道教委が補正予算案発表 業務支援員を追加配置 新規6事業 CFで商品開発(道・道教委 2023-06-19付)
道教委は16日、22日開会の2定道議会に提案する5年度教育費補正予算案を公表した。政策的経費を盛り込む肉付け予算で補正額は75億5614万円。新規事業は6事業で、クラウドファンディング(CF)を活用した高校生による商品開発や、指定避難所となる道立学校体育館で初の空調設備の整備に着手する。継続事業では、8月以降のスクール・サポート・スタッフ(教員業務支援員)の追加配置に約1億3800万円、休日の部活動の地域移行を進める市町村への支援に約2900万円を措置した。
当初予算と合わせた教育費予算の総額は前年度比1・6%減の3767億5893万円。定年引き上げによって定年退職者がいない最初の年度となるため、退職手当を含む給与費が約165億円減となったことが減少の主な要因となる。道職員等退職手当基金積立金の積み立てによって義務的経費は2・15倍となった。
新規事業をみると体力向上推進事業に402万円を計上。既存の事業をリニューアルし、中学校を対象とする指導力強化研修の開催規模を従来の4地区から14管内に拡大する。
道立学校教育活動応援事業費には135万円を計上。クラウドファンディングを活用し、資金調達も含めて高校生が商品開発に取り組むもので、夏に対象校として3校程度を募集・決定し、秋ごろに取組を開始する予定。
高校生防災教育推進事業には441万円を計上し、公開授業や地域住民との合同による避難訓練・避難所運営等を行う1日防災学校の実施や、道内外の高校生が参加する「高校生防災サミット」の開催経費に充てる。
施設整備関連では、初の試みとして指定避難所に指定されている道立学校10校の体育館において冷房設備を整備。避難所指定を受けている道立学校は全体の67%となっており、5年度は平均気温が特に高かった学校10校で試行する。
継続事業では、スクール・サポート・スタッフの配置に1億3862万円を計上。新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い支援員の配置を支援する国の補助金が完了したため、当初予算では7月までの配置に必要な経費を計上していたが、8月以降の配置に必要な経費を措置した。
部活動の地域移行支援には2935万円を計上。市町村における部活動指導員やコーディネーターの配置、受け皿団体の整備を図る。道教委においては推進協議会を新たに開催し、課題の把握や先進事例の提供などを行う。
5年度道教育予算案の主要事業概要はつぎのとおり。
一般事業関係
【子どもたち一人ひとりの可能性を引き出す教育の推進】
◆新しい時代に必要となる資質・能力の育成=2108万円
▼学力向上推進事業費=1264万円―新規(5年度当初分含む、以下同じ)
全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた子どもたちの学力向上への取組を図る。
▽検証改善サイクル=全国学力・学習状況調査結果の分析(小6・中3)、ICTを活用した授業改善等について協議(小中高管理職、研修担当者)
▽授業改善=各校に授業改善教員を派遣し、チームティーチングや校内研修等を実施(336校)
▽生活習慣改善=家庭向けリーフレットの作成・配布
▽小中一貫教育推進=指導主事による指導助言、カリキュラム作成研修会
▼体力向上推進事業費=402万円―新規
体育専科教員の配置や訪問指導等を通じて、教員の資質向上や子どもたちの運動習慣の定着に向けた取組を推進する。
▽体力向上推進会議=体力向上の取組について協議(小学校体育専科教員、中学校保健体育教員、有識者、スポーツ団体等・年2回)
▽専科教員等活用・小学校における授業の改善・充実に向けた指導力向上訪問(112校)
▽授業改善=中学校保健体育教員への指導力強化研修(399人、14管内×年1回)
▼STEAM教育推進事業費=442万円
新学習指導要領を踏まえ、教科等横断的な学習推進し、生徒の多様な可能性を育み、将来の北海道を支える人材を育成する。
▽授業改善
・ICT、データサイエンスの専門家を招き、専門的見地から教員へ助言(高校14校・年3回)
・探究学習を専門に扱う大学教授等を招き、学習指導案等を改善(10教科4ブロック・年1回)
▽探究学習推進
・大学・企業等の助言のもと、企業課題への解決策を高校生自ら立案(公募10組・年3回)
・道総研・企業等の助言のもと、雪冷房の活用などの探究学習を実施(特別支援学校1校)
▽成果発表
・生徒による探究活動発表
▼幼児教育推進事業費=85万円
道幼児教育振興基本方針に基づき北海道幼児教育の振興を支える体制づくりを推進する。
▽企画調整=課題等検証のため、外部委員会および検討部会を設置
