札幌市立高・特校長会 3年度事業報告 研究紀要から 第6回
(札幌市 2022-04-22付)

◆教務部長連絡協

【はじめに】

 3年度の教務部長連絡協議会は①入学者選抜に関わる事項②観点別評価③登校できない生徒への学習支援④4年度新学習指尊要領の実施―の4項目で事前アンケートを取り、学校課題等について各校の現状を鑑みて、互いに情報共有しながら実効性のある取組を目指し、7月と10月に開催した。

【第1回連絡協議会(7月26日、市立札幌旭丘高校)】

▼あいさつ=市立札幌旭丘高・林恵子校長(当時)

 4年度から年次進行で新学習指導要領が実施される。各学校は、教育課程の編成が終わり、3観点による観点別評価について議論が進んでいると推察している。今後も市立高校同士の情報交換を密に助け合いながらお願いしたい。

▼全体協議

▽司会=市立藻岩高校主幹教論・勝田敏正座長

▽講演「観点別評価の基本的理解に向けた説明」

▽講師=札幌市立札苗北中学校・松園貴之教諭

 事前のアンケートから、つぎのような課題があると理解した。

 次年度から3観点の観点別評価となり、指導要録の形式の変化については認知されている。基準と規準の違いや何をどのように見取るかなどについては、各教科・個人で理解の度合いに差がある。

 実習科目や演習中心の学校設定科目で3観点を同等に評価することは難しいが可能な限り全教科統一した運用を目指したい。

 意欲の評価材料が不足している。

 主体的に取り組む態度を評価する準備や教員間のズレをなくす工夫に労力を要すると考えられている。

 評価の大切なポイントは、学習活動において期待する子どもの姿を具体的に鮮明に描きイメージすることができるかどうか。具体的には、観点別学習状況の評価を行う場面の精選が重要。評価にかかる記録は毎回の授業ではなく、単元や題材のまとまりごとに行うなどし、生徒の学習状況を把握して指導の改善に生かすことに重点を置くことが重要。

 主体的に学習に取り組む態度の評価は、知識および技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組の中で、自らの学習を調整しようとしているかどうかを含めてということになるが、開放性(アイデア)、協調性(思いやり)、誠実性(責任感)、外向性(和極性)などの因子からの評価規準を自分も考えている最中である。

▼質疑

▽出現率で評価し、教科ごとに27パターンの評定が異なる場合、生徒へはどう周知しているか↓達成率でカッティングポイントを決めている学校では説明が必要。出現率では各教科のシラバスで27パターンを示すことになる

▽評価場面の精選として、単元のまとまりを学校としてどう決めているか↓中学校では教科ごとに設定している

▽「形成的評価」はどのように生徒に伝えているのか↓先生方で差がある部分。中学校で観点別評価が始まって20年にもなろうとしているが現在も道半ばで試行錯誤は続いている

▼観点別評価の実施に向けた進ちょく状況と課題について登校できない生徒への学習支援状況と課題

▽3年度入学者選抜についての総括

▽学校課題等情報交換

 特にトピックス持ちの学校が情報交換した。

 大通・藻岩は出現率の考え方、新川・平岸は達成率の考え方で4年度を迎えることになりそうであるといったことが伝わり、すでに実施している開成中等教育をはじめ、どの学校でどのような方向性なのかという話が非常に有益な惜報となった。

▼助言

▽札幌市教委・牧野弘幸指導主事

 「指導と評価の一体化」のための学習評価の進め方について、①単元の目標を作成する②単元の評価規準を作成する③指導と評価の計画を作成する―これをもとに授業を行い観点ごとに総括することになる。

 評価の学年末等の総括の事例は、評価結果のA・B・Cの数をもとに総括する場合。同数の場合や3つの記号が混在する場合の総括の仕方をあらかじめ決めておく方法。評価結果のA・B・Cを数値に置き換えて総括する場合。A=3、B=2、C=1のように数値によって表し、合計したり平均したりする方法。これを各学校内で十分に検討する必要がある。

 観点別学習状況の評価と評定の関係は、①各観点の評価結果をA・B・Cの組合せで総括する場合。出現率と説明されている27パターンの組み合わせの方法。A・B・Cを数値で表したものに基づいて総括する場合。カッティングポイントを決める達成率による方法。いずれにしても学校として十分に検討していただきたい。

 最後に学習評価の円滑な実施に向けて、指導と評価の一体化の必要性の明確化・評価の方針等の生徒との共有・評価を行う場面の精選・外部試験や検定等の学習評価への利用・学校全体としての組織的・計画的な取組を行い、生徒に学習の見通しを持たせ、観点別学習状況の妥当性信頼性を高めていただきたい。

【第2回連絡協議会~10月19日、札幌大通高】

▼開会に当たり~札幌旭丘高・林恵子校長(当時)

 新学習指導要領の確実な実施が求められている中、校内理解や進ちょく状況が市立各校でばらつきがあると伝え聞いている。そこで観点別評価をテーマとし、それぞれ校内のけん引役で横の連携を取ること、先生方の理解を深めスムーズな実施につなげることが目的である。

▼全体協議~観点別評価の実施に向けた進ちょく状況と課題について

 各校の4年度A表・B表、観点別評価の検討資料や研修資料等をもとにした報告を基調に情報交換を行った。

 3観点を1:1:1に寄せる苦労が語られたり、5、4、3、2、1に変換する部分の議論が先行してしまっている学校。「知識・技能」「思考・判断・表現」の説明は理解が得られるが「主体的に学習に取り組む態度」をどう付けたらいいのかの問い合わせに、うまく回答できないといった話が率直に語られた。

 先行する札幌大通高と札幌開成中等教育からは「テストによらない多彩な評価方法をルーブリック評価で徹底する」「授業は形成的な評価を見取る」「年次が変わっても評価についての説明ができるよう、何をやったら上がり、下がるのかはっきりさせる」「年度や担当者が変わっても規準が変わらないように引き継げるようにしていくことが大事」など示唆に富んだ現況が語られた。

▼助言=札幌市教委・牧野弘幸指導主事

 学習指導要領の改訂について、指導と評価の一体化は今回の改訂の大きな目玉。話題に出ていた3観点の重み付けは単元ごとのバランスが重要であり、しなければならないものではない。ただ総括では、知識・技能が重くなることは適切ではない。主体的に学習に取り組む態度に困りの話も出たが「自己調整」と「粘り強さ」というキーワードが全てである。

 時問をかけて育まれるもので、最初に書いたワークシートが最後にどう表出されているか、過程が重要である。

(札幌市 2022-04-22付)

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