誰もが使いやすい学校へ バリアフリー視点に安全・安心感じて 札幌本町小 新校舎の工夫(札幌市 2023-06-20付)
性差なく利用できるトイレ
ことし4月、札幌市立本町小学校(井田敦校長)の新校舎が供用を開始した。ステップのない玄関や性差なく利用できるトイレ、視覚・色覚に配慮した表示など、バリアフリーの工夫がふんだんに盛り込まれている。避難施設としての機能を考慮し「誰もが使いやすい校舎」を目指して整備された、最新の校舎を取材した。
新校舎供用から2ヵ月が経過した本町小。鉄筋コンクリート造3階5550平方㍍の校舎棟、鉄骨鉄筋コンクリート造2階1280平方㍍の屋内運動場は白と木目に包まれた内装で、児童や来校者に柔和な印象を与える。
最新の校舎には、バリアフリーに配慮した工夫がちりばめられている。児童・教職員玄関には全てスロープが設置されており、段差がない。階段の起終点やエレベーター入り口には点字ブロックが敷設されており、障がいのある来校者への優しさがあふれる。
職員室や教室を示す室名札や校内の案内板にはユニバーサルデザインフォントを採用。体育館のコートラインの色使いも工夫し、色覚多様性のある児童や来校者が識別しやすいよう気を配っている。ドアの取っ手やレバーも、従来よりも10㌢ほど低く配置され、車いす利用者にも手が届きやすい造りとなっている。
各階に車いす利用者が使用できるバリアフリートイレを配置するとともに、児童たちの教室がある2、3階には男女別トイレの隣に、緑色で表示されたトイレを整備。「みんなのトイレ」と名付けられた個室は、性差なく利用できることに配慮した造りが特長だ。
井田校長は、基本設計段階から、改正バリアフリー法の趣旨や市学校教育の重点に示された人間尊重の考え方を考慮し、設計業者との打ち合わせに臨んだことを明かす。市の緊急避難場所に指定されていることもあり「多様な人々が安心して使用できる学校を造り上げることが大切」と話す。
バリアフリーの考え方が盛り込まれた校舎を生かした学習も始まっている。
7日に行われた4年生総合的な学習の時間。視覚障がい者の支援に取り組む手引きの会ステップ(大浅美智子会長)の指導を受けながら、児童47人がアイマスクを装着し、白杖を手に校内を回る。別の児童の介助を受けながら階段を昇降する。階段の終わりを知らせる点字ブロックを踏むと、視界を遮られた児童の足から震えが消え、安堵の表情を浮かべた。
講話した札幌市社会福祉協議会障がい者講師の大場日出男さんは、スロープが整備された玄関やエレベーターなどの設備に「障がいのある人たちにとっても、ストレスなく活用できる学校と感じた」と話す。「こうした施設がもっと増えてくれれば」と期待する。
学校施設整備には、時代に即した考え方が常に反映されてきた。近年では、改築対象の学校に太陽光発電施設が整備されたり、防犯上の観点から玄関近くに職員室が配置されたりしたことが好例だ。市教委の宮野純一学校施設課長は、今後の改築に当たって「“誰もが使いやすい”という部分が大切になるだろう」と指摘する。
井田校長は「バリアフリーが整った学校で学ぶことで、子どもたちは安全・安心を感じる。一人ひとりが大切にされていると実感することが、多様性を受け入れる素地につながれば」と話している。
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アイマスク体験に臨む児童たち
(札幌市 2023-06-20付)
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