いじめ重大事態の対応改善へ 国が情報集約、助言体制強化 全国の事案、政策立案に活用
(国 2023-02-06付)

いじめ重大事態対応の5年度方向性
いじめ重大事態対応の5年度方向性(クリックすると拡大表示されます)

 国は来年度、全国の教育委員会からいじめ重大事態の情報を集約し、対応の改善を図る新たな制度の枠組みを検討している。文部科学省とこども家庭庁が情報を共有して適宜状況を把握するとともに、対応に苦慮する自治体への指導助言体制を強化する。さらに、全国の事案を分析して政策の立案に活用する仕組みを新たに設け、いじめ未然防止の事例の充実や効果的な重大事態の調査に向けて改善を図る考えだ。

 いじめ重大事態の3年度発生件数は705件となり、8年間で約4倍に増加している。これまで国はいじめ重大事態の発生時に文科省のガイドライン等に基づき指導助言を行ってきたが、連絡は自治体によって様々であり、適切な助言を行うために必要な情報が集約されていない実態がある。

 また、調査委員の選定・確保の困難さから調査開始が遅れ、結果として被害児童生徒や保護者との信頼関係を損ねるケースが発生しており、各自治体の対策が広く共有できていないなどの課題がある。

 このため国は、重大事態に関する情報を集約化し、進行中の全国の事案の対処状況や課題を把握する体制を5年度から構築することを計画。

 いじめ重大事態の発生時に各教育委員会に報告を求めて進捗状況を管理するとともに、こども家庭庁に設置されるいじめ調査アドバイザーを活用して、主に関係機関との連携や調査の第三者性確保に関する助言を行う。

 報告のタイミングは「いじめ重大事態の発生」「調査開始」「調査結果取りまとめ」の3つの段階を想定。

 取り扱う情報はいじめ重大事態に関するものに限定する見通しで、必要に応じて首長や教育長との対話の機会を設ける。

 2日のいじめ防止に向けた関係府省会議でこれら新制度に係る案を提示し、3日の文科省のいじめ防止対策協議会で有識者が意見を交換した。

 「調査内容や委員選定の妥当性の分析」「好事例の自治体への還元」「私立学校に対する支援」など多くの観点から賛成の声が上がった一方、情報を取り扱う文科省の人員確保や体制を懸念する声があり、都道府県教委との役割分担の必要性が指摘された。

 いじめ重大事態の認知に当たっては戸惑うケースが多々発生していることから、学校関係者からは「まずは学校設置者に相談するのが一番大切。重大事態の判断等に関して設置者と密に連携することを呼びかける文言を入れてほしい」との意見があった。

 次回会議での議論を経て本年度中に決定する。

(国 2023-02-06付)

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