道教大附属札幌中2年次研究概要 第5回 既習と未習 意識的につなぎ 自他の思考吟味し課題解決
(札幌市 2023-04-12付)

▽研究目標2

 研究1年次における取組期間の短さから、研究2年次においても基本的な取組に変更を加えないことを全体共有している。

 しかし、「既習と未習」に関わる課題を踏まえて私たち教員の「願い」に立ち戻ると、自身の学びの中で状況に応じて方略を選択しながら課題解決に向かう力の育みが求められる。

 そのため「既習」は過去の学びから得られた知識やその活用の仕方、すなわち課題解決に向けた方略であり「未習」はそれらの知識や方略を生かす機会としての「未知の状況」を指すことに他ならない。

 また、課題解決に向かう際には、自他の思考をそのまま受け入れるのではなく、「冷静に捉えて批判的に分析しよう」とする過程や、そのような過程を生み出そうとする態度が重要となる。

 以上のことを踏まえつつ、研究目標2については以下の取組を継続的に行う。

 各教科・領域の授業において、既習と未習を意識的につなぎ合わせ、自他の思考を吟味しながら課題解決へ向かう授業の実践。

 研究1年次にも触れているとおり、研究の目的で述べている「批判的」とは欠点や短所を非難するようなものではなく、自他の思考やその過程を冷静に吟味し、多面的に検証しながら深めていくことを指している。この「吟味する」という点にあらためて着目することには「自他を往還」する際の質的な側面により焦点を当て、これまでの取組をさらに昇華していくねらいがある。

 また、創造性を必要とする問題解決場面における他者との関わりがどのような影響を及ぼすかを検証した事例を紹介し「自分が考えている解決法とは異なる視点や意見に触れることができることや、相手の視点を意識した発話を行おうという態度が形成され、それにより多角的に問題を捉えなおそうとすることが示唆される」と述べている。このことは、既習と未習を意識的につなぎ合わせることや自他の思考を「吟味する」ことが創造的思考を助けたり、創造性を発揮したりする際の要因の一つであることを指摘しているものである。

 なお、ここまで述べてきた研究目標2の取組は、研究1年次においても重視していた「必要性や必然性を持った適切な学習課題の設定」を前提としたものである。なぜなら、本校研究の基盤となる考え方や、批判的・創造的な思考態度や指向性を育むという今次研究の目的からも、この学習課題の設定の在り方については引き続き重要な位置付けとなるためである。

▽研究目標3

 研究1年次においては、今次研究における第1回目の学習・生活アンケートを実施し、その結果を分析・検証したのみに留まった。そこで、研究2年次においては基本方針を変更せず、以下の2つの手法による分析・検証を行うこととする。

①「量的分析」アンケートを用いた数値による分析・検証

・今次研究の目的と関連する「認知的方略」や「批判的思考」「創造的思考」などの態度や志向性に関わるアンケートを作成し、5月および11月に実施・分析する

・アンケートは、心理測定尺度の先行研究をもとに作成する

・統計的手法として平均値、分散値、および分散分析等を行う。分散分析において有意差が見られた場合、多重比較検定を行う

・アンケートの作成や考察に当たっては、道教育大学教職大学院の川俣智路准教授に協力いただく

②「質的分析」授業等における生徒の見取りを通した分析・検証

・「質的分析」による結果を補助し、数値化されない部分や新たな視点を見いだすことを目的として、日常の授業の様子や記述内容、日常的な関わり等を対象とした変容の見取りを行う

・日常の授業の様子については、事実やその事実に対する解釈・意見を記述した「観察ノート」をとり、ワークシート等の記述と合わせて一定期間ごとに生徒の変容に関する検証を行う

・「観察ノート」の記録に当たっては、前次研究での反省を生かして大学・教職大学院との連携をより一層推進し、教師の負担を減らしながら有意義な記録を蓄積できる体制を模索する

・「質的分析」の対象は全生徒とせず、各学年から2人程度抽出することとする

     (連載終わり)

(札幌市 2023-04-12付)

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