道議会質疑 予算特別委員会(6月29日)(道議会 2021-10-07付)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】
【質問者】
▼白川祥二委員(北海道結志会)
▼田中英樹委員(公明党)
【答弁者】
▼倉本博史教育長
▼池野敦教育部長兼教育職員監
▼鈴木淳学校教育監
▼山本純史総務政策局長兼幼児教育推進局長
▼相内修司生涯学習推進局長
▼唐川智幸学校教育局長兼ICT教育推進局長
▼中澤美明指導担当局長兼新型コロナウイルス感染症対策担当局長
▼伊賀治康教職員局長
▼岸本亮施設課長
▼井上規之社会教育課長兼生涯学習推進センター長
▼柴田亨高校教育課長兼ICT教育推進課長
▼泉野将司健康・体育課長
▼伊藤伸一生徒指導・学校安全課長
▼奥寺正史教職員課長
▼今村隆之働き方改革担当課長
◆学校の防災対策
Q白川委員 文部科学省は、大雨による河川の氾濫や土砂災害が頻発していることを受け、公立の幼稚園や小・中学校、高校など、全国の3万7374校を対象に、立地状況や防災対策について初めて調査している。浸水想定区域や土砂災害警戒区域への立地状況について、全国と道内の状況を伺う。
A岸本施設課長 浸水想定区域等の立地状況について。文科省が実施した浸水想定区域・土砂災害警戒区域に立地する学校に関する調査によると、令和2年10月1日現在で、浸水想定区域に立地している公立学校は、全国で7476校、道内は319校、土砂災害警戒区域については、全国で4192校、道内は54校、浸水想定区域および土砂災害警戒区域のいずれにも該当する学校は、全国で493校、道内は10校となっている。
Q白川委員 公立学校には、迅速に避難できるよう、避難確保計画の策定や計画に基づいた訓練の実施が義務付けられている。道内の公立学校における計画の策定や訓練の実施状況について伺う。
A伊藤生徒指導・学校安全課長 避難確保計画の策定などについて。浸水想定区域に立地する学校319校のうち、避難確保計画を策定済みの学校は273校で、全体の85・6%、避難訓練を実施済みの学校は244校で、全体の76・5%となっており、土砂災害警戒区域に立地する学校54校のうち、避難確保計画を策定済みの学校は40校、74・1%、避難訓練を実施済みの学校は34校、63・0%となっている。
Q白川委員 引き続き、市町村教委などを通じて、避難確保計画の策定や訓練の実施を求めていくとともに、防災上、必要な校舎の改修支援などについて、国に強く働きかけていくべきと考えるが、所見を伺う。
A山本総務政策局長 学校施設の防災対策について。近年における水害や土砂災害の激甚化、頻発化を踏まえ、国が作成した対策事例集では、学校教育活動の早期再開等に支障が生じないよう、施設の老朽化対策時期に合わせ、建物への浸水対策や受変電設備の浸水防止対策などを検討するよう指示されている。
道教委としては、浸水想定区域や土砂災害警戒区域に立地している学校施設について、その安全性の確保は極めて重要であると考えており、学校施設の防災対策が着実に進められるよう、補助単価の引き上げや補助率のかさ上げなど、補助制度の要件緩和を含めた財政支援について、国に対し強く要望していく。
◆教職員の働き方改革
Q白川委員 道教委の調査によると、令和元年度に、1ヵ月の残業時間が、国が上限と定めた45時間を超えた教員の割合は、小学校が56・3%、中学校が73・9%、高校が58・4%、特別支援学校が37・7%にのぼっている。さらには、管理職に定時退勤を求められて家に仕事を持ち帰る、いわゆる隠れ残業もある。
道教委として、調査結果をどのように受け止めているのか伺う。
A伊賀教職員局長 教員の勤務実態について。令和元年に実施した時間外勤務等にかかる勤務実態調査では、時間外在校等時間が45時間を超えた教員の割合が公立学校全体で56・9%と過半数を占めているほか、持ち帰り残業を行っていた教員の割合が勤務日で32・1%、週休日等で23・5%であった。
