札幌市小学校長会4年度研究成果 研究集録から 第5回 学びの支援部・下(札幌市 2023-08-18付)
【2年間の取組】
▼3年度
学びの支援部では①深い子ども理解に基づいた指導ができる教職員を育てていきたい②校長自身が特別支援学級の教育課程を理解して経営の重点に位置付けたい③不登校児童対策において、様々な要因を多面的に捉え学校として適切に対応したい―そのような思いをもって、3つの部門に分かれて研究を進めてきた。
▽Ⅰ部門=通常の学級の中で配慮を要する児童への指導の充実
通常の学級の中で配慮を要する児童への指導を「教職員の意識改革」と「個に応じた支援体制」の2つの視点から捉え、インクルーシブ教育の理念を生かした学校経営の手だてについて研究を進めることとした。
▽Ⅱ部門=特別支援学級・通級指導教室での指導の充実
校長としてどのように自校の特別支援教育のカリキュラム・マネジメントに関わっていくと良いのか。今回2つの視点でそれらについて考えることとした。1つは自校の特別支援教育を見直すためのツールとしてチェックリストを作成し、そのチェックリストを活用して課題を明確にしていくこと。2つ目は通知表、個別の指導計画の本来の在り方を見直すことを通してカリキュラム・マネジメントの充実を図っていくこと。
校長として最低限確認しておきたい内容をできるだけシンプルにリストアップした。
▽Ⅲ部門=不登校児童の対応について
「不登校児童への対応」で重要視されている、未然防止・早期対応・長期化対応について、「学校経営の在り方として」「リーダーシップの発揮」という大きく2つの観点からの協議を進めるとともに、「リーダーシップの発揮」については「児童の特性」「学校での居場所」「家庭環境」という3つの要因から、協議を深めていくこととした。
協議を通し、不登校の要因を明確にして検討することで、校長として適切な対応方針を示すことができると考えた。
事例交流等を通して「未然防止」「長期化対応は中長期的な見通し持った対応」「早期対応はスピード感のある対応」を意識し、教職員が不登校対応に前向きに取り組めるよう、校長としてリーダーシップを発揮することが大切であるということが共通理解できた。
▼4年度
4年度(2ヵ年研究2年目)は人間尊重の教育を土台としつつ①深い子ども理解に基づいた指導ができる教職員を育てることとした②校長自身が特別支援教育の教育課程を理解して経営の重点に位置付けた③不登校児童対策において、様々な要因を多面的に捉え、学校として適切に対応したい―とのさらなる願いを持って、3部門ごとに課題を設定し研究を進めることとした。
▽Ⅰ部門
前年度の研究をもとに「学校組織の工夫」と「児童理解の充実」を視点に、具体的な手だてについて研究を進めることとした。
「学校組織の問題」を解消するためには、校内の組織づくりを戦略的に進めていくことが必要である。
例えば、校務分掌に「学びの支援部」として位置付けるということが考えられる。
また「児童情報共有システム」の活用を通して、児童の特徴や家庭状況、これまでの経過などを校内で必要なときにはすぐに共有できるようにする。
チェックリストをもとに支援計画を立て、その計画の検証・改善を繰り返して(OODAループ)得た的確な実態把握を「児童情報共有システム」に蓄積していく。
加えて、学びの支援に向けた組織・体制を構築することによって、チームとしてその子に合った適切な指導・支援につなげていくことの重要性が確認された。
▽Ⅱ部門
校長は教職員、学校全体で特別支援教育についての認識を深め、専門性の向上を図っていくことが求められる。そのために「チェックリスト」を活用して自校の教育課程を見直し、改善すべき課題を明らかすること「通知表・個別の指導計画の在り方」を見直すことを通して、教育課程や指導の充実を図ること、という2つの視点を設定し取り組んだ。
実際に活用してみたところ、通知表には改善の傾向が見られたが、通級指導教室との連携について、校長としての認識や、連携の在り方について課題があることが分かった。
これまで個別の教育支援計画「サポートファイルさっぽろ」の活用や個別の指導計画、通知表等の作成においては様々な課題が指摘されていた。それは学習指導要領改訂に基づいて見直しがされているかということである。また評価欄において文章記述が中心で文量は非常に多く、個別の指導計画との重なりが多いこと、評価基準に対しての到達度が分かりにくいなどである。
通知表や個別の指導計画は一人ひとりの子どもの育ちに直結するものである。取り組んできた評価資料モデルはそれらの課題を解決すべく、それぞれの資料の役割を整理して、作成する上でも効率化を図れるようにしたものであり、有効な手だてだと考えている。
▽Ⅲ部門
不登校の背景には、児童、家庭、学級・学校などの様々な要素が複雑に関わり合っている。
このような複雑な不登校の状況をより的確に捉え、可能な限り適切な対応を行えるよう、視点1として「マトリックスの活用」について検討した。
また、児童に不登校の兆候が見られたときや対応が長期化したときなどの、校長の役割と指導性を明確にするため、視点2として「実効性の高い取組事例の活用」について検討してきた。
【研究のまとめ】
「一人一人の教育的ニーズに応える」校長としての役割と指導性を以下のとおりに整理したい。
「通常の学級の中で配慮を要する児童への指導の充実に向けた持続可能な支援体制の構築(Ⅰ部門)」「特別支援学級・通級指導教室での指導の充実に向け、一人一人の子どもを大切にした切れ目ない、将来を見通した支援の実現(Ⅱ部門)」「不登校を3つの段階と要因で分析するマトリックスと実効性の高い取組事例の成果を活用する(Ⅲ部門)」。
今後も引き続き、人間尊重の教育を土台としたよりよい学校経営の実現に向けて各視点から校長の役割と指導性についての考察を深めていきたい。
(札幌市 2023-08-18付)
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