道教委 地域部活動推進事業報告書 課題共有や情報発信を 時間外勤務削減など成果(道・道教委 2022-03-07付)
道教委は、3年度地域部活動推進事業の成果報告書を公表した。関係団体との連携体制の構築、時間外在校等時間の削減などの実践や成果を報告。一方、関係者間で部活動に対する基本姿勢に差がみられたことから、持続可能な部活動に向けた課題を共有する場の設定や、保護者・地域への情報発信の必要性を示した。
国では5年度以降の部活動の地域移行を目指し、有識者会議で議論を進めている。スポーツ庁はことし5月、文化庁は7月に運動部活動、文化部活動に関する提言をそれぞれまとめる予定。
事業は、国の委託を受けて休日の部活動の段階的な地域移行や合同部活動の推進に関する実践研究に取り組み、研究成果を普及して休日の地域部活動や合理的・効率的な部活動の全国展開を図るもの。当別町、登別市、紋別市が事業を受託した。
報告書をみると、登別市では市バレーボール協会の協力のもと連携体制を構築。外部指導者を活用して教員の負担軽減を図り、教員の時間外在校等時間が41時間45分削減した。
当別町では外部人材を活用して負担軽減を図り、希望する教員が指導する兼職兼業の仕組みづくりを検証。アンケート調査の結果、生徒の67%、保護者の52%、教員の75%が地域部活動の移行に賛意を示したことが分かった。
紋別市は、関係者間で部活動に対する基本姿勢に差があったことから、活動の課題を関係者が共有する機会の設定が必要と指摘。①関係者の課題の共有②実践の段階的プログラム③指導者に対する十分な財政支援―の3段階が必要とし、行政・学校レベルでの議論をもとに方向性をまとめ、保護者・地域住民に発信する重要性を示した。
このほか、地域における受け皿団体や指導者の確保、地域の特性に応じた柔軟な財政支援、教員の兼職兼業における手続き上の支援、合同部活動に向けた複数の自治体による広域化プラン策定の必要性を挙げている。
地域運動部活動推進事業 3市町の3年度成果報告
道教委がまとめた3年度地域運動部活動推進事業成果報告書の概要はつぎのとおり。
【登別市】
▼拠点校=幌別中
▼部活動名=女子バレーボール部
▼運営団体=登別市バレーボール協会
▼事業実施の経緯
生徒数や教員数の減少に伴い、市内中学校において、生徒が希望するスポーツ活動を行うことができない状況が進展している。中学校部活動は、地域のスポーツ振興という点においても、重要な役割を担ってきたことから、5年度以降の休日部活動の段階的な地域移行に向けて、いち早く市における形を見いだすため、先行的に事業を実施した。
事業実施に当たり、市内における部活動の状況等を確認し、2年度から部活動指導員を配置している当該部活動を対象部活動として、地域スポーツのあり方検討委員会の中で実施方法等を検討した。
市バレーボール協会には、実践研究の意義を理解してもらい協力を得ることができた。
▼事業での活動実績
▽教員の勤務時間の変容=41時間45分の時間外在校等時間の削減(3年度において、本事業を実施しなかった場合に想定される時間。なお、本事業の事務局員として兼職兼業で休日部活動に従事)
▽地域スポーツの年間活動時間=14回実施(38時間15分)
▼関係団体との体制構築
▽実際の体制
地域スポーツの課題解決に向けて、市内のスポーツ関係団体等と共に地域スポーツのあり方検討委員会を設置していたことから、同委員会を検討・運営会議と位置付けて、市教委が事務局となって実施した。地域運動部活動を実施する団体としては、市バレーボール協会を選定し、同会の会員3人を休日部活動指導員として実施した。
▽体制構築する上での課題・対応方法等
市バレーボール協会の運営補助等を行う事務局員として兼職兼業の手続きをした拠点校教員を配置することで、実践研究を可能とするとともに、事務の洗い出しや振り分けを行った。
▼効果的に促進する支援体制
▽活動を支援するために必要なこと
これまで、教員のボランティアに頼ってしまっていた中学校部活動を地域移行することによって生じる費用については、財政支援が必要と強く考える。また、地域の特性に応じた部活動を構築するに当たって、画一的なものではなく柔軟な支援が必要と考える。
なお、地域の実情に応じた様々なケースが考えられるものの、国が具体性を持った一定の方向性を示すことで、地方自治体における取組の推進につながるものと考える。
▼課題の克服方法等
▽実践してみて分かった課題
本市において、受け皿団体として、市内の競技団体を想定しているが、高齢化や人口減少が進んでいる中、団体規模の縮小もあり、受け皿団体の確保が困難な状況にある。
また、学校の働き方改革と部活動改革の両立を図るためには、地域移行と並行して、合理的で効率的な部活動の推進にも取り組むことが重要である。
▽それらの克服方法・方向性
保護者や生徒、学校関係者、スポーツ関係団体などと共に、将来の中学校部活動への危機感を共有し、同じ方向を向いて取組を進めることが肝要である。そのためにも、できるだけ早く方向性を見いだし、様々な手法を用いた周知活動に努めていく。
▼他地域への普及方法
▽普及するために必要なこと
複数の実践研究などを参考とし、地域特性に応じた部活動の在り方を探る必要があることから、各自治体における取組が重要であるが、加えて、これまでの部活動では立ち行かなくなることを、より多くの保護者等へ具体的に示すことが第一と考える。
▼その他
▽次年度以降の実施に向けて必要なこと
休日の部活動の地域移行を段階的に実施していくためには、移行している部活動としていない部活動との公平性を担保する必要があるため、継続した財政支援を講じていただきたい。
