道議会質疑 代表質問(6月27日)
(道議会 2023-10-13付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼三好雅議員(自民党・道民会議)

【答弁者】

▼鈴木直道知事

▼倉本博史教育長

▼鈴木信弘警察本部長

◆道総合計画

Q三好議員 道は、新型コロナウイルス感染症の流行や脱炭素化、デジタル化といった動きに対応するため、3年度に総合計画を改訂したが、その後、ロシアによるウクライナ侵略等を背景に、エネルギーや食料の安定供給に対する関心が急速に高まっているほか、新型コロナウイルス感染症が落ち着きを見せ、インバウンドの急速な回復が見られる一方で、人口の都市部への流入傾向も再び強まりつつあるなど、本道を取り巻く環境には大きな変化が生じている。

 国は現在、第9期北海道総合開発計画の策定に向けた調査審議が進められており、5年度内をめどに閣議決定される予定である。

 本道を取り巻く社会経済情勢の変化に的確に対応しながら、知事が掲げる活力あふれる北海道の未来を実現していくためには、2030年、さらにその先を見据えた本道の目指す姿や具体の目標を提示し、道民と共に長期的な展望に立った政策を展開する必要があると考えるが、見解を伺う。

 また、検討に当たっては、総合計画と密接に関係する北海道創生総合戦略についても見直しを検討する必要があると考える。今後、どのように対応する考えなのか併せて伺う。

A鈴木知事 道総合計画等について。道では、活力あふれる北海道を実現していくためには、人口減少問題など、喫緊の課題への対応に加え、中長期的な展望に立った政策の方向性のもと、各般の取組を効果的に推進していくことが必要と認識している。

 こうした中、わが国では、不安定な国際情勢を背景に、エネルギーや食料、半導体をはじめとした経済の安全保障など、社会や経済の大きな変化に直面しており、本道の持続的な発展に向けては、足元での経済や道民の暮らしを守るとともに、本道のポテンシャルを生かし、社会経済情勢の変化に対応しながら、新たな需要を取り込んでいくことが一層重要になる。

 道では、基本的な政策の方向性を総合計画で示しているが、こうした変化や課題に的確に対応していくためには、現在の計画期間である令和7年度を越えて政策を展開していく必要があることから、新たな総合計画の策定に速やかに着手することとし、概ね10年後の北海道の目指す姿や政策の目標について、道民と共に検討を進めていく。

 併せて、地域計画と連動する道創生総合戦略についても、総合計画の方向性や国の長期ビジョンの状況を踏まえ、新たな戦略策定の作業を進めていく。

◆半導体人材育成

Q三好議員 半導体産業育成には、国が中心となり、官民が連携し、資金面や技術面も含め、積極的な取組が進められている。事業の成否を決するのは、いかに優秀な人材を安定的・継続的に確保できるかにかかっている。

 道内には理工系の大学などの高等教育機関が複数存在し、人材確保面で優位性があるが、道外都府県に比べ半導体産業の集積が進んでおらず、この分野で経験を積んだ人材が少ないことなどを考慮すると、人材の確保や育成に関しては、決して楽観できる状況にはないものと考える。

 道は、半導体産業の拠点形成に関する人材面での課題をどのように認識し、プロジェクトの成功に向け、当面の人材確保や中長期的な人材育成にどのように取り組む考えなのか、また、人手不足に悩む道内企業との調整をどのように図っていく考えなのか伺う。

A鈴木知事 半導体人材の育成等について。道内では、半導体に関する認知が低いことに加え、理工系の大学や高専などにおいて、半導体産業を支える人材を育成するためのカリキュラム等も十分に整っておらず、また、理系人材の多くは道外に流出しているものと認識している。

 このため、国では、半導体関連産業を担う人材の育成と確保に向けて、地域単位での取組を促進することとし、6月2日に、道など行政機関や、産業界、教育機関等で構成する北海道半導体人材育成等推進協議会を設立した。今後、企業が求める人材ニーズ調査やサプライチェーンマップの作成など、半導体人材の育成・確保と関連産業の取引活性化に取り組むとしている。