学校教育の成否は、教員の資質・能力に負うところが大きく、教員が心身のゆとりとやりがいをもって子どもたちの成長を見守ることができる環境を整備することが重要である。道教委としては、調査結果を踏まえ、個の気づき、チームの対話、地域との協働を土台とする第2期アクション・プランに基づく各般の取組を積極的かつ効果的に進めながら、学校における働き方改革をより一層推進する必要があると考えている。
Q白川委員 6月、男性の育児休業取得を促す改正育児・介護休業法が成立したが、元年度の男性の育休取得率は7・48%と極めて低い状況にある。
道内の公立学校における直近の男性の育休取得率について伺う。
A今村働き方改革担当課長 男性教職員の育児休業の取得率について。元年度の道内の公立学校における男性教職員の育児休業の取得率は4・8%となっており、特定事業主行動計画の策定時である平成27年度の3・4%と比較し、1・4ポイントの上昇となっているものの、現状では、計画の目標としている10%には達していない状況である。
Q白川委員 男性の育休取得率が低い要因とは何か、また、取得率向上に向けて、具体的にどのような対策を講じているのか伺う。
A今村働き方改革担当課長 育児休業の取得率向上などについて。男性教職員の育児休業取得率が低い要因としては、職場に迷惑がかかる、他の男性教職員も取得していないなど、育児参加に対する男性教職員の意識の醸成や、休暇を取得しやすい環境づくりが十分進んでいないことが考えられる。
道教委としては、各職場において、子育てに対する理解度を診断するセルフチェックシートの活用を図るとともに、職員のための子育てサポートブックや、男性教職員による育児休業の体験談を掲載している活躍事例集を活用した職場内研修を行うほか、出産を控えている職員に対しては、管理職員が個別に面談を行い、一人ひとりの状況に応じて指導するなど、男性教職員の育児休業の取得率の向上に努めていく。
Q白川委員 教員の長時間勤務がメディアなどで大きく取り上げられている中、道内の教員志願者数は、この10年間どのように推移しているのか伺う。
A奥寺教職員課長 教員志願者数の状況について。小学校教諭の区分では、道の選考検査を受検したのは、10年前の平成23年度の1242人に対し、本年度は576人で、666人、53・6%の減、中学校教諭では、1586人に対し881人で、705人、44・5%の減、高校教諭では、1337人に対し787人で、550人、41・1%の減、特別支援学校教諭では、338人に対し137人で、201人、59・5%の減、養護教諭では、209人に対し276人で、67人、32・1%の増、栄養教諭では、140人に対し79人で、61人、43・6%の減、合計すると、4852人に対し2736人で、2116人、43・6%の減となっている。
Q白川委員 志願者数は、小・中・高のいずれもほぼ減少傾向にあり、令和2年度の志願者数に至っては、約1割減と大幅に落ち込んでいる。
この要因をどのようにとらえているのか。
A奥寺教職員課長 志願者が減少している要因について。全国的な人材不足に伴い、学生の進路選択が多様になっていることや、広域な本道における転居を伴う人事異動が負担として受け止められていること、授業に加え、部活動や生徒指導など、業務が多岐にわたり、勤務時間が長くなりがちなことなどが志願者が減少している大きな要因と考えている。
Q白川委員 道教委は、志願者を増やすために、働き方改革の一環として、部活動指導員の配置を含む、北海道アクション・プランなどを実施してきた。その進ちょく状況や課題、今後の対応策について伺う。
A伊賀教職員局長 北海道アクション・プランについて。道教委では、教員志願者を増やすためには、教員が本来担うべき業務に専念できる環境の整備が重要と考え、これまで、働き方改革手引の作成・活用や、調査業務の見直し、スクール・サポート・スタッフの配置等に取り組んできた。その結果、1週間当たりの時間外在校等時間が、元年度において、28年度から1時間36分短くなったものの、いまだアクション・プランの目標である月45時間以内を超える教員がいる現状があることが大きな課題となっている。
