インタビュー 4種校長会長に聞く③ 働き方改革、指導要領着実な実施 「育てる」に注力したい 北海道高等学校長協会会長 宮澤 一氏
(関係団体 2024-06-27付)

4種校長会長インタビュー道高校長協会宮澤会長
4種校長会長インタビュー道高校長協会宮澤会長

―会長としての抱負

 昨年に引き続き、会長職を担うことは身に余る光栄であり、本道高校教育が抱える多くの課題に対して、丁寧にかつ迅速に解決を図るべく、気を引き締めて職務にまい進する覚悟である。本道高校教育および各学校における課題解決のためには、公立私立含めて278校ある高校の緊密な連携は不可欠であり、校長間のネットワークを構築していくことが肝要である。

 そこで、14人の支部長・ブロック長の皆さんには、各支部・ブロック内の校長協会会員同士のつながりをさらに深めていただくようにお願い申し上げている。

 また、私自身、支部長・ブロック長はもちろん、校長会員の皆さんとできる限り対話を重ね、会員誰一人取り残すことない道高校長協会でありたいと考えている。

 4年前に協会運営の柱として三つのS「支える」「備える」「攻める」が掲げられたが、教頭の確保・育成が喫緊の課題と捉えたことから、3年前に「育てる」が加わり、四つのSとして現在も協会運営の柱となっている。その中でも、本年度は特に「育てる」に力を傾注する考えである。

 「教育は人なり」を社会全体で共有すべき時期にきており、学校現場において、教師不足の解消や人材育成に努める取組を行うとともに、教育行政に対して、質の高い教員確保のための実効的な教育投資をしていただくよう働きかけをしていく所存である。

 また「支える」については、会員が困った時や悩んだ時に相互に支え合うとともに、校長一人ひとりが、各校の副校長、教頭、事務長等、管理職の仲間を含めた教職員を支える意識を持つことを大切にしたいと考える。

 「備える」に関しては、教職員の不祥事や生徒の命に関わるような危機を未然に防ぐことに加え、危機に対して迅速かつ的確に対応していくことに努める。そして、教育現場の声を積極的に教育行政に届けるとともに、各校長の学校経営に資するための調査研究にまい進する「攻める」校長協会でありたいと考えている。

 前年度から学校経営および協会運営を推進する上で、「協働」と「バランス」をキーワードとして会員に表明している。

 「協働」については、

▽教員個々の資質・能力を高め、質の高い教員集団が協働体制を築いて教育活動に当たること

▽管理職間の絆を強め、管理職の協働体制を教職員に示すこと

▽校長間の仲間意識を醸成し、校長協会会員の協働体制を構築すること

 ―を大切にしていきたいと考える。

 「バランス」については、

▽生徒、教職員、保護者、地域、外部機関等をバランスよく観察し状況に応じた教育活動、学校経営を推進すること

▽国の動向や本道教育全体をバランスよく注視し、自校の教育活動に加えて本道の高校教育全体の質の向上のために行動すること

▽私自身が、道教委の示唆を仰ぐことと、現場の声を道教委へ意見具申することの両面を適切に実践する

 ―など、バランス感覚を忘れずに会長職を務めていくことを目指す。

―高校長協会の抱える課題と対策

 1つ目は、働き方改革の推進である。子どもたち一人ひとりのウェルビーイングのために、質の高い教育活動を実践することは、学校に課せられた重要な使命である。そのためには、教育の担い手である教職員が心も体も健康で、教職にやりがいを感じ意欲にあふれていることが大切である。

 一方で、教職員の仕事が多岐にわたり、目まぐるしく多忙な日々を送る教職員が少なくなく、「生徒のために」と考え行動するほど、時間も労力もかかっている現実がある。

 働き方改革を実現するためには、その学校現場の現状を保護者や地域等に理解・協力をいただいた上で、教職員の抜本的な意識改革が肝要であると考える。また、校長協会として、道教委による「北海道アクション・プラン(第3期)」に基づき、各学校における実効性のある働き方改革を推進するとともに、教職員定数の抜本的見直し等に係る行政への働きかけを絶えず行っていく決意である。

 2つ目は、完成年度を迎えている学習指導要領の着実な実施である。高校は、幼児教育・義務教育段階での成果を確実に引き継ぎ、新しい時代に必要となる資質・能力の育成に努め、高等教育につなげる役割がある。そのためには、ICTの効果的な活用や、探究的な学び等を推進する中で、生徒の意欲や興味・関心を引き出す授業実践が必要不可欠である。

 各校において、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実による主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に真摯に取り組むことが肝要であると考える。

 3つ目は、生徒の命や健康を守る教育活動の推進である。地域や外部機関との適切な連携を図りつつ、命を大切にする教育や教育相談等を推進する学校体制を築くとともに、教員の生徒を観る力や聴く力の向上および特別支援教育のスキルアップを図る研修等を充実させることが大切である。

 また、防災教育、交通安全教育、平和教育にも力を入れる必要性を感じている。さらに、夏の暑さ対策についても、道教委の協力を得ながら各学校で取り組んでいるが、常日頃から行政や保護者、地域と緊密な連携を築く中で、子どもたち一人ひとりの命や健康を保持することに努めていきたいと考える。

―本年度の重点

 現在、国レベルでの最重要な教育課題は、質の高い教員の確保および人材育成である。現在の教員不足が危機的状況にあることを学校現場と行政が再認識し、一体となって質の高い教員の確保に努めることは必要不可欠である。教員離れを食い止めるために、学校は、働き方を抜本的に改革しブラックなイメージを払しょくすることに加え、校長が中心となって働きやすく働きがいのある学校を創造することが大切であると考える。

 また、国が「国家百年の計は教育にあり」を真摯に受け止め、教職員定数の抜本的な見直しや処遇改善を早急に推し進めていただくことによって、教職に魅力を感じ教員を目指す優秀な人材が増えていくと信じる。

 現在、文部科学省で「“令和の日本型学校教育”を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」の検討が進められているが、現場の声を国へ届けるために、全国高校長協会において教職員定数改善を求めるプロジェクトチームが発足し、道高校長協会としても微力ながら尽力していく所存である。

 次に、管理職候補者の発掘および育成について。今後、管理職として働きたいと考える人格・教養・情熱を兼ね備えた優秀な教職員が、継続的に増えていく環境を構築していくことが肝要である。そのためには、校長一人ひとりがミドルリーダーたちへの声がけや後進育成に努めつつ、管理職が一枚岩となって活力あふれる姿を教職員に示すことに加え、ハラスメントのない職場環境を構築することが大切であると考える。

 また、教育行政には管理職の処遇改善、副校長・教頭マネジメント支援員の配置・拡充等をぜひ実現いただくとともに、定年引上げに伴う特例任用や役付暫定再任用について、先を見通した適切な制度設計や柔軟な運用をこれからも継続的に意見具申していく所存である。

 さらに、全道各支部において行われている副校長・教頭の研修会や中堅教諭研修会についてもさらなる充実を図り、管理職の確保および質の向上に全力を尽くす決意である。

 平成元年北大工学部卒。同年野幌高教諭を振り出しに、21年知内高教頭、23年砂川高教頭、24年室蘭栄高副校長、27年札幌啓成高副校長、28年滝上高校長、31年岩見沢緑陵高校長を経て、令和4年から札幌南高校長。

 昭和40年1月1日生まれ、59歳。北見市出身。

(関係団体 2024-06-27付)

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