4種校長会長に聞く〈第4回〉 北海道特別支援学校長会会長 友善 学氏
(関係団体 2022-06-27付)

4種校長会インタビュー特別支援学校長会会長友善学
北海道特別支援学校長会・友善学会長

 ―会長としての抱負

 本年度より高校においても、1年生から学年進行の形で新学習指導要領が全面実施となった。

 昨年1月、中央教育審議会より答申「令和の日本型学校教育の構築を目指して」が公表され、そこに示されているように「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させ、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け、新学指導要領の着実な実施のもと、一層の授業改善に取り組んでいかなければならない。

 また、この答申の中の特別支援教育の章では、「障害のある子供の学び場の整備・連携強化」など大きく3点がうたわれている。

 これを受け、昨年6月、文部科学省より「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて」が各都道府県教育委員会へ通知され、この3月には「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議」により報告書が取りまとめられ、教師の専門性向上に向けての方策が示されている。

 このように新たな教育の姿が求められている今、本会としては、その目指す教育の実現に向け、様々な課題に対して道教委や市町村教委と連携して取り組むとともに、地域の人材育成を積極的にサポートするなど、本道全体の特別支援教育の専門性の向上を図るため、関係機関との一層の連携を図りつつ、センター的機能のさらなる発揮に力を注いでいきたい。

 ―特別支援学校長会の抱える課題と対策

 コロナ禍3年目を迎え「学校の新しい生活様式」のもと、児童生徒の生命と健康、学びを守る取組が地道に継続されている。

 同時にGIGAスクール構想の大幅な前倒しにより手にすることとなったICT教育環境を有効に活用し、新たな学校における学びの文化を構築すべく、各学校において様々な取組が進められている。

 これまで各学校、各障がい種別が抱えてきた課題をICTの活用等を通して解決し、特別支援学校の教育のさらなる充実を図りたい。

 また、各障がい種の専門性や、本会各支部の機動性など、より効果的に役割を分担しながら、各地域の人材を育成するための支援を行い、就学に関わる教育相談や各学校の指導・支援の充実が図られるよう協力していきたい。

 ―各障がい教育について

 視覚障がい教育では、札幌視覚支援学校および函館盲学校、旭川盲学校、帯広盲学校の4校が、自校の教育活動の充実に加え、広域な通学区域における視覚障がい教育のセンター校の役割を担っている。

 各校ともに在籍する幼児児童生徒の減少に伴い、子ども同士が学び合う環境の確保と教職員の専門性向上が喫緊の課題である。

 そこで、道教委事業「HANDS―ON―Project」を中核としたICTの利活用による4校間の遠隔授業等の取組を通して、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体化による授業改善を推進するとともに、学校の垣根を越えた授業づくりにより授業力の向上を目指す。

 地域支援については、保健センター等に対し、弱視幼児の早期発見・早期教育につながるよう、視力検査や目の相談などの支援を強化する。

 また、札幌視覚支援学校と帯広盲学校は、保健センター等の要請に応じて、視力検査が困難な幼児に対し、スポットビジョンスクリーナー(屈折検査機器)による視覚スクリーニング検査を実施する。

 聴覚障がい教育では、道内の聾学校7校(釧路鶴野支援学校を含む)がそれぞれの地区において聴覚障がい教育のセンター的機能を担っている。

 聾学校に在籍する幼児児童生徒の障がいの状態や実態が多様化していることを踏まえ、医療や保健、行政などの関係機関との連携を密にし、多面的に子どもを捉えながら、効果的・効率的な言語指導、学力向上に取り組んでいる。

 近年は文部科学省と厚生労働省が新生児期からの早期発見・療育を強く進めていることから、学校としてもますます大きくなる役割を果たしていく。

 聴覚障がい教育においては、聴覚障がいの状態等に応じて手話、音声、文字、指文字等を適切に活用し、思考力・言語力の育成や的確な意思の相互伝達が行われるよう、指導方法を工夫している。

 また、GIGAスクール構想により、ICTを教科学習やリモート交流・学習等に積極的に活用するなど、学習面・生活面等における聴覚障がい教育の専門性の向上を図りながら、増加する人工内耳装用者や重複障がい幼児児童生徒への指導等、多様な教育的ニーズへの対応に努めていく。