 道としては、こうした取組に積極的に貢献するとともに、道立高校やMONOテクでの出前講座や、新規学卒者等を対象に関連産業を見学するバスツアーなどによって、半導体関連産業を持続的に支える人材の育成に取り組むほか、道内各地で人手不足に直面する地域産業や企業ニーズ、道内の大学や高専の卒業生の就職動向などを丁寧に把握しながら、マッチングや誘致といった取組によって人材の確保に努めるなど、適切に対応していく。

◆巨大地震対策

Q三好議員 深刻な被害が想定されている日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に備えるためには、避難タワーや避難路等の整備が不可欠だが、道内の関係市町村の厳しい財政状況を踏まえると、昨年の特措法改正で強化された国の支援策を活用したとしても、ハード面の対策を具体化していくことは容易ではない。

 今後は、国の支援策等や道の予算措置を最大限活用しながら、巨大地震による災害対策をハード・ソフトの両面から一層促進していく必要がある。道として今後どのように取り組んでいく考えなのか伺う。

A鈴木知事 海溝型地震への対応について。発生が切迫しているとされる海溝型地震から道民の命を守るためには、ハード・ソフトの両面において必要な対策をしっかりと推進していくことが重要である。

 このため、道では、特別強化地域に指定された市町が行う津波避難施設等のハード整備に対し、道議会における議論も踏まえ、建設年次の負担を約1%まで軽減するなど、全国でもトップクラスの道独自の財政支援措置を講じるとした。

 また、ソフト面では、道民の避難意識の向上のため、防災教育の充実を図るとともに、津波ハザードマップ作成などの取組を支援するほか、関係市町における計画策定などを支援するため、総務部内に新たに地震・津波対策を専門に所管する海溝型地震対策室を設置し、人員増による体制強化を図ったところである。

 私としては、こうした取組を通じて、ことし2月に策定した減災計画の達成に向け、海溝型地震への備えを一層加速するとともに、今後とも、国や市町村、関係機関と緊密に連携協力して、道民の命と暮らしを守る総合的な防災・減災対策に全力で取り組んでいく。

◆子ども施策

Q三好議員 国は、次元の異なる少子化対策の実現に向け、子ども・子育て政策の強化が検討され、先日、こども未来戦略方針を決定した。

 本道でも、少子化対策は喫緊の課題であり、今後の子ども施策を進めるに当たり、人口減少対策のみならず、経済や雇用など、幅広い観点から現状の課題を分析した上で、雇用環境の整備、妊娠や出産期への支援をはじめ、保育サービスの充実や未就園児への支援、ひとり親家庭等への経済的支援など、子どもやその家庭の実情に沿った様々な施策をライフステージに応じて切れ目なく全庁を挙げて実施していく必要がある。

 知事は、社会全体で子育てを支える子ども応援社会の実現に取り組んでいくことを公約として掲げ、今回の組織機構改正で新たな推進体制を整備したが、安心して子どもを産み育てていける環境づくりに向けて、どのように取り組んでいく考えなのか伺う。

A鈴木知事 子ども応援社会の実現に向けた子ども施策の推進について。少子化は、本道が直面する喫緊の最重要課題であり、道では、子ども政策を一体的に推進するため、子ども応援社会推進監を新設し、組織体制を強化した。

 こうした中、国は今後3年間で集中的に取り組む加速化プランを掲げたこども未来戦略方針を取りまとめ、子ども・子育て政策を抜本的に強化するとした。

 道では、こうした動きに全庁を挙げてスピード感を持って対応できるよう、新たに私をトップとする会議を立ち上げることとし、経済支援や雇用対策を含めた子ども・子育て施策の課題分析を行い、これまでの取組の改善や早期に対応が可能な取組の検討を進めるほか、国が進めるこどもファスト・トラックについては、全ての道立施設で、優先窓口のほか、道独自の取組として、優先駐車場や授乳室の設置など、それぞれの施設状況に応じた取組を進めることとしている。

 また、子どもたちや子育てを応援するこどもまんなか応援サポーターの取組を併せて促進し、道が率先して行動することで、民間企業や市町村、道民に、子どもたちや子育て中の方々の気持ちに寄り添い、機運の醸成を図っていく。

