札幌市中学校長会 各部の3年度 研究成果 第5回 進路指導部① 特活を要に教育課程編成 学校全体でキャリア教育を深化(札幌市 2022-04-05付)
第5課題「新たな未来を紡ぎ、よりよい社会を創る力を育むキャリア教育―未来の社会に主体的に参画する力を育むキャリア教育の深化」
【研究の視点】
▼視点1=学校教育全体で推進するキャリア教育の深化
▼視点2=社会に開かれた教育課程の趣旨を生かしたキャリア教育の深化
▼視点3=校種間連携を踏まえた系統的なキャリア教育の深化
【研究内容(一部抜粋)】
3年度は重点を①特別活動を要としたキャリア教育②自己肯定感・自己有用感を高める活動③望ましい校種間連携―の3つに設定。市におけるキャリア教育の内容に対する各学校の教育課程の現状や生徒の意識等について、これまで全市の校長と抽出校の3年生を対象としたアンケートを毎年実施してきた。
3年度は、進路指導部に所属する市内13校の中学校の校長と3年生に対象を限定し、「校長会進路指導部アンケート」「キャリア教育に関する生徒アンケート」を7月に実施し、13人の校長と497人の生徒から回答を得た。これらの結果を分析しながら、これまでの成果や今後の課題について考察し研究を進める。
▼視点1=学校教育全体で推進するキャリア教育の深化
▽カリキュラム・マネジメントを通じた教育課程の編成
市では教育振興基本計画(改定版)の後期アクションプランの一つに、進路探究学習の充実を掲げ、その具体的な施策の一つとして、全学年対象の進路探究学習オリエンテーリングに力を入れている。
また、3年度学校教育の重点には、キャリア教育が「教科等の枠組を越えた教育」に位置づけられ、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら「自分らしい生き方」と「社会的・職業的な自立」に向けて必要な基盤となる資質・能力を育成すると明記されている。
進路指導部へのアンケートの結果、8割以上の学校がキャリア教育を学校経営方針等に位置づけて取り組んでいることが分かった。アンケート対象の総数が異なるので、元年度と単純な比較はできないが、割合に大きな変化はない。学校評価におけるキャリア教育の位置づけについては、6割以上の学校が学校評価に位置づけている。
▽社会で活用できる能力の育成
生徒の現状と今後の課題について、アンケートを行い考察することとした。質問項目は、本部会がこれまで行ってきた質問と同様に、平成23年の「キャリア教育の手引き」にある「アンケート一例」を活用しているが、本年度は先述した三つの柱に沿って分析を行った。
令和元年度アンケートの結果と比較しても大きな変化はなく、どの項目においても肯定的な意見が多い。コロナの影響で様々な体験活動が制約される中でも、各学校が学校教育全体でキャリア教育を推進している成果と言える。
また、各項目を分析すると「学ぶことや働くことの意義について考えたり、今学校で学んでいることと自分の将来とのつながりを考えたりしていない生徒は、自分の将来の目標に向かって努力したり、生活や勉強の仕方を工夫したりしていない」「自分の興味や関心、長所や短所などについて把握しようする生徒は、自分から進んで資料や情報を収集したり、誰かに質問をしたりする」「相手が理解しやすいように工夫しながら自分の考えや気持ちを伝えようとしている生徒は、自分から役割や仕事を見つけたり分担したりしながら周囲と力を合わせて行動する」などの傾向にあることが分かった。
特に「自分の将来の目標に向かって努力する」姿勢を育む第一歩として「学校で学んでいることと自分の将来とのつながりを考える」場面を、学校教育の中で意図的に設定していく必要がある。
生徒の現状を把握することで課題も見え、キャリア教育を通して身に付けさせたい資質・能力も明確になる。資質・能力が明確になれば、より具体的な目標を設定することができ、評価項目も具体的となる。このように、検証改善サイクルを生かした場面を創案していくことが系統性のあるキャリア教育の充実へつながると考える。
▽特別活動を要とした教育課程の編成
中学校学習指導要領総則第4(3)には、特別活動を要としつつ、各教科等の特質に応じてキャリア教育の充実を図ることが明記されているが、各校の教育課程の主な位置づけをみると「総合的な学習の時間」が7校、「特別活動」が6校という結果となった。
また「一人ひとりのキャリア形成と自己実現の活動」「社会参画意識の醸成の活動」「将来を見据えた自己実現へのアプローチと、その具体のための学びと活動」「人の役に立つ自分づくりを通してのキャリア形成」など、学校の特色を生かした形で、キャリア教育が特別活動の全体計画や年間指導計画に位置づけられている。
3年の中央教育審議会答申では「キャリア教育の充実に当たっては、小学校から高校までを通じ、各教科等での指導を含む学校教育全体でその実践を行いつつ、総合的な学習(探究)の時間において教科等を横断して自ら学習テーマを設定し探究する活動や、特別活動において自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりしながら、自身の変容や成長を自己評価する学習活動などを充実していくことが求められる」と記載されている。
特別活動を要としつつ、各教科や総合的な学習の時間等で学んだことと往還しながら実生活で活用できるよう、学校の教育活動全体を通じ、キャリア教育を行うことが大切である。
(札幌市 2022-04-05付)
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