全小社研北海道大会公開授業⑯緑丘小 日本の急激な近代化に焦点 札幌の官営ビール工場建設題材に(札幌市 2022-12-26付)
第6学年授業研究会B(2)
札幌市立緑丘小学校6年1組(石本歩教諭)
明治の国づくりを進めた人々ビール工場~外面・内面の両面から近代化を捉える
◆第6学年で目指す子どもの姿
▼歴史から学び、新たな社会を創り出そうとする子
第6学年部会で目指す「社会を知り、世界を切り拓く北国の子」とは「歴史から学び、新たな社会を創り出そうとする子」である。
黒船来航以降の外国からの脅威に対し、大久保利通を中心に行われた廃藩置県等の諸制度の改革、殖産興業等の政策は、近代化を目指した社会の変化の一側面であった。
さらに、私たちは日本が「近代化」を進めたことだけではなく「急激な近代化」を進めたことができた理由に着目させたいと考えた。子どもたちには、制度やハード面等の外面の近代化という側面だけではなく、人々の生き方や考え方等の内面の近代化も同時に行われたからこそ、欧米列強に追いつき追い越すほどの「急激な近代化」を進めることができたことを理解させたい。
本単元の学習を手掛かりに、国を変革するには制度の改革だけではなく人々のそれまでの考え方や生活様式を変えていく必要があると考える子、そして、これからの自分たちの新たな社会を考える子に育てたい。そのために、まずは歴史をしっかりと知り、分かることを目指す。
◆本単元の目標
明治維新における改革を、地租改正、徴兵令等の制度の変革という側面と、文明開化、四民平等、人々の生き方や考え方の変革という側面に着目し、地図や年表などの資料で調べてまとめ、諸外国からの独立を果たすために、それぞれがどのような役割を果たしたかを考え、表現することを通して、黒船の来航、廃藩置県や北海道開拓などの施策を手掛かりに、わが国が明治維新を機に欧米の文化を取り入れつつ近代化を進め、諸外国に追いつくために富国強兵に力を入れ、政策を進めたことを理解する。
また、明治維新に関わる人物の業績や国づくりのための変革、世の中の変化について主体的に追究し、それを生かして学習問題を解決しようとする態度を養う。
◆本時のねらい
黒田清隆がビールの官営工場を札幌に建てることに決めた理由を考える活動を通して、北海道を開拓することで日本の近代化を外面と内面の両面から進めようとした黒田の思いを考え、適切に表現している。
◆本時の展開
【子どもの主な活動】
〈問いを生む場〉
▽黒田清隆「新たに官営のビール工場を札幌に造ります」
▽しかし、まだまだ開拓途中の札幌
▼課題「(札幌はまだ開拓途中の地なのに)黒田清隆は、どうしてビールの官営工場を札幌に造ることを決めたのだろう?」
〈考えをつなぐ場〉
▽札幌の開拓によって
・北海道の開拓が進む→仕事が増える
・交通が発展、関連施設も→人口も増える
▽ビールによって
・ビールを造る技術→西欧に追いついた、意識の変化
・外貨の獲得→ビールは外国でも売れる
▽日本の近代化
・北海道の開拓によって南下政策に対抗
・意識の近代化
・外貨でさらに富国強兵・殖産興業
▼まとめ「札幌にビールの官営工場を造ることで、日本の近代化を進めようとしたんだね」
〈吟味・検証・再考する場〉
▽開業から5年目に明治天皇が札幌麦酒醸造所を視察
・生産高・輸入高グラフ「生産高が輸入高を上回ったね。それだけ日本の技術力が高まったということだね」
・消費量グラフ「ビールを飲む人が増えたということは、内面の近代化も広がったんだね」
▼まとめ「明治政府は日本全国で近代化を進めていた。その中でもビール工場は文化の面でも意味のあるものだったんだ」
【教師の具体的な手だて】
〈問いを生む場〉
▽黒田が新たに官営のビール工場を建設することにしたが、自分ならどこに建設するかを考えさせる。当時栄えていた東京などではないかという予想をしたあと「黒田清隆は札幌に造ることを決めた」という事実を提示し、問いを生む
〈考えをつなぐ場〉
▽札幌の「自然」を生かしたビールづくりによって北海道を開拓、発展させ、文化面でも西洋に追いつくことを目指した黒田の意図を明らかにする
▽北海道の近代化が日本にどのような影響を与えるのかを考えさせることで、札幌から日本の近代化をさらに進めようとした黒田の願いに気付かせる
〈吟味・検証・再考する場〉
▽明治天皇がビール工場を視察したことを取り上げることで、札幌のビール工場が日本の近代化にとって重要視されていたことを考えさせる
▽ビールの消費量や生産高と輸入高のグラフから「内面」「外面」の近代化が進んでいったことを再考させる
▼評価「札幌にビール工場を建てることを決定した黒田の意図について、北海道の開拓やビールづくりの意図と日本の近代化を関連付けて考えることができているか」を評価する
(札幌市 2022-12-26付)
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