実な教職員の要求を実現するため、職場での対話と共同を重視する。

【教育】憲法と子どもの権利条約が息づく学校づくり

▼憲法と教育の条理に立脚した教育を実現する取組

▽日本国憲法、子どもの権利条約の意義・内容を子ども・教職員・保護者・地域に広げる。個々の生活との接点と日々抱えている課題を大切にし、どの子どもも大切にされる教育制度・政策への転換を求める共同の運動を広げる。

▽コロナ禍における学びの在り方と、コロナ後の学校を展望し、人格の完成を目指した教育課程づくりについて、教職員、地域、保護者とともに合意形成の取組を進める。新学習指導要領・高大接続改革・ICT教育をはじめとする諸課題の学習を、学びカフェ、支部教研や地域教研、学校・職場づくり学習会、全道合研など、コロナ禍でも工夫した学習会を行う。

▽教育の完全無償化・高校統廃合・子どもの貧困など教育に関する諸課題を保護者・地域に広げ、参加と共同の学校づくりを意識した教育課程づくりを推進する。民主的な団体と連携し、全道合研をはじめ学習会を計画し、民主的な教育に対する理解を進め、共同の運動を広げる。

▽障害者権利条約の理念に基づいたインクルーシブ教育を実現する取組を進める。高校における特別支援教育についての議論を深めるとともに、合理的配慮や特別なニーズに応じた支援について学習・討議して、認識の共有を進める。

▽発達段階や個々の実態に応じて主権者教育を進める。子どもや保護者との合意形成を図りながら丁寧に行うとともに、教育実践を掘り起こし、子どもの意見表明権を大切にし、教育課程全体へ位置付けされるよう、学校で議論しながら取組を進める。

▽道徳の教科化、教科書検定・採択制度改悪、教育への不当な介入に反対し、子どもたちの思想・信条の自由、良心の自由などを守るとともに、高校生の政治活動の自由を保障する取組を進める。日の丸・君が代の押し付けを許さず、憲法19条を立脚点に、子ども、教職員の内心の自由を守る取組を進める。

▽道教委による教職員への権利侵害と、自主的研修・教育活動への不当な管理統制を許さない組織的な取組を進める。教特法第22条2項の本来の趣旨を職場に浸透させ、研修権の積極的行使によって教職員の自主的な研修権を守る取組を進める。

▼教育条件整備と修学・進路保障を求める取組

▽20人以下学級を展望し、国の責任による少人数学級の早期実現、教職員定数改善計画の策定、給付制奨学金や無償教育の前進を目指す運動を推進し、ゆきとどいた教育を求める全国署名はもちろん、みんなのえがお署名にも総力を挙げて取り組む。

▽ゆきとどいた教育、民主的な地方教育行政の実現を求め、道教組や民主団体などと共同して、地方自治体・議会・教育委員会への要請行動などの働きかけを進める。

▽道教委の高校「多様化」再編・統廃合を許さず、地域の高校の教育的価値を再認識し、守り育てる運動を、子ども・保護者・教職員・地域の人々と共同し進める。20人以下学級を展望するため、これからの高校づくりに関する指針の抜本的な見直しを求める。

▽特別支援学校の過大・過密・狭あい化の解消を目指し、保護者、関係団体と共同を広げ、私たちが求める特別支援学校設置基準の策定を求める運動を進める。

▽通級指導教室の設置、特別支援教育担当教員・SSW・SCの配置など、高校における特別なニーズに応えるための条件整備を求める運動を進める。

▽貧困の格差拡大を許さず、高校生・若者の就職を保障し、労働者の雇用と8時間働けばまともな暮らしができる社会の実現を目指して取組を進める。『めざせ!ディーセントワーク(労働者の権利手帳)』などを活用した労働教育の実践を広げる。

【労働】賃金・労働条件改善を求めて

▼新型コロナウイルス感染防止、1年単位の変形労働時間制導入反対、長時間過密労働を是正し、教職員の命と健康を守る取組

▽学校における新型コロナウイルス感染を防ぐため、職場からの要求に基づき労働環境の改善と教職員の働き方改善を求める取組を強化する。とりわけ、校内での「3密」解消に向けた施設・設備の改善、速やかな人的措置や資材配給、教職員の検査体制確立、在宅勤務などの勤務体制の弾力化等を重視して取り組む。

▽公立学校への1年単位の変形労働時間制導入を許さず、教職員定数改善、持ち時間数の上限設定、少人数学級推進など抜本的対策を対峙させてたたかう。

①1年単位の変形労働時間制の問題点と国会審議や道教委交渉の到達点を明らかにした討議資料、学習動画等を活用し、引き続き職場・地域での学習を進める。管理職も含めた職場内での対話を重視し、学校に導入させない職場世論の形成に取り組む。

②地域労連はじめ他労組、民主団体や校長会、PTA連合会など教育関係諸団体等に要請や懇談を行い、市町村に条例・規則を制定させないための陳情・請願や、学校に導入させないための共同の取組を追求する。

③突然の休校や長期休業等の短縮が今後も実施され得ることを踏まえ、学校で制度を運用させないよう引き続き取り組む。

▽すべての職場で、管理職も含めた全教職員の協力のもと、長時間過密労働の解消を課題として取り組む。

①職場要求書を作成し、超勤解消ほか、職場課題の解決に向け校長交渉・話し合いを行う。

②これまでの勤務実態の弊害や課題を出し合い、長時間過密労働解消のための合意づくりを進める。報告書等の簡略化、諸会議の精選と効率化、休憩時間の確保など、「不要な仕事は減らし、休みを確保する」ことに取り組む。