【紋別市】
▼拠点校=紋別中、潮見中、渚滑中
▼運営団体=市教委
▼事業実施の経緯
少子化によって減少している部活動機会の確保および教員の長時間勤務解消のため。
▼事業での活動実績
▽意識調査結果分析
教員の部活動に対する負担感は、紋別中57%、潮見中35%、渚滑中33%と学校によって違いを見せている。
▼関係団体との体制構築
▽実際の体制
体制構築のため、関係機関と協議したが、設置には至っていない。
▽体制構築する上での課題・対応方法等
各競技団体の意向としては、人材確保の点で困難であるとの回答だった。休日の指導体制を競技団体で行うことは教員の負担軽減につながるが、逆に競技団体の指導者にとっては、休日がなくなってしまうことになるという意見もあった。
▼効果的に促進する支援体制
▽活動を支援するために必要なこと
事業実施に当たり、段階的な取組が必要。①関係者の課題の共有②実践の段階的プログラム③指導者に対する十分な財政支援―。関係者の部活動の在り方に関する意識そのものに大きなかい離があることで事業が停滞したことから、部活動の抱える課題を関係者が共有できる機会の設定から始める必要がある。前提として、子どもたちの活動の場を保障することと持続可能な部活動という原則を忘れてはならない。
▼課題の克服方法等
▽実践してみて分かった課題
「部活動は学校でやるべきもの」という考えは、自身が経験した部活動のイメージと考えられ、その時代の部活動は、勝利至上主義でもなく、長時間勤務という問題も、当時は大きな問題とはならなかった。
現在は、勝利至上主義の風潮から指導者への期待が高まり、長時間にわたる部活動の実態が学校現場の多忙化に拍車をかけていき、さらに少子化が加速した上、教員の長時間勤務が社会問題化してきた。
このような時間軸の変化によって、部活動を巡る問題は大きく変化していることを理解する必要がある。
▼それらの克服方法・方向性
行政レベルでは総合教育会議、教育委員会、自治体議会での意見交流、学校レベルでは学校運営協議会、PTA、職員会議、中体連(ブロック・支部)などによって、今後の部活動の在り方を議論していくことで方向性を見いだすことになる。
その方向性について、保護者・地域住民に広く周知していく広報活動もまた重要なことである。
▼他地域への普及方法
▽普及するために必要なこと
・課題の共有と保護者・地域への広報活動
・合同部活動に向けた広域化(複数自治体)プラン策定
▼その他
▽次年度以降の実施に向けて必要なこと
子どもたちの活動機会を確保することを軸に多様な部活動の在り方を検討していきたい。
地域移行に向けて合同部活動のプランを掲げたが、「部活動は学校が主体となるべき」という考えと「持続可能性を見据えた地域移行」という考えの意見対立が生じ、議会を巻き込む地方政治の問題に発展した。
地方の問題点として、「受け皿不足」「人材不足」が挙げられているが、部活動に対する基本的姿勢に大きな隔たりがある。また、学校では教員の働き方改革を優先する姿勢があり、取組に対して理解が進まなかった。これらの背景には、関係者による十分な話し合いが不足していたことが挙げられる。
【当別町】
▼拠点校=当別中、西当別中
▼部活動名=当別中陸上部、当別中野球部、西当別中野球部、当別中バスケットボール部、西当別中バスケットボール部
▼運営団体=特定非営利活動法人ふれ・スポ・とうべつ、リーフラス=
▼事業実施の経緯
競技経験や指導経験のない種目を指導することが負担となっている教員と、熱心に指導している教員がいることから、外部人材を活用した負担軽減と、指導を希望する教員が引き続き指導を行うことができる仕組みづくりを検証するため。
▼事業での活動実績
▽教員の勤務時間の変容
陸上部の顧問は、専門的な技術指導をする外部の指導者が入り、負担軽減につながったが、野球部およびバスケットボール部の顧問は、部活動指導の時間が地域部活動での従事時間となり、個々人のトータルの業務従事時間としては変化していない。
▼地域スポーツの年間活動時間
▽陸上部11回実施・25時間
▽野球部6回実施・16時間
▽バスケットボール部7回実施・19時間
▼意識調査結果分析(今後も地域部活動を続けてほしいか)
▽生徒=「続けてほしい」(67%)、「どちらでもよい」(33%)、「続けてほしくない」(ゼロ)
▽保護者=「続けてほしい」(52%)、「どちらでもよい」(48%)、「続けてほしくない」(ゼロ)
▽教員=「続けてほしい」(75%)、「どちらでもよい」(25%)、「続けてほしくない(ゼロ)
▼関係団体との体制構築
▽実際の体制=管理・運営、地域部活動のコーディネート
▽体制構築する上での課題・対応方法等=学校と教育委員会への連絡・調整
▼効果的に促進する支援体制
▽活動を支援するために必要なこと
・費用負担の支援
・教員の兼職兼業における手続き上の支援
▼課題の克服方法等
▽実践してみて分かった課題
・指導者謝金の設定や費用負担者に関すること(行政・保護者)
・補償額を日本スポーツ振興センター並みにする場合の、保険料の費用負担に関すること
▼それらの克服方法・方向性
▽国や道から市町村への財政支援、保護者の費用負担に理解を求めるための丁寧な説明
▽他地域への普及方法
▼普及するために必要なこと
▽費用の確保
▽受け皿となる団体の確保
▼その他
▽次年度以降の実施に向けて必要なこと
・受け皿となる団体の検討と指導者の確保
・費用負担の保護者理解
(道・道教委 2022-03-07付)
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