道議会質疑 予算特別委員会(6月29日)(道議会 2021-10-06付)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】
【質問者】
▼渕上綾子委員(民主・道民連合)
【答弁者】
▼鈴木淳学校教育監
▼山本純史総務政策局長兼幼児教育推進局長
▼唐川智幸学校教育局長兼ICT教育推進局長
▼中澤美明学校教育局指導担当局長兼新型コロナウイルス感染症対策担当局長
▼岸本亮施設課長
▼柴田亨高校教育課長兼ICT教育推進課長
▼伊藤伸一生徒指導・学校安全課長
◆LGBT等
Q渕上委員 道内の小・中・高校のうち、多目的トイレやオールジェンダートイレなど、誰もが使えるトイレが設置してある学校の割合について伺う。
また、そのうち、体育館や職員用などではなく、教室近くにある男子・女子用トイレと同様に設置されている学校の割合についても伺う。
A岸本施設課長 多目的トイレの設置状況について。文部科学省が実施した公立小・中学校施設におけるバリアフリー化の状況調査では、道内小・中学校における多目的トイレの設置状況として、令和2年5月1日現在、教室などのある校舎棟に59・4%、体育館に27・9%となっている。
また、道立高校については、施設上の制約があり設置が困難な1校を除き、191校に設置しており、このうち約70%の学校が生徒が日常的に使用する校舎棟に設置している。
Q渕上委員 多目的トイレ等が設置されている学校について、常時使用できる状態にしている学校の割合を伺う。
A岸本施設課長 小・中学校の状況については把握していないが、道立高校においては、多目的トイレが設置されている191校のうち、約62%、118校が常時使用できる状態であり、約38%、73校が普段は施錠するなどして必要に応じて使用する対応としている。
Q渕上委員 多目的トイレ等を常時使用できない学校について、なぜ使用できない状態にしているのか伺う。
A岸本施設課長 多目的トイレの使用状況について。日常的に生徒が利用できない状況としている理由としては、車いす使用者など身体に障がいのある生徒が在籍していない、生徒指導上の問題行動の防止、災害時の使用を目的とするため、日常的な使用を想定していないなどが挙げられている。
Q渕上委員 使用できない状態にされている多目的トイレ等については、使用できるように改善を求めていただけないか、所見を伺う。
A岸本施設課長 多目的トイレの使用方法について。多目的トイレは、車いす使用者など身体に障がいのある生徒が利用する場合はもとより、様々な事情をもつ生徒が利用することを想定し整備しているものであり、常時使用できる状況にすることが基本と考えている。
各学校においては、生徒指導上の問題行動防止など、一定の考え方のもとで対応を講じるケースもあるが、学校の実情に応じて、可能な限り生徒が日常的に使用できる状況とするよう指導助言に努めていく。
Q渕上委員 昨年の第3回定例会の一般質問で、ジェンダーで分けないトイレについて質問した際、「他県をはじめ、北欧諸国の先進事例などを収集しながら研究を進めていく」との答弁があった。進ちょく状況を伺う。
A山本総務政策局長 性的マイノリティーに対応したトイレの整備について。学校におけるトイレの状況に関し、他県では、新築・改築時等に男女共用トイレも整備し、その際、様々な児童生徒の心情などに配慮するため、廊下からはどのトイレを利用しているか分かりにくくするよう出入口を工夫している事例があり、また、北欧諸国の中には、校内のすべてのトイレを男女共用としている事例があった。
国が定める学校施設整備指針では、多くの児童生徒が利用するトイレは、利用しやすい位置に男女別に計画することと示されているが、道教委では、性別にかかわらず、誰もが安心して利用できるトイレの整備の在り方について、国に対し検討を求めており、引き続き、性的マイノリティーを含む、様々な事情に配慮した学校トイレの整備を進めていく。
Q渕上委員 制服について伺う。ここ1、2年でLGBTに配慮し、女子用のスラックスを導入あるいは、制服を性別にかかわらず選択できるようにしたという学校の報道をよく耳にするようになった。
トランスジェンダーは自認する性で扱われることを望むことから、与えられた性が男性で自認する性が女性であるトランスジェンダーの生徒をトランス女子、同様に、与えられた性が女性で自認する性が男性である生徒をトランス男子と表現する。
LGBTへの配慮という表現がよく使われる。クエスチョニングやアセクシュアルといった多様な性があり、総称としてLGBTとされていると理解する。
差別や偏見など、LGBTそれぞれのセクシュアリティーに共通する課題もあるが、LGBTそれぞれに異なる悩みもある。
よくLGBTとひとまとめにされるが、このような制服に関する問題については、性自認に関するものである。この点をどのように認識されているのか伺う。
A唐川学校教育局長兼ICT教育推進局長 性的マイノリティーの児童生徒にかかる制服について。道教委では、これまでも、性的マイノリティーの児童生徒に対して、トイレや更衣室の利用をはじめ、学校生活での様々な場面において、その心情などに十分配慮するよう各学校に指導している。制服の取扱いにおいても、児童生徒が自認する性によって自由に制服を選択できる環境づくりが重要であると認識している。
Q渕上委員 道内の小・中・高校のうち、何校が制服を導入しており、うち、何校が女子およびトランス男子のスラックスを認めているか、あるいは、性別にかかわらず制服を選択できるか伺う。
