PickUp② 個別最適・協働的学びの視点で GIGAスクール 新しい授業広がる
(国 2021-12-16付)

 タブレット端末で課題を送信。電子黒板で考えを共有し、意見を交わす子どもたち―。GIGAスクール構想で新しい授業風景が広がりつつある。本年度から義務教育段階で1人1台端末の整備が完了。学習指導要領を踏まえた「個別最適な学び」「協働的な学び」の視点を踏まえた授業改善が求められている。

データ化で時短実現

ツールとして活用を

 授業で端末を活用する主なメリットとして、学習状況の共有、思考・判断の表現の多様化、個に応じた指導の充実、多様な他者との交流、学習履歴の蓄積などが挙げられる。

 具体的には、クラウドサービスを活用して一人ひとりの考えを即時に共有・可視化。紙媒体で配布・提出していた資料をデータ化することで時間を短縮し、主体的・対話的で深い学びにより多くの時間を割くことができるようになった。

 アンケート機能によって、テストや授業評価を自動集計。全体・個人の状況把握がスムーズとなる。発表が苦手な子ども、字を書くのが苦手な子ども、障がいのある子どもが表現する手段が増え、地域や国境を越えた交流や協働学習が可能となった。

 「大切なことは、ICTをツールとして活用すること」と話すのは、GIGAスクール構想に先駆けて平成29年度から端末を活用した授業を実践してきた道教育大学附属函館中学校の郡司直孝教諭だ。「子どもの姿やつくりたい授業をイメージすることが大切。経験豊かな先生なら、一層ICTの様々な活用方法を引き出すことができると思う」とその可能性を指摘する。

ハード・ソフトの

両面課題 地域差も

 しかし、端末の活用状況は地域・学校・教員間で差が存在する。あるコンサルティング企業の調査によると、ことし10月時点で「端末を毎日使用している」と回答した全国市区町村教委の割合は2割にとどまった。

 主な要因として考えられるのは、ネットワーク速度の遅延や教員用端末の不足などハード面の課題と、ICT専門人材の不足や教員の指導力などソフト面の課題だ。

 GIGAスクール構想は当初、令和元年度から4・5年間で段階的に進める計画だった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で状況は一変。臨時休業下で子どもの学びの保障が喫緊の課題となり、目標の達成時期が前倒しとなった。

 各自治体で端末の整備が急速に進められたものの、全国的な需給ひっ迫によって難航。2年度に実施した本紙調査によると、昨年11月時点で端末の試行運用を開始すると回答した市町村は岩見沢市など9市町村だった。感染症の影響から実技研修も困難であり、準備不足だったことは否めない。

 校内Wi―Fiなどの環境整備も急速に進んだが、多くの人数がデータを送信すると通信容量が不足する事例も。ある市教委の担当者は「回線の速度や契約変更をすぐに行うことは、予算の問題もあって難しい」とため息をつく。

 早急な支援体制の構築が求められる中、国では3年度補正予算案に学校への支援をワンストップで担うGIGAスクール運営支援センターの整備と、全国一斉の学校ネットワーク点検の予算を計上している。

 しかし、道内では市町村によって児童生徒数が大きく異なり、支援を担うICT人材も偏在している傾向が見受けられる。このため関係者は「本道の実情に適した仕組みを検討する必要がある」と話す。

教員の活用力向上へ

校種越え事例共有を

 また、端末のOSは自治体ごとに異なるため、今後異動する教員が違いに戸惑うことも予想される。本紙調査によると、道内179市町村で整備する端末のOSは、iPadとWindowsがそれぞれ約3割、Chromeが約4割となっている。このため、来年春に転入者向けのフォローアップ研修を検討している自治体もある。

 各教育局や自治体で様々な研修が計画的に実施されている一方で、「トラブルが心配」「授業の時間がよりかかるのでは」と懸念を抱く教員もいる。

 さらに、来年度からは高校でBYODによる1人1台端末の授業が開始となる。教員のニーズに応じた個別の研修や、校種を超えてICTの活用事例を共有する機会を求める声も上がっている。

(国 2021-12-16付)

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