北理研第66回研究大会・旭川大会
(関係団体 2023-08-22付)

ほくりけん理科総合分科会
北理研・分科会発表

【旭川発】道高校理科研究会主催の第66回研究大会(7月31日~8月2日、旭川北高等、2日付2面既報)では、実際に実験を会場で披露する「実践交流広場」や研究発表、講演会を通じて日頃の実践の成果を共有した。それらの概要を紹介する。

◆研究発表・研究協議 遠隔での実験授業等を発表

 初日に物理、化学、生物、地学、理科総合の5つの分科会に分かれて研究発表=写真=。理科総合以外の分科会では、2日目に研究協議も行った。

 研究発表では、各分科会3、4人が研究成果を発表。理科総合分科会では、道高校遠隔授業配信センター(T―base、阿部穣センター長)の板橋翔教諭が、遠隔授業における理科実験の扱いについて発表した。

 板橋教諭はグーグルミートを使用することによって、画面越しに生徒たちを指導しながら実験の授業を遠隔で行う実践について紹介。評価や定着度の確認については「スプレッドシートにレポートを提出したり、定期的に小テストを行ったりしながら進めている」と解説した。一方で「火や劇薬を使用した実験は、管理の面から遠隔で行うことができない」といった課題も示した。

 各分科会の研究発表者とテーマ、研究協議の進行・提言者とテーマはつぎのとおり。=敬称略=

【物理分科会】

▼研究発表

▽佐々木徹(紋別)=慣性力を可視化する装置の開発

▽飯川大輔(えりも)=動力加速度の測定方法を考える実験。教える実験から、少人数授業を生かした探究する実験へ

▽新宮翔平(大空)=主体的・対話的で深い学びを目指した物理基礎・化学の実践

▽田中凌(海星学院)=物理基礎の授業におけるエネルギー変換実験装置の製作

▽臼井友洋(雄武)=小型マイコンモジュールM5StickCPlusを用いた物理実験について

▽花光隆太朗(伊達開来)、河田淳一(滝川)=STEAM教育機器の試作

▼研究協議

▽尾崎威(市立札幌大通)、別段健太(大樹)=科学的に探究する力を養う実験活動

【化学分科会】

▼研究発表

▽飯嶋めぐみ(T―base)=100均のヒートシーラーを用いた科学実験の工夫~中和反応とニンヒドリン反応に応用する

▽加藤超(白老東)=リモート授業(逆)を終えて~グーグルミートを利用したリモート授業の可能性と課題について

▽杉山剛英(立命館慶祥)=ラウールの法則を検証する実験~メスシリンダーで分圧が計れる

▽池浦真奈美(上士幌)=物質の状態と温度・圧力の理解を助ける教材の研究

▽松橋加奈(北海)=高校化学における個別最適な学びと協働的な学びの実現に向けての取組

▼研究協議

▽本間順(札幌西)、山形慶(函館中部)=授業と実験を結び付け生徒の思考を深める授業計画

【生物分科会】

▼研究発表

▽村山一将(札幌日大)=OPPシートの活用を中心とした観点別評価の試み

▽向田耕平(静内)=フライドチキンから博物館へ~鳥類の骨格標本作りから恐竜学や生命理論、アニマルウェルフェアへ

▼研究協議

▽梅田浩士(北広島)、朝田累(国際情報)、渋川亮(札幌厚別)、押野祐大(中標津)、増井達信(稚内)、舛田啓太(札幌南)=生物の学力とは何か?~大学入学共通テストを題材にして考える

【地学分科会】

▼研究協議

▽押野祐大(中標津)=公立学校における天文ドームの活用方法の検討~天文研究会の活動と社会連携

▼研究協議

▽一岡祐生(市立札幌開成中等教育)

【理科総合分科会】

▼研究発表

▽板橋翔(T―base)=道高校遠隔授業配信センターでの取組~遠隔授業における理科実験の扱いについて

▽山本衛(北見工業)=高校における探究的な授業の実践例~モノづくりの視点を生かした理科課題研究の実践

▽富田一茂(旭川北)=亜鉛版は腐食するとなぜ黒くなるのか

◆授業実践交流広場 4つのブースで実験を披露

 大会初日、授業実践交流広場を開催した=写真=。「実験LIVE」と題して、4つのブースで教諭10人が実験の実践例を披露。参加者は各ブースの実演を通じ、授業改善への参考とした。

 物理、化学、生物、地学のブースに分かれて実施した。

 地学ブースでは、旭川北高校の富田一茂教諭が「液状化現象モデル実験」と題して実践を発表。アクリル製の容器に珪砂と水を入れたものを地面、容器を揺らすことを地震に見立て、液状化現象を再現する実験を披露した。

 参加者からは「安価な材料で実験ができる点がいい」「これなら生徒たちも楽しく学習を進められる」などの感想が上がった。

 市立札幌開成中等教育学校の一岡祐生教諭と立命館慶祥高校の久末大介教諭が実践報告。一岡教諭は、フリーソフトのMitakaを使った天体観察授業の進め方について実演した。

 物理ブースでは、伊達開来高校の花光隆太朗教諭が電流周りの磁場の観察、道科学大高校の中谷圭佑教諭が気圧の減圧・加圧実験を実演。化学ブースでは、旭川藤星高校の樫村美香教諭がメスシリンダーを用いたアボガドロ定数を求める実験、函館工業高校の小栗野乃佳教諭が金属に電気を流して電流泳動を観察する実験、札幌英藍高校の高橋さおり教諭が気体の分圧測定の実験を披露した。

 生物ブースでは、稚内高校の増井達信教諭がカイコの繭から糸を取る実験、札幌日大高校の村山一将教諭が生態系を観察するの教材の製作について実際の授業の一端を紹介し、相互に交流を図った。

◆講演会 街のことを考えるヒントに

 前旭川市教委社会教育課長補佐・学芸員(ジオパーク担当)で旭川市保健所副主幹の向井正幸氏が「扇状地の街の歴史」と題して講演した=写真=。

向井氏は「多くの人が地域の魅力を知り利用できるよう、その土地の地質遺産を保護・保全しながら教育や科学の普及を行うとともに、ジオツーリズムなどで地域活性化を図り持続可能な開発を促す」とジオパークの概要を説明。「山や川を見て、どうやってできたのかに気付くと景色が変わって見える。その景色が長い年をかけてできたことを知れば、私たちの暮らしが地球活動なしには存在し得ないことも分かる」とした。

 「ジオパークとは、私たちが暮らしている大地が与えてくれた地域の宝物を再発見し、上手に利活用すること」とし、上川盆地が扇状地であることに言及。シロザケの産卵場、水田、酒造りとの関わりを示し「扇状地という自然の恵みを与えられている」とした。

 旭川の街の形成と扇状地との関わりについても紹介。旭川駅や第七師団(陸上自衛隊旭川駐屯地)、パルプ工場(日本製紙)が設置された経緯をひもときながら「街の形成や発展には、地形と地質、地域の大地の生い立ちが密接に関係している」と説いた。

 旭川以外の街でも同様に「街の成り立ちを考えるとき、掘り下げていけば地域の地形や地質が絡み合っていることに気付き、地元の良さを語ることができる」と持論を展開。「子どもたちが自分たちの街を発展させていく人材となっていくため、地域のことをもっと知るべき」とし「ジオパークの題材を通じ、子どもたちに自分たちの街のことを考えるヒントを先生方から与えていただくきっかけになれば」と期待を寄せた。

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