電気と生活のつながり考察 鹿追町のバイオマス発電に着目
(札幌市 2022-12-27付)

特設提案授業

道教育大附属札幌小学校4年(河原秀樹教諭)

わたしたちのくらしと電気~24時間いつでも使える電気を支える人々

◆特設授業部会で目指す子どもの姿

▼電気の供給の現状を知り、持続可能なエネルギーを活用して電気を安定供給しようと取り組んでいる人物の営みに共感し、自分の生活と結び付けて考え行動しようとする子

 第4学年「わたしたちのくらしと電気」の単元は「飲料水・電気・ガス」の中から取り上げる内容を選択することになっており、これまで全国各地では「飲料水」を取り扱った授業実践が多く行われてきた。

 今回、北海道大会の研究提案をするに当たり「電気」を選択し教材化を図ることとしたのは「社会を知り、世界を切り拓く北国の子の育成」の研究主題を具現化できると考えたからである。

 持続可能でより良い世界を目指す国際目標であるSDGsにも関連するように、今、世界はカーボンニュートラルや脱炭素化といったエネルギーの問題が喫緊の課題となっている。「電気」を通して、私たちの暮らしとエネルギーのつながりについて考えることは、これからの世界を切り拓いていく子どもたちにとって、必要不可欠な大きなテーマであると考える。

◆本単元の目標

 電気を供給する事業について、電気を供給するための仕組みや経路、道内外の人々の協力などに着目して、関連施設や事業所を見学したり地図や資料などで調べたりしてまとめ、電気の供給のための事業の様子を捉え、その事業が果たす役割を考え、表現することを通して、電気を供給する事業は、安全で安定的に供給できるよう進められていることや、健康な生活の維持と向上に役立っていることを理解できるようにする。

 また、主体的に学習問題を追究・解決し、学習したことをもとに地域社会の一員として自分たちが協力できることを考えようとする態度を養う。

◆本時のねらい

 鹿追町の喜井知己町長がバイオガス発電にチャレンジする意図を考える活動を通して、地域の特性を生かした持続可能な環境に優しい発電ができる「バイオガスプラント」の価値に気付き、適切に表現することができる。

◆本時の展開

【子どもの主な活動】

〈問いを生む場〉

▽鹿追町:酪農「牛のまち」、人口約5200人/ウシ2万2000頭

▽地域住民「バイオガス発電の取組が成功するかも分からないのに、なぜ、ウシのふんにお金を出さなければいけないのですか」

▽喜井町長「鹿追町では、町全体でバイオガス発電にチャレンジします」

▽酪農家は、それぞれの牧場で処理するので十分と考えていたのに…

▼課題「(酪農家は、ウシのふんの処理にお金を出すことに反対していたのに)喜井町長は、なぜ町全体でウシのふんを原料にしたバイオガス発電にチャレンジするの?」

〈考えをつなぐ場〉

▽鹿追町だからこそウシのふんを活用

・やっかいもののふんを有効利用できる

・ウシが多い町だからこそできる

・発電の原料を安く大量に手に入れられる

・天気や季節に関係なく発電できる

・町全体でエネルギーへの意識を高める

▽持続可能な環境にやさしい発電

・SDGsの目標を達成したい

・エネルギーを外国から買わなくて済む

・エネルギー自給率が高くなる

・太陽光発電よりも安定して発電できる

・カーボンニュートラルに近付く

▼まとめ「地域の特性を生かして、やっかいもののウシのふんをエネルギーに変えて電気を使い続けられる町にしているね」

〈吟味・検証・再考する場〉

▽地域住民の声にも大きな変化が!

・地域住民「バイオガス発電は鹿追町の誇りだ!」「くさい町じゃなくなって、洗濯物も外に干せるようになった。もっと、バイオガスプラントを造りたい!」

▽みんなで協力していつまでも電気が作り続けられる

・喜井町長「鹿追町は、ウシが多い特徴を生かしてバイオガス発電に取り組みました。これからも町民や関係機関と協力しながら、エネルギーの地産地消をして、安く電気を提供していきたいと考えています」

▽持続可能な電気の安定供給

▼まとめ「いつでも、いつまでも電気が使い続けられるために、たくさんの人が協力しているんだ」

【教師の具体的な手だて】

〈問いを生む場〉

▽地域住民の声と喜井町長の判断の比較を通して、町全体でバイオガス発電に取り組もうとする喜井町長の意図に焦点化する

〈考えをつなぐ場〉

▽立場や視点ごとに子どもの考えを板書に位置付ける

▽既習での学びの積み上げと関連付けながら、町の特性を生かした電気の安定供給が見えるようにする

〈吟味・検証・再考する場〉

▽町民の気持ちの変容から、町長の営みの価値を検証する

・喜井町長の言葉をもとに、持続可能な電気の安定供給の在り方を再考するようにする

▼評価「鹿追町の取組を通して、持続可能な発電の在り方を考え、ノートや発言で表現している」

(連載終わり)

(札幌市 2022-12-27付)

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