 道としては、今後とも、こうした取組を進めつつ、国が年内に策定するこども大綱などの議論を注視しながら、全ての子ども、子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援し、希望する誰もが子どもを持ち、安心して子育てができ、子どもたちが健やかに希望を持って成長できる子ども応援社会の実現に向け、全力で取り組んでいく。

◆道財政の運営

Q三好議員 知事は、2期目のスタートとなる政策予算を提案し、公約に基づく様々な新しい取組を意欲的に展開しようとしているが、道の財政状況に目を移すと、物価高騰などの影響を受けて、5年度以降の収支不足額は拡大する結果となっており、実質公債費比率が高止まりしている状況にも大きな変化はない。

 さらに、子ども・子育て政策の充実に伴う財政需要や金利の動向など、財政運営上、注視する必要のある要素も少なくない。

 北海道を力強く前へと進めていくため、新しい取組に果敢にチャレンジしていくことが重要だが、厳しい状況にある道財政の健全化を計画的に進めていくことが必須の条件と考える。

 知事は、新たな任期において、どのような財政運営を行っていこうと考えているのか伺う。

A鈴木知事 今後の財政運営について。私は知事就任以来、コロナ禍への対応をはじめとした様々な道政課題に対処しながら、歳出の見直しや減債基金への計画的な積み戻しなど、財政の健全化に努めてきた。

 一方で、道財政は、今後も多額の収支不足額が生じるほか、実質公債費比率についても依然として高い水準で推移するなど、厳しい状況が続く見通しにある。

 こうした中、北海道を前に進めていくため、暮らしを守り未来を創る取組を地域と共に進めていくことが重要であり、そのためには、持続可能な財政構造の確立が必要と考えている。

 私としては、持続可能な1次産業づくりや成長をけん引する産業づくりなどの施策を積極的に展開し、本道経済の活性化を図ることなどによって、道税、交付税をはじめとした歳入確保に最大限取り組むほか、財政調整基金の確保や減債基金への積み戻しに努めるとともに、国の動向や経済情勢なども踏まえ、5年度中にあらためて収支見通しの精査を行った上で必要な対策を検討するなど、財政健全化に向けて、計画的に取り組んでいく。

◆知事公館

Q三好議員 エリア全体のリニューアルに向けては、札幌市民のみならず、道民、さらには、国内外からの観光客の方々にも親しまれるような空間としていくことが望まれる。

 知事は今後、知事公館・近代美術館エリアの活用について、どのような点を重視し、どのようにリニューアルの方向性を示していく考えなのか伺う。

A鈴木知事 知事公館・近代美術館エリアについて。知事公館や近代美術館が所在するエリア一帯は、長い歴史の中で築き上げられてきた大変魅力のある場所であり、この貴重な道民の財産を確実につぎの世代へ引き継いでいく必要があるものと認識している。

 登録有形文化財である知事公館や環境緑地保護地区に指定されている緑地については、適切に保全・維持しながら利活用していくことを基本としつつ、低利用となっている居住区域の活用策についても検討を進めているところである。

 道としては、リニューアルに向けた検討を進めている近代美術館も含め、このエリアをこれまで以上に魅力あふれる文化、芸術、歴史の発信拠点として活用するため、道議会や道民はもとより、道内外の多くの方々から、ワークショップやウェブによるアンケートなどを通じて丁寧に意見を伺い、エリア全体の目指す姿やその実現に必要な機能の配置を盛り込んだ総合的な活用構想を来年度にも策定できるよう取り組む。

◆生成AI活用

Q三好議員 生成AIが、民間ばかりではなく、行政サービスの高度化や事務の効率化、さらには、学校教育の改革などにも活用できる可能性があることなどから、わが国でも、AI戦略会議が設置されるなど、中央省庁や各自治体で活用に向けた様々な試みが始まっている。

 一方で、生成AIが生み出す文書や画像データ等の正確性や中立性、個人情報流出といった面を懸念する声も上がっており、過日開催された先進7ヵ国の情報通信や教育担当の大臣会合などでも、急速に進歩する生成AIにどのように対応していくべきか、真剣な議論が交わされた。

