道議会質疑 一般質問(6月28日)(道議会 2023-10-18付)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】
【質問者】
▼佐藤伸弥議員(北海道結志会)
【答弁者】
▼鈴木直道知事
▼浦本元人副知事
▼倉本博史教育長
◆子ども政策
Q佐藤議員 厚生労働省が公表した4年の合計特殊出生率は、全国平均の1・26に対し、北海道は1・12と過去最低の数値となり、全国でも東京都、宮城県に次いで45位と、大変低い状況にある。
先般、こども未来戦略方針が閣議決定された。
国においては、戦略方針の具体化を進め、年末までに戦略を策定することとしているが、今回の方針の内容を受けて、知事はどのような評価をされているのか、今後、道としてどのように対応していくのか伺う。
A鈴木知事 こども未来戦略方針について。この方針では、若い世代の所得を増やし、社会全体の構造、意識を変え、全ての子ども・子育て世帯を切れ目なく支援することを基本理念としており、道としては、こうした考えのもと、子ども政策を一体的に推進していくことが重要と認識している。
また、これまで道が要望してきた保育士の配置基準の改善や高等教育費の負担軽減などが加速化プランとして盛り込まれたところであるが、その具体化に当たっては、国において、地域の実情を踏まえた検討や安定的な地方財源を十分に確保することが必要である。
道では、こうした動きに全庁を挙げてスピード感を持って対応できるよう、新たに、私をトップとする会議を立ち上げ、国が年内に策定するこども未来戦略などの議論を注視しながら、子ども・子育て施策の課題分析などを進めることとしており、今後とも、結婚や妊娠、出産、子育てなどのライフステージに応じた切れ目のない支援を行い、子どもたちが健やかに希望を持って成長できるよう、社会全体で子育てを支える子ども応援社会の実現に向け、全力で取り組んでいく。
◆道総合計画
Q佐藤議員 道は5月、北海道総合開発委員会を開催し、委員から、現行の総合計画を策定したときの想定がかなり変わってきており、もう一度、北海道のあるべき姿をしっかり議論することが必要などといった意見が出され、委員長からは、新しい総合計画の策定を検討するよう求められたと承知している。
仮に、今回、新しい総合計画を策定するとすれば、道は、平成27年度に引き続き、2回連続で総合計画の計画期間の前倒しを行うこととなる。
また、令和3年度、ポストコロナを見据えつつ、ゼロカーボン北海道や北海道Society5・0を推進するため、北海道総合計画の一部改訂を行ったばかりである。
行政基本条例において、総合計画が、長期的な展望に立って道の政策の基本的な方向を総合的に示すものと位置付けられていることからすれば、道の対応は場当たり的であると言わざるを得ない。
頻繁に前倒し策定や計画期間の改定が行われるようでは、長期計画の意義が失われるものと考えるが、知事は、総合計画の見直しや計画期間についてどのような見解なのか伺う。
A鈴木知事 道総合計画について。現在の総合計画では、政策の実効性を確保するため、毎年度の政策評価を通じて進捗状況などを把握の上、北海道総合開発委員会の意見を伺いながら点検評価を行い、社会経済状況の変化なども踏まえながら、必要に応じて計画の見直しを検討することを記載している。
エネルギー問題や、食料、経済の安全保障など、わが国を取り巻く環境が大きく変化する中で、ゼロカーボンや次世代半導体など、本道のポテンシャルを生かし、変化に対応した新たな需要を取り込んでいくためには、現計画の期間である令和7年度を超えて展開する政策の方向性を道民に示していく必要があり、先月開催した総合開発委員会においても、このような動きに対応するため、新たな計画を策定すべきとの意見をいただいたところ。
道としては、こうした状況を踏まえ、新計画の策定に速やかに着手することとし、計画期間については、行政基本条例における考え方や、国が策定を進めている新たな総合開発計画の期間も踏まえ、概ね10年後の目指す姿や政策の方向性を示していく。
