道教委 健康教育推進研(胆振・日高) 給食は「食育」の時間 組織加えシステム化がカギ
(道・道教委 2023-12-22付)

健康教育推進協(胆振・日高)講師
給食・食育満足度が9割を超える調布市深大寺小の濱松校長が食育推進の全容を紹介した

 【苫小牧発】道教委は18日、苫小牧市民会館で健康教育推進研究協議会(胆振・日高会場)を開催した。東京都調布市立深大寺小学校の濱松章洋校長が「給食は食育の時間です~学校全体で進める食に関する指導」と題し講演。学校でなぜ食育が進まないのか、どうしたら進むのかを述べ「教員の意識はなかなか変えられない。だからシステムを変え、マネジメントしてあげること」と提案。その手法を実践をもとに説明した。

 同研究協議会は、学校における健康教育や食育の充実を図るため全道3会場で初めて開催することとしたもの。

 「食育」をテーマとした胆振・日高会場では、対面で両管内から校長、栄養教諭、養護教諭ら108人が参加。オンラインで全道からも参加があり、合わせて172人が参加した。

 健康・教育課の担当者が学校の健康教育について説明したあと、濱松氏が講演した。

 濱松氏は、食育基本法が「子どもたちが生きる力を身に付けていくためには、何よりも食が重要」と記し、積極的に食育を推進するよう求めていることをあらためて紹介した。

 それにもかかわらず「なぜ学校では食育が定着しないか」と投げかけ「時間がない」「労働過多」「家庭で教えるべき」などの教員の声に押し流されてしまう実態などを挙げ「教員の意識はなかなか変えられない。だからシステムを変え、マネジメントしてあげること」が変革のポイントと強調。「これができるのは校長である」と指摘した。

 続いて、食育の推進によって児童の94%が「給食が楽しみ」、保護者の98%が「給食に満足」と答えている深大寺小の給食(食育)について具体的に説明した。

 「やはり担任が教室で話してくれないと届かない。そこで、学校に食育を担う組織を加えた」「まず教員に“うちのクラスは食べ残しが多い”など給食の不満を出してもらった。そして出てきた課題に組織的に取り組む食育推進委員会をつくった」

 「すると組織は課題解決に向けてどうすれば良いかと動き出す。あとは対応策の検討・修正・実施というPDCAサイクルにのせてあげれば続いていく」

 「PTAからも給食に対する不満を聞き、PTAがこう言っているからと、対応せざるを得ない状況をつくることが大切」などとした。

 続いて、同校が課題にどう対応していったか紹介。

 「給食開始時間が遅れるクラスがあったため、4校時の終了時刻を厳守とし、時間になると全教室の黒板に給食メモが投影されるようにした」

 「毎回食物アレルギーチェックがあり、やらないわけにはいかない。ほとんどは協力してくれるが、どうしてもやらない教員には、最終手段として指示を守っていないなら何かあったときあなたを守れないという言い方で説得した」

 「給食メモはその日の給食に合った話題を栄養士が書いたもので、それをもとに教師が食トークを行う。子どもは聞いた情報を食べながら確かめることができ、食について会話が進む“話食”となる」

 「食べ始めるともう子どもは聞かないので、給食を配り終え、児童が着替えている時間を利用し、いただきますの前に行う」

 「給食は食育の授業時間である。なので、給食と関係ない放送は流さないこととした。他の教科の丸付けや、給食中に子どもや教員を呼び出すことも緊急時以外禁止とした」

 「偏食への対応などに先生ごとのローカルルールがあり、対応がばらばらだったため、統一ルールである“深小給食スタンダードシステム”を作成した」

 「児童向け給食集会でこれについて子どもたちに説明した。こうすると先生も子も全員聞いているので、先生方も違うことはやらないようになる」などと紹介した。

 加えて、給食指導を「ローテーションによる学年担任制」とし、学年で全部のクラスの子を見る体制に転換した結果「担任以外でもアレルギー対応に不安がなくなった」「教師ごとのローカルルールがなくなり、食トークもきちんと行われるようになった」「残菜の学級間格差がなくなった」「子どもにも教員にも“給食は授業時間だ”という意識が根付いた」などの成果が得られたことを紹介した。

 さらに、タブレットで食事前と後の給食を撮影する「パシャパシャタイム」を行い家庭で見てもらうことで、家庭で子どもの好き嫌いや小食などの状況を確認でき、食についての啓発も進んだとし「給食が食育の授業時間となった子どもたちは“話食”が進み、家庭の食に影響を与え、食行動が変わった」とした。

 最後に「食育のおかげで、これから生涯7万回の食事が楽しい時間になり、成長のベースになり、健康のベースになり、豊かな人生を笑顔で過ごすことができるなら、こんないいことはないではないか」と訴えた。

 このあと、食をテーマにした取組を音更町立下士幌小学校の佐藤京美養護教諭、むかわ町立鵡川中央小学校の岡部菜々美栄養教諭、函館西高校の長澤元子教諭が発表。

 濱松氏が講師となり、協議・演習「食を中心とした望ましい生活習慣の定着に向けたプラン作成」を行い、最後に自校・地域で実践するための方策について振り返り・まとめを行った。

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健康教育推進協(胆振・日高)
オンラインを含め全道から172人が参加した

(道・道教委 2023-12-22付)

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