A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 女子児童生徒のスラックスの選択について。道教委が平成30年に実施した調査結果では、制服を導入している道立高校は、198校中、187校であり、そのうち、女子生徒に対して、スカート以外にスラックスの着用も選択可能としている学校は97校だった。
また、調査において、性別にかかわらず制服を選択できる道立高校数は把握していないものの、選択可能としている学校もあると承知している。
なお、小・中学校の制服規定については、現時点では把握していないが、道内の中学校では、女子のスラックスを認めている学校もあると承知している。
Q渕上委員 女子のスラックスを認めている学校のうち、防寒のみを理由としている学校は何校か。また、トランス男子のスラックスを認めていることを明確に表現している学校は何校か伺う。
A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 スラックスの選択について。スラックスの着用を選択可能としている道立高校97校では、主に通学の利便性や冬季の防寒対策の観点など、複数の理由を勘案している。
また、校則で、トランス男子への配慮といった観点から、スラックスの着用を選択可能としている学校は24校だった。
Q渕上委員 女子用のスラックスは、LGBTへの配慮とは関係ないと思うが、認識を伺う。
A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 女子用のスラックスについて。制服を取り扱っている企業が全国の中学生、高校生の保護者を対象に行ったアンケート調査では、性的マイノリティーの生徒への配慮の方法として、男女関係なく自由に選択できるようにすることが最も多く、女子のスラックスの採用のほかに、男女共通のデザインのブレザーを採用することや、色やシルエットなど、男女の違いを出さない工夫をすることも必要などといったことが挙げられている。
道教委としては、こうした状況も踏まえながら、スラックス等を選択しやすくするような制服の工夫などの配慮が必要であると考えている。
Q渕上委員 性別にかかわらず制服を選択できると答えた学校のうち、明確に男子またはトランス女子のスカートを認めていると示している学校が何校あるか伺う。
また、制服の問題への取組に当たり、まずは女子のスラックスを認めるところから始めたという学校もあると思う。女子のスラックスを認めている学校のうち、男子およびトランス女子のスカートを認める予定がある、または、議論されている学校は何校あるか伺う。
A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 各学校の実情について。現時点で、男子またはトランス女子のスカートの着用や、今後の制服の見直しの際に検討している学校数は、把握していない。
他県においては、制服について考える週間を設定し、生徒会を中心に制服そのものの在り方について議論している学校や、保護者が中心となって校則や制服の検討委員会を立ち上げ、スカートとスラックスの選択制を導入した学校もあることから、今後、道教委では、こういった他県の事例も参考にしながら、各学校の実態についてあらためて把握していく。
Q渕上委員 明確に男子またはトランス女子のスカートを認めていると示している学校が何校あるのか、あらためて伺う。
A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 各学校の実情について。現時点で、男子またはトランス女子のスカートの着用を明確に認めている学校数は把握していない。今後、あらためて把握していく。
Q渕上委員 現状では、制服選択については、トランス男子とトランス女子とで大きな隔たりがあり、これは差別的取扱いだと思う。道教委の見解を伺う。
また、制服は3点セットではなく、たとえスカートを望むトランス女子が現れなかったとしても、トランス女子向けのスカートがそこに一緒に展示されていれば、彼女たちの存在を認めることになることから、男子およびトランス女子のスカートを加えた4点セットにする、あるいは、ジェンダーレスの1点だけにして男女の区別をなくすなど、現状の差別を早期に解消すべきと考えるが、所見を伺う。
A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 制服選択における配慮について。女子用スラックスを含めた、いわゆる3点セットの提示など、制服の組み合わせは、体の性が男性で心の性が女性であるトランス女子など、性的マイノリティーの生徒にとっては、学校生活を送る上で心理的に極めて大きな負担を与えるものと認識しており、自認する性別の制服の着用を認めるなど、個別の事案に応じてきめ細かな対応が必要であると考える。
今後、道教委では、制服の組み合わせにあっては、選択の幅を広げたり、他県の事例等も参考にしながら工夫したりするなど、スカート、スラックスを自由に選択できる、差別や偏見のない環境の重要性を指導していく。
Q渕上委員 トランス女子のスカートについては、保護者の理解が得られないため、進めることに尻込みしている学校もあるかと思う。
しかし、トランス女子がスカートを使用したところで、誰も被害を受けないし、風紀を乱すことにもならない。むしろ、ひるむことなく、勇気をもって、そのような保護者に理解が得られるように、積極的に努力すべきだと思う。所見を伺う。
A鈴木学校教育監 保護者等の理解について。道教委では、これまでも、国の通知などの趣旨を踏まえて、各学校に対して、性的マイノリティーの生徒に対する理解を深め、適切な支援や周囲の生徒に対する必要な指導が行われるよう取り組んできた。