このため、道教委としては、これまでの取組に加え、新たに、法的専門性を有する事案に対応する教職員の負担を軽減するため、スクールロイヤーによる法務相談を開始するほか、部活動の地域移行に関する実践研究やその成果の普及に取り組むなど、学校における働き方改革の一層の推進に努めていく。
Q白川委員 国に対し、抜本的な解決策を求めていくべきと考えるが、所見を伺う。
A池野教育部長 働き方改革にかかる今後の取組について。道教委としては、学校教育における働き方改革を着実に進めるに当たって、校長をはじめとする教職員が、新学習指導要領の理念の実現に必要な学校の組織、教育課程のマネジメントをしっかりと機能させることが重要であると考えており、市町村教委と連携し、各学校の実態等に応じた指導助言に努めるとともに、調査業務の見直し、スクール・サポート・スタッフや部活動指導員の配置などを引き続き進めていく。
また、きめ細かで質の高い教育を実現するためには、教職員定数の改善が必要であるという認識のもと、これまで、国の加配定数を効果的に活用しながら、少人数学級編制、専科教員の配置など、指導体制の充実に努めてきた。こうした取組を一層充実させるため、引き続き、国に対し教職員定数の一層の改善を強く要望していく。
◆オンライン授業
Q白川委員 授業にICTを活用できる教員をどう育成するのか、ネットの安全な利用やICT活用指導力、すなわち、情報の分析力の育成も大切になる。また、子どもたちのネット依存や視力低下などへの懸念も拭えない。
道教委として、こうした課題にどのように対応しているのか伺う。
A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 ICTを活用できる教員の育成などについて。児童生徒の学びの質を高めるためには、教員一人ひとりが、日常の教育活動においてICT機器を効果的に活用する技術・能力の向上を図ることが大切である。
道教委では、ICTを活用した授業を実施する際に参考となる研修動画や指導資料を作成し、道教委のICTポータルサイトを通して提供するなどして、各学校が、短い時間を効果的に活用して研修を実施することができるよう支援するほか、教育局や道立教育研究所による研修講座を提供するとともに、サポートデスクを設置し、幅広く相談を受けるなどして支援していく。また、各学校に対し、道教育委員会情報セキュリティ対策基準に基づき、インターネットの安全利用等の定期的な確認を求めるとともに、児童生徒がパソコンの画面を見る時間や姿勢など、健康に関する留意点を示している国のガイドラインや、インターネット等の依存症に関する指導参考資料を教職員に周知し、家庭と連携しながら視力低下や依存の未然防止を図るなど、引き続き、適切な支援に努めていく。
Q白川委員 特定措置区域にある道立校全50校が、道教委による聞き取りに対し、オンライン授業や分散登校ができると回答したものの、通信費負担の状況は把握していないという。
オンライン学習を公教育に取り入れるなら、家庭や学校によって格差が生じないことが大前提であり、道教委として実態を調査し、必要な支援が行き届く仕組みを整えるべきと考えるが、所見を伺う。
A唐川学校教育局長兼ICT教育推進局長 オンライン学習の取組への支援について。道教委では、学校がICTを効果的に活用して学びの質を高めた授業を行うとともに、災害や感染症の発症などの緊急時においても学校や家庭におけるオンライン学習を行える環境を整え、学びを止めない体制を確保することが重要と考えている。
道立高校について、前年度、調査したところ、スマートフォンを含めたパソコン端末等でオンライン学習を受けることができる生徒の割合は9割を超えているが、ICT環境が十分に整っていない家庭に対して、道立学校では、無償で学校所有の端末やモバイルルーターを貸し出す取組を進めている。
