4種校長会長に聞く〈第3回〉 北海道高等学校長協会会長 林 正憲氏
(関係団体 2022-06-24付)

4種校長会インタビュー高校長協会会長林正憲
北海道高等学校長協会・林正憲会長

 ―会長としての抱負

 279人の会員の長として、重責を感じている。北海道の高校は広域分散型であり、地域の特色、学校の歴史や文化、規模など、どれ一つとして同じ学校はない。千差万別のスクール・ミッションがあり、各校長が自立・自律した現場の長としての覚悟を持ち経営に当たっている。

 会長として「代表」するが、279校の多様性を忘れないようにしたい。

 社会の変化は激しく、教育の動向もスピーディーだが、多種多様な課題に果敢に取り組んでいきたい。「課せられた」「問題」と受け身になるのではなく、能動的に問いを立て、本質を見極め、解決のために力を合わせたい。

 そのため、運営方針である4つのS(支える・備える・攻める・育てる)を常に念頭に行動したい。

 支える関係の構築のために、情報交換・意見交換を活発にする。

 備える力を高めるために、万一の危険を想定し、経験から得られた知識と知恵を共有したい。

 攻めるために、未来のビジョンを描き、調査研究と学びを充実させ、建設的な意見を出せるようにする。

 そして、未来の先生と未来の管理職を育てたい。「教育は人なり」である。

 また、道教委のメッセージを適切に受け止めたい。本年度、道教委に新たに学力向上推進課が設置された。倉本博史教育長はこれまで別々に行われてきた学力・学習状況の把握と分析を、義務教育から高校まで一貫して行いたいと説明されている。

 遠隔授業配信センター(T―base)の本格稼働が2年目となり、小規模校や離島の高校の多様なニーズに応えようと取り組まれている。

 さらに、地域や産業界と連携する「地学協働」の推進のため、「北海道CLASSプロジェクト」の実施、文部科学省の「マイスター・ハイスクール」の活用、「探究サミット」の開催など、積極的な取組が行われている。

 会長として、広い視野を持ち、他校種や「外」とつながりながら、情報発信や提言に努めたい。

 ―アフター(ウィズ)コロナへの取組

 社会も学校も新型コロナウイルス感染症によるダメージを受けた。生徒は高校時代ならではの貴重な経験ができなかった部分がある。

 副校長・教頭はじめ職員は消毒などの対策や感染者の発生に対する対応に多くの時間とエネルギーを費やした。つらかったと思う。しかし、単に収束を待つのではなく、この経験から最大限学びたい。

 第1に安全・安心の確保。不可視で変異するウイルスに振り回されたが、学校には様々な種類の危険がある。見えないものへの想像力、万一を想定する力が求められる。生徒が主体的に適切な判断や行動ができるような指導や仕組みが必要である。

 第2に適切な健康管理。私たちは検温など自分の身体の状態に対する意識を高め、感染対策を徹底することや免疫力を高めることの大切さを認識した。

 第3にICTの活用。GIGAスクール構想の進展を受け、令和2年度末までにWi―Fiのアクセスポイントが設置された。国の予算などを活用しICT機器の整備も進んだ。生徒の学びを止めないために、各校が様々な試行錯誤を続けた。

 道教委のICT教育推進課の充実したホームページなどを参考に授業動画の作成やオンライン配信ができるようになった。

 道立高校では本年度入学生からBYODによる1人1台端末が導入された。コロナ禍の苦労が生きてくると思う。

 各校の取組事例を共有し、レジリエンスを高めなければならないと考えている。

 ―高校長協会の抱える課題と対策

 第1に本年度の入学生から全面実施となった新学習指導要領の目的を達成すること。未来の社会をイメージし、必要な資質・能力を社会と真に共有し育むことが求められている。

 より良い学校教育を通じてより良い社会を創ることが最上位の目標である。学習評価の充実や端末などICTの活用も全てはそこにつながっている。

 「先生が教える」から「生徒が学ぶ」へ視座を大きく転換しなければならない。協会の活動もそれに沿ったものでありたい。

 第2に教育に係る人材確保、人材育成。採用試験倍率の低下に対しては、道教委の「高校生を対象とした教員養成セミナー」、北海道教育大学と連携した「教員基礎コース」を支援したい。

 そして前年度から始まった「未来の教頭応援プロジェクト」。ミドルリーダーの育成とともに現在の副校長・教頭の支援が重要。教育指導監や主幹の力をお借りしながら各支部の研修を推進する。

 根本は働き方改革。超勤時間が上限の年間360時間を超えている割合が高い。道教委に調査・報告の削減やサポートスタッフの配置を求めながら、校長として業務負担軽減、心身の健康のサポートに努めたい。

 こうした情報を共有し、組織的に取り組み、現在の危機的な状況を打破していきたい。

 ―活動の重点

 第1に道教委との連携強化。道教委の執行方針および施策を学校の教育活動に落とし込み、生徒の資質・能力を高めることが私たちの使命である。そのためには、私たちは本質と根拠を正しく理解しなければならない。

 年4回の代表校長研、年2回の高校改善研に合わせて、質問や意見を集約し、道教委から回答をいただいている。日常的にも、現場としての考えがあれば伝えている。学校をよくするために、しっかりとやりとりをする。

 第2に道教委への文教施策要望。中長期的なビジョンを持ちながら、次年度の文教施策に向けた要望を続けてきた。要望を通して、私たちの理念を明確に示し、困り感を伝え、施策のための具体的な提案をしたい。道および道教委の国への文教施策要望と同様、人とお金に係ることをしっかりと主張したい。

 言うまでもなく、要望の前提は私たち自身が創意工夫に富んだ適切な経営マネジメントをしていることである。

 第3に調査研究委員会の活動。管理運営、教育課程、生徒指導、進路指導において、切実で必要なテーマを設定している。アンケート、情報収集、事例研究により、全国的にも評価されてきた活動をより一層充実させる。

 第4に全高長との連携強化。文科省などの動向について、全国の事務局からいち早く提供された情報を迅速に共有する。

 他の都府県の情報により、私たちのあり方を相対化し、別な視点で思考することができる。

 ―教育信条

 教育とはeducationの語義どおり、引き出すこと。可能性を引き出し、伸ばしたい。豊かで幸福な人生とより良い社会を創ることが教育の使命。

 今、世界の危機はあちこちで高まり、生命と人格が軽視されたり、自由や民主主義が抑圧されたりしている。環境悪化が進行し、人類の持続可能性が危ぶまれている。

 日本もその流れにあり、格差や貧困、ジェンダー不平等、労働生産性の低下などの課題が重くのしかかっている。特に少子化および人口減少は危機的である。

 しかし、諦めたらそこで終わり。教育の力で必ず課題を解決するという気概を持ち、現場に足をつけ、目線を高くし、連携を強化しながら、より良い教育を推進したい。

 そして、教師の行動基準は率先垂範である。生徒のお手本は先生、先生のお手本は校長。そうなれるよう、本音で語り、本質を探究し、本気で実行していきたい。

◆略歴

 はやし・まさのり

 昭和60年北大卒、63年慶應義塾大院修。平成21年壮瞥高教頭、23年札幌平岡高副校長、26年札幌南高副校長、27年枝幸高校長、29年野幌高校長を経て、令和2年から札幌北高校長。

 昭和38年2月26日生まれ、59歳。伊達市出身。

(関係団体 2022-06-24付)

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