▽研修体制=保育者等を対象に園外研修・オンデマンド配信の実施および園内研修を促進
▽助言体制=大学教授等によるスーパーバイザーを配置し、研修体制の相談等を実施。エリアスーパーバイザーを配置し、地域の幼児教育相談員に研修・助言(7圏域)。幼児教育相談員を配置し、施設の要請により園内研修等を実施(14管内)
▽幼小接続=北海道版幼児教育スタートプログラム事業の実施(3地域)
▽環境整備=ICT機器等整備補助(5市町村)
▼道立学校ふるさと応援事業=43万円
北海道の次代を担う人材を育成するため、ふるさと納税等を活用し、道立学校の特色ある教育活動や、グローバル人材育成等の充実を図るための取組を支援する。
▽寄付受入=ふるさと納税や企業等からの寄付を募集
▽道立学校の活動=学校が計画する特色ある教育活動や教育活動充実のための事業を実施(実施校12校)
▽グローバル人材育成=生徒の海外留学支援に係る費用などの取組の充実に活用
▽返礼品=高校と企業の共同開発商品を返礼品に追加
▼道立学校教育活動応援事業費=135万円―新規
道立学校において地元名産品等を利用した商品開発などクラウドファンディングを活用した取組を行う。
▽事業の選定=選定委員会を設置し各学校から応募のあった商品開発プロジェクトなどの事業から選定
▽クラウドファンディング=採択事業の実施(3事業)。開発した商品や学校生産物を返礼品として活用
▼新規学卒者就職対策推進費=279万円
高校生の勤労観・職業観の育成や就職対策の充実を図るため、就業体験活動(インターンシップ)や企業訪問の実施のほか、キャリアプランニングスーパーバイザー(進路相談員)を配置する。
▽就業体験活動
・地域の企業等と相互連携・協力関係を確立し、職業体験活動を実施
・全道立高校の生徒を対象(3日間)
・企業訪問・進路指導担当教員による学校への理解促進、企業ニーズの把握等(121校)
・進路相談員・就職相談、就職情報の提供等(14教育局に各1人配置)
▼高校生留学促進関連事業費=617万円
本道のグローバル化を支える人材育成を推進するため、高校生の留学促進や国際交流機会の提供を図る。
▽交換留学支援
・カナダ(アルバータ州)=10人(派遣・受け入れ各2ヵ月)
・アメリカ合衆国(ハワイ州)、ロシア連邦(サンクトペテルブルク市)、中華人民共和国(北京市)、オーストラリア連邦(タスマニア州)=各5人(派遣・受け入れ各2週間)
▽留学支援等=10日以上1ヵ月未満の短期留学を希望する高校生への支援
▽疑似留学=国内にいながら外国人と触れ合い異文化や多様な価値観に触れられるよう道内大学の留学生との交流などによって疑似的な留学体験機会を提供(3会場)
▼いじめ等対策総合推進事業費=124万円
いじめや不登校などの問題を抱えた児童生徒の早期発見や問題の早期解決を図るためカウンセリング事業や相談体制の整備等を行う。
▽スクールカウンセラー活用(小・中学校)=通年型164校、巡回型266校、その他779校への派遣、オンラインカウンセリング225校
▽スクールカウンセラー活用(高校)=通年配置151校、その他道立高校39校へ派遣、オンラインカウンセリング14校
▽教育相談体制ウェブ支援=遠隔で専門家等が指導助言
▽外部専門家チーム=有識者、弁護士等で構成し、全道4地域に設置する外部専門家チームが重大事案等に対し学校および市町村教委に助言
▽緊急支援チーム=学校等では解決困難ないじめ事案に対して専属的に組織する「緊急支援チーム」への専門家の派遣
▽スクールソーシャルワーカー=社会福祉士、精神保健福祉士などの地域人材を活用(52市町村)、大学教授や経験者等によるスクールソーシャルワーカーへの指導、連絡協議会の開催(年2回)
▽ネットパトロール=児童生徒の危険なネット上の投稿を監視、問題投稿対応や保護者等への情報提供を行う研修会の開催
▽自殺予防に関する調査研究=専門家を招いた研修会の実施、自殺予防教育の充実を図る効果的な取組に関する調査研究の実施(指定校10校)
◆学校における働き方改革の推進事業費=1億6907万円
▼スクール・サポート・スタッフ配置事業費=1億3862万円
教員の業務負担軽減を図るため、小・中学校にスクール・サポート・スタッフを配置する。
▽配置数=231人
▽勤務条件=週5日、1日6時間
▼部活動の地域移行支援事業費=2935万円―新規
中学校における休日の部活動の地域移行に向け、地域におけるスポーツ・文化団体等の整備、指導者確保等の取組を支援する。
▽道=検討段階の市町村に対し道がコーディネーター(アドバイザー)を派遣する。課題の把握や先進事例収集・提供のための推進協議会を開催(年2回)。
▽市町村=休日の部活動指導員配置(28市町村)、コーディネーターの配置、受け皿団体整備等(44市町村)、協議会の設置等(66市町村)