道教委としては、引き続き家庭の状況等の把握に努めながら、オンライン学習に必要な通信費相当額を給付する高校生等奨学給付金制度などの一層の周知を図るとともに、全国都道府県教育委員会連合会とも連携し、必要な支援策について国に要望しながら、オンライン学習等を含めた教育環境の充実に努めていく。
P白川委員 様々な課題に対処する前に、デジタル導入ありきで進んだ側面は否定できないし、導入準備に奔走する道教委や市町村教委をはじめ、学校や教員の負担は大変重いと思うが、未来を担う子どもたちのため、着実に取組を進めていただきたい。
忘れてはならないのは、デジタルは手段に過ぎないという点だ。
何をどう教えるのか、よりよい教育に向け、研修や改善を重ね続ける必要がある。
◆ヤングケアラー
Q白川委員 家族の介護や世話をする子どもたち、いわゆるヤングケアラーについて、国が初めて行った調査の結果、対象となった公立中学2年生の5・7%、全日制高校2年生の4・1%が家族の世話をしており、20人前後に1人の割合となっている。
特に気がかりなのは、世話をする中高生の6割超が誰にも相談していなかったことだ。同世代どころか社会からも孤立すれば、影響は学業や進路にとどまらない。
こうした実態に対する認識や課題、今後の対応について伺う。
A伊藤生徒指導・学校安全課長 ヤングケアラーの実態等について。ヤングケアラーは、本来、大人が担うと想定される家事や家族の世話をしており、支援が必要であっても表面化しにくい構造であることが課題として指摘されている。
潜在化しがちなヤングケアラーを早期に発見し、福祉等の機関による適切な支援につなげていくことが重要と考えている。
このため、各学校においては、すべての教職員がヤングケアラーの特性等を理解し、子どもや保護者の状況を適切に把握するとともに、道教委としても必要に応じてスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを派遣し、保健福祉部など関係部局と連携して対応に当たるほか、道教委が実施しているSNSや24時間対応の電話・メール相談において、ヤングケアラーに関する相談を受け付けていることについて、子どもたちにあらためて周知するなどして、ヤングケアラーの思いや悩みを受け止め、関係機関が相互に連携し、一体となって切れ目のない支援につなげていく。
P白川委員 栗山町は、全国の市町村で初めてケアラー支援条例を3月に制定し、条例には、「すべてのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現する」と明記している。
介護を地域全体の問題としてとらえ、恒久的な仕組みづくりに踏み出したところであり、声を上げることもできないヤングケアラーを含め、介護する側を支える視点の取組が求められるということを強く指摘しておく。
◆学校の防犯
Q白川委員 大阪府池田市の大阪教育大学附属池田小学校に男が侵入し、合わせて23人の児童や教員などが殺傷されるという、教育現場の安全を根底から揺さぶる犯行から20年が経った。
事件後、学校に対し、危機管理マニュアルや安全計画の作成が義務付けられ、文科省によると、道内の学校のほぼ100%が不審者侵入などを防ぐ対応策を導入しており、札幌市教委は、市内の全小・中学校に電子錠とインターホンを設置している。しかし、設備に頼るだけでは十分とは言えない。
実効性をもたせるには、避難や通報などの手順を定期的に確認し、児童生徒と実践的な訓練を重ねることが大切と考えるが、所見を伺う。
A伊藤生徒指導・学校安全課長 防犯訓練の実施について。道教委では、道教育推進計画において、学校安全教育の充実に向けて、防犯教室、防犯訓練の両方を実施している学校の割合を令和4年度までに100%とすることを目標としており、2年度調査においては、小学校で95・9%、中学校で93・1%、高校で99・6%となっている。