◆道の財政運営
Q佐藤議員 知事の1期目は、その大半をコロナ対応に追われる結果となり、その中での財政運営についてもおのずとその影響は避けられず、これまで着実に縮小してきた収支不足額は、3年度に一転して拡大し、4年度以降も引き続き収支不足が生じる見通しにあり、また、実質公債費比率は全国の都道府県の中で最も高く、8年度には早期健全化基準の25%に迫る22・6%に達する見通しにあると承知している。
また、財政調整基金の残高は、道の財政規模から見ても少額で推移しているにもかかわらず、収支均衡のため、これに頼らざるを得ない状況が続いており、さらに、2000億円を超える減債基金への積立留保の解消や、住宅供給公社に対する反復かつ継続した短期貸付けなど、財政運営上の課題が引き続き残されている。
ポストコロナを見据えた政策展開や次世代半導体製造拠点を核とした関連産業の集積など、公約に基づく政策を長期的な視点で進めていくためには、基金取崩しに頼った財政運営では心もとなく、実質公債費比率を下げるためにも、減債基金への積み戻しが極めて重要と考える。
収支不足額の計画的な解消や財務体質の改善など、持続可能な財政構造の確立に向けて、財政健全化にどのように取り組む考えなのか、2期目を迎えた知事の所見を伺う。
A鈴木知事 今後の財政運営について。私は、知事就任以来、コロナ禍への対応をはじめとした様々な課題に対処しながら、歳出の見直しや減債基金への計画的な積み戻しなど、財政の健全化に努めてきた。
一方、道財政は、6年度以降も収支不足額が生じるほか、実質公債費比率についても依然として高い水準で推移する厳しい状況が続く見通しであることから、今後もこうした財政課題に継続的に取り組んでいく必要がある。
私としては、引き続き、道税、交付税などの歳入確保や減債基金への積み戻しに取り組むことはもとより、国の動向なども踏まえ、5年度中にあらためて収支見通しを精査し、必要な対策を検討するなど、財政健全化に向けた取組を進めていく。
◆道の防災教育
Q佐藤議員 道は、ことし2月に日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震減災計画を策定し、ハード面はもとより、ソフト面を含めた様々な対策を講じ、被害を軽減するための具体的な施策を盛り込んだ。
巨大地震が発生した場合、道が公表した被害想定では、道内において最大で14万9000人にものぼる死者数が見込まれるなど、甚大な被害が想定される一方、早期避難率を高めることや、津波避難ビルやタワーなどの整備を促進することで、被害を大きく軽減することが可能とされている。
巨大地震による津波が発生した際には、住民の迅速な避難が不可欠であり、そのためには、自助や共助の意識を高める防災教育や防災訓練等を通じた住民の避難意識の向上が重要と考える。
今後、こうした防災教育や防災訓練等を含め、ソフト対策にどのように取り組んでいくのか伺う。
A浦本副知事 防災教育の取組について。巨大地震から命を守るためには、道民一人ひとりが正しい知識に基づき、迅速かつ的確な避難や状況に応じた適切な行動を取っていただくことが何よりも重要である。
このため、道ではこれまでも、市町村や防災関係機関と連携し、住民に対する研修や訓練のほか、地域の防災リーダーの育成などに取り組んできており、本年度は、こうした取組に加え、新たに、津波被害を想定した動画や、子どもたちや外国人に向けたリーフレットを作成、配布するほか、特別強化地域を含む6振興局管内の自治体職員などに対して研修を実施することとしているところ。
道としては、今後とも、地域の防災リーダーや専門家の協力を得て、防災教育のより一層の充実強化を図るとともに、国や市町村、関係機関と連携協力し、実践的な訓練を積み重ねながら、道民の防災意識の向上と地域防災力の向上に取り組んでいく。
◆生成AI
Q佐藤議員 チャットGPTをはじめとした生成AIの活用が広がっていく中、先月開催されたG7広島サミットでも、生成AIについては重要議題とされ、国際的なルールづくりを進めることで合意し、国内においても、国をはじめ、自治体レベルでも、その活用に関し、検討を進める動きが広まっているものと承知している。
