道教委 算数・数学セミナー開催 学テ結果の分析・活用を 元学力調査官の佐藤氏が講演
(道・道教委 2023-02-14付)

算数・数学セミナー開会式
算数・数学セミナー開会式

 【苫小牧発】道教委は1月30日、新ひだか町立静内中学校で「ほっかいどう算数・数学セミナー」を開催した。オンラインを合わせ全道から約270人が参加。元国立教育政策研究所学力調査官の佐藤寿仁岩手大学准教授が「算数・数学の授業改善について」と題し講演。全国学力・学習状況調査について「子どもがなぜミスしたか、何に困っているかを分析し、授業改善に生かすことが先生方の仕事。そうすればもっと授業改善を進めることができる」と訴えた。

 同セミナーは、全国学力・学習状況調査において本道の長年の課題である算数・数学教育に係る教員の指導力向上を図り、児童生徒の資質・能力の向上に資するもの。

 開会に当たり、道教委学力向上推進課の成田仁主幹があいさつ。4年度の全国学力・学習状況調査について「小学校算数、中学校数学は平成19年の調査開始以来全国平均を上回っておらず、本年度も全国の平均正答率と2ポイント以上の差が見られる」「児童生徒質問紙調査では、算数・数学の授業はよく分かるかとの質問に対し、小学6年生の約2割、中学3年生の3割弱が否定的に回答しており、子どもたちが分かる、できるための授業改善を早急に進めていくことが必要」と指摘。

 「セミナーでは、算数・数学科の指導の在り方についてより一層理解を深め、あすからの学習指導の改善・充実に生かしていただきたい」と期待した。

 続いて、元国研学力調査官・教育課程調査官(専門分野―算数・数学科教育)の佐藤准教授が「算数・数学の授業改善について」と題し講演。その後、算数・数学授業づくりシートの作成などについて演習・協議を行った。

 この日の午前中はセミナーと併せ同会場で日高教育局、日高教育研究所・教職員研修センター、日高管内算数数学教育研究会主催の研修講座(算数数学教育)を開催。

 新ひだか町立静内中学校の荻原崇行教諭が中学2年A組の「確率」の授業を公開。その後研究協議を実施し佐藤氏が助言した。

 セミナーにおける佐藤氏の講演概要はつぎのとおり。

 今はスマホで簡単に計算ができる時代。では、教育で何を大切にするべきか。積分を覚えるだけではなく、積分で何ができるかが大切。「何を大事にしなければいけないか」を考えなければならない時代にきている。 

 学力・学習状況調査の結果には、使えるものがたくさんある。特に子どもがどんな風に間違っているかが大切。それは、来年、再来年の子どもたちに教える際の貴重なデータとなる。

 分析結果のデータは私たちに語りかけてくれる。記述問題で説明する力が弱かったなら、授業の中に数学的に表現するチャンスがみんなにあったか?と反省することができる。

 北海道の子は全国に比べ無回答が多い。だから駄目だではなく、なぜなのか、どうすればいいのかを反省すること。

 三角形の面積の正答率が半分程度。授業で教えた。公式も伝えた。ではなぜか。多角形の外角の和は360度。生徒はそれを覚えている。しかし、知っていることとそれを使えることは違う。

 知っていることと理解していることは少し違う。事実的・概念的な知識は、先生が一方的に与えた知識である。知識は与えられるものではなく、獲得するもの。獲得するから、きちんと自分の中に位置付けられる。

 なぜ子どもが間違えた答えを導き出したか。子どもの思いを知らないと、教える授業から脱却できない。

 テストの結果を見て、どうしてこういうミスが起こったのか?と分析するのが、学力・学習状況調査のあとの先生方の仕事である。

 三角形の面積を求める公式が底辺×高さ÷2であると生徒は覚えている。しかし、底辺とは何か、高さとは何かを理解していないから問題が解けない。また「問題に出てきた数字は全部使わなければいけない」と思っていた生徒もいた。

 学力・学習状況調査は、どれだけの子が解けたかよりも「子どもが何で困っているか」を理解すること。データで明らかになることはたくさんある。もっともっと活用すれば授業改善を進めることができる。

 子どもは論理の組み立てができなくて困っている。だから無回答が多い。ならば、授業に考察の場面がなければいけない。推論には経験が大切である。

 今は教え方より、学び方の時代に入った。特に探究。探究とは、自分事の問いを持ち、考察することである。

 とにかく、学びの主役は子ども。授業の主役は子どもである。数学的な見方・考え方を鍛えるため数学的活動を充実し、教師はどう伴走するかである。

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算数・数学セミナー佐藤氏
佐藤氏は「学テのデータが何を改善すべきかを語ってくれている」と主張した

(道・道教委 2023-02-14付)

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