 道は今後、メリットやリスクを慎重に見極めながら、生成AIへの対応について慎重に検討を重ねる必要があると考える。中でも、既存のインターネット閲覧ソフトの中にチャットGPTの機能が搭載され始めており、誰でも容易にこの機能を利用できる状況になっていることを考えれば、生成AIの利用に関する職員向けのガイドラインを定めるなど、ルール作りを急ぐ必要もあると考える。

 急速に開発や利用が進みつつある生成AIを巡る現状や、行政サービスの効率化に関する将来性、教育に関する影響等について、どのような認識を持っており、今後どのように対応していくのか、見解を伺う。

A鈴木知事 生成AIについて。チャットGPTなどの生成AIの活用について、職員の業務負担軽減や生産性の向上などが期待される一方、現状では、回答内容の正確性に対する疑義や情報の漏えい、著作権侵害のリスクなどが指摘されているほか、教育分野において、学習への効果的な活用の期待とともに、誤回答や考える力の低下といったことが懸念されている。

 また、先般行われた先進7ヵ国(G7)サミットや国のAI戦略会議においても、開発や利用、規制などに関するルール作りの必要性が議論されているものと承知している。

 道として、現在、生成AIを業務で使用することは認めていないが、こうした状況を踏まえ、引き続き、国における生成AIの取り扱いや他の自治体等における利活用の状況、課題について情報収集を行うとともに、若手や実務者を中心としたスマート道庁の専門部会で、どのような分野で効果的に利活用できるか、職員の生成AIに対する理解を深めながら、試行的な取組も含め検討を進める。

A倉本教育長 生成AIについて。チャットGPTなどのいわゆる生成AIを活用した様々なサービスが生まれる中、学校現場における生成AIの利用について、そのリスクが懸念されている批判的思考力や創造性への影響、個人情報や著作権との関係などの整理について、見定めていく必要があると認識している。

 現在、中教審に設置されたデジタル学習基盤特別委員会において、生成AIの学校での取り扱いに関する今後の対応等について協議されており、文部科学省では、夏前をめどに、学校現場での利用に関するガイドラインを策定、公表すると承知している。

 道教委としては、学校現場での生成AIの利活用を適切に進める観点から、国の動きを踏まえるとともに、生成AIなど、最新のデジタル技術の効果的な活用やリスクなどについて調査研究を進め、それぞれの教員が生成AIの特性等について理解を深め、適切に教育活動に生かすことができるよう指導助言していく。

◆魅力ある高校づくり

Q三好議員 ことし4月現在、道内55市町村には高校が設置されておらず、また、道立高校の約3割に当たる55校が1学年1学級以下となっている中、小規模校が所在する市町村では、道立高校をまちづくりの核として位置付け、わがまちの高校として様々な支援を行っている。

 ことし3月、道教委は本道の高校づくりに当たっての基本的な考え方と具体的な施策を示した「これからの高校づくりに関する指針」を改定したが、今後、新たな指針に基づき、地域連携校などの小規模校をはじめ、高校の魅力化をどのように図っていくのか伺う。

A倉本教育長 高校の魅力化について。本道が将来にわたって輝き続けるためには、より良い学校教育を通じて、より良い社会をつくるという理念のもと、学校と地域が連携・協働し、生徒から選ばれる魅力ある高校づくりを推進する必要がある。

 3年度に実施したアンケートで、生徒が求める高校を調べたところ、進路希望に応じて科目を選択できる、普通科目から職業科目まで幅広く学習できる、ICTを利用して、他の学校の教員の授業が受けられるといった意見が多く寄せられており、こうした生徒の多様な学習ニーズに対応することができる高校づくりが必要と認識している。

 このため、道内のどの地域においても高校生が自らの可能性を最大限に伸ばすことのできる多様で質の高い教育環境の提供を目的として、地域連携校および離島に所在する学校等に対する道高校遠隔授業配信センター(T―base)からの遠隔授業等の配信に加えて、道立学校間連携の新たな取組として、ICTを活用した学校同士の教育課程編成・実施の工夫等による生徒間の交流や、教員同士の情報交換を推進することによって、生徒が自ら学校に誇りと愛着を感じられるよう取り組んでいく。