 知的障がい教育では、自立と社会参加を目指す教育を進めているが、年々増加する児童生徒や障がいの多様化に対応するため、「狭隘化」等教育環境の整備と教育課程の改善・充実が喫緊の課題である。

 また、コロナ禍による経済状況の変化が予想され、高等部卒業後の就労先への影響が危惧される。

 前年度はコロナによる学級閉鎖等のみならず大雪による臨時休校が多発し、教育内容の変更や削減を余儀なくされたが、新しい生活様式を基本として、ICTを活用した教育への取組や新しい体験的な学習の在り方について実践を積み重ねているところである。

 これまで培ってきた知的障がい教育の知見を継承しつつ、制限のある環境でも教育効果を上げる方法、行事の持ち方等を交流していきたい。

 知的障がい特別支援学校は最も学校数が多く、広域に点在することから、各学校の課題の集約、情報提供を迅速に行い、昨年以上に各学校間の連携強化を図っていきたい。

 肢体不自由教育では、道立8校と札幌市立2校において、学びを通して可能性を広げる教育を進めており、幼児児童生徒の障がいの状態の重度・重複化、多様化に対応するため、一人ひとりの教育的ニーズを的確に把握し、より質の高い教育を行うことが課題となっている。

 このため、各校が連携・協力し、オンラインによる専門性向上セミナーや北海道肢体不自由教育研究大会等の内容を充実させ、教職員の専門性の維持・向上を図っていきたい。

 また、全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会のPTA・校長会合同研究大会(北海道大会)が8月にオンラインで開催されるため、各校で役割を担い円滑な運営に当たるとともに、コロナ禍でのPTA活動の工夫などについて全国の学校と交流を図りたいと考えている。

 病弱教育では、道立2校と札幌市立1校において、病気や障がいに対応したきめ細かな教育を進めている。入院期間の短縮化等により、学びの連続性のための前籍校との連携が課題となっており、引継ぎにICTを活用するなどの工夫も行っている。

 また、一人ひとりの学習状況に応じた各教科等の指導には高い専門性が必要であり、北海道・東北病弱教育連盟研究大会や北海道病弱虚弱教育研究会研修会等を通して、教職員の研修の充実を図っていきたい。

 北海道医療センターに隣接する校舎で、手稲養護学校三角山分校と市立札幌山の手支援学校が教育活動を開始してから3年目に入った。

 この間、両校の教職員による教育実践の交流が図られ、授業におけるICTの効果的な活用などで成果を上げており、今後、情報発信を積極的に行い、本道全体の病弱教育の充実につなげていきたいと考えている。

 ―本年度の重点

①ICT等を活用した効果的・効率的な取組

 オンライン授業の展開(交流および共同学習を含む)や教職員の研究会や研修会、会議等にICTを積極的に活用することで、効率的・効果的な学校運営に努め、さらに、クラウドの活用などを通し、働き方改革のさらなる推進にも連動させていく。

②副校長・教頭を含めた働き方改革のさらなる推進

 これまでの取組により、一定の成果は確認できるようになってきているが、特別支援学校の副校長および教頭の時間外勤務が他校種に比べ突出している状況にある。

 各学校における副校長・教頭を含めた業務の平準化や、道教委との連携のもと、思い切った業務の圧縮並びに改廃を図っていきたい。

③地域の人材育成

 道特長会各支部の機動性を効果的に発揮し、センター的機能の発揮のもと、各市町村と連携しながら、各地域の専門性の向上や人材育成をより推進できるようにしていきたい。 

 障がいの多様化や、より一人ひとりのニーズに合った教育を保障していくために、幼小中高各校種の校長会とも連携し、専門性の向上や人材育成、切れ目のない一貫した指導や支援の充実に向け、地域、圏域の特別支援教育の充実に寄与していきたいと考えている。

◆略歴

 ともよし・まなぶ

 昭和61年東北福祉大卒。平成27年七飯養護校長、31年真駒内養護校長を経て令和3年から拓北養護校長。

 昭和37年4月25日生まれ、60歳。今金町出身。

(関係団体 2022-06-27付)

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