檜山管内6年度教育推進の重点 子に寄り添い未来支え つながり・学び合うなど3点
(道・道教委 2024-04-16付)

檜山教育局長藤嶋泰道
藤嶋局長

 【函館発】檜山教育局の藤嶋泰道局長は12日、オンラインと参集のハイブリッド形式で開かれた管内公立学校校長会議で、6年度管内教育推進の重点を説明した。「一人ひとりに寄り添いながらつながり・学び合い、未来を支える」をスローガンに「未来を支える」「つながり・学び合う」「一人ひとりに寄り添う」の3点をキーワードとして提示。道の推進計画や道教委の施策・指定事業との関連性に基づくPDCAサイクルを図るとともに「体力・食育」「幼児教育」「地域部活動」「地学協働」等の項目を新設または修文し、学校教育、社会教育、生涯学習の一体的な充実を目指していく方針を示した。

 藤嶋局長の説明概要はつぎのとおり。

 これまで檜山局では、教育委員会や学校の皆さまが目標や取組、意図を分かりやすく共通理解できるよう、「教育推進の重点」を毎年度定めてきた。教育委員会や学校ともしっかりと共有していただいているものと認識しており、本年度も作成を進めてきた一方で、「学校教育の内容に限定されている」「道の教育推進計画との関連が分かりづらい」といった意見も頂戴しており、本年度はその点について協議を重ねた。

 作成に当たり、局内の全ての係で作成方針について共通理解を図りつつ、道の計画との関連を意識するため、計画で示されている指標について管内の達成状況の確認と比較・検討を行った。その上で「重点的に取り組む必要がある事項を強調」したほか「管内の重点に明記されていなかった事項の追加」等を行い、本年度の重点を作成した。

 この重点のもと事業を実施し、道の計画との関連を踏まえながら事業評価や比較・検討を行い、つぎの重点作成につなげていくことで、重点はもとより、各種事業の改善・充実の継続にもつなげられるものと考えている。こうした「PDCAサイクル」を効果的に運用できるよう努めていきたい。

【未来を支える】

▼持続可能な社会の創り手としての資質・能力を育む

 道の推進計画の1番目の項目として示されている「SDGs・ESDの推進」を進めるため「持続可能な社会の創り手としての資質・能力」を設定し、目指すべき方向性の明確化を図っている。

 その上で、この項目の一点目には、学齢期のみならず、生涯にわたって学ぶことの重要性を示すため「就学前から卒業後までを見通した教育」を実現するための「カリキュラム・マネジメント」を推進するとしている。

 2点目は、具体的な授業改善を図るための項目として「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図るための、これまでの実践とICTとのベストミックスとしている。

 現在、ICT活用の一層の推進が求められているが、管内においても児童生徒が学年や習得度等に応じて1人1台端末を活用し、協働的な学びの充実やオンライン活用による学習機会の拡大を図っている。

 一方で、実体験を保証することも重要であり、我が国が長きにわたって蓄積してきた専門性やノウハウを活用していくことが、今後も極めて重要であることはいうまでもない。

 そこで、本年度の重点にでは「これまでの実践とICTとのベストミックス」を盛り込むことによって、授業の一層の改善・充実を図っていく。

 3点目は、全道平均と比べて外国人人口が少ない管内において、今後、檜山の子どもたちがこれからのグローバル社会を生きていくための力を身に付けるよう「グローバル人材育成のための、外国語教育、国際理解教育等の推進」を設定している。管内においてはALT学習のほか、町の支援による上ノ国高校の海外視察など、成果を広く発表する場を設ける取組が既に行われているが、こうした実践の充実を図りながら、求められる力が確実に身に付くよう、各種事業を通した取組を進めていく。

▼子どもの可能性を引き出す

 これまで取組は行っていたものの記載していなかった「体力、食育」「幼児教育」に関する項目を1、2点目に新設している。

 管内の体力は、専門性の高い教員によるスーパーバイズやオンライン研修の実施等による授業改善の成果もあり、多くの種目で全国平均を超えるレベルを維持している。

 今後も、一層の充実を図るとともに、2点目に示した健康教育・食育の充実により、子どもたちの健康の維持・向上を図っていく。

 特別支援教育については「場」を整備することが目的ではなく「一人ひとりに応じた教育」とりわけ「各教科の指導」「自立活動の指導」の充実を図ることが必要であると考え「特別な支援が必要な児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じるための、各教科および自立活動の指導の充実」を3点目として設定している。

 4点目には、これまで明記していなかった幼児教育について「質の高い幼児教育推進に向けた、地域・家庭との連携の充実」を記載している。

【つながり・学び合う】

▼深化に向けて連携する

 前年度は「進める」という「進化」を用いていたが、連携においては「関係を深める」という意味である「深化」を用いることで意図がより伝わるのではないかと考え、項目名を変更した。

 項目1点目について、前年度は「学校種間の接続」、小1プロブレム、中1ギャップといった接続期に起きがちな課題が可能な限り生じないよう、継続的・体系的な教育活動の充実を図る「縦の連携」について特に重視したが、本年度は、より円滑な連携が進むよう「発達の段階等に応じた系統的な教育の充実を図るための、幼保小および学校種間の円滑な接続の強化」としている。

 2点目の「教科等横断的な学習や探究的な学習の充実を図るための、地域との連携の促進」については、持続可能な社会の創り手を育てるために欠かせないものであり、今後一層求められるSTEAM教育の充実を見据えた「横の連携」について記載している。