道教委としては、すべての児童生徒が安全に関する資質・能力を身に付け、自らの安全を確保することの大切さを意識させることが重要であると認識しており、各学校が、地域特性などに応じて、警察等の関係機関と連携した実践的な学校安全対策の充実が図られるよう、引き続き、市町村教委と連携して、指導助言していく。
Q白川委員 2年前、神奈川県川崎市でスクールバスを待っていた小学生ら20人が殺傷されるという痛ましい事件が発生している。見守り活動を含め、校外での安全は保護者や地域の協力が鍵となるが、現状と課題、今後の取組について伺う。
A伊藤生徒指導・学校安全課長 登下校時の防犯対策について。2年度に、PTAなど地域住民と連携して地域の巡回を行った学校は、小学校で約87%、中学校で約77%となっており、今後も家庭や地域との連携を一層深める必要があると考えている。
道教委としては、各学校において、登下校時の児童生徒の安全確保の対策が図られるよう、管内で実施している学校と警察、家庭、地域の連携による学校安全推進会議や学校安全教室の充実を図り、住民と一体となった防犯対策の取組を進めていく。
Q白川委員 何にも増して安全を優先すべきなのは当然だが、一方で、開かれた学校の理念が忘れられることは避けたい。保護者へのコロナ対応を含め、学校現場では悩みが尽きないことと思う。
まさしく二律背反の困難な課題ではあるが、最後に教育長の所見を伺う。
A倉本教育長 開かれた学校の在り方について。子どもたちの健やかな成長のためには、学校が家庭や地域社会と育てたい子ども像や目指すべき教育ビジョンを共有し、連携協働を深める地域に開かれた学校づくりを進めることが重要である。
道教委としては、こうした地域に開かれた学校づくりに当たっては、安全を確保する施設整備と、防犯対策や感染症対策などを含めた子どもの安全・安心に配慮した取組、危機管理マニュアルの作成や、防犯訓練などのハード、ソフトの両面にわたる安全管理を前提として、多くの地域住民の協力を得た教育活動が大変重要と考えている。
今後も、学校が家庭、地域、関係機関との連携を一層深め、開かれた学校づくりの理念を実現できるよう、市町村や学校の実情に応じたきめ細かな指導助言に努めていく。
◆健康教育の充実
Q田中委員 道内の子どもたちの主な健康課題について、どのようなものがあるのか伺う。
A泉野健康・体育課長 子どもたちの健康課題について。生活環境の急激な変化に伴い、本道の子どもたちの健康課題が多様化しており、主なものとして、一人当たりの虫歯の本数が多い状況にあること、アレルギー疾患を有する児童生徒の割合が高いことなどのほか、朝食を毎日食べている割合が低いなど、望ましい生活習慣が十分に身に付いていないなどが挙げられ、また、抗うつやそう傾向など、心の健康に課題のある児童生徒が一定の割合で存在することなども明らかになっている。
Q田中委員 これらの子どもたちの健康課題を踏まえて、道教委ではこれまでどのように取り組んできたのか伺う。
A泉野健康・体育課長 道教委の取組について。道教委では、子どもたちが心身ともに健康な生活を送ることができるよう、学校におけるフッ化物洗口による保健管理の促進に向けた市町村教委への情報提供や指導助言をするなどして虫歯予防に努めるとともに、望ましい生活習慣等に関する保護者や教職員向けの資料を作成・配布し、学校と家庭、地域が連携協働して、社会全体で子どもの健康づくりを図る取組を促すほか、アレルギー疾患や生活習慣、メンタルヘルスに関する講義を取り入れた養護教諭の研修会を通じて、健康教育に関する指導力の向上を図るなど、本道の子どもたちの健康課題の解決に向けて、取り組んでいる。
P田中委員 健康課題は、学校だけではなく、主に家庭環境が大きく影響する。保護者向けの啓発も非常に大事になってくると考える。
Q田中委員 道教委では、平成26年度から、がん教育総合支援事業など、がん教育を推進しているが、これまでの取組と成果について伺う。
