札幌市中学校長会 各部の3年度 研究成果 第7回 施設部 1人1台端末活用働きかけ 組織機能強化や研修充実など
(札幌市 2022-04-07付)

第6課題「新たな未来を紡ぎ、よりよい社会を創る力を育む施設・設備―生徒の主体的・対話的で深い学びを支え、社会の変化に対応する施設・設備の深化」

【研究の視点】

▽今日的課題に対応する施設・設備の究明

【研究内容(一部抜粋)】

▼多様な学習形態や学習環境に対応する学校施設・設備の深化

 GIGAスクール元年ともいうべきことし、1人1台端末環境下で新しい学びがスタートした。学習指導要領の改訂とともにSociety5・0時代を生きる子どもたちの可能性を引き出し、個別最適な学びと協働的な学びの実現に向けて推進されている。新型コロナウイルス感染症対策による活用が求められ、導入が早まり、現在は環境整備から利活用促進のフェーズへと移り変わる節目を迎えているといえる。ICTは、教育分野においても重要な基盤的ツールであり、必要不可欠な施設・設備であると認識し、その上で中教審から示された令和の日本型学校教育の実現に向けた取組が各校に求められている。

▽各校のICT推進体制と教員の意識について

 各校では、新たに特別委員会を発足させて端末業務を推進している場合、既存の委員会に業務を担わせて推進している場合、教務部内または研修研究部内に業務を担わせて推進している場合など3つの形がみられる。

▽1人1台端末活用の有効性・有用性

 不登校生徒の在宅学習などに向けた支援の拡大に大きな役割を果たすことが期待される。また、特別支援教育に関して「困り」を呈する生徒にとっても、個々の課題の解決・克服に向け、豊かな学びへの有効なツールと成り得る可能性を持っている。これらは中教審で示された個別最適な学びにもつながるものとして期待される。さらにオンライン機能を生かして他学級学年、他校間などと様々な授業づくり、特別活動等の交流の場面設定など、その可能性は広がっている。

 そして今回2年ぶりに実施された全国学力学習状況調査における質問紙調査の項目から、情報機器の授業活用が着実に進んでいる実態が明らかとなっている。そこには、子どもたちの情報機器利活用への期待感が高まっていることが背景にあるといえる。

▽1人1台端末活用における課題

 学校現場では、破損等に関する案件が出てきた場合の家庭との対応が予想される状況にある。これらの対応策として、破損や紛失に関する「子ども総合保険」へのPTA加入に関する動きもみられる。

▽デジタル教科書本格導入に向けて  

 現在、1人1台端末を使ったデジタル教科書の実証研究事業が進められており、全国の小・中学校での事業拡大も検討されている。これらの有効性・有用性だけでなく、課題についても今後注視し、検証することが求められていく。

▽ICT環境のさらなる整備の必要性

 通信ネットワークの回線増強がさらに推進されているが、全ての特別教室にアクセスポイントが整備されていないなど、利活用の面で不自由さも残っている。また、利用増による動作の遅延は解消されたわけではなく、今後もICTに関わる施設・設備のさらなる充実が望まれる。

▼ICT機器活用の改善点や今後について

▽学校組織の機能強化

 校長の責務としては、タブレット端末を中核とした情報機器活用の確実な促進に向けた働きかけは不可欠といえる。そのために「学校経営案に位置づける」「校内組織に確かな足場を持たせる」「実行性のある取組を組織として推進する」ことなど組織の機能強化が求められる。

▽教員研修のさらなる充実

 現在、積極的かつ継続的にICT活用を進めている教員に共通していることは、効果的で便利に使っているということである。例えば一斉授業で生徒全員の意見・考え・感想を把握して授業に即座に反映させることは至難であったが、クラウドを活用することで、できることが分かり、有効性を実感し始めている教員も増えている。GIGAスクール構想では、全教員が対象となって、一連のICT推進に関して技能の向上が求められることから、さらなる研修の充実をあらためて認識したい。

 今後、学校の施設・設備の重要なツールとして1人1台端末を含めたICT機器の積極的な活用が求められる。校長として働き方改革の視点も意識しながら、関係機関と連携しこれらの流れを捉え、先手を打って取り組んでいく必要がある。

【まとめと展望】

 学校施設・設備の効果的な改修や維持管理について、本市において平成29年度から順次進められているリニューアル改修工事について、各中学校が数年間にわたって段階に応じた対応が必要となることから、「中学校版・リニューアル改修工事チェックシート」を作成するとともに活用時の留意点を提案した。改修に関しては、校長の施設・設備を充実させるための中・長期的なビジョンが求められる。 

 多様な学習形態や学習環境に対応する学校施設・設備について、1年目、学校図書館の現状と今後の方向性について明らかにした。2年目はGIGAスクール構想に基づいて進められている、1人1台端末等の整備の目的達成のため、校長として準備・推進すべきことを整理した。3年目はさらに、校内における推進体制や教職員の意識を踏まえた上で、端末活用における現段階での課題や「これによって具体的に何ができるのか」「タブレット端末活用を進めるための施設・設備上の課題」などについて、具体案に関わる研究を進めた。 

 新型コロナウイルス感染症への対応が3年目となり、各中学校では様々な対策を進める中で課題や問題点も明らかになってきた。また、本市の1人1台端末等の整備も、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策で急きょ前倒しとなるなど、学校を取り巻く環境や喫緊の課題は毎年大きく変化している。

 今後も社会の様々な変化や課題に対応するために、学校施設・設備は具体的にどう在るべきかについて、さらに研究を深めていきたい。

(札幌市 2022-04-07付)

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