4種校長会長に聞く〈第1回〉 北海道小学校長会会長 紺野 高裕氏(関係団体 2022-06-22付)
北海道小学校長会・紺野高裕会長
―小学校長会会長としての抱負
道小は、昭和32年の発足から幾多の困難を乗り越え、本年度65年目を迎えた。「正論を以って正道を歩む」の理念を胸に、校長の職能向上と本道教育の振興・発展を図ることを目的として、社会状況を踏まえながら活動を進化させてきた。全道966人の会員が目の前の子どもを見つめ、北海道教育の質の向上のために真摯に取組を進めている。今後もよき伝統を引き継ぎつつ、全道の校長と連携・協働し未来を見据えてさらなる進化を図っていきたい。
時代の変革期を迎えている今、これまで以上に校長のリーダーシップとマネジメント力が求められている。道小は、各学校が教育改革や教育課題を踏まえた創意ある教育活動を推進できるよう、学校現場の視点での実践交流や意見表明、実効性のある要望活動を行っていきたい。本年度の活動においては、以下の点を大切にして取組を進めたい。
―小学校長会の抱える課題と対策
第1に、教育の質的な向上である。コロナ禍によって学習指導要領や中教審で示した授業の在り方について、その理解と実践については道半ばの状況である。
また、いじめや不登校をはじめ生徒指導面についても、問題の深刻化や複雑化、長期化が指摘されている。組織的な対応についての体制整備や教職員の研修、関係機関と連携した対応について一層の充実が求められる。子どもや保護者、学校を支援する教育相談機関の充実、サポート体制の強化なども同様である。
さらに、教職員の不祥事が後を絶たないことから、法令順守や服務規律の確保等も取組の充実が求められ、道小として本道の教育の質の向上に向けて力を尽くしたい。
つぎに、地域や市町村による格差を是正することである。例えば、GIGAスクール構想の推進に当たり、児童用の端末は行きわたったものの、教職員用や通級指導用の端末の整備には課題がある。保守管理やサポート体制も人員の確保等に差が生じている。また、家庭の通信環境に対する対応も市町村により差がある。これらについて、道内どの地区でも子どもたちに不利益が生じぬよう関係機関に働きかけたい。GIGAスクール構想以外でも、期限付き教諭やスクール・サポート・スタッフ、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールロイヤー等の人的配置をはじめ、様々な点において地域間格差の是正を働きかけていく。 ―本年度の重点
1点目は感染対策と学びの保障の両立である。
現在、新規感染者数はピークを越え減少傾向にある。しかし、いつまた新たな変異株が出現するか見通しが立たず収束が見えていない。ウィズコロナの中でも感染防止対策を十分に行いつつ、子どもたちの学びを止めることなく教育活動を推進するため、柔軟な教育課程の編成、通信環境や教育環境の整備、さらには学校行事の在り方を見直すなどの取組を進めることが、学校経営上の課題である。道小は、20地区の校長会と連携を密に各地の状況を把握し、必要な措置と条件整備を目指して取り組んでいく。
2点目は、「授業改善と指導力の向上」である。
ここ3年間、コロナ禍での学校運営を余儀なくされ、各校では学習指導要領で求める「主体的・対話的で深い学び」に向けた校内研修等に十分な時間と労力を割けない状況にあった。今後、学びの質の向上に向け授業改善に一層力を入れていく必要がある。
また、中央教育審議会答申「令和の日本型学校教育の構築」について理解の深化を図り、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実について、趣旨の理解と具現化が求められる。
そのためには、教員の指導力の向上が不可欠であり資質向上に向けた取組の充実が必要である。さらに、端末の有効活用についても道半ばであり、今後の取組の推進が必要である。
3点目は「学校における働き方改革」の一層の推進である。
各校では教育課程全般の見直し、ICT機器の活用による事務の効率化、専科教員の導入や外部人材の活用など工夫しながら取り組んでいる。道では、学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」(第2期)により、令和3年から5年までの目標が示され、一定の成果も見られるが道半ばである。
