4種校長会長に聞く〈第2回〉 北海道中学校長会会長 野﨑 均氏
(関係団体 2022-06-23付)

道中会長野崎均
北海道中学校長会・野崎均会長

 ―道中学校長会会長としての抱負

 創立以来「中学校長の職能向上と北海道中学校教育の振興」を目的として、時代時代の課題に向き合い、七十数年に及ぶ歴史を刻んできた本会の会長の任を仰せつかることは、大変光栄なことであると同時に、職責の重さに身の引き締まる思い。

 2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の構築に向けた取組がスタートをして1年が経つ中、私たち校長は、今後さらに加速していくことが予想される教育改革の流れをつかみ、時代にふさわしい教育を推進し、教育の真価を示す責任がある。その責任を一人ひとりの校長がしっかりと受け止め引き受ける、つまり「担う」ことが重要な使命と考える。

 副会長をはじめ、運営委員・地区理事・事務局・幹事、そして何よりも全道20地区の校長会565人の会員と力を合わせ、本年度のキャッチフレーズを「連携・協働し新たな時代を担う道中」とし、その実現に迫りたい。

 ―道中学校長会の抱える課題と対策

 会としての生命線は、会員が同じ方向を向いて活動できるかにある。ここ2年間、会同する機会をなかなか持てなかったが、本年度は4月28日に総会を会同で行い、本会の運営方針や活動の重点、経営部や研修部、対策部、広報部の方針や具体的な取組を、あらためて各地区の理事としっかり確認し合うことができた。スタートラインに立てたと感じている。

 全日本中学校長会会長の平井邦明氏は、一昨年5月に策定した「全日中新教育ビジョン」にふれ、「ビジョン作成の基本的な考え方や具体的な取組方向を全国の校長先生方と確認し、さらなる推進に向けともに取り組んでいきたい」と話す。私たち道中学校長会は、全道だけではなく全国の中学校の教育実践や学校経営を学び、それぞれの校長がおかれた場所で教育改革の輪を広げ、中学校教育振興の一翼を担うことのできる組織を目指したい。

 そうした共通の思いを常に心におき協議を重ね、これからの教育が目指すべき方向性をしっかりと共有していきたい。

 また、教育の質を高めていくためには、教育諸条件の整備・充実を欠くことはできない。各地区の実態を把握し、全道の中学校の総意として行政機関に要望していく活動を引き続き進めていく。

 ことしは2年ぶりに、道小と道公教とともに「北海道文教施策・予算策定に関する要望書」を道教委に直接手渡すことができた。8月には諸問題に関して協議をする場も設けている。また、地区別教育経営研究会で各地区の声をさらに聞き、意見を再度集約して、次年度の要望活動につなげていく。

 ―本年度の重点

 取り組むべきものは様々あるが、一番中心におきたいものは子どもの学び。「学習指導要領の理念の実現」が第一。新学習指導要領が中学校において全面実施となった前年度、各学校は、学校経営の改善と充実を目指し教育課程の編成と実施に取り組んだ。これまでも本会では、隔年で教育課程等の調査を行ってきた。3年度の調査では、主に新学習指導要領やコロナ対応について道内の全中学校の回答から現状を捉えてきた。

 今回、新学習指導要領を実施するときに重点的に取り組むものとして多くの学校が挙げた「主体的・対話的で深い学び」は、9割以上にものぼった。また、その学びを実施する上での課題は何かという質問には、前回調査で最も割合が高かった「指導方法の研修」を抜いて「適切な学習評価」が7割と一番高い割合になった。指導方法がある程度確立した今、学習評価が新たな課題と捉えている学校が多い。この点を今後の議論の中心としていく。

 また。前回調査よりも明らかに数値が上がっている選択肢は、ICTに関わるもの。調査をした3年7月段階、休業中の学習支援については「1人1台配備されたICT機器等の活用」という選択肢を半数以上の学校が選んでおり、今後の取組の充実が期待されている。

 そこで本年度は「学びの保障及びGIGAスクール構想の取組と現状等に関する調査」を行う。ICTに関わる現状をことしの9月までに明らかにし、本年度後半からの各学校の学校経営の改善につなげていく。

 こうした課題の解決に向け、10月19・20日・21日にある第73回全日本中学校長会研究協議会北海道(札幌)大会で、全国の校長と議論をし、校長としての職能の向上に努めていく。

 研究協議題を「新たな時代を切り拓き、よりよい社会を形成していく日本人を育てる中学校教育」とし、「カリキュラム・マネジメント」の推進、「主体的・対話的で深い学び」の実現、よりよく生きようとする意思や能力を育む道徳教育の充実や、健康で安全な生活と豊かなスポーツライフを実現するための教育の充実、社会的・職業的自立に向けたキャリア教育と進路指導の充実、自他を敬愛し他者と協働しながら自己実現を図るための自己指導能力を育成する生徒指導の充実、多様化した学校教育課題に対応できる教員の育成、学校と地域の連携・協働による「チーム学校」の実現について、8つの分科会で協議をする。

 本大会はオンラインで開催するが、全国から参加の900人の校長としっかり学び合う大会となることを期する。

 3月から4月にかけて日本若者協議会が教員志望の高校生・大学生・大学院生を対象に行った調査では、教員志望の学生が減っている理由として、多くが長時間勤務と過酷な労働、部活動顧問など本業以外の業務が多いことを選択している。こうした状況を喫緊の課題として捉え、さらなる働き方改革に取り組むとともに、部活動の地域移行についても円滑に進むよう、行政機関に意見を述べていきたい。

 ―アフター(ウイズ)コロナへの対応

 新型コロナウイルス感染症は、まだまだ予断を許さない。本会調査の結果では、前年度の修学旅行については、実施時期は2学期で旅行先は道内という学校が7割近く、学校祭や体育的行事については、実施した学校が8割以上という結果だった。一方、合唱コンクールの実施は3割にとどまっている実態も見えてきた。本年度、従来に戻りつつあるものの、内容によっては依然実施が難しいものも見られる。

 これまでも本会は、子どもたちの安全と学びの保障を最重要課題と捉え取り組んできたが、今後も改訂された「学校の新しい生活様式」を踏まえた感染症対策を徹底した上で教育活動を工夫改善し、アフター(ウイズ)コロナの学校教育の創造につなげていくことができるよう、会員や各関係機関と連携を図り対応していく。

 その中で特に心を配りたいのが、子どもたちの心のケア。コロナ禍が続く中、子どもたちの心は様々な問題を抱えていると思われる。子どもたちの変化を見とり、関係機関と連携を図りながら、きめ細かく対応していく。また感染予防については、行動を規制するばかりではなく、子どもたち自身がそれぞれの状況でどう行動しなければならないか考える機会を多く設定する。コロナ禍というピンチをチャンスと捉え、自分の身は自分で守る力、安全で安心な生活をつくり出す力を育んでいきたい。

◆略歴

 のざき・ひとし

 昭和61年道教育大函館分校卒。苫小牧市勇払中と室蘭市翔陽中で教頭勤務後、平成27年登別市教委教育部参与、31年登別市登別中校長を経て、令和2年登別市緑陽中校長。同年には胆振教育研究所所長を兼任。

 昭和39年1月27日生まれ、58歳。室蘭市出身。

(関係団体 2022-06-23付)

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