Pick Up 第1回 道・道教委(道・道教委 2023-12-07付)
◆活用広まるデジタル教材
▼書く力など課題
人工知能(AI)を使用したデジタル教材を活用する動きが道内で広がっている。活用する多くの学校では、個々の学習状況や進捗状況の把握など、学習・生活習慣の改善に効果を実感する一方で、記述力の向上に課題を感じる教員も少なくない。教材購入に充てる費用の確保も多くの自治体の負担となっており、ハード更新と併せた国主導によるソフト充実への支援が求められる。
函館市立北昭和小学校は本年度、AIドリルを導入。個別の学習支援とともに、宿題をAIドリルにする曜日を設定。宿題の採点時間を省力化し余裕時間を生むなど、業務改善にも効果を実感する。
▼費用負担に壁 導入へ現場工夫
一方で、授業や家庭学習のICT化を進める学校ほど「デジタルと紙媒体それぞれの良さをあらためて実感する」という。ある教員は「デジタルの選択式問題では、書く力が育たない。端末とクラウドの導入でノート指導がおろそかになっており、考えをまとめて伝える力の育成が一層必要だ」と警鐘を鳴らす。
デジタル時代の新たな課題が顕在化する中、制限時間内で作文を書いて要約する取組に力を入れる学校もあり、ICTとノートの最適なバランスを模索する。
自治体の費用負担に係る課題も大きい。道内市町村の5年度当初予算では、デジタルドリル導入経費を確保する動きが見られたものの、教育費全体の拡充につながらないケースが散見。そのため、これまで購入していた紙媒体のドリル購入の中止や、無償版のAIドリルを駆使するなど、限られた財源でのやりくりを余儀なくされる。
▼ソフト支援も必要
道教委主催のあるオンライン交流会では、各地の教員が端末を活用した家庭学習の実践を共有。機器の破損や持参忘れを懸念し消極的だった教員も、先進地域の取組を受け「職員間で挑戦する意識を共有したい」と話すなど、デジタル教材活用の機運が高まる。
国の新たな総合経済対策で、端末更新に係る国庫補助に継続のめどが立った。GIGAスクール構想が端末の効果的な活用を模索する第2段階を迎えた今こそ、国によるソフト面の支援充実が不可欠だ。
◆人材確保へ自治体模索
GIGAスクール時代の学校現場を支えるICT支援員。緊急時のトラブル対応、授業・校務における活用の提案や教員への技術支援、年度末の更新作業、校内研修の支援など役割が高く評価される一方で、優秀な人材の確保に苦慮する自治体は多い。
文部科学省は4校に1人の配置を目標に地方財政措置を講じる。
しかし、4年度末時点の調査によると、札幌市を除く道内でICT支援員の配置率は24・7%と4分の1にとどまる。
自治体担当者からは「ホームページからの募集で採用に至ることは困難」「都市部の人材派遣業者に依頼して運良く見つけることができる程度」など、異口同音に人材確保の難しさを嘆く。
道外の人材確保に成功した例もある。雄武町では、地域おこし協力隊の枠組みを活用して、3年度からICT支援員を任用。特別交付税措置があるため給与を増やせるメリットがあるという。
▼ニーズと能力マッチングを
個人事業主として複数自治体のICT支援に従事する長野修二氏は、人材の確保が困難な要因の一つに「ニーズと能力のマッチング」を挙げる。
ICT支援員には、技術面に詳しい人材や、実践面に明るい元教員、行政経験者など、個々の背景によって得意とする分野は様々。「自治体は、人材に求める能力を把握することが必要だ」と説く。
「ICT支援員がスキルアップする仕組みづくりも不可欠」と指摘。日進月歩に進化するICT技術に対応するためにも「支援員が自ら学び、知識を深めるための費用や時間も必要」と訴える。「児童生徒の学びと同様、地域や学校にも個別最適化した支援が必要。そのためには幅広い知識や情報が求められる」と強調する。
ICT支援員は配置効果の高さから、6年度の新規配置・増員を計画する自治体も多い。効果を最大限に発揮させるためにも、自治体のニーズ整理や人材の育成・掘り起こしが求められる。
(道・道教委 2023-12-07付)
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