A泉野健康・体育課長 がん教育の取組などについて。道教委では、これまで、中学校および高校に推進校を指定し、健康教育の一環として、教育活動全体を通じたがん教育の進め方について実践研究を行うとともに、教職員を対象として、がん教育の意義やその内容に関する指導方法などについての研修をはじめ、医療関係者やがん患者等の外部講師と連携を図って、学校におけるがん教育の取組への理解を深める研修を実施するほか、学識経験者、医療・福祉関係者などで構成する連絡協議会を設置し、専門的な見地から推進校の取組や研修会への助言をいただいてきた。
こうした取組を通じて、推進校では、多くの生徒ががんについての理解を深め、健康と命の大切さに気づくとともに、食事や運動を意識して健康な体づくりを考えるきっかけになるなどの成果がみられている。道教委では、この成果を広く普及していけるよう、各学校におけるがん教育の推進に努めている。
Q田中委員 がん教育など、生活習慣病の予防のためには、子どものうちから健康な生活習慣を身に付ける健康教育が極めて重要と考えており、大学等から小・中・高校に専門医などを講師として学校に派遣するなど、外部講師を活用した健康教育にどのように取り組むのか伺う。
A泉野健康・体育課長 外部講師を活用した健康教育の取組について。生涯を通じて健康で活力ある生活を送るためには、子どもたち一人ひとりに望ましい生活習慣を形成することが重要であり、道教委では、各学校に対し、医師や大学教授などの外部講師の情報提供を行い、地元の医療機関等の協力による授業の実施を支援するなど、健康教育を効果的に行うよう取り組んできた。
今後においても、健康教育のさらなる充実のため、知事部局はもとより、医育大学や病院等の専門機関との連携を一層強め、外部講師のリストや健康の保持、増進に関する資料などを作成し、学校に必要な情報を提供するとともに、優れた取組の普及に努めていく。
Q田中委員 健康教育は、生活習慣病などの体のことを中心にとらえがちだが、心の健康についても考えていく必要がある。
特に、コロナ禍において人とのかかわりが減るなど、生活様式が大きく変わり、子どもたちの心の健康への影響が心配される。
今後、道教委では、心の健康教育の充実にどのように取り組むのか伺う。
A中澤指導担当局長 心の健康について。学校における健康教育においては、生涯を通じて自らの健康を管理し、改善していく資質や能力を育成することが重要であり、特に、心の健康については、子どもたちが健康について関心をもち、正しく理解し、適切な対処や行動選択をできるようにすることが大切である。
そのため、子どもたち一人ひとりが心の健康に関する正しい知識を深め、自らの心の健康について考えるなど、主体的に健康課題に取り組むことができるよう、高校と医療大学等が連携を図りながら、心の健康教育に関する実践モデルを作成し、小・中学校を含め、広く普及するなどして、各学校の取組が一層充実するよう努めていく。
Q田中委員 新たな感染症への対応など、健康教育の充実はこれまで以上に重要と考える。家庭との連携や外部人材の協力、ICTの活用など、様々な手段で健康教育を充実させることが考えられる。
今後、道教委として、どのように健康教育に取り組んでいくのか伺う。
A鈴木学校教育監 今後の健康教育の充実について。子どもたちを取り巻く環境が急激に変化する中、学校においては、がんや心疾患、アレルギーなど、現代的な健康課題にも適切に対応することが求められている。
今後、道教委としては、知事部局はもとより、医育大学や病院など、関係団体と連携し、学校への外部人材の派遣や生活習慣病などの予防に向けた保護者リーフレット等の活用を促進するとともに、医療や保健などの関係機関と連携し、養護教諭等の研修の改善・充実に努めるほか、1人1台端末を効果的に活用した保健授業や、様々な理由で登校できない子どもに対するICTを活用した教育相談などの在り方について各学校に周知して、実践を促進するなど、子どもたちが生涯にわたって心身ともに健康な生活を送ることができるよう、健康教育のより一層の充実に努めていく。
◆地学協働活動
Q田中委員 北海道CLASSプロジェクトを実施するに至った背景と事業趣旨について伺う。