▼部活動の総合的な支援体制構築事業費=13万円
教員の負担軽減を図るため、学校部活動に地域の外部人材などの部活動指導員を配置する。
▽指導員の配置=道立学校150人、市町村立中学校89人(29市町村)を配置
▽道は市町村に対し報酬および交通費等の経費の3分の2を支援、道は市町村に対し報酬および交通費等の経費の3分の2を支援。
▽指導員研修=指導方法や練習時間の設定、体罰の禁止などの研修を実施(年2回)
▽専門家の意見交換=校長会や道スポーツ協会、競技団体が現状や課題等について意見交換(年2回)
▼学校における法務相談支援体制構築事業費=95万円
学校現場で発生する様々なトラブルに対応するため、スクールロイヤーによる法務相談体制を構築し、もって教職員の負担軽減を図る。
・法務相談=道内4弁護士会に依頼し、法務相談を実施
・法務研修等=対応事例等を共有するための研修を実施(1地域)
▼高校生等奨学給付金=14億9960万円
【地域と歩む持続可能な教育の実現】
▼縄文時代に学ぶ・世界遺産を活用した次世代育成事業費=2万円
児童生徒の歴史・文化への理解促進や文化財保護意識の醸成を図るため、縄文遺跡群に係る教材を作成するとともに、出前授業等を実施する。
・教材等開発=世界遺産や道内の縄文遺跡に関する教材(人々の暮らしを学習する動画)を作成、作成した教材を北東北3県と共有
・出前授業=4年度に作成した教材(出土品の3Dモデル)を用いたモデル授業(14校)
・世界遺産子どもサミット=北東北3県の児童生徒とオンラインで結び、文化財保護等の取組に関する実践発表等
▼アイヌ文化保存対策費=8万円
アイヌ文化財をつぎの世代に継承するとともに、道民の理解促進を図るため、アイヌ文化財の調査・記録や保存・活用および伝承活動の支援を行う。
・民族文化財調査=生活や生産生業に関し、民俗技術の伝承状況を調査
・故金成マツノートの翻訳・整理
・伝承・活用=民俗技術・民俗芸能伝承講座の実施、工芸作品の展示や民俗芸能の公開
・専門職員等研修=市町村立博物館等の学芸員や文化財保護行政職員等対象の専門研修を実施
▼高校生防災教育推進事業費=441万円―新規
地域と連携した学校安全体制の構築や生徒の防災意識の向上を図る。
▽1日防災学校
・防災に関する内容を取り入れた公開授業
・地域住民との合同による避難訓練や避難所運営等(高30校・特14校)
▽高校生防災サミット
・対象=高校生60人(1校3名×20校)
・有識者による講演、高校生による実践発表、グループ協議、討論会
学校等建設関係
▼高校大規模改造費=4億1280万円
高校の校舎等の安全性を確保し、教育環境を整備する。
・2年次目=札幌南、札幌琴似工業、函館水産、釧路江南、美唄聖華、新十津川農業
・着工=札幌平岡、千歳、遠軽、根室、札幌東、羽幌、清里
・設計=札幌東商業、函館商業、富良野緑峰、留萌、北見北斗、釧路工業
▼指定避難所生活環境改善整備事業費=2482万円―新規
指定避難所の生活環境改善のため、避難所指定されている道立学校の体育館に空調設備を整備する。
・設計=空調整備10校(札幌手稲高、札幌稲雲高、旭川東高、旭川西高、旭川北高、富良野緑峰、北見北斗、手稲養護、札幌稲穂高等支援、鷹栖養護)
▼学校体育施設整備費=1149万円
高校・特別支援学校の体育施設を整備する。
・屋外運動場=照明施設着工2校
・水泳プール=上屋シート1校
▼特別支援学校大規模改造費=1億1668万円
特別支援学校の校舎等の安全性を確保し、教育環境を整備する。
・2年次目=札幌養護共栄分校、今金高等養護、紋別高等養護、新得高等支援
・着工=札幌高等養護、札幌あいの里高等支援、夕張高等養護、旭川聾
・設計=美唄養護
▼知的障がい養護学校校舎等整備費=675万円―新規
特別支援学校における校舎の狭あい化について計画的に改善を図る。
・基本実施設計=北見支援
所管機関庁舎等の機能保全を図るため、老朽個所等を整備する。
▽老朽設備更新
・設計着手=帯広美術館(空調・給水用循環・加圧ポンプ)、旭川美術館(冷房設備)、釧路芸術館(中央監視装置)
・着工=近代美術館(冷房設備)
・設計=帯広美術館、ネイパル厚岸、特別支援教育センター、教育研究所
▽長寿命化工事
・着手=図書館、ネイパル砂川
▼道有施設照明LED化事業費=3687万円―新規
道の事務・事業に関する実行計画における温室効果ガス排出削減目標達成のため、照明のLED化を行う。
・設計=8高校(札幌南陵、北広島西、石狩南、夕張、虻田、足寄、本別、遠別農業)
(道・道教委 2023-06-19付)
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