札教研事業白石区特支研究部会が研修　授業で生徒指導　理念に　インクルーシブ教育の実践紹介

（札幌市 2024-08-16付）

　札幌市教育研究推進事業（札教研事業）白石区特別支援教育研究部会は７月下旬、幌東中学校でフォローアップ研修を開いた。幌東中の髙橋伸弘教諭が講師を務め、通常学級との連携によるインクルーシブ教育の実現を目指した実践を紹介した。

　主に採用１～４年目の教員の資質向上を目的に実施したもの。

　講師を務めた髙橋教諭は本年度、在職期間が１０年に達した教諭が受講する中堅教諭等資質向上研修の対象となっている。その中の一つに、若手教員に向けた研修を企画・実施する「ＯＪＴ企画研修」があることから、札教研のフォローアップ研修に位置付けて実施した。

　髙橋教諭は「校内におけるインクルーシブ教育の実現を目指して～特別支援教育の考え方に基づく個別最適な学びの実現に向けた小中の実践」と題して講義。

　市内の小・中学校では、知的障がいと自閉症・情緒障がいの特別支援学級が並置されていることが多い現状を提示。自閉症・情緒障がい学級の中には知的に遅れのない生徒も在籍しており、こうした生徒の進路は「特別支援学級だけで対応するのは難しい」と強調。通常学級と連携し、教師や生徒の相互理解を深めることで課題解決を図る重要性を伝えた。

　過去の実践例として、中学校進学を機に通常学級に転籍した生徒の様子を各教科担任と共有し、全員で個別の教育支援計画を作成した取組を紹介。ほかの教科では分からなかった生徒の特性などが明らかになり、適切な指導につながったという。

　このほか、特別支援学級の生徒が通常学級の教科学習に参加できる教育課程・時間割の編成、通常学級の学習に参加した生徒への取り出し指導の実践など、通常学級と特別支援学級の連携を深化。教員間の理解が深まったことで「通常学級と特別支援学級の敷居が低くなった」と述べた。

　生徒間の学び合いとして、特別支援学級の生徒が文化祭に向けてしおりを作り、通常学級の生徒に配布した取組を説明。紙工作業の様子を給食時間の放送や掲示物で通常学級の生徒に紹介するなどの交流を深めたと伝えた。通常学級の生徒からは「心の壁」が取り払われていく様子、特別支援学級の生徒からは自尊感情の萌芽が見られたという。

　「通常学級、特別支援学級にかかわらず、全ての教員が“授業で生徒指導”の理念で共に生徒一人ひとりと向き合うことがインクルーシブ教育につながっていくのでは」と述べた。

(札幌市 2024-08-16付)