A井上社会教育課長 事業実施の背景と事業趣旨について。これまで、高校では、自治体や地元の大学、商工会議所などの関係機関と連携し、地域の課題の解決に向けた実践研究を行い、地域を支える人材育成に資する取組を進めてきた。こうした中、令和元年12月に閣議決定された第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略において、地域の将来を支える人材育成の要となる高校の機能強化が重要な課題として位置付けられた。
高校が地元の自治体や企業等と共に、高校生に地域課題の解決等を通じた探究的な学びを提供することが求められている。
道教委としては、高校が主体となって行ってきた教育活動に地域の様々な人がより深くかかわることができるよう、地域コーディネーターを配置し、コーディネーターが中心となって、子どもと大人が共に学ぶことを通して、地域づくりの当事者意識を高め、地域創生の実現に資することを目的として、この事業を実施している。
Q田中委員 北海道CLASSプロジェクトの推進に当たっては、モデル校を指定して実施するとのことだが、どの高校で実施するのか伺う。
A井上社会教育課長 モデル校の指定について。道内を4つの圏域に分けて、それぞれの圏域において研究指定校を選定した。
道央圏では、当別高校、夕張高校、道南圏では、白老東高校、鵡川高校、道北圏では、上富良野高校、豊富高校、道東圏では、帯広三条高校、本別高校が研究指定校として、生徒と地域の大人が協働して地域課題の解決に向かう地域課題探究型の学習や、学校と地域の連携協働の仕組みづくり等について、研究実践に取り組んでいる。
Q田中委員 事業を実施するに当たり、具体的にどのような推進体制で進めていくのか伺う。
A相内生涯学習推進局長 事業の推進体制について。研究指定校においては、事業の実施にかかる意思決定や活動の方向性の検討を行うため、地域の企業や経済団体、NPOなど、地域の多種多様な人材から成るコンソーシアムを組織し、地域課題の解決に向けた探究学習を行うこととしている。
また、本庁において、社会教育課、高校教育課、義務教育課で構成するプロジェクトチームを設置するとともに、各教育局にも、教育次長をトップとした関係職員によるプロジェクトチームを設置し、研究指定校の取組を支援することとしている。
現在、研究指定校の取組状況や、本庁、教育局のプロジェクトチームによる支援方策などを定期的に情報交換をするため、フォローアップミーティングを行い、研究指定校の取組に対するきめ細かな支援を始めた。
なお、研究指定校以外の高校においても、地域課題探究型学習の充実を図るため、教育局のプロジェクトチームが主体となり、取組事例などの共有や振興局との連携促進に向け働きかけていく。
Q田中委員 この地学協働活動を通して、今後、本道の教育をどのように展開していく考えなのか、教育長に伺う。
A倉本教育長 今後の本道教育の展開について。児童生徒と学校をめぐる課題を解決し、未来を担う子どもたちの豊かな成長を支える地域社会を実現するためには、学校教育が社会に開かれ、教育の成果を共有することが大切である。
現在取り組んでいる、学校と地域が共に学校運営に取り組むコミュニティ・スクールと、地域と学校が協働して教育活動に取り組む地域学校協働活動を一体的に展開して、地域創生の加速に寄与していくことが必要と考えている。
道教委としては、このたび重点的に取り組むこととした地学協働活動によって、子どもと大人が共に地域について学び、考えることによって、子どもの成長のみならず、大人の学びの成果の活用や生きがいづくりにつなげ、学びと社会参画の好循環を生み出すことによって、すべての子どもたちが、ふるさと・北海道への誇りとグローバルな視野、豊かな想像力を備え、地域の発展とともにたくましく成長していくことができるよう、地域と学校が一体となった教育の推進に取り組んでいきたい。
(道議会 2021-10-07付)
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