新春インタビュー4種校長会長に聞く④ 北海道特別支援学校長会会長 友善 学 氏(関係団体 2023-01-20付)
友善 学 会長
◆アフターコロナ見据え取組
―校長会としての新年の展望
3年にも及ぶコロナ禍ではありましたが、ようやく終息への道筋が見え始めてきたように感じられます。インフルエンザに対するような治療薬の開発などには未だ至っておりませんが、感染症法上の分類の見直しの検討について、様々な情報が発せられるようになりました。いよいよアフターコロナを見据えた準備に入る時期が参ったようです。
この3年間、児童生徒の命と健康、学びを守る取組を基本に、確実な新学習指導要領の実施に努めてまいりました。
またコロナ禍によって一気に導入が進んだ、1人1台端末の積極活用を通しコロナ禍での学習保障、手探りではありますが個別最適な学びと、協働的な学びの一体的な充実を図り、主体的・対話的でより深い学びの実現を目指し、各校実践を進めてまいりました。
アフターコロナに向けては、コロナ禍において停滞を余儀なくされた、障がいのある子どもたちにとってより重要とされる体験的な学習など、再構築を図っていく必要があります。その際、ICTの活用の一層の充実も併せ、新たな時代の教育の創造に向け、教育活動全体の精査も必要と思われます。
また、この春、道教委から、新たな特別支援教育の基本方針が公表される予定となっており、特別支援学校長会といたしましては、その具現化に向け、関係諸機関との連携のもと取組を進めてまいりたいと存じます。
◆ICT活用、専門性向上など
―新年度の重点的取組
視覚障がい教育では、札幌、函館、旭川、帯広の4校が、各圏域の視覚障がい教育のセンター的役割を担いつつ、自校の教育活動を展開しています。
各校ともに、在籍する幼児児童生徒の実態に応じた、きめ細かな教育で保護者等から高い評価を得ています。一方、在籍者減少による1人学級や欠学年があり、子ども同士が学び合う環境の確保と、教職員の専門性の維持・継承が喫緊の課題となっています。
子ども同士が学び合い・教え合う「協働的な学び」について、これまでの道内4校間のICT活用による交流に加え、全国の盲学校との遠隔授業等を積極的に推進します。全国に点在する同じ障がいのある同年代の子ども同士の学びの機会を拡大し、学びの質の向上を図ります。また、4校が実施する小・中学校等との交流および共同学習に、他の盲学校の児童生徒がオンラインで参加できる機会もできるだけ確保したいと考えています。
教職員の専門性向上について、各盲学校において各教科の担当が1人という状況が多いことから、昨年から道視覚障害教育研究会は「教科等指導サークル」を新設し、年度を通して4校の全教育職員が希望するサークルに所属し、研究・研修、授業参観(研究)、情報交換などの活動を始めました。学校間の垣根を越えた取組の充実を一層図り、4校等しく専門性の高い教育を提供できるよう努めてまいります。
聴覚障がい教育では、7校の聾学校等が各地の特色を生かし、相互に連携した教育を推し進めています。また、近年国では難聴児の早期支援に向けた保健・医療・福祉・教育の連携プロジェクトを進めるなど、最早期からの聴覚障がいがある子どもや保護者への支援の充実が図られています。広域性のある本道では、聾学校等が果たすべき役割がますます大きくなっており、これまで培ってきたスキルと経験を生かし、引き続き地域の聴覚障がい教育のセンターとしての役割を果たしてまいります。
学習指導では、言語の獲得と活用のための学習や、言語を基盤とした各教科等の学習など、基礎的・基本的事項の習得と定着を目指して取り組んでいます。各聾学校では、幼児児童生徒の減少傾向が続いており、重複障がいのある児童生徒の在籍率の増加も続いています。そのような中、ICTの活用を含めた「個別最適な学び」や道内外の聾学校とのオンライン学習での「協働的な学び」の充実等に取り組んでいます。
教職員の専門性向上に向けては、オンラインにて各校で実施する研修会に相互に参加したり、道聴覚障がい教育研究大会を実施したりしています。栄養教諭、養護教諭、乳幼児相談室担当者などの専門職の交流や、各校の研修資料をクラウドで共有するなどの取組も進めています。
聴覚障がい児・者に関わっては、日本各地で手話言語条例の制定が進むほか、日本では初開催となるデフリンピックが2025年夏に決まり、デフスポーツのさらなる理解と普及が望まれるなど、取り巻く環境は変化しております。様々な方々への理解・啓発を進め、夢と希望を持って社会参加と自立を目指すことができるよう、教育の充実を図ってまいります。
