札教研事業 春の研究集会・上 札幌市教委 26研究部が多様な方法で研究実践発信(札幌市 2023-06-15付)
小学校国語研究部
札幌市教委は13日、札幌市教育研究推進事業(札教研事業)春の研究集会を市内各会場で開催した。小学校11研究部、中学校10研究部、小中合同5研究部が授業公開や研究協議を実施。コロナ禍の経験を経て、参集、ハイブリッドなど多様な方法で研究実践を発信した。本紙は公開授業4会場、研究協議2会場を取材。各会場の様子を2回にわたって紹介する。
◆考えを明確化する授業 西小 西区小学校国語研究部会
西区小学校国語研究部会の会場となった西小学校(若松広美校長)では、5年1組「言葉の意味が分かること」(永井一将教諭、児童数39人)を公開。筆者の考えを捉え、自分の考えを明確にするため、文章の要旨をまとめる活動を展開した。
小学校国語研究部は、全市研究テーマ「子ども自身が“伸び”を実感できる授業づくり」のもと①子どもが自ら考え、判断し、表現することができる教材化②一人ひとりの良さや伸びを認める教師の関わり―の2点を視点に研究を推進。西区では、全市研究テーマを踏まえ、ねらう資質・能力の焦点化、学ぶポイントの明確化などを意識した授業づくりに取り組んでいる。
7時間扱いの5時間目となる本時は「言葉の意味が分かること」の文章全体の構成を捉え、要旨をまとめる活動を設定した。
永井教諭は導入で「筆者の考えが分かりやすくなる」「自分の考えが持ちやすくなる」と要旨をまとめる目的を確認。児童たちは端末を使って「言葉の意味が分かること」の要旨を150字以内で打ち込んでいった。
困り感を持つ児童の「大事なところがたくさんあって、どれを取り上げたらいいか分からない」との発言を切り口に、ポイントを交流。「文章の始めと終わりに筆者の考えがあるのでそれを書いた」「筆者の考えを説明する具体例が文章の中にある」などの意見をもとに、要旨の捉え方を全体で共有した。
再度要旨の作成に取り組むと、つぎは「150字以内に収まらない」という課題が表出。「本当に筆者が言いたいことなのか見直す必要がある」「表現を変えるなど、やり方を工夫した方がいい」など分かりやすい要旨にするための方法を探った。
永井教諭は、他者の考えを参考にしたり、自分の考えを広げたりするため、児童が打ち込んだテキストデータを視覚化するワードクラウド、授業支援クラウド・スクールタクトの共同閲覧機能を効果的に活用した。
◆9年間見通した指導を 新陽小 小中合同食指導研究部
小中合同食指導研究部が、新陽小学校(相高秀彦校長)を主会場にハイブリッド方式で開かれた。授業改善や人材育成の観点を踏まえた教材研究や指導のさらなる充実など、より効果的な食指導の在り方について研鑚を積んだ。
研究部会長を務める永井智子新琴似小学校長のあいさつに続き、研究部長の真田里美新陽小学校栄養教諭が本年度の全市研究テーマと研究推進について説明した。
2ヵ年研究テーマ「生きる力を高める食指導の研究と実践」の最終年次に当たる本年度は、研究の重点①「分かる・できる・楽しい」授業づくりの充実②世代(キャリアステージ)をこえて結びつく「研究体制」の充実―の2点を継承。研究の視点に「自己管理能力を育成するための教材化」「教科等横断的に取り組み、効果的な食指導のための子どもとのかかわり」の2点を据えた。
続いて、市教委教職員育成担当課の山崎貴博指導主事が、本年度の推進事項、前年度秋の研究集会の実践、課題探究的な学習を取り入れた授業づくりについて講話した。
本年度推進事項に関わっては「授業改善」「人材育成」の2つの観点から説明。札教研事業での成果を自校の校内研修にフィードバックするよう求めるとともに、9年間を通した学びの連続性を実現するために、校種を越えた連携のさらなる充実を呼びかけた。
また、本年度からグーグルクラスルームでの資料格納が可能となったことを示し、情報共有・活用の一層の促進を期待した。
秋の研究集会での実践を踏まえた他教科と関連付けた学習の広がりや、本年度から全市統一の給食メニューが導入されたことを受けての学習の在り方などを通して、食指導のさらなる充実を訴えた。
このあと、各区会場で地区集会を開催。北区では「給食を生きた教材として活用した指導の充実」「発達段階に応じた効果的な食指導教材の研究」に取り組むことを確認した。
◆見方・考え方働かせる 新札幌わかば小 厚別区小学校理科研究部
厚別区小学校理科研究部の会場となった新札幌わかば小学校(高橋智美校長)では、4年生「動物のからだのつくりと働き」(松本昌憲教諭)を公開。松本教諭は、腕や首、腰などを固定する実験を通して、児童たちに全身の関節の役割について理解させる授業を展開した。
同部は研究主題に「理科の見方・考え方を働かせ、深い学びを実現する理科学習」を掲げ、研究の視点に①見方・考え方を働かせる教材と課題の工夫②クロームブックの活用③知識と経験がつながる単元構想―の3点を設定。理科ならではの見方・考え方を働かせる場面の創造や、見に付けた見方・考え方を生かした単元構成を考え、子どもたちの深い学びを実現する授業を目指して研究を積み重ねてきた。
