よりよい自分に出会う 附属札幌ふじのめ学級研究概要
(札幌市 2023-07-13付)

 道教育大学附属札幌小学校(寺田貴雄校長)・中学校(萬谷隆一校長)特別支援学級(ふじのめ学級)は本年度、新たな5ヵ年継続研究主題「“よりよい自分”に出会える学窓を目指して」、副主題「小・中学校の9ヵ年を見通した教育課程の編成」を設定した。児童生徒に身に付けさせたい資質・能力(コンピテンシー)を反映した授業実践などを進めている。

 研究概要はつぎのとおり。

▼研究主題「“よりよい自分”に出会える学窓を目指して」

 本学級では、4年10月にふじのめ学級の小学校、中学校の教職員に対して「新研究の取組に向けた職員アンケート」を実施した。その中で、学級の児童生徒の長所として「人との関わりが好き」「興味の幅が広い」「何事にも意欲的」という点が挙げられた。

 一方で、相手意識、自己調整能力、粘り強さといった観点について課題が明らかになった。目指したい児童生徒の将来像では「新しいことに挑戦する」「自分の思いを伝える」「他者と一緒に生活を楽しむ」「自分の考えや行動に自信を持つ」といった教師の願いが述べられている。こうしたアンケート結果をもとにしながら全職員で取り組む研究の方向性を検討してきた。

 子どもたちが将来、社会に出たときに、様々な時代の変化に適応しながら一人ひとりが自己表現を果たしていくことが教職員の共通の願いであり、その具現化のために、ふじのめ学級として大切にしたいこと、伝えていきたいことを今一度整理し考える機会とすべく研究主題を設定した。

 文部科学省の教育振興基本計画や経済協力開発機構(OECD)の「ラーニング・コンパス2030(学びの羅針盤2030)」などの様々な場面で取り上げられている「well―being(ウェルビーイング)」の概念について、本学級では「“よりよい自分”に出会う」と捉え、子どもたちの日々の学習や行事、人との関わりを通じて、自分の変化や成長を感じながら生活していくことを目指していく。

 本学級は独立校舎で、1階が附属札幌小学校特別支援学級、2階が附属札幌中学校特別支援学級となっており小・中学校の通常学級のある校舎とは連絡通路でつながっている。ふじのめ学級校舎における特別教室や職員室は小・中の特別支援学級で共有している。こうした独特の施設の中で、ふじのめ学級に在籍する児童生徒も通常学級に在籍する児童生徒も、全ての児童生徒が垣根なく関わり合いながら学校生活を送っていくことへの願いを「学窓」という言葉に込めている。

▼研究副主題「小・中学校の9ヵ年を見通した教育課程の編成」

 前述のとおり、本学級は附属札幌小学校と附属札幌中学校それぞれの特別支援学級が一つの建物に併設されている。近年では、北海道内、札幌市内においても義務教育学校等の設置が進められているが、本学級は義務教育学校としての性質はない。また、特別支援学校のような小学部・中学部といった一貫校ではないことを付け加えておく。

 こうした位置付けの本学級であるが、日常的に縦割り活動などで小学生と中学生の関わりは多く、小学校1年生から中学校3年生までが同じ仲間として一緒に学校生活を送っている。小学校ふじのめ学級のほとんどの卒業生は、附属札幌中学校へ進学している。

 附属札幌小学校、附属札幌中学校の学校目標に立ち返った際に、ふじのめ学級は小・中学校の両方の学校目標を意識しながら、発達段階ごとに目指す姿の具現化に向けて教育課程を編成していく必要がある。

 そのため、児童生徒の実態把握を的確に行う、アセスメントウィークという取組を設定した。本年度は、小学校1年生と中学校1年生を対象に、道教育大学札幌校の齊藤真善准教授、山下公司准教授の協力を得て、WISC検査を実施した。

▼研究の目的

▽グローバル化や情報化、技術革新、アフターコロナによる急速な社会情勢の変化が起こっている。これからの時代を生きる子どもたちの未来を見据えた教育課程の編成と学校文化の醸成を目指す

▽小中併設が特色のふじのめ学級における9ヵ年の学びを再構成し、新しい時代に求められる資質・能力の検討を反映した教育課程および具体的な指導計画と授業実践案を作成し、教育効果の検証を行う

▼研究の視点と研究計画

▽視点1

 ふじのめ学級在籍児童生徒に対するアセスメントの実施と実態調査。

・本年度=5月、小学校1年生、中学校1年生に対するアセスメントウィークの実施

▽視点2

 ふじのめ学級における身に付けたい資質・能力(コンピテンシー)を明らかにする。

・本年度=ふじのめ学級における身に付けたい資質・能力、フジピテンシー表(仮)の作成

①職員アンケート、実態調査による「身に付けたい力」の集約

②OECD、文部科学省発行物からキーコンピテンシー等の大枠を作成し、分類する

③全道教育研究大会(特別支援)を通して、現段階の取組について発表、意見の集積

 パネルディスカッション「身に付けるべきチカラや取組について」企画。

 コンピテンシーの考え方、扱い方について検討。

④フジピテンシー表(仮)の改訂、作成作業

▽視点3

 コンピテンシーベースの年間指導計画、指導内容配列票の作成・改訂(2年次~)。

▽視点4

 授業実践(コンテンツ)の検討と評価方法の検討(2年次~)。

▽視点5

 9ヵ年を見通した教育課程の編成と教育効果の検討、改訂(2年次~)。

▼研究の方法

 教育課程の編成については、佐藤学(2010)『教育の方法』を参考に、実践・批評・開発モデルを採用し、本学級の研究体制を構築した。

 9ヵ年を見通した児童生徒の発達や指導内容の共有を日常的に行っていくために小学校教諭と中学校教諭がペアになって研究を進める。また、ペアごとに研究アドバイザーを大学教授に依頼し、専門領域からの助言を得る。

 現在は、これまでの年間指導計画をもとにして日々の授業を行いながら、研究ペアごとに研究テーマを設定し、その結果を修正した内容をつぎのカリキュラムに位置付けていく「足跡カリキュラム」の方法を採用している。

(札幌市 2023-07-13付)

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