 道教委としては引き続き、学校や地域の実情に応じた推進体制の構築に取り組み、自治体や関係機関などと連携・協働しながら、地域に根差した特色ある高校づくりを進めていく。

◆教員養成

Q三好議員 教員は、子どもたちの人格の完成を目指し、成長を促すという重責を担っており、常に資質・能力の向上に努めることが求められる。

 一方で、今日の学校現場においては、学力・体力の向上をはじめ、いじめや不登校、特別な支援を要する児童生徒への対応、ICTの活用など、様々な課題がある中、教員採用希望者の減少や教員不足による欠員の発生、学校組織の年齢構成、経験年数の不均衡などによって、経験豊富な教員から若手教員への知識・技能の伝承などが進まないなど、人材の育成にとって困難な状況が生じている。

 こうした状況を踏まえ、教員の計画的・効果的な資質向上を進めるため、国による指針の改正を踏まえ、道教委においてもことし3月、目指す教師の姿やキャリア段階ごとに身に付けるべき資質・能力を示した北海道における教員育成指標を改訂している。

 道教委ではこれまでも、大学における養成、採用選考、採用後の研修の各段階において、教員育成指標に基づく様々な施策を推進しているが、今後は、これらを一体的に進めるとともに、教員の主体的な学びが可能となるよう、働き方改革などの環境整備を図ることが重要と考える。

 教員育成指標の改訂を踏まえ、教職人材の確実な育成に向け働き方改革等の環境整備を含め、どのように取組を推進するのか伺う。

A倉本教育長 教員の育成に向けた取組について。ICTの急速な進展や特別な配慮を必要とする児童生徒への対応など、教育課題が複雑化・多様化する中、質の高い学校教育を実現するためには、教育の直接の担い手である教員の安定的な確保や資質・能力の向上が不可欠である。

 このため、道教委では、教員育成指標を改訂し、新たに、ICTの利活用など、教員に共通に求められる資質・能力、深い教育的愛情などをもとに、リーダーシップを発揮する管理職像などを明確化した。

 今後は、道教委として、大学、市町村、学校等と育成指標を共有し、養成、採用、研修の各段階において大学の教員養成カリキュラムの改善を働きかけるほか、育成指標に示す資質・能力を重視した教員採用選考の見直し、教員のニーズや専門性等に応じた主体的な学びを促進する研修体系の整備等に取り組むことによって、教員の育成を切れ目なく推進していく。

 さらに、働き方改革の推進などを通じ、教職員研修計画において示す子どもと向き合う時間や校務の時間の確保などの環境整備も進め、教員一人ひとりが使命感や教育的愛情を持ち続けるなどの育成指標に示した教員像を実現し、全ての子どもたちの可能性を引き出す教育が推進されるよう取り組んでいく。

◆SNS犯罪

Q三好議員 最近では、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを駆使し犯罪の実行役を募る闇サイトに利用者を誘導し、実行犯グループに仕立て上げ、重大犯罪に加担させる事案に注目が集まっている。

 社会経験に乏しい若者が犯罪の加害者として事件に巻き込まれるケースも多いことを考えれば、彼らを加害者にさせないための教育等も重要であると考える。

 SNS等を介した新たな犯罪の撲滅に向けて、道警のみならず、知事部局や教育庁などが一体となり、緊密に連携しながら総合的な対策を展開する必要があると考えるが、今後どのように対応する考えなのか、見解を伺う。

A鈴木知事 SNS等を利用した犯罪への対応について。SNSを利用し巧妙に実行役を募る凶悪な犯罪が全国で発生しており、被害防止はもとより道民をこうした犯罪に加担させないよう、対策を講じていくことが何よりも重要であると認識している。