前時までに児童たちは、手の骨の構造や指の関節の役割などについて実験を通して学んできた。
本時は7時間扱いの3時間目。全身の関節を固定し、実際に活動することを通して、関節の役割について考え、実感を伴って理解することをねらった。
冒頭松本教諭は、手の指の関節の役割について確認した上で、児童たちに「肘の関節は何のためにあるのか」と発問。児童たちは食事をしたり、物を投げたりするためなどと答えた。
続いて、児童たちはグループに分かれ、筒状の道具を使って腕や腰、首などを固定する実験を展開。松本教諭は、一人ひとりに違う関節を調べさせることで児童たちの「知りたい」「やってみたい」という気持ちを引き出した。
このあと、課題「全身の関節は何のためにあるのか」を提示。児童たちは「固定されていると腕を曲げることができなくて食事をするときに困る」「膝が曲げられないと走るときに転んで大けがをしてしまう」など、実験の結果から気付いたことや考えたことを発表した。
その上で、松本教諭は「全身の関節は、自由に体を動かすためにある」とまとめた。
この記事の他の写真
小学校理科研究部
小中合同食指導研究部
(札幌市 2023-06-15付)
その他の記事( 札幌市)
きょうから2定札幌市議会代表質問 子育て支援策 学校給食費など 教材無償化、高校端末購入費も
札幌市議会第2回定例会の代表質問が、きょう19日から始まる。子ども医療費や学校給食費など秋元克広市長が公約に掲げる子育て支援策、学校教材費の無償化、市立高校における1人1台端末の購入費など...(2023-06-19) 全て読む
浄水場の役割など紹介 札幌市 さっぽろの水道5年度版
札幌市水道局は、市内の水道事業を紹介する子ども向けパンフレット「さっぽろの水道」の5年度版を作製した。水道の仕組みや浄水場の役割などについて、イラストや写真を使って分かりやすく解説している...(2023-06-19) 全て読む
札幌ジュニアアスリート発掘PJ 世界へ羽ばたく選手へ 小学生27人が8種目練習
札幌市スポーツ協会が推進するさっぽろジュニアアスリート発掘プロジェクトの5年度の活動が始まった。市内の小学生27人がプロジェクト生に選ばれ、未来のトップアスリートを目指して8種目に特化した...(2023-06-16) 全て読む
札幌市教委 札教研事業 春の研究集会・下
◆社会参画の意欲高めて 明園中 中学校社会科部会 中学校社会科部会の会場となった明園中学校(伊東美智恵校長)では、3年4組歴史的分野(渡辺宏輝教諭、生徒数31人)の公開授業が行われた。 ...(2023-06-16) 全て読む
十分な財源措置求める 札幌市 指定都市市長会要望 教員不足対応、働き方改革
札幌市は、指定都市市長会などがまとめた6年度政府予算編成に向けて国に提案・要望する10項目を示した(通称「白本」)。教育および子ども・子育て施策に関しては、教職員不足の対応や働き方改革の推...(2023-06-16) 全て読む
札幌市 6年度政府予算編成へ要望 少人数学級へ 教職員定数拡充を GIGA継続的な補助など
札幌市は、6年度政府予算編成に向けて国に提案・要望する43項目をまとめた。教育および子ども・子育て施策に関しては、少人数学級の推進に向けた教職員定数の拡充や、GIGAスクール構想の実運用費...(2023-06-15) 全て読む
アクションプランの策定方針 健康・生活の質向上へ 民間の知見導入、官民協働
札幌市は、第2次まちづくり戦略ビジョンの次期中期実施計画となる「アクションプラン2023」の策定方針をまとめた。「まちづくりの取組(計画事業)」の策定に当たっては、市民の健康や生活の質の向...(2023-06-14) 全て読む
まちづくり戦略ビジョン戦略編案 市立高で数理・DS教育 札幌市 ICT活用など
札幌市は、第2次まちづくり戦略ビジョン(戦略編)案をまとめた。「ユニバーサル(共生)」「ウェルネス(健康)」「スマート(快適・先端)」など分野横断的に取り組む5つのプロジェクトを設定。小・...(2023-06-14) 全て読む
札幌こども園など花植え 地域の景観美化に貢献 創世スクエア周辺で活動
札幌市は2日、さっぽろ創世スクエア周辺の花植えを実施した。NPO法人「ガーデンアイランド北海道」と北海道テレビ放送(株)、創成札幌こども園から約30人が参加。園児がマリーゴールドやペチュニ...(2023-06-14) 全て読む
秋元札幌市長 施政方針表明 個性伸ばせる環境整備 子・子育て支援重要施策に
第2回定例札幌市議会が12日召集され、3期目を迎えた秋元克広市長が施政方針を表明した。子ども・子育て支援を重要施策の一つに位置付けるとして「子どもたちが経済状況によることなく、多様な価値観...(2023-06-14) 全て読む