 高校における実践では学習が実際に卒業後も生きる力につながるよう、地域の方を講師に迎えて学習し、その成果を発表する機会などを設けている。

 3点目は、小規模化している管内における教職員の専門性の向上を図るため、檜山局で独自事業として実施している「学び合いプロジェクト」等の研修の充実について。

 内容については、最新の知識を身に付けるだけでなく、これまで管内で蓄積してきた専門性の共有を目指した「学び合い」の充実を図ることを重視し「教職員一人ひとりの専門性向上に向けた、町や校種の枠を越え互いに高め合う研修機会の充実」として記載している。

▼地域と一体となって学びを支える

 これまで、取り組んでいたものの重点には明記していなかった社会教育などを中心に設定している。

 1点目は、前年度「コミュニティ・スクール」を中心に記載していたが、これに限らず、地学協働の推進を広く図る観点から「学校、家庭、地域が連携・協働した地学協働を推進するための、地域人材・企業の活用」と修文している。

 檜山局では、広報誌「ひやまをつなごう」を発行し、各町や学校での様々な取組を発信することにより、地学協働の推進に努めている。

 また、前年度末には、X、旧ツイッターに「ひやまをつなごうmini」というアカウントを開設した。SNSも活用しながら、広く情報発信を行うこととしている。

 例えば高校と町教委が一体となって、地学協働を進めていく事業や、振興局の他の部局と檜山局がコラボし、モデル校を設定して取り組む事業等のほか、引き続き、サポート企業の取組の活性化や「ひやまをつなごう」として広報誌やXを活用しながら、地域の活動を広く発信するなど、地域と学校が一体となった取組を進めていく。

 2点目の「スポーツ・文化活動の充実に向けた、地域特性を生かした部活動地域移行の促進」については、現在、各町において進めていただいている「部活動の地域移行」について、檜山局としても各町における取組の促進を図りたいと考え項目を新設している。

 3点目は、これまでは記載がなかった「生涯学習」や「芸術文化活動」の推進について項目を新たに設定し「ふるさと檜山」に対する愛着や誇りの醸成に努めるため、項目を新設している。

 前年度、上ノ国町の「勝山館跡宮ノ沢右岸出土品」が道の指定有形文化財に登録された。こうした貴重な文化財が各町にある意義を子どもたちとも共有できるよう、様々な機会を用いて、情報発信を行うほか、教育活動での活用についても働きかけていきたいと考えている。

【一人ひとりに寄り添う】

▼子どもが安心して学べる学校をつくる

 1点目は「自己肯定感と他者への思いやりの心を育むための、教育活動の推進」として、前年度の表現よりも端的に表現することで、ねらいを焦点化している。

 前年度は、全国大会に出場した部活動を年度途中に表彰するなど、子どもたちの”頑張り”を檜山局としてもスポットを当てるなどの取組を行った。

 2点目の「いじめの未然防止、早期発見、早期対応のための組織的な取組の推進」については、前年度から記載を変更していないが、引き続き各学校において丁寧な対応がなされるよう、檜山局としても各町教育や学校を支援していく。

 3点目は「働き方改革の推進」について、前年度「つなげる、つながる」の柱のもと「進化に向けて連携する」の1項目として設定していた内容について、特に「連携」の有用性を尊重しつつ改革を進めることに重点を置くため「効果的な教育活動を行うための組織一丸となった働き方改革の推進」として修文するとともに、「一人ひとりに寄り添う」の項目へ移動している。

▼切れ目のない一貫した指導・支援の充実

 1点目は前年度の「キャリアステージに応じた指導」として記載していた内容について「キャリア教育の充実に向けた、キャリア・パスポートの活用や計画的・組織的なインターンシップの実施」として、特に進路を意識した取組の充実について記載している。

 2点目は、不登校の児童生徒への対応について、未然防止や早期支援の充実を図る必要があることから、前年度は、特別支援教育と併せて記載していた項目を独立させ「不登校の児童生徒に対する未然防止・早期支援に向けた、校内体制整備や教職員の理解の促進」として記載している。

 3点目は「学びのセーフティネット」の構築に向け、ヤングケアラーや病気療養児、帰国・外国人等への対応」を新設している。

 「ヤングケアラー」「病気療養児」「帰国・外国人」といった、何らかの理由で教育活動にうまくアクセスできない子どもたちへの対応については、全国・全道では課題になっているものの、管内では現在支援対象児童生徒がほとんどいないといった状況にあるが、いざ対応が必要になった場合には、速やかな対応できるよう、研修や体制づくりを行っておく必要があることから、今回項目を設定した。

 また、管内では、奥尻町の地理を生かした奥尻高校の「スクーバダイビング」の授業や、今金高等養護学校で行っている「模擬株式会社」の運営による地域での現場実習など、様々な教育活動が行われている。

 檜山局としては、ここまで説明した重点に基づいて各種事業を推進し、学校教育はもとより、社会教育や生涯学習の一層の推進に努めていく。

 これら三つのキーワードを束ねる、次年度重点のスローガンを「一人ひとりに寄り添いながらつながり・学び合い、未来を支える」とした。

 これは「一人ひとりに寄り添う」ための環境をつくり、「つながり・学び合う」ことで、子どもたちはもとより、学習者となる檜山の方々の未来を支えていきたいという願いを「一人ひとりに寄り添いながら、つながり・学び合い、未来を支える」という一文にまとめたものであり、管内の実情、道教委の施策、檜山局としての取組を一本につなげるものであると考えている。

 この「寄り添い」「つながり・学び合い」「未来を支える」主体は、教育に携わる教育委員会や学校の教職員、社会教育や生涯学習の指導員、さらに檜山局等を想定しており、この言葉のもと教育活動を始めとする様々な取組を進めることによって、管内の教育の充実を一層図られるものと考えている。

 檜山局としては、この重点のもと、各教育委員会や学校等と密接につながりながら、本年度の事業を進めていくため、引き続きご理解とご協力をお願いする。

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檜山管内教育推進の重点
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