生成AIについては、高い利便性が期待される一方で、情報の信頼性や著作権の侵害など、懸念される部分も多い。生成AIの活用についてどのように考えているのか、知事および教育長の所見を伺う。
A鈴木知事 生成AIの活用について。チャットGPTといった生成AIの活用については、職員の業務負担軽減や生産性の向上などが期待される一方、回答内容の正確性の疑義や情報の漏えい、著作権侵害のリスクが指摘されるなど、様々な懸念も示されており、先般行われたG7サミットや国のAI戦略会議においては、開発や利用、規制などに関するルールづくりの必要性が議論されているものと承知している。
道では現在、生成AIを業務で使用することを認めていないが、こうした状況を踏まえ、引き続き、国や他の自治体の動向などについて情報収集を行いながら、スマート道庁の専門部会において、業務効率化やリスク管理の両面から、道における利活用の可能性について検討を進めていく。
A倉本教育長 生成AIについて。チャットGPTなどのいわゆる生成AIを活用した様々なサービスが生まれる中、学校現場における生成AIの利用については、子どもたちの批判的思考力や創造性への影響、個人情報や著作権との関係などの整理について見定めていく必要があると認識している。
現在、中教審に設置されたデジタル学習基盤特別委員会において、生成AIの学校での取扱いに関する今後の対応等について協議がされており、文部科学省では、夏前をめどに学校現場での利用に関するガイドラインを策定、公表すると承知している。
道教委としては、こうした国の動きを踏まえるとともに、生成AIなど、最新のデジタル技術の効果的な活用について調査研究を進め、学校において適切な運用がなされるよう指導助言していく。
◆交通安全対策
Q佐藤議員 道では、6月19日から交通死亡事故多発警報を発表するなど対応しているが、コロナが5類に移行し、社会経済活動が徐々に再開される中、今後、本格的な行楽シーズンを迎え、外国人観光客も含め、人流、物流が一層活発化することが期待される、悲惨な事故を踏まえ、交通安全対策の強化にどう取り組み、貴い人命と本道経済を守ろうとするのか伺う。
A倉本教育長 交通安全対策について。子どもたちが安全・安心に学校生活を送るためには、日頃の交通安全指導やスクールバスの運行を含む通学路の安全確保によって、登下校時の交通事故防止の徹底を図ることが重要である。
道教委では、今般の特別支援学校スクールバスの事故発生を受け、あらためて、道立学校において、バスの運行契約をしている全ての事業者に対し、交通法規の順守や安全運転に対する注意喚起を行ったところ。
また、3年6月の千葉県での登校時における児童死傷事故以降、各市町村では、通学路交通安全プログラムに基づく通学路点検を毎年度徹底して行うとともに、各学校において交通安全指導の充実を図っている。
道教委としては、引き続き、児童生徒の登下校時などにおける安全確保が図られるよう、道や道警察、関係団体で構成する交通安全対策7者連絡会議で対策を協議するなどして、子どもたちの貴い命を守る取組を一層進めていく。
Q佐藤議員 道内の私立高校において、部活動の練習準備中に事故が発生した。この事故に関して、5月30日付で、スポーツ庁から、施設設備の点検や事故防止のための適切な措置を取るよう、全国の都道府県教委などに通知があったと承知している。
また、道教委によると、道内公立学校において、過去3年間における骨折やねんざなどの全治3週間以上の負傷事故は、体育授業などで303件、部活動で159件の計462件発生しているとされており、重大な事故につながるリスクも決して低くないものと考える。
学校における児童生徒の負傷事故の防止について、これまでどのような取組をしてきたのか、また、このたびの事故を踏まえ、今後どのように取り組む考えなのか、知事および教育長に伺う。