知的障がい教育校は、私立、附属を含め42校が設置されています。小学部、中学部、高等部の3学部が併設されたいわゆる義務校と高等部単独のいわゆる単置校があります。知的障がい教育校といっても児童生徒の障がいの程度や必要とされる支援の内容は多種多様であり、それぞれの地域等によって抱える課題が大きく異なるのが現状です。
一方、都市部の義務校を中心に就学を希望する児童生徒は増加の一途にあり、深刻な教室不足の状態が続き、狭あい化はなかなか解消されません。児童生徒数に見合った教室数の確保など、学習環境の基礎的整備が急務となっております。
高等部教育では、障がいの程度によって選択する高等部から、学ぶ内容によって選択する高等部へと転換して3年が経過しました。本年度末には転換後に入学した生徒が卒業を迎えます。学ぶ内容の趣旨が生徒のニーズに合致しているのか、高等部の生徒の進路状況がどのように変化したのかを検証する必要があります。今後の在り方とも合わせ道教委、関係各所と協議していく予定です。
急速に進んだ1人1台端末については、主体的・対話的で深い学びの実現に向け、どう効果的に教育活動に結び付けるか、各校で実践を積み重ねております。
教員の専門性向上へ、オンラインでの研修会や会議がスタンダードとなり、どのような状況でも情報交流できる体制になりました。本年夏には全国特別支援学校知的障害教育校長会の全国研究大会が札幌市で開催される予定です。参集方式の予定ですが、感染状況を見ながら柔軟な対応が取れるよう、実行委員会を設置して準備を進めています。
◆特支基本方針踏まえ取組検討
肢体不自由・病弱教育では、2019年3月校長会と副校長・教頭会合同で策定した「肢体不自由教育・病弱教育ビジョン」のもと、学校間で連携・協力し課題解決に向けた取組を進めてきました。肢体不自由養護学校体育大会のオンライン開催は、その成果の一つです。このビジョンが次年度5年目を迎えること、また、道教委において新たな特別支援教育に関する基本方針が3月に策定されることを踏まえ、これまでの成果と課題を検証し、今後の取組の方向性について検討したいと考えます。
肢体不自由関係では、学びを通して子どもたちの可能性を広げることが大切であり、教職員の専門性の維持・向上は欠かせません。本年度もオンラインによる専門性向上セミナーや道肢体不自由教育研究大会(網走大会)を開催し、授業改善につながる充実した研修となりました。
また、昨年8月に全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会のPTA・校長会合同研究大会(北海道大会)がオンラインで開催され、その準備・運営を道内の各校で協力して担い、全国の参加者から好評を得ることができました。本大会を通して得られた全国の先進的な取組を参考に、今後の学校経営やPTA活動の充実につなげていきます。
学校配置では、白糠養護学校が3月末で閉校となることが示されました。今後の釧路・根室地域の肢体不自由教育の推進について、校長会として求められる役割を担ってまいります。
病弱関係では、短期・中期の入院生の場合は前籍校との連携による学びの連続性、長期の入院生の場合は、テレワークによる就労体験をはじめ社会とつながる学習が重要であり、教育的ニーズに応じた取組を一層充実していきたいと考えています。病弱3校では、ICTを積極的に活用した授業改善に取り組んできており、成果を共有し情報発信するため、道病弱虚弱教育研究会の活動など、学校間の連携・協力を強めていきたいと思います。
―結びに
この春卒業を迎える高校3年生ならびに中学3年生の皆さんは、その学校生活の全てがコロナ禍での生活となってしまいました。誰もが経験したことのない、極めて異例で非常に厳しい3年間だったと思います。
しかしながらこの3年間の厳しい経験は、今後の人生を生き抜く上で、大きな糧となることと思います。アフターコロナの社会のつくり手として、自信を持って活躍していっていただければと思います。この生徒たちの将来にも寄り添いつつ、本年におきましても、皆さまのご理解ご協力を賜りながら、特別支援学校長会の取組を推進してまいる所存です。
ともよし・まなぶ
昭和61年東北福祉大卒。同年美深高等養護で教員生活をスタート。平成17年伊達高等養護教頭、19年真駒内養護教頭、22年夕張高等養護教頭、24年星置養護副校長、27年七飯養護校長、31年真駒内養護校長、令和3年拓北養護校長。
昭和37年4月25日生まれ 60歳。今金町出身。
(関係団体 2023-01-20付)
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