インタビュー 4種校長会長に聞く② 新時代の学校へ 堅実に歩みを 全道校長の思い 一つに 北海道中学校長会会長 河村 克也氏
(関係団体 2024-06-26付)

―会長としての抱負

 昭和22年の創設以来「中学校長の職能向上と、北海道の中学校教育の振興」を目的として、各時代の教育課題に向き合い、77年に及ぶ歴史と伝統を刻んできた北海道中学校長会(道中)の会長の任を仰せつかることは、大変光栄なことであると同時に、その職責の重さを強く感じている。

 われわれ校長は、教育改革の着実な推進と教育課題の解決に向けて果敢に挑戦し、令和の日本型学校教育の構築に向け、一人ひとりの子どもを主語にする学校教育を実現しなければならない。

 そのため、各会員が教育改革の動向を注視し、未来を見通した明確なビジョンを掲げ、これからの時代に求められる学校づくりに向けて、全道の校長が思いを一つに、地道に、着実に、そして、堅実に取り組んでいくことが本会の目的達成につながると考え、「新たな時代へ 思いを一つに 堅実に歩む 道中」というキャッチフレーズを掲げた。

 全道20地区、557人の会員の皆さんの支援と協力をいただきながら、子どもたちと教職員、学校の将来の姿を思い描き、北海道の中学校教育の発展のため、北海道の未来を担う中学生のために全力を尽くしてまいる所存である。

―校長会の抱える課題と対策

 令和の日本型学校教育の実現のためには、学校が教育DXや少子化等の社会の変化を踏まえ、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図り、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた取組をさらに進化させることが必要である。

 一方、不登校生徒の社会的自立に向けた支援、いじめの積極的な認知と「いじめ見逃しゼロ」の徹底など、全ての子どもたちにとって、安全・安心で「楽しい」と実感できるような魅力ある学校づくりを進めること、さらには、教員不足の解消や教職員の育成、働き方改革を踏まえた部活動改革の推進など教育の指導・運営体制の充実も課題となっている。

 道中では、教員が心身共に健康な状態で子どもたちと向き合うとともに、高度専門職として主体的な学びを支援する伴走者としての役割を果たすことのできる学校の指導・運営体制を充実させることが子どもたちの豊かな学び・幸せな学校生活につながるものと考えている。

 そのためには、市町村校長会と各地区校長会、道中が緊密に連携し、様々な課題の解決に向け、現場の立場から教育行政機関等に対して要望するとともに、お互いの立場や考え・願いを理解し合いながら、これからの新しい時代に求められる学校づくり、環境づくりに努めることが大切である。

―本年度の重点

 何よりも大事にしたいのが、「一人ひとりの子どもを主語にした学校づくり」である。

 子ども一人ひとりの可能性を引き出すためには、学習指導要領をもとに、「この学習でどのような資質・能力を身に付けていくのか」を明らかにするとともに、子どもたちが生涯学習社会を生き抜く自立した学習者になれるよう、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を進めなければならない。

 そのためには、ICT環境を最大限に活用して個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を進め、学びの主導権を子どもたちに委ねるなど、自らの学びを「自分事」として捉え、自発的に他者と関わりながら自分で学びを深めていくような学習活動を展開する必要がある。さらに、学びを進める上で信頼感のある学級づくり、教室の中の支持的風土の醸成が欠かせない。

 第二に、安全・安心で「楽しい」と実感できる魅力ある学校づくりである。

 学校は、全ての生徒が安心して楽しく生活を送り、自他を尊重し、自己肯定感や幸福度を高める場である。しかし、いじめや不登校などが現場では課題となっている。

 令和5年4月に施行された「こども基本法」や同年4月に策定された北海道いじめの防止等に向けた取組プラン、さらにことし4月に改定された「札幌市いじめの防止等のための基本的な方針」をもとに、全ての生徒が個性的な存在として尊重され、心豊かに成長することができるよう、「命を守り、心を育てる」教育の営みを推進するとともに、「いじめ見逃しゼロ」を合言葉に積極的な認知と早期からの組織的対応の徹底を図る必要がある。

 さらに、重大事態への対応は学校現場にとっても大きな問題であることから、本会対策部において「いじめの重大事態調査の実施に関する調査」を行い、全道の状況を明らかにしたい。

 また、北海道では不登校生徒の増加が生徒指導上の喫緊の課題となっている。令和6年3月に道教委が策定した「HOKKAIDO不登校対策プラン」をもとに、心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援するとともに、不登校生徒に対する学びの場を確保し、学びたい時に学べる環境を整備する取組に力を注ぎたい。

 第三に、多様な教育活動を推進するための教育諸条件の整備についてである。

 本年度から新たに「学校における働き方改革“北海道アクション・プラン”」の第3期がスタートした。これまでの取組を踏まえ、「働きやすさ」と「働きがい」のある職場づくりを目指し、教員自身がこれまでの働き方を見直し、自らの学びを深めるための時間や子どもたちと向き合う時間を確保することが、「質の高い学び」と「持続可能な学校」の実現につながるものと考える。教員が学習指導や生徒指導に専念できる環境の構築に向けた働き方改革の推進に力を注いでいただきたい。

さらに、教員免許更新制度の発展的解消によって、新たな研修制度が5年度スタートした。北海道では全国教員研修プラットフォームが6月から導入され本格的に稼働を始めた。教職員一人ひとりがキャリアステージに応じた資質・能力の向上に向け、体系的かつ効果的な教員研修を受講するためには、校長が教師一人ひとりとの「対話」を通して、教職員の日常実践と様々な学びの機会の組み合わせによる個別最適な学び・協働的な学びを実現することが必要である。全ての教職員が望んだ研修を確実に受けたり、自己研鑚に励んだりできる環境整備に取り組み、これからの時代に必要な教師の学びを実現したい。

 働き方改革の推進に当たっては、学校現場で取り組むこと、関係機関に働きかけて支援をいただかなければならないことについて、全道の中学校長と課題や対応策などを共有し、教育環境の充実につなげていきたい。また、部活動の地域移行を円滑に移行するためには、各地区の校長が自治体と緊密な連携が図られるよう、道中体連とも連携しながら全道の推進状況等を確認し発信してまいりたい。

 そのため、本年度は本会研修部が前年度実施した「教育課程に関する調査」の追調査を実施し、部活動における対応の現状と課題について把握することとした。

 そして、最後は「校長として学びたい」という思いに応える研究会の開催である。

 道中の活動の柱となる研究活動として、9月に「第65回北海道中学校長会研究大会十勝・帯広大会」を開催する。前年度の小樽大会における成果を踏まえ、校長同士の対話による実践の交流や、文部科学省や全日中会長などによる講話・講演等を通して私たちの職能向上を図るとともに、「思いを一つ」に、校長同士のつながりをさらに強固にし、道中の総力を挙げて大会の成功を目指したい。

 昭和62年道教育大函館分校卒。同年厚岸町立厚岸中を振り出しに、広尾町立野塚小、雨竜町立雨竜中、深川市立深川中で勤務。平成22年雨竜中教頭、26年平取町立平取中教頭、28年雨竜中校長、31年滝川市立江陵中校長を経て、令和4年から岩見沢市立東光中校長(現職)。

 昭和40年2月15日生まれ、59歳。士幌町出身。

(関係団体 2024-06-26付)

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