札幌市社会教育委員会議 地域課題に対応する社会教育の在り方 第2回 地域防災の促進が課題 地震以降、市民の意識向上(札幌市 2021-06-28付)
◆みえてきた現状と課題
災害の経験からみえてきた札幌市の現状と課題について、『平成30年北海道胆振東部地震検証報告書』と各委員の経験をもとに整理した。
【災害に対する市民の意識と行政の取組】
▼災害に対する市民の意識 (平成30年北海道胆振東部地震検証報告書)
札幌市が実施する防災訓練や講演会などの防災関連事業へ参加したことがある(参加したい)が、地震発生前20・2%に対し地震発生後58・4%に増加。
▽考察=地震以降、災害に関する学習ニーズは増加している
地震発生時に必要とした情報は、停電・復電情報が82・8%。情報の入手手段としては、停電中、ラジオが最も高く68・1%。復電後は、テレビが最も高く90・9%。携帯電話、タブレット、ノートPC等によって情報を得ていた人は停電中52・8%。このうち、SNSによって情報を得ていた人は33・2%。地震発生後の札幌市の対応に対する評価のうち、改善すべき点は「停電の復旧見込み等を含む情報発信の遅れ、不足」が441件、「市が何をしているか分からなかった」が225件、「デマ情報等への対応」が34件となっている。
▽考察=スマートフォン等の普及によって、いち早く情報を知るために最も利用するメディアはインターネット。ただし、「信頼できる情報を得る」ために最も利用するメディアはテレビ・ラジオ
▼市民から寄せられた意見や新聞報道等による指摘
▽交通機関の運行や避難所開設の状況など、外国人観光客に対して必要な情報を十分に提供することができていなかった
▽要配慮者から、避難所の場所を知らない、分からないという話を多く受けた
▽要配慮者の家族からは、避難所となる体育館のような場所に、障がいのある方が馴染めるか不安という意見を聞く
▽マンションで暮らす耳が不自由な夫婦に対し、普段の近所付き合いがないにもかかわらず、心配して声をかけてくれた住民がいた。災害は近隣の住民同士をつなげる契機にもなったが、普段から関係ができていれば、よりスムーズな協力が可能となるだろう
▼市民意識調査(平成31年3月実施)
▽地域の交流、ふれあいができる機会という言葉のイメージ(複数回答可)=「町内会等の地域での活動」61・2%。「ご近所付き合い」41%
▽「地域の方と身近に交流・ふれあいができる機会」がないと感じている人=49%
▽「参加したいと思える交流・ふれあいの機会」がないと感じている人=48・1%
▽「地域の方と身近に交流・ふれあいができる機会」に参加したことがない人=50・7%
▽考察=町内会活動や近所付き合いなど地域の身近な交流の機会がなく参加したことがないという人は約半数
▼災害に関する行政の取組
危機管理対策室では、出前講座を開催し、市民への情報提供と対話の一環として地域に出向き実施する施策や事業の説明を行っている。また、緊急情報や避難場所、安否情報など防災情報を集約したスマートフォン用の市防災アプリ「そなえ」で災害に関する情報が配信されている。
市教委では、生涯学習センターで実施している学習機会提供事業「さっぽろ市民カレッジ」における、ファシリテーターやボランティア養成講座、地域の課題解決への主体的な取組や、まちづくりへの参画を促すリーダーの育成を図っている。一方、各区においても町内会の自主防災活動の中心的な役割を担う防災リーダーを育成するための「防災リーダー研修」が開催されている。
また、災害に関する資料として、『地区防災計画作成事例集』(危機管理対策室)や『災害時支え合いハンドブック』(保健福祉局)も発行されている。
▼現状からみえてきた社会教育の課題
こうした災害に対する課題を整理する中で、みえてきた対応策は、他の地域課題を解決することにもつながり、応用することが可能と考えた。
そこで、つぎのとおり、社会教育における課題に対して、参考にできるものを整理した。
▽震災後に防災関連の講座および参加者数は増加しているが、仕事や家庭の事情で講座等に参加できない人もおり、学習機会の提供方法が課題といえる。併せて、地域住民が自発的に参加したいと思える環境づくりも重要。
また、子どもを対象にした防災関連の学びの機会を創出・充実させるとともに、その学びを通じた子どもから大人への波及・浸透が必要
▽インターネットやSNS等の普及・活用によって、つながる機会は増加している。しかし、情報弱者への配慮、情報モラルの教育や情報判断能力の獲得が課題といえる。さらには、情報発信力が高い若年層に対して地域活動への参加を促進することも重要
▽生活スタイルの変化に伴い、町内会活動など身近な交流の場に対する参加が少なくなっている。世代を超えたコミュニティの再構築や生活スタイルの変化に対応した新たなコミュニティの形成が必要。また、地域住民がお互いに関心を持ち顔見知りが増えるようなきっかけづくりのほか、人と人とのつながりや地域の団体・組織と行政との連携・協働の強化が求められる
▽まちづくりに参画できるリーダーや担い手を育成するために、ファシリテーターやボランティアなどの養成講座を実施することが必要。また、育成した人材が活躍できる機会の提供や、様々な分野のリーダーが情報共有できるネットワークの構築も重要。さらには、長期的な視点に立ち、子どもたちが将来の担い手となれるようなきっかけづくりも必要になる
▽防災用キットの購入など、日常的な備えを意識する人は増えているが、平常時から防災意識を高めるため、地域における防災教育の機会の提供が必要。また、住民がお互いに助け合う意識の醸成に取り組むことも重要
▽行政の支援が間に合わない災害が発生した直後は、身近な人(地域や職場など)の支え合いが必要となる。そのため、地域における要配慮者への理解や気付きの視点から地域を知る取組が重要。また、誰もがお互いに認め合い、それぞれの立場で理解し合えるきっかけづくり、すなわちマイノリティに対する理解、意識の浸透が求められる
(札幌市 2021-06-28付)
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