根室管内5年度教育推進の重点 子の可能性を引き出す 地域特性生かし挑戦と覚悟を(道・道教委 2023-05-23付)
日向正明局長
テーマの設定
本テーマ設定に至った社会的背景をみると、子どもたちを取り巻く環境(社会)は、AI等の先端技術が加速度的に高度化し、Society5・0時代の到来により、社会の在り方そのものが劇的に変化している。いわゆる「藤と創造の時代」とも言える時代を、子どもたちが生き抜くためには、自立的に生き、主体的に判断し、多様な人々と協働して変化を前向きに受け止め、未来に向けて豊かな創造性を発揮できる資質・能力を身に付けることは必要不可欠となる。
こうしたことから、これからの社会を生きる子どもたちが、どんな場面に直面しても柔軟に対応でき、夢や目標の実現に向けて挑戦し続けるたくましい人間に成長してほしいという願いを込め「しなやかにたくましく生きる子どもの育成」というテーマを設定した。
また、本テーマは「北海道総合教育大綱」および新たに5年度から開始される「北海道教育推進計画」の基本理念や施策を踏まえて設定している。
サブテーマの設定
▼子どもの可能性を引き出す教育への挑戦と覚悟
子どもたちは、機会均等の理念によって日本全国どこへ行っても同等の教育を受ける権利があり、市町村、教育委員会、学校は住民の思いや願いの付託に応え、その地域が目指す子ども像の実現に向けて、教育活動を推進していかなければならない。
それぞれの地域で育つ子どもたちが「その地域の学校で学ぶことができて心から良かったと思える」ような地域の特性を踏まえた独自性のある教育を、子どもの教育に関わる関係者は挑戦し、責任と覚悟を持って取り組む必要があることからこのようなサブテーマを設定した。
【釧路発】根室教育局の日向正明局長は4月中旬、5年度管内教育推進の重点を示した。5年度のテーマを「しなやかにたくましく生きる子どもの育成~子どもの可能性を引き出す教育への挑戦と覚悟」とし、3項目の重点を設定。副題「子どもの可能性を引き出す教育への挑戦と覚悟」では、地域で育つ子どもたちがその地域の学校で学ぶことができて「心から良かったと思える」ように地域特性を生かした独自性を持つ教育の推進に向け、教育関係者に対して挑戦するとともに責任と覚悟を持って取り組むことを呼びかけている。
管内教育推進の重点
本年度の重点については、それぞれ3つの重点に2つの具体的項目を位置付けるとともに、現在の教育の動向や管内教育の課題等を踏まえ、取り組む必要性の高い内容を厳選して設定している。
▼重点1「確かな学力を育む機動的な組織体制による取組の深化」について
道教育推進計画の施策の柱1「子どもたち一人ひとりの可能性を引く出す教育の推進」を踏まえ、教育活動のさらなる質の向上の観点から設定している。
重点1に係る具体的項目の1つ目、「子どもの変容を即時的に評価する継続的な検証改善サイクルの確立」については、授業をはじめ教育活動全般において児童生徒は何を身に付けたのかを確実に見取り、目標に到達できなかった児童生徒には必要な手だてを講じるなど、日常的にマネジメントを回し、指導と評価の一体化を図る取組を推進するよう求める。
具体的項目の2つ目、「子ども一人ひとりの個性や多様性を認め合う支持的な風土で学びが展開される環境の整備」については、児童生徒が安心して学校に通い、意欲的な姿勢で学びに向かうために、児童生徒一人ひとりに学校・学級集団の中で帰属意識を高めさせたり、自己肯定感を持たせたりするなど、他者を認め、より良い人間関係の構築に努めていただくようお願いする。
▼重点2「子どもの学びを支え、“地域の先生”として根室管内の発展に寄与する人材の育成」について
道教育推進計画の施策の柱2「学びの機会を保障し質を高める環境の確立」を踏まえ、教職員の人材育成の観点から設定している。
重点2に係る具体的項目の1つ目、「教員の実践的指導力や専門性の向上に関する研修の計画的な実施」については、教師が挑戦、覚悟を持って教育を推進していくためには、個の教師力の向上は必要不可欠である。
管内の課題の一つであるミドルリーダーの育成の解決を図る上でも①管理職②教育委員会③教育局―の3者がきめ細かに教職員の実態を分析するとともに、教員が求める研修内容のニーズに応えることができるよう、どのような研修を実施する必要があるのか、研修の内容・在り方自体を見直し、改善を図るよう求める。また「教育育成指標」を効果的に活用してライフステージに応じた育成を進めたり、研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励を行ったりするなど、取組の充実を図るようお願いする。
