鹿追町教委 小・中校長に対し社会教育士の取得奨励 地域への働きかけで効果実感
(市町村 2024-08-19付)

 【帯広発】鹿追町教委は、町内の小・中学校長に対し、社会教育士の称号取得を奨励している。探究学習のさらなる充実や地域コミュニティー形成を図る上で、地域の窓口として校長の働きかけが一層求められていることが背景にある。取得した校長は「学校目標や理念を地域に浸透させる上で、社会教育主事講習で身に付けた力が生きる」と手応えを口にする。学校と地域・社会が手を取り教育に関わる環境を形成する上で、地域との連携・協働に資する社会教育の観点が不可欠な時代を迎えている。

 5年度、町内中学校2校で「国際バカロレア(IB)」の認定に向けた取組が本格化した。IBの専門的知識を持つコーディネーターが1人配置され、全教職員が一丸となってカリキュラム作成や研修に力を注ぐ。

 一方で「地域とのつながりの構築」「児童生徒の学習環境整備」に向けては、学校自らが外部に働きかける知識・技術を習得する必要性を再確認。町内小・中学校7校による統合運営型のコミュニティ・スクールを展開する中、「探究学習の充実」「コミュニティー形成」を重点に掲げて熟議を重ねている。

 町教委は小・中学校管理職と共に、校長が地域の窓口として地域情報の把握やネットワークづくりを進めるとともに、教頭が学校運営の中学を担うよう、役割を再整理した。

 5年度から、小・中学校の校長に対し、ファシリテーション、プレゼンテーション、コーディネートの専門性を備えた「社会教育士」の称号付与に向けた社会教育主事講習の受講を奨励している。

 称号取得に当たっては、講習のうち「社会教育経営論」など4科目を選択し、約20日間にわたる受講が求められる。講義は一日を通して行われるため、町教委は校長の受講時間を勤務時間として扱っている。

学校教育と異なる

視点を得る機会に

 5年度は町内7校のうち約半数の校長が社会教育士の称号を得た。笹川小学校の島田諭校長もその一人。「コロナ禍で希薄になった関係性も多く、つなぎ直すことが重要」という思いを胸に、保護者との何気ない会話や地域団体の会議に足を運ぶなど、あらゆる機会を通してネットワークを広げるために汗を流す。「学校目標や理念を地域に浸透させる上で、社会教育主事講習で身に付けた力が生きる」と手応えを口にする。

 ことしから瓜幕中学校に赴任した渡邊直人校長は「学校教育とは異なる視点を得る貴重な機会」と前向きに捉える。講義では、他の受講者から「学校の状況が地域から見えづらい」という意見もあったという。「情報発信や地域の声を拾う必要性を実感した。地域とつながるだけではなく、いつでも集える場を設け、校内に入ってきてもらうことを大切にしたい」と気持ちを新たにする。

 学習指導要領では、小・中学校の総合的な学習の時間において、探究的な学習の過程が一層重視されている。学習活動の目標や実施状況等を外部に発信し、広く理解と協力を求めるためには「校長の率先した働きかけが欠かせない」とする。

 道教委が示す「北海道における教員育成指標」では、学校管理職に「課題等を把握する力」「学校・園内外の協力体制を構築する力」「保護者・地域等と協働する力」などの醸成に向けて、アセスメント、ファシリテーションの資質・能力向上を求めている。

 学校管理職は2、3年ごとに異動を伴うが、町教委は年度当初から、新任者を含め全ての学校管理職に対して“教育がまちづくりにつながる”という観点を意識するよう訴えている。

 取組を推進する町教委の天野健治学校教育課主幹は「校長が地域のニーズを把握し、ヒト・コト・モノをつなげ、地域が当事者意識を持って町の教育を考える仕掛けをつくってほしい」と、地域コミュニティーの教育力向上に期待する。

(市町村 2024-08-19付)

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