今後、学校においては、制服の選定に当たり、生徒はもとより、保護者に対し必要な情報の提供やその理解を求めるとともに、性的マイノリティーへの配慮や差別や偏見のない環境づくりを行うよう指導していく。
Q渕上委員 平成27年に文部科学省は、「性同一性障害にかかる児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という通知を各都道府県教委や各学校に出している。
その翌年には、「性同一性障害や性的指向・性自認にかかる、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」という通知が教職員に出されている。
しかし、「きめ細かな」とは具体的に何をどうすればいいのかについては書かれておらず、現場の教職員の手探り状態が続いている。
どのような対応につなげていくかの方向を見いだすために、生徒や教職員がどんな問題を抱えているのか、取組の現状など、実態について把握する必要があるのではないか。
働き方改革で調査などの業務削減が求められていることは承知しているが、性的マイノリティーについては、いじめや不登校、自殺にもつながりかねない重要課題であり、削減されてはならないことだと思う。所見を伺う。
A中澤学校教育局指導担当局長 性的マイノリティーに関する調査について。誰もが自分らしく生きられる社会づくりを進めるため、学校においては、教職員が性的マイノリティーに対する理解を深め、配慮が必要な児童生徒への適切な支援や周囲の児童生徒への必要な指導を組織的に行うことが重要である。
道教委としては、こうした観点から、各学校での性的マイノリティーとされる児童生徒への支援や相談体制などの取組状況について把握し、学校の実情に応じた支援や指導助言することが重要と考えており、本年度、学校での取組状況把握を検討している。
Q渕上委員 道教委が各学校に調査を依頼するに当たり、その判断をするのは誰なのか伺う。また、仮に判断する人の理解が得られない場合、必要な調査が滞ってしまう恐れがある。その間も、性的マイノリティー当事者は苦しみ、教職員の手探りは続く。判断する人に積極的に理解を求めていく姿勢が道教委にあるのか伺う。
A伊藤生徒指導・学校安全課長 調査の実施について。道教委が教育施策への参考とするため学校の取組状況などを把握する場合は、道立学校においては、道教委が学校長あてに、調査内容に加え、その趣旨や留意事項等について理解が得られるよう通知を発出し、実施している。
また、市町村立学校については、市町村教委が所管する学校への調査を依頼することとなることから、道教委としては、調査の趣旨や内容、方法等を伝え、理解が得られるよう努めている。
Q渕上委員 判断する人に理解を求める上で、当事者や専門家と実際に話す機会は重要と考える。懇談の場を設定していただけないか。
また、調査項目を考える上で、当事者や専門家などの視点なしでは、重要なことを見落とすことがあると思う。当事者や専門家の意見を反映させることの重要性についての認識を伺う。
A伊藤生徒指導・学校安全課長 専門家などとの連携について。性的マイノリティーにかかる児童生徒への対応については、児童生徒の心情などに配慮した対応が必要と認識している。
また、各学校の取組状況の把握に当たっては、様々な観点から調査項目を検討し、その結果を、教職員の組織的な支援体制や、学校生活での具体的な場面を想定した支援の在り方などに生かすことが大切であることから、当事者や専門家の意見を参考とすることが重要である。道教委としては、調査の検討に当たり、市町村教委や校長会、専門家等と意見交換の場を設けるなどの対応を考えている。
Q渕上委員 どのようにして各学校の調査への協力を得るか伺う。
A伊藤生徒指導・学校安全課長 調査への協力について。道教委が調査を実施する場合、市町村教委や学校に対し、調査の趣旨はもとより、調査実施後の結果分析や活用等の在り方、道教委と市町村教委、学校の連携による今後の対応などについて丁寧に説明し、調査への理解と協力を得ることとしている。
Q渕上委員 単純に集計するだけではなく、項目間の相関や統計的な有意差があるかの検定など、高度な専門知識によって分析をすることで明らかになることもある。
やはり、専門家による分析は必要だと思うが、所見を伺う。
A伊藤生徒指導・学校安全課長 調査結果の分析について。調査の実施によって得られた結果を必要な支援につなげるため、専門家などとの意見交換の場において、調査の結果分析や活用などについても、様々な観点から相談していきたい。
Q渕上委員 近年、具体的な対応例などを示した研修教材が出始めている。各学校の図書館などに配置し、教職員が容易に利用できるようにしてはどうか。
A鈴木学校教育監 性的マイノリティーに関する研修について。道教委としては、各学校での研修を通して、教職員が正しい知識を得て、理解を深め、適切な支援につなげることができるよう、専門家の監修を得て作成した啓発資料等を各道立学校および各市町村教委に配布するとともに、道教委ホームページには、学校で活用できる研修資料や動画を掲載し、学校での積極的な活用を促しているところ。
道教委としては、今後、教職員一人ひとりが性的マイノリティーに関する理解を一層深めることができるよう、全国から効果的な研修教材等の情報を収集し、学校に提供するなどして、効果的な研修環境の充実に向けて取り組んでいく。
(道議会 2021-10-06付)
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