インタビュー 4種校長会長に聞く① 校長、教職員の健康を大切に 創意と活力ある学校づくりへ 北海道小学校長会会長 末原 恵蔵氏(関係団体 2024-06-25付)
―会長としての抱負
北海道小学校長会は、昭和32年の発足から67年目を迎える伝統ある組織である。これまで、北海道の教育が幾多の困難に直面する中、「正論を以って正道を歩む」という理念のもと、校長の職能向上と北海道教育の振興・発展を図ることを目的として、長きにわたり活動してきた。
伝統とは、例えるならば駅伝の襷リレーのように思える。人が替わっても、ベースとして高いものがあれば、襷を受け継ぐ次の人もまたその位置から上積みができる。5年後、10年後、次々と人が変わっても、本会が組織として展開できるような土壌というものをつくっていかなければならないと、私自身、肝に銘じている。先人の方々が脈々とつないでいただいた襷を感謝と敬意をもって引き継ぎ、本年度、943人の会員の皆さまと力を合わせながら、努力を積み重ね一層の進化を図ってまいりたい。
現在、学校現場では、いじめ・不登校等の生徒指導上への対応をはじめ、誰一人取り残されず全ての児童の可能性を引き出す多様な教育ニーズへの対応や特別支援教育の充実、GIGAスクール構想を踏まえた授業改善や教育DXの推進、学校における働き方改革の推進、教職員定数の改善や人的措置の充実、災害等での教訓を生かした危機管理対応や学校安全教育の推進など、複雑かつ多様な課題が山積している。
私たち校長は、このような教育課題や教育改革の推進に先頭に立って取り組んでいかなくてはならない。自らの使命を強く自覚し、志高く挑戦し続け、子どもたちと学校の未来を見据えたビジョンを持ち、確かな判断力と決断力を持って実行するリーダーであることが求められている。そのためには、まずは、校長として自身の健康を保つことが必要である。心のバランスや平常心を保つことを含めた校長の健康維持が、自らのウェルビーイングの実現につながる。
そして、校長の健康維持は組織の健康維持に直結する。校長は学校の組織文化や組織風土を創り出している一人であり、大きな存在感と影響力を有している。私たち校長がいつも元気で、笑顔で、教職員一人ひとりを大切にすることで、健康で働きやすい職場が生まれる。教職員の健康を保ち、「創意と活力に満ちた学校」を創ることが、子どもたちのウェルビーイングを実現する近道であると私は信じている。
―校長会の課題と対策
道小の課題は、持続可能な団体としての在り方について、議論を深め、今後の筋道を探ることである。本会の会員は、昭和30年代は2200人を超えていたが、年々減少を続けている。現在の会員数は、943人と全盛期の半数以下の会員数となっている。本会では、過去にも組織の在り方について改革が実施してきたが、会員数の少ない地区では、以前よりも一人ひとりの負担が増えていることは事実である。
一方で、会員減少の状況においても、職能の向上に向けた校長としての学びを止めてはならない。そこで、本年度は「未来を見据え、持続可能な活動と学びの場の充実に向けて」というスローガンを掲げた。学校のリーダーとして教育課題や教育改革の推進に先頭に立って取り組むためには、私たち校長自身が研鑚に励み、学び続けることが必要である。
その最大の取組が、道小教育研究大会である。本年度は第67回北海道小学校長会教育研究空知・岩見沢大会を開催する。校長の職能向上と本道教育の質の向上を目指して、研鑚を積む大切な機会となることを期待している。
また、道小教育研究大会については、昨今の会員減少や社会状況の変化といった課題から、持続可能な研究大会の在り方の検討が求められており、本年度、企画研修委員会を立ち上げて議論を重ねる。様々な声を真摯に受け止め、改善を図ってまいりたい。
さらに、本年度からは、令和8年度に開催する第78回全国連合小学校長会研究協議会北海道大会に向けた取組を進める。本年度は計画委員会を立ち上げ、開催地区である札幌市小学校長会の皆様と緊密な連携と意思疎通を図りながら準備を進める。「分科会の充実こそが最大のおもてなし」という道小の理念を大切に受け継ぎ、全国の校長先生方との貴重な学びの場の実現を図ってまいりたい。
―本年度の重点
創意と活力に満ちた学校を創りたいと冒頭に述べたが、学校の創意と活力は日々の授業に現れる。令和2年に全面実施された学習指導要領だが、概ね10年ごとに改訂されるとするならば、既に折り返し地点を迎えている。しかしながら、コロナ禍の数年間があったとはいえ、学習指導要領で示す「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の定着については道半ばであり、一層力を入れていかねばならない。
また「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実について、その具現化を図るためには、教育DXの推進が不可欠である。教育DXの推進については、端末の利活用に係る研修やサポート体制をはじめ、端末の整備や更新、ネットワーク環境の整備、クラウドコンテンツの充実、校務支援システムの整備等に地域格差も指摘されており、それらの解消にも取り組んでいかねばならない。道内20地区の校長会と連携を密に状況を把握し、必要な措置や対応が取られるよう、地域格差のない教育条件の整備を目指して要請活動を進めたい。私たち校長も、教員のICT指導力をより一層高めるなど、人材育成に向けた取組の充実を図ることが必要であると考えている。
「創意と活力に満ちた学校」を創るためには、「働き方改革と処遇改善、人材確保」も必要である。働き方改革については、本年度から新たに「学校における働き方改革北海道アクションプラン」の第3期がスタートした。これまでの取組を踏まえ「質の高い学び」と「持続可能な学校」の実現につながるよう、各学校において校長のリーダーシップのもと、一層取組を推進していかなければならない。
深刻な課題となっている人材確保については、働き方改革と処遇改善、そして定数改善を一体的に進めることが重要であるため、地区校長会と連携し、エビデンスに基づいた提案や要望を道や国に行ってまいりたい。私たち校長も「働きやすさ」はもとより「働きがい」もっと言うと「生きがい」を実感することのできる、魅力ある職場づくりに努めることが必要であると考えている。
各地区校長会が本会の組織を通して、今後も大同団結していくことが大切であり、それが全国連合小学校長会の活動の充実にもつながると確信している。道小としての凝集性をより一層高め、組織を活性化させるとともに、教育関係諸団体の皆さまとも連携を図りながら、北海道の抱える教育課題の解決に向けて全力で努めてまいりたい。
平成元年道教育大札幌分校卒業後、札幌市立伏古北小に赴任。19年札幌市教委指導主事、26年札幌市立北園小教頭、28年札幌市小学校教頭会会長、29年札幌市立美香保小校長、31年北白石小校長、令和3年緑丘小校長、5年元町小校長、6年東札幌小校長、道小学校長会会長。
昭和41年1月8日生まれ 58歳、札幌市出身。
(関係団体 2024-06-25付)
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