③勤務時間の客観的把握が使用者の責任によって、労働者保護の観点から適正に行われるよう、出退勤管理システムの改善を求めるとともに、持ち帰り勤務や休憩時間中の勤務などシステムで把握されない時間を可視化する取組を進める。

④教職員の生活と健康を守る立場と、子どもたちの豊かな成長を保障する立場から、部活動の在り方について検討し、学校や地域で生徒も含めた関係者の合意づくりを進める。

⑤36協定締結の意義を職場に広げ、労使対等の原則・民主的な手続きを確保するとともに、職場全体の残業規制に位置付けるなど超勤縮減につなげるよう取り組む。

⑥組合員が積極的に衛生管理者になって、労働安全衛生活動の活性化を進めるとともに、長時間過密労働とハラスメントの根絶を目指して、実効ある取組を追求する。

▼賃金・労働条件改善を求める取組

▽職場を基礎に地域経済を支える賃金権利闘争を官民共同で進める。道労連に結集し、最低賃金引き上げや「非正規差別NG」「学校総がかり」などの運動を共同で取り組む。

▽教職員の専門職性や広域な北海道での勤務実態に見合った賃金・労働条件の改善を求める。実習教員等の2級格付改悪をはじめとする人事評価制度と賃金・処遇リンクの問題点を明らかにしながら、成果主義の強化・拡大を許さないたたかいを強める。

▽定年引き上げ、雇用と年金の確実な接続を求めるとともに、希望者全員の再任用、寒冷地手当支給など、均等待遇の観点から再任用制度の改善を求める取組を強める。

▽臨時・非常勤職員の正規教職員との均等待遇を求めるたたかいを進める。導入から2年目となる会計年度任用職員制度のさらなる改善と諸課題の解決に向け取り組む。

▽すべての教職員が仕事と家庭を両立し、安心して働き続けられる労働条件の改善を求めて取組を進める。

【憲法】憲法改悪を許さず、国民の暮らしと平和を守る

▼貧困と格差の拡大、社会保障改悪・泊原発再稼働に反対し安心して暮らせる北海道へ

▽コロナ経営危機による失業・倒産・雇い止め・内定取り消しの救済、高校生の就職保障とともに、非正規差別NG、有期雇用労働者の無期転換実現、最低賃金引き上げ、変形労働時間制導入反対の取組を道労連や地域労連とともに進める。

▽地域存続や持続可能な社会を目指し、地域を切り捨てる鉄路廃止、公立・公的病院再編統合に反対し、公共交通を守り、住民の命と暮らしを守る運動を進める。通学生の足の確保は教育の機会均等を保障する視点からも重視する。

▽道内自治体の子どもの貧困対策、地域創生計画大綱の検証・見直しに取り組む。

▼協力・共同を一層広げ、平和で安心して暮らせる政治への転換を

▽私たち自身が当事者意識をもち、主権者として声を上げ続けることが、主権者教育を前進させる上で重要であると自覚して、職場での政治論議をタブーとせず、政治を語り合う雰囲気の醸成、教職員へ投票権の行使を日ごろから呼びかける。

▽組合活動や教職員の政治活動に対する不当な規制に反対し、教職員の政治活動の権利と言論・表現の自由を守るたたかいに全力を挙げる。

【組織】仲間づくり

▼組織拡大強化のための新3ヵ年行動計画に基づき、仲間づくりのつぎなる飛躍を生み出す

▽新3ヵ年計画2次案の議論を通して、前年度末の組合員現勢の回復を早期に達成し、現勢1割拡大の実現を目指す。

▽組合員・分会・支部・本部間のつながりを強化するため、職場マップづくり(仮)、リアルなかま・つながるプロジェクト(仮)を具体化し、分会オルグに取り組む。

▽引き続き持続可能な組織、運動の在り方について議論を進めるとともに、支部・専門部の体制強化、仮称・全教北海道への結集に向けての議論を進める。

▼コロナ禍の中での「学習」「交流」の場づくりの工夫、年間を通した「新採用・期限付総当たり」の追求

▽3~5月を「春の集中月間」とし、学びカフェや共済学習会などのキャンペーンを活用し、職場での対話の場づくりを追求する。

▽コロナ禍での、障害児教育はるがく、なつフェスの開催方法を模索し、青年教職員の要求に基づく、学び、集まりの場づくりを追求する。

▼「つながる」「配る」「声を上げる」活動を通して、高教組の「見える化」を広げる

▽組合員同士の日常的な声かけ、つながり合いを大切にし、困っている仲間を助け合う分会づくりを目指す。分会会議の定例化や本部からの発送物の共有化などで、組合員間の情報共有と、取組に対する意思統一を図る。

▽職場での職場新聞、組合掲示板の活用、高教組情報・速報・支部ニュース・職場討議資料・SNS・ホームページ・メーリングリスト等による情報共有など、道高教組の取組や考え方を未組織者に大きく広げ、高教組活動の「見える化」に取り組む。

▽高教組メールマガジンを立ち上げ、すべての組合員が最新情報を入手できるようにする。

▽アンケートや対話の取組を通して、職場の教職員の要求を束ね、職場要求書提出に取り組み、校長との交渉・懇談を通して、要求の前進を図る。

▼連帯と助け合いの職場づくりに向けて

▽政策的に職場の分断がもち込まれている教育現場において、職場でのコミュニケーションを深めることが求められる。悩みや不安を率直に語り合える民主的な職場づくりに努める。

▽民主的な学校運営、創意あふれる教育活動を進めるために、教職員間の日常的で率直な意見交換はもちろん、管理職との対話も重視し、集団的な議論に基づく合意形成に努める。

▽職場学習会、歓送迎会、レクリエーションなど、すべての教職員を対象とする多様な集まる場を追求する。

(関係団体 2021-03-12付)

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