具体的項目の2つ目、「“地域の先生”としての自覚と責任を持ち続けながら教育に取り組む態度の育成」については、地域の子どもを育てるという観点から、子どもの教育に直接携わる教職員が“地域の先生”として活躍し、地域から信頼される存在になることが非常に重要である。そのためにはふるさと教育の実践の充実を図ることで、教職員が地域のことを深く知り、その地域に愛着を持って教育にまい進できるよう、取組の充実を図るようお願いする。
▼重点3「全ての子どもが地域に根差した学びの良さを実感できる教育の充実」について
道教育推進計画の施策の柱3「地域と歩む持続可能な教育の実現」を踏まえ、学校・家庭・地域・行政の連携の観点から設定している。
重点3に係る具体的項目の1つ目、「目指す子ども像を共有した異校種間の連携・一貫教育の推進」については、管内全体の様子をみると、校種によって学力差がはっきりしており、子どもたちの学びに対する意欲や内発的動機付けによる学びの姿勢が、学年が上がるにつれて低下していることが課題となっている。
よって、学びの良さや楽しさを継続させるためには、義務教育9年間、幼小連携、中高連携等によって、系統的な指導を行い、校種に関係なく一人ひとりの子どもをどういう大人に育てていくのか、共通した目的を持って教育を行うとともに、キャリア教育の観点から異校種間の連携を深め、社会的・職業的自立に向けて必要となる力を着実に身に付ける取組の充実を図るようお願いする。
具体的項目の2つ目、「地域の教育資源を活用した教育活動の整備、ふるさと教育の推進」については、子どもたち一人ひとりが地域の構成員として愛着や誇りを持ち、しなやかにたくましく生きて、人間としての基本的な生き方を学んでいくために、ふるさと教育の推進は欠かすことができない。
ふるさと教育の実践内容が学校教育・社会教育や家庭教育全体に毛細血管のように行き渡り、潤滑油のように互いの隙間を埋め、異校種間連携・融合の姿を体現できるように、取組の充実を図るようお願いする。
共通重点事項
それぞれの重点の具現化に向けて特に考慮してほしい視点を共通事項として設定した。①主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善(改革)②子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた特別支援教育の充実③家庭・地域・関係機関と連携した学校の安全・安心の保障―の3点については、どの学校種においても緊要な経営課題と言えるものである。
①主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善(改革)=ICTの効果的な活用を踏まえた授業改善(改革)やスタディログ等を活用した個別最適な学びの充実を踏まえた実践を求める
②子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた特別支援教育の充実=ICTの活用等による障がいの状態等に応じた指導の工夫や就学支援、場の変更等に係る進学指導、キャリア教育、進路指導等の充実を求める
③家庭・地域・関係機関と連携した学校の安全・安心の保障=前年度改訂された生徒指導提要に基づき、日常的に危機管理マニュアル等の改善を図るなど、各学校における危機管理意識の向上を図るとともに、主体的に取組を進めていただきようお願いする
おわりに
5年度管内教育推進のテーマおよび重点は、最終的に北海道が目指す教育の基本理念である「自立」と「共生」を目指して設定されたもの。また、各地域で育つ子どもが、その地域での学びを通して成長し、社会の変化に対応し、生涯にわたって生き抜く力を確実に身に付けることができるよう、学校や教育委員会は主体的に取り組み、自走できる組織となることが重要となる。
今回設定した重点については、現段階の管内教育の課題等を見直した際に、学校や教育委員会が自走できる組織として、教育の推進を図ることができるための要素を示している。
教育局としても、皆さん一人ひとりと、これまで以上に連携を密にしながら根室教育の質の向上に努めていく所存であるので、一層の協力をお願いする。
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(道・道教委 2023-05-23付)
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