一方で、若手教員の増加、期限付き教諭や代替教員の不足など人材育成や人材確保が大きな課題である。道教委や札幌市教委の懸命な努力も、地域によっては人員不足が解消されていない。また、教員採用試験の倍率低下や管理職のなり手不足を鑑みると、教職員の負担軽減や処遇改善などは一層の取組が必要である。
教科担任制が導入され、配置校では高学年担任の負担軽減が図られたとの報告もあるが、配置数が少なく適当な人材がいないなどの課題も指摘されている。
道小は、これらの課題に正対して取り組むことが急務である。各地区校長会と連携し、エビデンスに基づいた提案や要望を行っていく。
4点目は、ウィズコロナにおける校長会の各研修会、研究大会の充実である。感染状況を見極め、オンラインを活用しながら活動を進めていく。参集の機会は貴重であり、多くの会員から会同を望む声がある。できる限りこれを目指しつつ、状況に応じてこれまで2年間の蓄積を生かしていく。
第65回道小教育研究旭川大会については、実行委員会と相談しハイブリッドによる開催(9月9日、1日日程)が臨時理事研修会にて了承された。研究大会は、道小の中核となる活動であり、「校長の職能向上」と「本道教育の質の向上」を目指して研鑚を積む貴重な機会である。特に、分科会は、以前から参画型の充実に向けた工夫を重ねてきたが、この2年は話し合いがもてなかった。今回はウェブ会議システム・ズームによる会議システムを駆使して協議する。
現在、実行委員会ではハイブリッド開催に向け懸命に準備が進められている。道小の総力を結集して実り多い大会となるように全力で支援していきたい。
最後に、持続可能な道小の活動に向けた組織および運営の見直しについてである。
道小では、2年度の企画研修委員会の答申を受け、本年度から事務局幹事の札幌市選出者を減じ、地区選出者を増員した。また、歳出削減の取組として、2回の理事研修会と全道会長研修会は、オンライン会議とした。加えて、分科会運営者研修会もオンラインで行う。会費値上げにより財政の立て直しが図られたが、今後も会員数の減少が見込まれ、引き続き効率化と歳出削減に向けて取り組んでいく。
―新型コロナウイルス感染症への対応
各校では、感染症の対応において、児童や教職員の陽性に伴う文書作成、学級閉鎖の措置等、気の休まる日がなかった。アフターコロナを見据えた学校経営等の観点からの3点について紹介する。
第1に、学級閉鎖や出席停止の際、家庭と学校を結ぶオンライン授業ができるようになった。学びの保障の点では大きな前進である。
第2に、教育課程の見直しが進み、運動会等の行事の改革が進んだ。運動会の午前開催、学年やブロックごとの時差開催、保護者の立ち見席の設置(座席取りの廃止)など多くの改革が進んだ。他の行事も様々な見直しが図られている。
第3に、教委主催の研修をはじめ校長会、教頭会、各種教育団体において、オンラインを活用した会議が多くもたれるようになった。移動時間や経費の負担軽減につながる一方で、参集することの価値もある。今後は、状況に応じて両者を使い分け併用しながらベストミックスを探っていくことになろう。
◆略歴
こんの・たかひろ
昭和60年道教育大札幌分校卒業後、札幌市立西小に赴任。平成10年道教育大附属札幌小、22年真駒内緑小教頭、24年道教育大附属札幌小副校長、28年宮の森小校長を経て、令和2年から北九条小校長。3年から道小学校理科研究会会長も務める。
昭和37年11月30日生まれ、59歳。室蘭市出身。
◆教育界では、長引くコロナ禍にあっても、子どもたちの学びの保障に向けたICTの活用、教職員の働き方改革、教員確保や後継者育成など、様々な取組を模索し実践している。本紙では、本道教育の発展と充実に大きな役割を果たしている北海道小学校長会、北海道中学校長会、北海道高等学校長会、北海道特別支援学校長会の各会長に、当面する課題や今後の展望などを聞いた。
(関係団体 2022-06-22付)
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