A鈴木知事 学校における児童生徒の事故防止について。このたびの高校の部活動中に発生した事故によって、けがをされた生徒、保護者、関係者に、心からお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い回復を願っている。
道ではこれまで、毎年、国が発出する、学校における体育活動中の事故防止等に関する通知を各学校に周知し、事故防止対策に万全を期すよう求めてきたところ。
このたびの事故対応においても、国の通知に基づき、学校側に直ちに報告を求め、事実確認等を行った上で国に報告したほか、各学校に対し、用具等の点検管理の徹底や児童生徒に対する安全教育の充実などについてあらためて通知したところ。
道としては、今後とも、道教委と連携し、二度とこのような事故が起こることなく、児童生徒が安全・安心な体育活動を行うことができるよう、職員が学校を訪問する際など、あらゆる機会を通じ、事故防止等に向けた安全指導の徹底に努めていく。
A倉本教育長 児童生徒の事故の防止について。学校教育活動の実施に当たっては、児童生徒に事故が発生することのないよう、安全の確保に十分注意する必要があり、道教委としては、これまでも、毎年度当初に、活動場所や設備等の安全点検を行うことや、児童生徒の安全に配慮しながら指導するよう注意喚起を行ってきた。
また、体育活動中の事故防止に向けたチェックリストを作成、活用して、安全管理や安全指導の在り方を再点検するよう促してきた。
このたびの私立高校における深刻な事故の発生を踏まえて、全ての道立学校および市町村教委に対して、体育活動は、その特性上、事故発生の危険を有することを示し、部活動等で器具を使用する際に点検を確実に行うなど、あらためて、安全管理や安全指導の徹底を図るよう、通知を発出した。
道教委では、児童生徒の安全が何よりも大切であるとの考えのもと、今後も引き続き、繰り返し注意喚起を行うとともに、校長会議などの場において学校の安全配慮義務に関する指導を継続的に行いながら、児童生徒の安全確保の徹底に万全を期す。
◆教員確保
Q佐藤議員 近年、全国的に教員採用試験の倍率が低下し、教員不足が大きな問題となっており、本道においても、必要な人員が確保できず、多くの学校で欠員が生じている。
教員不足は、学習環境の悪化や教育の質の低下など、児童生徒の教育環境への影響が懸念されるばかりではなく、ほかの教員の負担増などを招くことにもつながるものであり、教員の確保は喫緊の課題である。
国においては、全国的な教員不足の現状を受け、教員確保のための環境整備に向け、検討が進められていると承知しているが、国の検討を待つばかりではなく、道としても、早急に対策を取りながら教員不足の解消を図っていく必要があると考える。
道教委は、これまでも、教員確保のため、出願書類の電子化や簡素化等の教員採用試験の見直しなど、様々な取組を進めてきていると承知しているが、今後、必要な教員数や質の高い人材確保に向け、どのように取り組んでいくのか伺う。
A倉本教育長 教員の確保について。子どもたちの豊かな学びを保障する上で、その直接の担い手となる優秀な教員を確保することは何よりも重要であり、より多くの有為な人材が本道の教員を目指すよう、環境を整えていくことが必要と考えている。
道教委ではこれまで、教員採用選考検査について、会場の増設や特別選考の対象者の拡大など、教員志願者にとって受検しやすいものとなるよう改善を重ねるとともに、道教育大や市町村などとも連携し、早い段階から教職の魅力を伝え、教員志願者の裾野を広げるため、高校生を対象とした教員養成セミナーのほか、道内の小規模校における草の根教育実習などに取り組んでいる。
今後とも、学校における働き方改革の取組をさらに加速させ、教員がその意欲と能力を最大限に発揮できる職場環境づくりに努めるとともに、教職の魅力を広く発信するなど、様々な取組を総合的に推進し、教員の確保に全力で取り組んでいく。
(道議会 2023-10-18付)
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