 道は、犯罪のない安全で安心な地域づくり条例のもと、ネット犯罪防止を重点項目とし関係機関と連携しながら、警察官を講師とする非行防止教室の開催に協力するとともに、SNSを悪用した犯罪の勧誘手法等を注意喚起するほか、児童生徒の保護者を対象とした研修会などを行っている。

 道としては、SNSを利用した犯罪の撲滅に向け、私をトップとする、犯罪のない安全で安心な地域づくり推進会議において、道、道警、道教委が中心となり、対策の調整を図るとともに、より迅速に犯罪情報を共有し、対応策を講ずるため、実務者レベルでのきめ細かな連携体制を整えながら、幅広い年齢層を対象とした多様なメディアによる情報発信や、若者に届きやすい機会を活用した啓発活動を進めるなど、道民が安心して暮らすことのできる地域社会の実現に向け取り組んでいく。

A倉本教育長 SNSを介した犯罪への対応について。現在、SNSを介して青少年がトラブルに巻き込まれるケースが後を絶たず、時には犯罪に加担し、実行役にさせられる事例もある中、学校教育でも児童生徒にインターネットやSNSに潜む様々なリスクの理解や情報リテラシー、情報モラルの習得、経済の仕組みの理解と勤労観・職業観の形成を通じて、自らリスクマネジメントできる資質・能力の育成を図ることが重要である。

 道教委では、各学校に対し、国のインターネットトラブル事例集等を配布し、活用促進を図ってきたほか、SNS利用による犯罪被害防止や特殊詐欺への関与防止などを学ぶ、警察官を講師とする非行防止教室などを各学校で実施した。

 今後は、小・中学校で善悪を区別する判断力などを養うとともに、高校段階では、道警の協力を得て、SNSの危険性を学ぶための校内放送番組を制作し、道立高校で活用するほか、生徒・保護者向けに、SNS利用のトラブル予防や対処方法、相談窓口をまとめたポータルサイト、仮称「STOP SNS Trouble」を開設し、SNSを通じて周知するなど、子どもたちがSNSを介して犯罪に巻き込まれることがないよう、道や道警などと様々な課題や認識を共有するなど、連携し取り組む。

A鈴木警察本部長 SNSで実行犯を募集する手口への対応について。特殊詐欺や強盗などの犯罪実行者を募集する、いわゆる闇バイトと呼ばれている情報がSNS上で発信されている中、道警では、強盗については把握していないが、特殊詐欺については、ことしは5月末までに検挙した被疑者のうち、少年を含めた6人がこの手口によって犯行に加担していたことを把握している。

 この手口の対応について取り締まりはもとより、SNS上の対策や少年に対する啓発活動が極めて重要であると認識している。

 道警ではことし3月、政府が決定した、SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プランを受け、従来から対象としていた特殊詐欺に加え、新たに強盗なども対象に、サイバーパトロールによる闇バイト情報の収集やSNS上の書き込みに対する警告、道警ホームページや非行防止教室等を通じた広報啓発活動などに取り組んでいる。

 道警として、引き続き、犯罪者グループ等の実態解明に向けた取り締まりを進めるとともに、道、道教委、関係機関・団体等と連携し、少年を犯罪に加担させないなど、実行犯を生まないための対策を推進する。

P三好議員 SNSをはじめとする情報通信技術の進歩とその急速な普及が、従来とは異なる新しいタイプの犯罪を生み出しており、生成AIといった最先端の技術も登場するなど、今後も犯罪を取り巻く状況が急速に悪化していくことが見込まれている。

 これまでの取組だけでは新たな犯罪を防ぐことは困難になってきており、道警をはじめ、捜査機関や、小・中学校から大学まで、あらゆるレベルの教育機関、さらには、知事部局も含め、関係者が危機感を共有し、知恵を絞り、総力を挙げて、道民を新たな犯罪から守らなければならない。

 知事の答弁では、自身をトップとする会議体等での対策の調整等を行うだけではなく、実務レベルでのきめ細かな連携体制を整えるとの新たな考え方が示された。実務レベル、地域レベルできめ細かな連携がしっかりと図られ、関係者が一体となり、真に実効性を伴った取組が展開されることが何よりも重要である。

(道議会 2023-10-13付)

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